小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説鍛錬室

   小説投稿室へ
運営方針(感想&評価について)

読了ボタンへ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

作品ID:331

こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約2855文字 読了時間約2分 原稿用紙約4枚


読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「夢現」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(179)・読中(1)・読止(2)・一般PV数(631)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


小説の属性:一般小説 / 未選択 / お気軽感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

夢現

作品紹介

 夢と



 

 現と







 その狭間















 えーっと…、すみません。ありえない出来です。

連載をしたかったんだけど、ネタが出なかったので短編一本upしました。


 寒い。そして、暗い。

 目の前に広がるのはただの闇。自分の足元なんか、疾うに見ようとするのをやめている。なにも見えない。どれだけ見ようとしたところで、目に映るのは闇ばかり。一寸の光も見出せない、暗く、沈んだ場所。

 そんな場所に俺―零斗―と彼女はいた。

 すぐ隣にいるはずの彼女に呼びかけようとしても、喉が引きつって声が出ない。彼女も同じなのか、息の音ひとつも聞こえない。ただただ何も出来ずに隣り合って立つ二人。手を伸ばせば相手の温度を感じる。その手を握れば握り返してくれる。そんなに近くにいるのに、表情を窺がうことはおろか、気配を感じることすらできない。

 それでもこの場所に恐怖はなかった。気付いたらここにいて、彼女も一緒だった。特に何があるわけでもなし、恐怖心を抱くことはない。ただ不思議だった。自分たちが何故ここにいるのか。ここは何処なのか。闇で定かではないが、周りにはなにも無いように思えた。8畳くらいの倉庫の中は殺風景で、壁はコンクリート独特の空気を醸し出している。よく冷えた空気が、動きのない部屋で巡ることなく、足元に蟠っていた。やがてはこの空気も淀んで重くなるのだろうか。

 不意に、その動かない筈の空気が動いた。ぎぃ、と軋んで部屋の正面にあった扉が開く。

 人だ…。

 そうは思ったけれど、やはり声が出ない。扉の前に背の高い男が立っている。暗闇で顔を知ることは叶わないが、とにかく人だった。人を見たのは久しぶりだったかも知れないし、そうでなかったかも知れない。なにしろ、どれぐらいの時間ここにいたのか分からないのだから。

 「元気だったかい?」

 男が言葉をかける。静かで落ち着いた声だった。答えを返せずにいると、男は尚も話し続ける。

 「どうもまだ頭がはっきりしていないようだね」

 くすっ、と軽やかに笑う。

 「うん、じゃあ目覚めさせてあげようか」

 何を、と思う間もなく男が二人に向かって両手を差し出した。

 「二人の中、どちらかの命を奪うといったら、どちらを選ぶ?」

 ―何を言うんだ、この男は。馬鹿なことを…。

 呆れた零斗に男は歩み寄る。そして、静かに囁いた。

 「可愛い自分と、他人の彼女。最後に決めるのは、君だ」

 身体を電流が駆け抜けた。足に力が入らない。こんなに静かなのに、人の理性をふっとばし、思考を打ちのめす。何なんだ、こいつは―。

 「さあ、どっちかな?」

 ここで答えに詰まったのが、失敗だった。たしかに自分は可愛い。だけど彼女は。俺は。自分は。君は。

 「零斗が悩むくらいならわたしがいくよ」

 「美っ…!?」

 「よし、成立だ」

 男が彼女―美月―を引きよせた。当の美月は悲しそうに目を伏せている。

 「それでは、おひらきに―」

 男がにや、と笑う。そして手に持ったナイフで、美月の首を―。

 「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!」





 「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!」

 零斗は自分の悲鳴で目が覚めた。

 外から小鳥の声が聞こえる。朝の光が射し込む部屋は白く照らされ、積み重なった雑誌や漫画を汚い部屋から浮き立たせる。一階のキッチンからは、朝ならではの忙し気な音が聞こえた。

 いつもの朝。

 「夢か…」

 なんという夢だ。こんな気持ちのいい朝にそぐわない。何考えてんだ俺。

 「零斗ー! 遅刻するよー!」

 下から母の忙しい声が聞こえた。どうも寝坊したらしい。「今行く!」と言いながらも朝ご飯を食べる気にはなれなかった。さっさと身支度をすませ、早々に家を出る。母は今更、何も言わなかった。

 外の空気は澄んでいて寝起きには嬉しい。でもそれを味わう余裕はなく、とにかく先を急いだ。



 「間に合ったー!」

 教室に飛び込むと一斉に好奇の目が向けられた。

 「ギリギリ」

 「学習ってもんを知らんのかね」

 「間に合ったって言えんのか」

 「尤も。ね、美月」

 友人に話を振られた美月は黙って頷いた。その動作にあわせて長い髪がさらりとゆれる。

 美月はモテる。どれだけ告白されたかしらないけど、とにかくモテる。長い髪に大きな目、小さな口。正直いって、俺もよく落とせたと思う。

 「ほらほら、授業始まるよ」

 「先生っ」

 いつの間にか先生が入ってきていた。生徒が五月蝿くても注意しない。このへんが高校のゆるいところだ。

 起立。礼。…。

 …ああ、やばい。全然頭に入ってこない。どうも俺の頭の中は今日の夢のことでいっぱいらしい。

 あのおかしく、怖い、よく解らない夢。何故美月がああなる?なにがあったんだろうか。なにかの暗示?メッセージ?虫の知らせ?解らないけど、薄気味悪い。もうみたくない。考えたくないけど気が付くとかんがえている。ああ、いやだ…。もう…。





 「零斗」

 門のところで美月が待っていた。

 「美月。待った?」

 「ううん。全然」

 「よし、じゃあ行こうか」

 俺は笑う。顔は引き攣っていないだろうか。なにしろ、今日の授業なんか聞いていなかった。なんにも覚えてない。ああ、今日の6時間はなんだったんだ。あの夢のせいだ。あの悪夢。ちくしょう。まあ、美月本人に言うつもりはないけど。

 それから俺らは他愛もない会話をしながら帰路についた。二人になると美月の笑顔が輝く。美しくて、可愛くて、楽しかった。

 それでね…。えー? マジ? 雪ったらさ。まあまあ…。うん、そうなの。そうだったんだ?……

 「あ、ここでお別れだね」

 30分くらい歩いた頃、分かれ道にさしかかった。俺は右に、美月は左に曲がる。

 「ああ、じゃあ明日」

 「うん、じゃあね」

 それぞれ別の方向へ曲がろうとしたとき、二人の前に黒い車が停まった。窓ガラスが降り、運転席の男が顔を出す。

 「…なんスか」

 咄嗟に美月を後ろに庇い、声を鋭くして問う。

 「君らを探していた者だよ」

 男は笑って後部座席を顎で示す。

 「零斗」

 美月が震える声で名を呼ぶ。それに首を横に振って答えた。

 「逆らっちゃいけねぇ」

 なんかやばい。逆らっちゃいけないんだ、こういうときは。

 「さあ、乗りや」

 



 驚愕だった。連れて行かれた場所は、あの倉庫。あの悪夢。暗示。メッセージ。虫の知らせ。

 「此処何処?」

 美月が泣きそうになっている。けど今はそれどころじゃない。この倉庫ということは、もしかして。

 「元気だったかい?」

 やっぱり。眩暈がした。美月はもう言葉がない。

 「さあ、唐突だが」

 来た。

 



 「二人の中、どちらかの命を奪うと言ったら、どちらを選ぶ?」







 俺がすることは、もうただ一つ。





 もう迷わない。



 彼女を救う。









 この命に代えてでも。

後書き

未設定


作者 悠暉
投稿日:2011/05/23 22:23:08
更新日:2011/05/25 18:12:58
『夢現』の著作権は、すべて作者 悠暉様に属します。
HP『未設定

読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!

読了:小説を読み終えた場合クリックしてください。
読中:小説を読んでいる途中の状態です。小説を開いた場合自動で設定されるため、誤って「読了」「読止」押してしまい、戻したい場合クリックしてください。
読止:小説を最後まで読むのを諦めた場合クリックしてください。
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

自己評価


感想&批評

作品ID:331
「夢現」へ

小説の冒頭へ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS