※≒カムイ
「姉さん……」
「っ、」
触れ合う時に、いつもわざと『姉さん』と呼ぶ。そうするといつも、どこか苦しげな表情になるから。タクミさん、と僕を呼ぶ声に、どうしようもない切なさが混ざるから。
「母上が見たら、どう思うかな……?」
ぎゅう、と僕に抱き着く姉さんの体は震えていた。顔は見えないけどきっと泣いている。僕はそれにひどく興奮して、何度も姉さんと繰り返し呼んだ。
綺麗な姉さん。強い姉さん。みんなに好かれて、頼られて、慕われて。僕の欲しいものを全部持ってる姉さんが、こんな僕の下でぐちゃぐちゃになって泣いている。僕にはそれが、ひどく心地好くて仕方なかった。
こんなものは愛ではないと、誰かは言うかもしれない。けれどこれは愛だと、僕だけは知っていた。
160302