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作品ID:396
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1880文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚
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道祖神
作品紹介
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進藤透は、高校生になった。
ちょっと背伸びして、遠くの学校に行くことを決めた。と、言っても自宅からは電車で三駅分。そこから路線バスに乗って十分くらい。
新生活が始まって、数日が経ったころ。
「あの子、いつもこの時間に乗ってるんだよなあ。変なの」
「何が変なんだい?」
「だって、こんなに朝早いのに、小学生くらいの子供が一人でバスに乗るか?」
早速できた同じ方面から通う友達と一緒に、バスに乗り込んだときだった。
必ずその時間、バスの一番後ろの席に小学生くらいの女の子が座っていた。
「よんどころない事情でもあるんだろ。それに、いつも同じバスに乗っているのなら、しっかり目的地が毎日あるってことだし」
「……よくわかんないけど、まあ、いいか」
ぜんぜん納得していない顔で、友達があきらめた。
透も、ちらっと少女を見た。
たぶん小さな背丈くらいに伸ばした髪。座席から零れ落ちて、床に付きそうになっている。
今風の春物ワンピース。帽子はグレイ。大きなつばが前についていて、ちっちゃなボンネットみたいだ。
ひざに本を乗せて、静かに読んでいる。
「おい、透。着くぞ」
友達の声に我に返った透は、返事をしながら立ち上がった。
その日の夕方。
「う?ん、どうしたもんかのう?」
その少女が、駅の構内で迷っていた。
帰宅部の透は、帰りは一人だ。
思わず、声をかけていた。
「どうしたの?」
「……うん?」
少女が振り向いた。
座っていたからわからなかったが、身長は百四十センチくらい。けっこう大きかった。
「うむ、迷った」
かなり自然に、少女が言った。
「あ、怪しんだりしないんだ。親とかになんか言われないの? 怪しい人に付いていくなとか」
「うーん、憑いていくな、とは言われたことがあるな」
透は首をかしげながらも、疑問を飲み込んだ。
「それに、そちらは私のことを知っとるじゃろ。毎日顔を合わせているからのお」
「一応覚えててくれたんだ。うれしいよ」
少女が、微笑んだように見えた。
その笑みは、長く生きた、さまざまなものを内に秘めているような、含みのある微笑だった。
「ところで、小生。お前さん、この駅に行く電車はどれじゃろうかのお? 呼ばれたんじゃが、さっぱりわからん」
少女は懐から紙を取り出した。
和紙に、達筆で地図が書かれていた。
今いる駅が書かれ、三つ先の駅、透のいつも使っている駅が書いてある。
そこからまっすぐ線が引かれ、十字路の辺りに矢印が引かれている。
矢印のさきに、『このへん』と書いてあった。
「……なんともアバウトな地図だね」
透はこれを見て、まあ、ついでだし、と思って少女の手をとった。
「どうせ一緒の駅で降りるから案内してあげるよ」
「うむ。ありがとうのお。助かるわ」
電車の中で、初めて自己紹介をしあった。
「透だよ。透明の透」
「わしは、道じゃ」
「みち?」
「人々の通る道を守っておる。よろしくの、とおる」
透は少女、道のことがますますわからなくなってしまった。
その間にも、電車はいつものように線路の上を滑っていく……。
「……どうやら、ここのようじゃのう」
道が、地図を見ていった。
電車を降りて、地図を見ながら目的地周辺をうろついていたとき、不意に、道が立ち止まった。
目の前には、田んぼが広がるばかり。
片隅には、変な、欠けた石があった。
「本当にここでいいの?」
「ああ。呼ばれた意味がようく分かったわ」
そう言うと、道は、欠けた石に手を掛けた。
そして、こっちを振り向く。
「ありがとのお、とおる。おかげで探し物が見つかった」
そのとき、風が吹いた。
強い風だった。近くの家の庭に生えた木々を揺らしながら、遠くの山のほうへと消えていく。
道の帽子が飛んだ。
青い空に、グレイの帽子が点となって消えていくのを目で追って、手までのばした透は、
「あれっ?」
道に向き直って、道がいなくなったことに気づいた。
「道……」
辺りを見回して、また、目の前に視線をやると、そこにはさっきの石があった。
それも、少し違っていた。
しっかりと丸みを帯びた石。
そこには、女の人と、男の人が一対となって、こちらに笑顔を向けている様が彫りこまれていた。
ちょっと背伸びして、遠くの学校に行くことを決めた。と、言っても自宅からは電車で三駅分。そこから路線バスに乗って十分くらい。
新生活が始まって、数日が経ったころ。
「あの子、いつもこの時間に乗ってるんだよなあ。変なの」
「何が変なんだい?」
「だって、こんなに朝早いのに、小学生くらいの子供が一人でバスに乗るか?」
早速できた同じ方面から通う友達と一緒に、バスに乗り込んだときだった。
必ずその時間、バスの一番後ろの席に小学生くらいの女の子が座っていた。
「よんどころない事情でもあるんだろ。それに、いつも同じバスに乗っているのなら、しっかり目的地が毎日あるってことだし」
「……よくわかんないけど、まあ、いいか」
ぜんぜん納得していない顔で、友達があきらめた。
透も、ちらっと少女を見た。
たぶん小さな背丈くらいに伸ばした髪。座席から零れ落ちて、床に付きそうになっている。
今風の春物ワンピース。帽子はグレイ。大きなつばが前についていて、ちっちゃなボンネットみたいだ。
ひざに本を乗せて、静かに読んでいる。
「おい、透。着くぞ」
友達の声に我に返った透は、返事をしながら立ち上がった。
その日の夕方。
「う?ん、どうしたもんかのう?」
その少女が、駅の構内で迷っていた。
帰宅部の透は、帰りは一人だ。
思わず、声をかけていた。
「どうしたの?」
「……うん?」
少女が振り向いた。
座っていたからわからなかったが、身長は百四十センチくらい。けっこう大きかった。
「うむ、迷った」
かなり自然に、少女が言った。
「あ、怪しんだりしないんだ。親とかになんか言われないの? 怪しい人に付いていくなとか」
「うーん、憑いていくな、とは言われたことがあるな」
透は首をかしげながらも、疑問を飲み込んだ。
「それに、そちらは私のことを知っとるじゃろ。毎日顔を合わせているからのお」
「一応覚えててくれたんだ。うれしいよ」
少女が、微笑んだように見えた。
その笑みは、長く生きた、さまざまなものを内に秘めているような、含みのある微笑だった。
「ところで、小生。お前さん、この駅に行く電車はどれじゃろうかのお? 呼ばれたんじゃが、さっぱりわからん」
少女は懐から紙を取り出した。
和紙に、達筆で地図が書かれていた。
今いる駅が書かれ、三つ先の駅、透のいつも使っている駅が書いてある。
そこからまっすぐ線が引かれ、十字路の辺りに矢印が引かれている。
矢印のさきに、『このへん』と書いてあった。
「……なんともアバウトな地図だね」
透はこれを見て、まあ、ついでだし、と思って少女の手をとった。
「どうせ一緒の駅で降りるから案内してあげるよ」
「うむ。ありがとうのお。助かるわ」
電車の中で、初めて自己紹介をしあった。
「透だよ。透明の透」
「わしは、道じゃ」
「みち?」
「人々の通る道を守っておる。よろしくの、とおる」
透は少女、道のことがますますわからなくなってしまった。
その間にも、電車はいつものように線路の上を滑っていく……。
「……どうやら、ここのようじゃのう」
道が、地図を見ていった。
電車を降りて、地図を見ながら目的地周辺をうろついていたとき、不意に、道が立ち止まった。
目の前には、田んぼが広がるばかり。
片隅には、変な、欠けた石があった。
「本当にここでいいの?」
「ああ。呼ばれた意味がようく分かったわ」
そう言うと、道は、欠けた石に手を掛けた。
そして、こっちを振り向く。
「ありがとのお、とおる。おかげで探し物が見つかった」
そのとき、風が吹いた。
強い風だった。近くの家の庭に生えた木々を揺らしながら、遠くの山のほうへと消えていく。
道の帽子が飛んだ。
青い空に、グレイの帽子が点となって消えていくのを目で追って、手までのばした透は、
「あれっ?」
道に向き直って、道がいなくなったことに気づいた。
「道……」
辺りを見回して、また、目の前に視線をやると、そこにはさっきの石があった。
それも、少し違っていた。
しっかりと丸みを帯びた石。
そこには、女の人と、男の人が一対となって、こちらに笑顔を向けている様が彫りこまれていた。
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