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作品ID:539
こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1821文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚
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■バール
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 批評希望 / 初級者 / 年齢制限なし /
受験
作品紹介
受験のはなしを書きたくて書きました。
変なものを目指しました。
変なものを目指しました。
私の首に圧迫感を与えていたマフラーをほどき、机の上に載せる。続いてコートをイスの背もたれにかけ、さっさと席についた。
教室内の席はすでに8割ほど埋まっている。だが教室は無言。聞こえるのはノートや参考書のページが擦れる音だけ。
それらをかじりつくように眺める他人たちに話しかける気はさらさらない。私もかばんからこの日のためにつくった特製要点ノートをとりだす。表紙を開く前に、机の右上に貼られた番号札が目にはいった。
1250
受験票と同じ数字。4桁もの人がいるというのに、選ばれるのはたった1人だと思うとどうしようもなくゾクゾクした。背中から快感が這い上がる。口角の上昇をおさえていると、隣からはイスを引く音がした。
自然と目がそちらを向く。私の隣の席らしい女と、目が合った。
「お互いがんばりましょうね」
にこり。整えられた微笑に吐き気がする。このあからさまなほどの余裕から考えると、恐らく合格経験者だろう。
「そうね」
女と全く同じ微笑を返しつつ、内心では全力で罵倒してやった。今回受かるのは私だっつーの余裕ぶっこいてんじゃねーよ。
時計の針は着実に進む。スーツの男が2人教室に入ってきて、問題用紙と解答用紙が配布される。秒針が12に到達する。チャイムが鳴り響いた。
さぁ、受験だ。
問1 次の各問いに答えなさい。
(ア)あなたの小学校6年生のときの担任教師の名前をフルネームで書きなさい。
…田中T子。
(イ)初めての家族旅行の行き先を書きなさい。
…北海道×市○温泉。
(ウ)通っていたピアノ教室を辞めた理由を30字以内、また次の指定語句を用いて答えなさい。なお文末は「ため。」で終わること。これらも全体の字数に含む。
おっしゃ、これさっき要点ノートで見たばかりのやつだ。心の中でガッツポーズしながらシャーペンを走らせる。やはり今回は記述が多い。けれど、この調子ならいける。
問3
(ア)○○デパートで迷子になった4歳のあなたが入り込んだラーメン屋の店名は次の1?4のうちどれか選びなさい。
(エ)隣の席の山田くんが小テストで17点をとったのち発した最初の一言として正しいものを選びなさい。
問5
(i)右の地図より、母親の通勤ルート及び通勤にかかる交通費の組合せとして正しいものを選びなさい。
(ii)国語のスピーチで「興味のあるニュース」について発表したときの内容を要約し70字以内で書きなさい。
問6
(オ)現在のクラスメート39人全員のフルネームを漢字で書きなさい。
問6には手間取ってしまった。一度顔を上げ時刻を確認する。残り時間が少ない。
問7からの選択問題はひっかけだ。問題を読んではいけない。答はすべて3を選ぶこと。時間が少ないと3を選ぶのが「私」の癖だ。
解答用紙を裏返し、ぎょっとした。裏一面丸まる解答欄。すぐに問題に目を走らせる。
問10 あなたの夢を書きなさい。
頭を最大限に働かせ、文を組み立てる。これが求めている答はなんだ。「私」の夢。要点ノートや参考書からわかる「私」の人間性から想像される「私」の夢? いや違う。これは私だ。私が私の夢を書くのだ。
「私」はまぎれもなく私なのだから。
チャイムが鳴り響いた。スーツの男により解答用紙が回収される。
「これにて試験を終了します。最も成績が優秀だった者には今日中に合格通知が送られます。通知を受け取った方は、明日1日分のあなたとしてがんばってください。皆さんお疲れ様でした」
「ありがとうございました」
皆、次々に荷物をまとめて席を立つ。隣の席の女と目が合ったが、気まずそうにそらされた。どうやら出来がよくなかったらしい。いい気味だと思うが、私と全く同じ顔なんだからそんな青い顔すんなっつーのホント吐き気がするわ。
学校中にいる4桁以上の同じ顔同じ格好同じ声の受験者たちの間をすりぬけ帰路につく。
手ごたえはかなりあった。達成感が漲っている。
私の夢。
朝起きて、母のつくった朝食を食べる。朝日を浴びつつ電車を乗り継いで高校にむかう。友達とおしゃべりをして、授業を受けて、部活に参加して…。
嗚呼、それが出来たらなんて素晴らしいんだろう。24時間どんな風に過ごそうかと考えただけで胸が躍る。今から事細かに考えておこう。
合格するのは、私だ。
明日の「私」に選ばれるのは、きっと私。
教室内の席はすでに8割ほど埋まっている。だが教室は無言。聞こえるのはノートや参考書のページが擦れる音だけ。
それらをかじりつくように眺める他人たちに話しかける気はさらさらない。私もかばんからこの日のためにつくった特製要点ノートをとりだす。表紙を開く前に、机の右上に貼られた番号札が目にはいった。
1250
受験票と同じ数字。4桁もの人がいるというのに、選ばれるのはたった1人だと思うとどうしようもなくゾクゾクした。背中から快感が這い上がる。口角の上昇をおさえていると、隣からはイスを引く音がした。
自然と目がそちらを向く。私の隣の席らしい女と、目が合った。
「お互いがんばりましょうね」
にこり。整えられた微笑に吐き気がする。このあからさまなほどの余裕から考えると、恐らく合格経験者だろう。
「そうね」
女と全く同じ微笑を返しつつ、内心では全力で罵倒してやった。今回受かるのは私だっつーの余裕ぶっこいてんじゃねーよ。
時計の針は着実に進む。スーツの男が2人教室に入ってきて、問題用紙と解答用紙が配布される。秒針が12に到達する。チャイムが鳴り響いた。
さぁ、受験だ。
問1 次の各問いに答えなさい。
(ア)あなたの小学校6年生のときの担任教師の名前をフルネームで書きなさい。
…田中T子。
(イ)初めての家族旅行の行き先を書きなさい。
…北海道×市○温泉。
(ウ)通っていたピアノ教室を辞めた理由を30字以内、また次の指定語句を用いて答えなさい。なお文末は「ため。」で終わること。これらも全体の字数に含む。
おっしゃ、これさっき要点ノートで見たばかりのやつだ。心の中でガッツポーズしながらシャーペンを走らせる。やはり今回は記述が多い。けれど、この調子ならいける。
問3
(ア)○○デパートで迷子になった4歳のあなたが入り込んだラーメン屋の店名は次の1?4のうちどれか選びなさい。
(エ)隣の席の山田くんが小テストで17点をとったのち発した最初の一言として正しいものを選びなさい。
問5
(i)右の地図より、母親の通勤ルート及び通勤にかかる交通費の組合せとして正しいものを選びなさい。
(ii)国語のスピーチで「興味のあるニュース」について発表したときの内容を要約し70字以内で書きなさい。
問6
(オ)現在のクラスメート39人全員のフルネームを漢字で書きなさい。
問6には手間取ってしまった。一度顔を上げ時刻を確認する。残り時間が少ない。
問7からの選択問題はひっかけだ。問題を読んではいけない。答はすべて3を選ぶこと。時間が少ないと3を選ぶのが「私」の癖だ。
解答用紙を裏返し、ぎょっとした。裏一面丸まる解答欄。すぐに問題に目を走らせる。
問10 あなたの夢を書きなさい。
頭を最大限に働かせ、文を組み立てる。これが求めている答はなんだ。「私」の夢。要点ノートや参考書からわかる「私」の人間性から想像される「私」の夢? いや違う。これは私だ。私が私の夢を書くのだ。
「私」はまぎれもなく私なのだから。
チャイムが鳴り響いた。スーツの男により解答用紙が回収される。
「これにて試験を終了します。最も成績が優秀だった者には今日中に合格通知が送られます。通知を受け取った方は、明日1日分のあなたとしてがんばってください。皆さんお疲れ様でした」
「ありがとうございました」
皆、次々に荷物をまとめて席を立つ。隣の席の女と目が合ったが、気まずそうにそらされた。どうやら出来がよくなかったらしい。いい気味だと思うが、私と全く同じ顔なんだからそんな青い顔すんなっつーのホント吐き気がするわ。
学校中にいる4桁以上の同じ顔同じ格好同じ声の受験者たちの間をすりぬけ帰路につく。
手ごたえはかなりあった。達成感が漲っている。
私の夢。
朝起きて、母のつくった朝食を食べる。朝日を浴びつつ電車を乗り継いで高校にむかう。友達とおしゃべりをして、授業を受けて、部活に参加して…。
嗚呼、それが出来たらなんて素晴らしいんだろう。24時間どんな風に過ごそうかと考えただけで胸が躍る。今から事細かに考えておこう。
合格するのは、私だ。
明日の「私」に選ばれるのは、きっと私。
後書き
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