BL エルヴィン・スミス 07 R-18
肌に纏わりつく脱がされかけた衣類やベルトが邪魔くさい
はそう思いながら自分の上に覆いかぶさるエルヴィンを見上げていた
下肢は全て脱がされていて、開かれた膝の間に彼の体があって
ああ、なんて格好をしているのだろうか
恥ずかしいだろうと片手で顔を覆っていると、その手首を掴まれた
持ち上げるようにして顔から離されて両目で彼を見る
近付く顔に、さっきと同じように目を閉じて
深い口付けは呼吸のタイミングが分からず、少し苦手だと思った
それに、この濡れた音――
唾液が立てるそれが、静かな部屋では大きく聞こえる
もう何度も確認したが、は片目を開けると扉の方を見た
団長室に隣接するこの部屋の扉
そこにある鍵が掛けられているのを見て視線を彷徨わせた
窓も締め切られ、明かりはテーブルの上にある燭台だけ
その緋色の灯りに照らされて瞼が開けられたエルヴィンの薄い青色の目がいつもより暖かな色に染まっているような――
至近距離で見た目にそう思って言うと彼が体を起こし、左手が性器に触れる
脱がされてから、嫌と言うほど触れられたその場所は与えられる刺激で形を変えていた
普段から自分でも必要以外に触れることがなく、性的なことには興味もない
だからこそ、どれだけ我慢すれば良いのかが分からなかった

「……んっ……」

腰に力を入れ、どうにか堪えているとエルヴィンがギシ、とソファを軋ませて体勢を変える
その頭が自分の下腹部に迫り、ぬるりと舌が粘膜に触れて膝が跳ねた

「あっ――!」

肘掛に置かれたクッションに預けていた背を丸め、無意識に逃れようとした体が押さえ込まれる
同時に体内に埋められた彼の長い指が動き、その不快感に眉寄せて――
だが舌での愛撫は耐え難く、咥えられたままの状態で達してしまう

「っ――は、あ……」

ああ、団長の口の中に
ハンカチを渡そうと、床に落とされたジャケットのポケットを探ろうとしたところで上体を起こしたエルヴィンがこくりと小さく喉を鳴らした

「っ……信じられねぇ……」

目の前の光景に驚いて口調が普段のものになってしまう
そんな自分に彼がふっと笑って口を開いた

「君のならば、な」

言いながら口元を手の甲で拭う仕草すら優雅に見える
こんな状況だというのに――と考えたところでずっと内部へ入れられていた指が動かされた

「つ、ぅ……」

入れるようには出来ていない体の構造が、それを拒むように勝手に反応する
だが初めよりはだいぶ慣れてきた、ような気がした
異物感は甚だしいが――と思ったところでゆっくりと指を引き抜かれる
エルヴィンがソファの座面に膝をつき、腰を上げて自らの衣類の前を寛げた
徐々に露になる団長の体はやはり自分とは全く違う
わざと酔い潰れた翌朝に目にしたのと同じように筋肉の線が目立った
三十路半ばだろうに、鍛えられた体は団長として相応しい
ぼんやりとそれを見つめて、視線を落として見えたそれ・・に声を上げそうになり、は思わず口を手で押さえた
まるで、女が初めて男のそれ・・を見たような反応で
ああ、オルオが言った通り団長のは相当――
本当に死ぬかも知れない、なんて考えているとソファが揺れて左脚を抱えられた

「力を、抜いているように」
「……了解した」

このような場面でも相手は団長であるから、思わず返答がそのようになってしまう
そんな自分に彼は困ったような笑みを見せて、そして体に熱を持つものが押し当てられた
それだけで指とは全く違うのが分かり恐怖に視界が滲む
続いてぐっと押し込む動きで裂けるんじゃないかという痛みに襲われた

「っ……、……うぅ……!」

ジャケットは脱いだが、前を開けただけの彼のシャツの袖口を掴み、痛みに耐えてとにかく力を入れないように
だが人体としてはやはり、そこは入れる場所ではなく――
なんてこちらのことにお構いなしに腰を掴まれて押さえ込まれる形で一気に突き入れられた

「っ!痛――!」

痛みに苦しさ、熱に寒気
様々なものが入り乱れて閉じた目の端から涙が零れ落ちた
裂くような痛みに異物感に圧迫感
なんて酷い行為だ――と思っているとエルヴィンの手が頬に触れ、親指が涙を拭うように目尻に触れる

「い、たい、団長っ……!」
「ああ……すまない」

謝るくらいなら抜いてくれ
そうは思うが言葉にはせずに短い呼吸を繰り返し、痛みに慣れようとする
女も初めての時は痛みがあると聞くが、男も存外痛いものだった
まあ、一気に突き入れられたせいもあるのだろうが
エルヴィンの腰がこちらの体に密着しているのを見て、根元まで入ったのだと分かる
信じられない気持ちでいると彼の手に腰を掴まれ、ズルと内部でそれ・・が動く
なんとも言えない感覚に眉を寄せている間にも再び根元まで埋められて
その動きがゆっくりと、何度も繰り返されて喉の奥から込み上げる声を抑えた
呻き声しか出ないだろうが、ふとした瞬間に自分のものではない声が出てしまいそうで――
口元に寄せた右の手首に歯を立てて揺れる視界で天井を見つめる
粘膜が絡みつく濡れた卑猥な音と自分とエルヴィンの息遣いに耳を犯されているようだ
自分の人並外れた聴力が恨めしい
そう思い、無意識に力が入ると彼が僅かに眉寄せて苦し気に息をはいた
どうやら痛みを感じるくらいに締め付けてしまうようで
だがその場所の力加減は難しく――と思っているとエルヴィンの動きが大きくなって吐き気を覚えるくらいの不快感に襲われる
それに何とか耐えて、深く貫かれると彼が動きを止める
目を閉じて、眉根を寄せて――
無表情が多い彼がこんな顔をするのかと思っていると体の中でジワリと熱が広がる

「っ……」
「はっ、はぁ……」

うっすらと汗をかき、頬を上気させ、こんなにもせつない表情を浮かべる団長の顔なんて自分以外に見られる人はいないのではないだろうか
そう思っているとずるりと埋めていたものが抜かれ、は手首を口元から離すとゆっくりと体を起こした
ずっと開かれていたせいか股関節に違和感がある
初めて馬に乗った時すらこんなことは無かったのに
そう思いながら足を床に下ろし、ジャケットのポケットを探って取り出したハンカチで額を拭った
普段からあまり汗はかかないほうなのだが今回は流石に――と思ったところでその手をエルヴィンに取られる
そちらに顔を向けると、彼が手首の辺りをじっと見ていた

「?……」
「噛んだのか?血が出ている」
「……声が出そうだったので」
「ふっ……我慢しなくても良い。寧ろ、聞かせてほしかった」
「あまり、色気のある声ではないですよ」

そう言い手首に滲む血をハンカチで押さえる
成長に伴い歯が生え変わった時に通常よりも少し長く、本当に牙のような犬歯になり、それが当たった部分の皮膚に穴が開いてしまったようだ
この程度ならば放置していても勝手に治るだろう
問題は今の自分の体の方で――
湯浴みをしたいのだが、普段使うのは分隊長室に併設された浴室
分隊長なんて自分を含めて三人しかいないから鉢合わせしてもミケくらいなものだった
だがこの状態では他人に会うのは絶対に嫌で、立ち入り禁止とでも張り紙をしようか――と考えているとエルヴィンの手が頬に触れた
乱れた髪を梳かれ、顔を向けると彼が立ち上がってこちらを見下ろす
いつの間に衣類を正したのか――と思っているとエルヴィンがこちらの前に移動し、膝をついて肩からずり落ちていたシャツを整えてくれた

「入浴をするか?この部屋の隣に浴室があるが」
「……それは助かります」
「着替えを用意しておこう」

彼の言葉に頷き、引っかかっているベルトを外し、衣類を正してから立ち上がる
まだ突っ込まれているような、そんな感覚が残っているが顔に出さずに浴室へと向かった
扉を開けると服を脱いで、ふと壁に掛けられた鏡が目に入りそこに映る自分の姿に声を上げそうになる
首や、胸や腹部
脇腹にまで赤く肌を吸われた跡が点々と残っていた
思わず体へ視線を向け、そしてそれが内ももにまであるのが見えて――
なんてことをしてくれたのか
これでは怪我をしても人目に肌を晒せないではないか
壁外調査は暫くはないが、旧市街地の巨人討伐とか、兵站拠点の設置とか色々と壁の外に出ることはあるというのに

「……まあ……仕方ねぇか」

恋人が出来て、そんな関係になれば肌にこんな跡も残るだろう
オルオだって首にあれだけあったのだから体の方はどうなっているのか
はそう思いながらタオルを手に取ると浴室への扉に手を触れた




体を洗い、湯を浴びて濡れた髪をかき上げる
不意に体を捻った時、妙な感じがしてそれから内ももを何かが伝うのを感じた
微かに息をのんで目を向けて見えたそれに反射的に湯をかける

「っ……気持ち悪ぃ……」

中に出されたのだから出てくることは分かっていた
だが、直に目にしてしまうとやはり気分は良くなく――エルヴィンはこちらのを飲んだというのに
いつか自分も彼のを飲むことに、なる、のだろうか
想像もつかないが覚悟はしていた方が良いだろう
そう思い、暫く立ち尽くしてからもう一度頭から湯を浴びて脱衣所へと出た
体の水滴を拭い、髪を拭きながら棚に置かれた服を見る
それは自分の部屋に着替えとして置いてあるものだった
団長になにをやらせているのだろうと思いながらそれを身に着けて髪を拭き終えたタオルをカゴに入れる
扉を開けて、廊下に出て
休憩室に戻ると窓が開けられ、日の光の差し込む中でソファに座る彼の姿があった
室内に先ほどの情事の痕跡はなくほっとして肩の力を抜く

「団長、着替えをありがとうございます」
「いや……体は大丈夫か」
「……すごく、違和感が残っていますが……大丈夫です」
「そうか。オルオが寝込んだと聞いて加減はした、つもりだ」
「十分に優しくしていただきました。オルオは見舞い行きましたが……その、起き上がるのがやっとの状態で……」
「……リヴァイには注意をしておく」
「そうして頂けると助かります」

そう言い、エルヴィンの隣へと腰を下ろした
窓から吹き込む風が気持ち良い
少し眠りたいがそんなに時間は余っていないか
ああ、本当に分隊長と言う立場は面倒くさい
これからまた仕事が――と思っているとエルヴィンの指が頬に触れた
視線だけを向けると彼が僅かに首を傾げる

「今夜、部屋に呼んでも?」
「……添い寝とキスだけ、でしたら」
「……」
「たった今、初体験を終えたばかりです。加減をお願いします……ヤると言うのなら退団して姿を消しますよ。……永遠に」
「……、……分かった」

絶対に何か言いかけて止めたのだと分かる
でも今日だけは、いや出来れば明日も――
この違和感が少し軽減するまでは我慢してほしいものだった
でも日を開け過ぎれば感覚を忘れてしまうだろうからそれもまた、面倒な事になりそうで
ああ、情事のことでこんなに悩む日が来るなんて
はそう思いながら目尻に触れる彼の指に目を細めた