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作品ID:224
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約2934文字 読了時間約2分 原稿用紙約4枚
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■白河甚平
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /
ホットドッグ街道
作品紹介
掌編小説第1弾です!
ジャンルとしては、ブラックコメディ?
あなたも突然、ホットドッグが食べたくなることはありませんか?
ジャンルとしては、ブラックコメディ?
あなたも突然、ホットドッグが食べたくなることはありませんか?
ホコリっぽい街の大通りで、俺はもう三時間ほどホットドッグを探しあぐねていた。通り内のカフェやハンバーガーショップ、果てはコンビニのメニューまですべて穴が空くほど眺めたが、“ホットドッグ”という六文字を見つけることは出来なかった。大通りの端から端まで、俺はスタートとゴールを反転させながら、なおもホットドッグを探し続けた。「食べたい」と言う衝動だけで、人間はこんなにも執着できるものなのだろうか。しかしなぜか、俺の全神経はどうしてもホットドッグを欲していた。
もはや理由も分からないまま、俺は398回目のゴールを終える。
汗は滝のように流れ、脹脛はびくびくと笑っている。腿が目の見えないところで痙攣して来ているような感覚がしたが、俺は構わずに399回目のゴールを目指した。
10、20メートル・・・・・・
さっきと変わらない街並み。
キャッチセールスや威勢のいいサンドイッチマン達の視線が少し痛い。
30、40メートル・・・・・・
いつの間にか早くゴールしたい気持ちが大きくなって、自然と小走りになっている自分に気づく。
60、70、80・・・・・・・・・・
あと少しで100メートルと言う地点で、俺はあることに気がついた。
人が、いない。
少し進路をずらせばまともにぶつかりそうなほど人で溢れかえっていたストリートは、もはや面影すら見えない。
俺に妙な視線を向けていたキャッチセールスもサンドイッチマンも、いつの間にか姿を消してしまっている。BGMの如く鳴り響いていた雑踏もショップからの有線放送も聞えない。
耳に痛いほどの、静けさ。
俺はだんだん怖くなって来たが、それでも歩き続けた。
こうなったら一刻も早くホットドッグを見つけなければ、この事態を打破できない。そんな気がして、取り残された残りのストリートをわざとカツカツ靴音を鳴らして走り抜けた。
399回目のゴール。
ホットドッグはまだ見つからない。
空気抵抗の無い振り子のように、俺はまたキッチリ同じ距離の先にあるゴールを目指した。
ところが一歩足を踏み出した途端、俺の前に今まで無かった店が姿を現した。
ニューヨークのワゴンを思わせるコーヒースタンド。
店の前にはでかでかとストライプの星条旗がはためいている。屋根の上にはこれ見よがしにホットドッグのオブジェが掲げられ、カウンターからはプーンとパンとソーセージの焼ける匂いが漂ってきた。
やった、本物のゴールだ!
俺は喜び勇んで店に飛び込んだ。
ところが、誰もいない。
客どころか店員も、ゴキブリさえもいない。
俺は痺れを切らして自分で作ってやろうとカウンターを覗いたが、
冷蔵庫は空っぽ。マスタードとケチャップも容器だけで持つと実に軽かった。
辛うじてフライパンの中に何かあったが、もはや消し炭と成り果て、ろくに食べられそうにない。
俺はむしゃくしゃしながら店を飛び出し、いつ現れたのか知れない向かいのスタンドに乗り込んだ。さっきの店をまるっきり鏡でコピーした造り。色も形も全くそっくりな、向きだけの違うコーヒースタンド。
当然ここにも誰もおらず、厨房も空のまま。
「ちくしょうっ。」
俺は空腹と苛立ちで半狂乱になりながら、隣、向こう、隣、向こうと今度は次々出現するコーヒースタンドを往復し始めた。
同じ造り、同じ佇まい、向きだけが順序良く反転していく・・・・・・。
俺はだんだん何処の店に何を求めているのかが分からなくなり、しまい
には疲労のせいか頭がクラクラし出した。
狂気だ!
俺はついにストリートの真ん中に這いつくばり、あらん限りの声で叫んだ。
「ホットドッグは何処だッ?! 」
すると店の扉と言う扉が開き、何千何万と言うホットドッグの群がぞろぞろと行進しながら出て来た。テラテラと脂を滴らせたソーセージからニョキッと生えた細い足、それを挟むこんがりと焼けたパン、ゴマ粒で出来てるんじゃないかと言うほどつぶらな黒い目。煙草を吸っている奴、ケチャップとマスタードでかなり派手なメイクをしたカップル、レタスをファーコートのように羽織ってホットドッグ犬を連れたマダム、中にはハーブソーセージやスパイスチョリソーの奴もいて、目移りしてしまう。
一瞬あっけに取られたが、俺は我慢できなくなって一番近くを通ったホットドッグに頭からかぶりついた。
マンドラゴラを引っこ抜いたみたいな金切り声。しかしそんなことは気にしてられない。
バリッと歯型のつくパンの表面、パキッと言う音と共にじゅわっと溢れ出すソーセージの肉汁、片手にはいつしかオレンジジュースの大きなグラスが握られ、俺はそれが空になるまで手当たり次第ホットドッグを襲い続けた。通報されて駆けつけた警官さえも、あっという間に俺の餌食になる。ストリートの床にはケチャップとマスタードと肉汁が点々と染み付き、後にはホットドッグ達の持っていた煙草の吸殻や化粧ポーチ、何だか分からないが固くて食えそうにない眼鏡や焦げ付いたピストルなんかが点々と俺の歩いた跡を汚していった。
オレンジジュースをチビチビ飲んでいたせいで、あれだけのさばっていたホットドッグの山を俺はグラスが空にならぬ内にぺろりと平らげてしまった。
「ハア、ハア、ハハハ・・・・・・」
俺はようやく満たされた気分になって、ケチャップとマスタードと脂でぐしゃぐしゃになった顔を乱暴に掌で拭いながら、通りの中央にゴロリと寝そべってしまった。
「ハッ」
気がつくと俺は、行きつけのカフェにいた。
いつの間に随分こんなところまで来たんだろう。
そう言えばここにもホットドッグがあったんだっけ?
なら最初からここに来ればよかったと目の前に並ぶ椅子やテーブルを見ながら、俺はぼんやりとした徒労感に体を蝕まれた。
ん? ちょっと待て。
俺は自分の置かれている状況を再確認するようにぎょろぎょろと目玉を動かす。首は動かそうにも、何かにがっちり固定されてしまっている。
緑のトレイ片手に行き交う人々、
後ろから聞こえる店員の明るい声、
俺をじろじろ見ながら通り過ぎるYシャツとネクタイ、
ガラス越しに喧嘩するカップル・・・・・・
そしてイヤに温度の高いオレンジ色の室内。
じわりと浮かぶ妙に脂ぎった汗。
俺は立ち上がろうとしたが、横たわった身体は何かに挟まれて身動き一つ取れない。
「スイマセン、これ下さい。」
長い髪の、OLらしき女が俺を指さす。
黒いスカートとガラスの連係プレーが俺の目に映したのは、黒胡椒入りのソーセージを埋めた一本のホットドッグだった。
そして荒挽きの胡椒の粒は、俺のちょうど目の位置にあった。
THE END
もはや理由も分からないまま、俺は398回目のゴールを終える。
汗は滝のように流れ、脹脛はびくびくと笑っている。腿が目の見えないところで痙攣して来ているような感覚がしたが、俺は構わずに399回目のゴールを目指した。
10、20メートル・・・・・・
さっきと変わらない街並み。
キャッチセールスや威勢のいいサンドイッチマン達の視線が少し痛い。
30、40メートル・・・・・・
いつの間にか早くゴールしたい気持ちが大きくなって、自然と小走りになっている自分に気づく。
60、70、80・・・・・・・・・・
あと少しで100メートルと言う地点で、俺はあることに気がついた。
人が、いない。
少し進路をずらせばまともにぶつかりそうなほど人で溢れかえっていたストリートは、もはや面影すら見えない。
俺に妙な視線を向けていたキャッチセールスもサンドイッチマンも、いつの間にか姿を消してしまっている。BGMの如く鳴り響いていた雑踏もショップからの有線放送も聞えない。
耳に痛いほどの、静けさ。
俺はだんだん怖くなって来たが、それでも歩き続けた。
こうなったら一刻も早くホットドッグを見つけなければ、この事態を打破できない。そんな気がして、取り残された残りのストリートをわざとカツカツ靴音を鳴らして走り抜けた。
399回目のゴール。
ホットドッグはまだ見つからない。
空気抵抗の無い振り子のように、俺はまたキッチリ同じ距離の先にあるゴールを目指した。
ところが一歩足を踏み出した途端、俺の前に今まで無かった店が姿を現した。
ニューヨークのワゴンを思わせるコーヒースタンド。
店の前にはでかでかとストライプの星条旗がはためいている。屋根の上にはこれ見よがしにホットドッグのオブジェが掲げられ、カウンターからはプーンとパンとソーセージの焼ける匂いが漂ってきた。
やった、本物のゴールだ!
俺は喜び勇んで店に飛び込んだ。
ところが、誰もいない。
客どころか店員も、ゴキブリさえもいない。
俺は痺れを切らして自分で作ってやろうとカウンターを覗いたが、
冷蔵庫は空っぽ。マスタードとケチャップも容器だけで持つと実に軽かった。
辛うじてフライパンの中に何かあったが、もはや消し炭と成り果て、ろくに食べられそうにない。
俺はむしゃくしゃしながら店を飛び出し、いつ現れたのか知れない向かいのスタンドに乗り込んだ。さっきの店をまるっきり鏡でコピーした造り。色も形も全くそっくりな、向きだけの違うコーヒースタンド。
当然ここにも誰もおらず、厨房も空のまま。
「ちくしょうっ。」
俺は空腹と苛立ちで半狂乱になりながら、隣、向こう、隣、向こうと今度は次々出現するコーヒースタンドを往復し始めた。
同じ造り、同じ佇まい、向きだけが順序良く反転していく・・・・・・。
俺はだんだん何処の店に何を求めているのかが分からなくなり、しまい
には疲労のせいか頭がクラクラし出した。
狂気だ!
俺はついにストリートの真ん中に這いつくばり、あらん限りの声で叫んだ。
「ホットドッグは何処だッ?! 」
すると店の扉と言う扉が開き、何千何万と言うホットドッグの群がぞろぞろと行進しながら出て来た。テラテラと脂を滴らせたソーセージからニョキッと生えた細い足、それを挟むこんがりと焼けたパン、ゴマ粒で出来てるんじゃないかと言うほどつぶらな黒い目。煙草を吸っている奴、ケチャップとマスタードでかなり派手なメイクをしたカップル、レタスをファーコートのように羽織ってホットドッグ犬を連れたマダム、中にはハーブソーセージやスパイスチョリソーの奴もいて、目移りしてしまう。
一瞬あっけに取られたが、俺は我慢できなくなって一番近くを通ったホットドッグに頭からかぶりついた。
マンドラゴラを引っこ抜いたみたいな金切り声。しかしそんなことは気にしてられない。
バリッと歯型のつくパンの表面、パキッと言う音と共にじゅわっと溢れ出すソーセージの肉汁、片手にはいつしかオレンジジュースの大きなグラスが握られ、俺はそれが空になるまで手当たり次第ホットドッグを襲い続けた。通報されて駆けつけた警官さえも、あっという間に俺の餌食になる。ストリートの床にはケチャップとマスタードと肉汁が点々と染み付き、後にはホットドッグ達の持っていた煙草の吸殻や化粧ポーチ、何だか分からないが固くて食えそうにない眼鏡や焦げ付いたピストルなんかが点々と俺の歩いた跡を汚していった。
オレンジジュースをチビチビ飲んでいたせいで、あれだけのさばっていたホットドッグの山を俺はグラスが空にならぬ内にぺろりと平らげてしまった。
「ハア、ハア、ハハハ・・・・・・」
俺はようやく満たされた気分になって、ケチャップとマスタードと脂でぐしゃぐしゃになった顔を乱暴に掌で拭いながら、通りの中央にゴロリと寝そべってしまった。
「ハッ」
気がつくと俺は、行きつけのカフェにいた。
いつの間に随分こんなところまで来たんだろう。
そう言えばここにもホットドッグがあったんだっけ?
なら最初からここに来ればよかったと目の前に並ぶ椅子やテーブルを見ながら、俺はぼんやりとした徒労感に体を蝕まれた。
ん? ちょっと待て。
俺は自分の置かれている状況を再確認するようにぎょろぎょろと目玉を動かす。首は動かそうにも、何かにがっちり固定されてしまっている。
緑のトレイ片手に行き交う人々、
後ろから聞こえる店員の明るい声、
俺をじろじろ見ながら通り過ぎるYシャツとネクタイ、
ガラス越しに喧嘩するカップル・・・・・・
そしてイヤに温度の高いオレンジ色の室内。
じわりと浮かぶ妙に脂ぎった汗。
俺は立ち上がろうとしたが、横たわった身体は何かに挟まれて身動き一つ取れない。
「スイマセン、これ下さい。」
長い髪の、OLらしき女が俺を指さす。
黒いスカートとガラスの連係プレーが俺の目に映したのは、黒胡椒入りのソーセージを埋めた一本のホットドッグだった。
そして荒挽きの胡椒の粒は、俺のちょうど目の位置にあった。
THE END
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