手の中には、飴玉がひとつ。この戦時下どうやって手に入れたのか、女の子が好きそうな可愛らしい包み紙のそれを掌でころころと転がす。
『いつも機体の整備ありがとな! スパナ握り締めて待ってるお前のためにまた帰ってくるよ』
キラとたった二人でこの艦を守り抜いている彼は、艦長とも副艦長ともいい感じで。きっとこんな言動をあちこちでやっているから、変な期待を抱く愚かな女の子が増えるのだろう、自分みたいに。
マリューみたいに豊満な女性らしい体もなければ、ナタルのような怜悧な美貌も持たない。あちこちの整備に毎日追われて油と煤に塗れた自分は、それが好きで選んだ未来のはずだった。
「情けな……」
それが爽やかな色男のせいで揺らぎそうになっているのが無性に腹立たしくて、手の中の飴玉をバキッと握り潰した。
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