※D課
「兄さん、お弁当を届けに……、!?」
「おや、さん。おはようございます」
D課のドアを開けて現れたのは、佐久間係長の妹であるだった。どうにも佐久間の弁当を届けに来たらしいが、部屋の中にいるのが三好だけであるのを見て凍りつく。眉毛以外は全く似ていない兄妹だと思っていたが、わかりやすいところは似ているかもしれない。
「おおお、お、おは、おはようございます、」
「壊れた蓄音機のようですね、可愛いですよ」
「ッ!?」
真っ赤になって固まったに、三好はチェシャ猫のような笑みを浮かべる。初めて会った日から何かと絡んでいた結果三好はすっかりに苦手意識を持たれていたが、逆に三好はそれを面白がっているのでタチが悪かった。
「ああ、そうして口をぱくぱくさせていると猫ではなく金魚みたいですね」
じりじりと近付いていくと、お弁当をしっかりと抱えたままはバッと飛びずさる。けれど後ろが壁であるため、それ以上退がることができずにおろおろと壁と三好を交互に見遣って泣きそうになっている。佐久間そっくりの純朴そうな印象の眉毛がこれ以上ないくらいに下がって、三好は笑みを浮かべたままを追い詰めていった。
「――うちの妹で遊ぶなと、何度言ったらわかるんだ!!」
「おや、佐久間係長。おかえりなさい」
「に、にいさん、」
「おかえりなさいじゃない! お前はに会う度に要らんちょっかいをかけて……いい大人が恥ずかしくないのか!」
「お弁当を忘れた上に妹さんに届けてもらっている『いい大人』は、恥ずかしくないんですか?」
「む……いや、話を逸らすな! 、もう学校に行きなさい。弁当はすまなかった」
「い、いえ、失礼します……!」
ぴゃっと、逃げ出すようには佐久間に弁当を渡して駆けていく。もったいないと思いながらも、三好はそれを黙って見送った。去り際にちらりと視線を寄越したにニコリと微笑みかけると、ゆでダコのように顔を赤くして走り去っていった。
「だいたいお前は、」
「『義兄さん』、落ち着いてください」
説教を始めようとした佐久間に、ちょっとした悪戯心から爆弾を落とす。一瞬で凍り付いた佐久間の姿は、それはもう見物だった。先ほどのと同じようにぱくぱくと口を開閉させる佐久間を見て、こちらは可愛くないなと思いながら三好はD課の待機室を後にした。
「…………――!!」
数秒後、部屋から怒号の爆発が聞こえてきたが果たして三好は振り返ることもなく、軽い足取りで脇の通路に姿を消したのだった。
170826
フリリク:「D課パロで佐久間の妹(女子高生)をついついからかっていじめる三好と、三好が苦手で内気な佐久間妹。佐久間妹は兄に眉だけ似てると面白いです」