小説鍛錬室
小説投稿室へ運営方針(感想&評価について)
投稿室MENU | 小説一覧 |
住民票一覧 |
ログイン | 住民登録 |
作品ID:281
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1768文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚
読了ボタン
button design:白銀さん Thanks!※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「雨音」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(206)・読中(1)・読止(0)・一般PV数(635)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
こちらの作品には、暴力的・グロテスクな表現・内容が含まれています。15歳以下の方、また苦手な方はお戻り下さい。
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / R-15 /
雨音
作品紹介
「その日は大嫌いな雨だった」
短編を書こうという衝動に駆られまして。
余震に揺れながら(余震に酔いながら)頭に浮かび上がったものを書いてみました。
正直、僕も雨は好きではありません。
短編を書こうという衝動に駆られまして。
余震に揺れながら(余震に酔いながら)頭に浮かび上がったものを書いてみました。
正直、僕も雨は好きではありません。
今日は大嫌いな雨だった。
雨は雨でも食べる方の飴だったらいいのに。と、そんな馬鹿げた夢を見ていたのはいつまでだっただろうか。今となっては頭上から降ってきたものや、そこら辺の道端に落ちている飴玉を舐めようだなんて勇気と好奇心は湧いてこない。そう考えると、そんなことを考えていた頃のわたしはやはり幼かったのだろう。二十代にさしかかった今のわたしは、頭上から落ちてくる雨はただの透明な液体だということを、当然のことだと受け止めているのだから。掌に着地してきた雨も透明。黄色や青みたいにカラフルではない。そんなカラフルなわけがない、と。
その筈だというのに、わたしの目の前に広がる水溜りは大好きな赤。水溜りに沈むのは、赤いワンピースで身を纏った赤く濡れた細い体。
わたしの大好きな赤に、わたしの最愛の女性。
――嗚呼、なんて美しい、この世に二つとない芸術品なのだろうか。
わたしは、ゆっくりと彼女の白い手を口元に近付ける。この氷のような冷たさは水溜りと止む気配を見せない雨のせいなのだろうか。それとも、こんな目に遭ってしまったからなのだろうか。そんなことを頭の隅で考えておきながら、その手に唇を落とした。無論、彼女は抵抗しない。抵抗出来ない。人形のように、ピクリとさえも動かないままだ。
行為を済またわたしは、無造作に手を離す。彼女の手は再び水溜まりの中に沈んでいった。
彼女が動かないこと、抵抗しないことは不服ではない。寧ろ彼女のこの姿を見れたことにわたしは満足している。何故なら、この姿がわたしと彼女の甘い関係の何よりの証拠となるのだから。わたしが彼女を殺めたという何よりの証拠となるのだから。
そして、わたしが彼女を手にした何よりの証拠となるのだから――。
わたしは、愛し合った証拠である彼女の体をうっとりと見つめる。雨により、彼女の血液が地に流れ出す。その血液さえもが愛おしいと感じられた。そう思う自分は異常なのだろうか。……うん。生きていれば、もっと愛せたのになぁ。勿体ない。
思いを断ち切るように彼女から視線を外した時、ふと昨日彼女と交わした約束が脳裏に浮上してきた。
昨日も、大嫌いな雨だった。
ざぁざぁと降り続ける雨を見て溜息をついたわたしに、彼女はいつもとなんら変わりのない笑顔でコーヒーを差し出してきた。溜息つくと、幸せが逃げちゃうわよ、と言いながら。そう言われても、ついてしまった溜息をどうしたらいいのだろうか。わたしは少し考えてから、にこりと彼女に笑い掛けると、吐いたであろう空気を思い切り吸い込んでみた。ついた溜息を吸ったら、ちゃんと幸せが戻ってくるよね、と言うと彼女は静かに笑った。
幸せが逃げちゃう、と言われても、わたしは今まで何度も溜息をついたのだよ。それに、わたしには彼女がいること以上に幸せなことはない。言うならば、彼女さえいればわたしの幸せは逃げない。
だけど、どうせ一緒にいるのなら生きていきたかったなぁ、とは思う。
わたしが、どうせなら彼女のいるこの場所で仕事を済ませてしまおうと、書斎の書類を取りに足を進めた時、突然、彼女が何の前触れもなくわたしに声を掛けた。
わたしが死ぬ時は、一緒に死んでくれるって約束してくれる? と。
突然、何を言い出すのだろうか、と最初は耳を疑ったものだ。彼女がこんなことを言い出すのは、これが初めてなのだから。また、こんなことを言い出すような性分ではないと思っていた。
だが、彼女の瞳は本気の色で染まっている。
……卑怯だ。わたしはずっと昔から、彼女がどこかへ行くのならば一緒に行こうと決めていたのだ。それがどこであろうと、自分の身がどうなろうとも――。
わたしが笑いながら頷くと、彼女は有難うと寂しげに笑ってみせた。
――約束。そうだ、守らなければならない約束が私にはあった。
ふっとわたしは口元を緩めて、彼女を殺めた鈍い金色の光を放つ銃口を自らの口に入れる。
静かに目を閉じ、お待たせ、と銃口を入れたままの口を動かして、わたしは引き金に掛ける右手の人差し指に力を入れた。
――――そう、昨日も今日も大嫌いな雨だった。
雨は雨でも食べる方の飴だったらいいのに。と、そんな馬鹿げた夢を見ていたのはいつまでだっただろうか。今となっては頭上から降ってきたものや、そこら辺の道端に落ちている飴玉を舐めようだなんて勇気と好奇心は湧いてこない。そう考えると、そんなことを考えていた頃のわたしはやはり幼かったのだろう。二十代にさしかかった今のわたしは、頭上から落ちてくる雨はただの透明な液体だということを、当然のことだと受け止めているのだから。掌に着地してきた雨も透明。黄色や青みたいにカラフルではない。そんなカラフルなわけがない、と。
その筈だというのに、わたしの目の前に広がる水溜りは大好きな赤。水溜りに沈むのは、赤いワンピースで身を纏った赤く濡れた細い体。
わたしの大好きな赤に、わたしの最愛の女性。
――嗚呼、なんて美しい、この世に二つとない芸術品なのだろうか。
わたしは、ゆっくりと彼女の白い手を口元に近付ける。この氷のような冷たさは水溜りと止む気配を見せない雨のせいなのだろうか。それとも、こんな目に遭ってしまったからなのだろうか。そんなことを頭の隅で考えておきながら、その手に唇を落とした。無論、彼女は抵抗しない。抵抗出来ない。人形のように、ピクリとさえも動かないままだ。
行為を済またわたしは、無造作に手を離す。彼女の手は再び水溜まりの中に沈んでいった。
彼女が動かないこと、抵抗しないことは不服ではない。寧ろ彼女のこの姿を見れたことにわたしは満足している。何故なら、この姿がわたしと彼女の甘い関係の何よりの証拠となるのだから。わたしが彼女を殺めたという何よりの証拠となるのだから。
そして、わたしが彼女を手にした何よりの証拠となるのだから――。
わたしは、愛し合った証拠である彼女の体をうっとりと見つめる。雨により、彼女の血液が地に流れ出す。その血液さえもが愛おしいと感じられた。そう思う自分は異常なのだろうか。……うん。生きていれば、もっと愛せたのになぁ。勿体ない。
思いを断ち切るように彼女から視線を外した時、ふと昨日彼女と交わした約束が脳裏に浮上してきた。
昨日も、大嫌いな雨だった。
ざぁざぁと降り続ける雨を見て溜息をついたわたしに、彼女はいつもとなんら変わりのない笑顔でコーヒーを差し出してきた。溜息つくと、幸せが逃げちゃうわよ、と言いながら。そう言われても、ついてしまった溜息をどうしたらいいのだろうか。わたしは少し考えてから、にこりと彼女に笑い掛けると、吐いたであろう空気を思い切り吸い込んでみた。ついた溜息を吸ったら、ちゃんと幸せが戻ってくるよね、と言うと彼女は静かに笑った。
幸せが逃げちゃう、と言われても、わたしは今まで何度も溜息をついたのだよ。それに、わたしには彼女がいること以上に幸せなことはない。言うならば、彼女さえいればわたしの幸せは逃げない。
だけど、どうせ一緒にいるのなら生きていきたかったなぁ、とは思う。
わたしが、どうせなら彼女のいるこの場所で仕事を済ませてしまおうと、書斎の書類を取りに足を進めた時、突然、彼女が何の前触れもなくわたしに声を掛けた。
わたしが死ぬ時は、一緒に死んでくれるって約束してくれる? と。
突然、何を言い出すのだろうか、と最初は耳を疑ったものだ。彼女がこんなことを言い出すのは、これが初めてなのだから。また、こんなことを言い出すような性分ではないと思っていた。
だが、彼女の瞳は本気の色で染まっている。
……卑怯だ。わたしはずっと昔から、彼女がどこかへ行くのならば一緒に行こうと決めていたのだ。それがどこであろうと、自分の身がどうなろうとも――。
わたしが笑いながら頷くと、彼女は有難うと寂しげに笑ってみせた。
――約束。そうだ、守らなければならない約束が私にはあった。
ふっとわたしは口元を緩めて、彼女を殺めた鈍い金色の光を放つ銃口を自らの口に入れる。
静かに目を閉じ、お待たせ、と銃口を入れたままの口を動かして、わたしは引き金に掛ける右手の人差し指に力を入れた。
――――そう、昨日も今日も大嫌いな雨だった。
後書き
未設定
|
読了ボタン
button design:白銀さん Thanks!読了:小説を読み終えた場合クリックしてください。
読中:小説を読んでいる途中の状態です。小説を開いた場合自動で設定されるため、誤って「読了」「読止」押してしまい、戻したい場合クリックしてください。
読止:小説を最後まで読むのを諦めた場合クリックしてください。
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
自己評価
感想&批評
作品ID:281投稿室MENU | 小説一覧 |
住民票一覧 |
ログイン | 住民登録 |