※現パロ
田崎は、私のメンテナンスが趣味だ。というよりも、生きがいとまでしている。
肌から髪から服に至るまで、私を構成するもののうちおよそ田崎の手にかからなかったものはない。むしろ、私自身でさえ田崎の趣向に沿わないものを取り入れることは許されないのだ。彼の趣味でない服を着て帰ったその日のうちに、服を細切れにされたことは記憶に新しい。田崎が私に求めているのは理想の素体としての機能であり、そこに私の意志などというものは毛ほども存在を必要とされなかった。私たちの関係は恋人というよりも、さながら人形とそのオーナーである。だから私は田崎が私という人形で遊ぶことに飽きれば幼女さながらに次の人形を探すとばかり思っていたのだが、田崎が私と連れ添い始めて何年経っても一向に飽きる様子がないのは意外だった。
「劣化する人形に、いつまで手をかけるつもりなの」
田崎は一瞬わけがわからないという顔をしたあと、ごく当たり前のように告げる。
「最後までだよ。に死に化粧を施して荼毘に付して墓に入れるまで、ずっと」
「しわくちゃのおばあちゃんになっても?」
「当然だろう。第一劣化ではなく変化だ、妙な心配をしないでくれ」
田崎が必要としているのは、愛しているのは、私であって私ではない。それでもこんな言葉に緩む頬を抑えられないのは、私の人形生活も満更ではないということの証左なのだろう。腹立たしいことではあるが。
「田崎が先に死んだらどうするつもり」
「俺が先立つことはないさ。を完璧に看取れるように、俺の死期を感じたらを先に殺すから」
狂っている。完璧に狂っている。どうしようもない変態だ。けれどこんなのを愛してしまったのだから仕方ない。気持ちわるいなあ、私はそう呟いて、田崎はそれを聞いて笑うのだった。
170529