目の前で、にこにこと笑みを浮かべて自分の作った料理を食べるを、レーガもまた笑顔で見つめる。の目の端に残る赤い痕にも、一応笑ってはいるもののどこかぎこちなく、心にはまだ深い悲しみを抱えているだろうことも、気付かないふりをした。
エッダが亡くなった今年の冬も、もうすぐ終わろうとしている。も、エッダとの思い出を胸に歩き出そうとしている。
実の家族のようにエッダと支え合っていたにとって、エッダとの別れはどんなに辛いことだっただろう。けれど、の悲しみに寄り添っていたのはフリッツだった。その喪失の悲しみを分かち合うことができたのは、と同じようにエッダを実の祖母のように慕っていたフリッツだけだった。レーガではない。
彼はただ、がゆっくりとエッダの死から立ち直るのを見守るだけだった。
人の死を前にして、想い人と他の男の距離が縮まることを一番に危惧する自分の浅ましさを内心笑いながら、に「これ、サービス。よかったら感想聞かせてくれ」と新作のケーキを差し出す。
目を輝かせて「ありがとう、レーガさん!」と笑うに、レーガはそっと目を細めた。
今はまだ、が笑ってくれるだけで十分だ。それで、満たされる。
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