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「炎に従う〈はずの〉召喚獣」を読み始めました。
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炎に従う〈はずの〉召喚獣
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
見上げた先には空はなくて
前の話 | 目次 | 次の話 |
見上げた先に空はなく、あるのは単なる空虚。
だけどとても心地よい感覚……単純だからか? それとも……。
フェクトは顔を空ではなく前へと向ける。
其処にはたった一匹の召喚獣。
とっても小さな、召喚獣。
「スカラタクティス……やっぱり……」
前に居る召喚獣は小さな生命体。
だが力はその体には合わない。それだけこのスカラタクティスというのは大きな力を持っている。
「大体、何で一時間ごとに天候、変えるかなぁ……」
「キュリス?」
「あ。違う違う。スカラ、俺。キュリスだけど。姿はね。でも中身は違うから」
「ならキュリスとフェクトが入れ替わった?」
「そういうことになる」
「あり得ない話ではないが、信じがたい。それよりもフェクトが何故この街に? 因みに私はとある依頼人から言われているだけだ。一時間ごとに天候を変えろ、とな」
「まぁスカラにしたらそんなに難しくないことだよな。すこし制御が効くか効かないかの違いだけで」
「そうだ」
「その依頼人って?」
「いえない」
「あららー。スカラ、口堅いもんね」
「否定はしない」
どうするかな。スカラは一気に晴天の状態から豪雨に変えることができる。もしも雨や雪などという天候に変われば自分が劣勢に立たされるのは明白。ならば。
「なぁスカラ。協力しないか」
「はぁ?」
その召喚獣は擬人化をしたまま。
因みに言えば擬人化というのは召喚獣だが人間の形をする。それを擬人化、という。
擬人化をしたままのスカラは12歳ぐらいの少女だ。だから。
「協力。実はさ、俺を召喚した奴が殺されたんだよね」
「えっ!?」
スカラは慌ててフェクトに近寄る。いくら常に冷めている態度をとっているとはいえ、他人を気遣う優しい少女なのだ。
……召喚獣だが、少女なのだ。
「スカラ。俺、消えかかってるかなぁ?」
自らを召喚したものが亡くなれば召喚された召喚獣は自然消滅する。
ある程度、現世界にはとどまれるがそれも時間の問題。
どの道、新たな主を見つけなければ召喚された召喚獣は消え去る運命。
召喚獣の消滅方は二通りある。
一つ目が霧のように段々と薄れ、やがて消える〈自然消滅〉。
二つ目が主、つまり召喚したものが亡くなったそのとき、突如として消えるタイプ。
よく見られるのが二つ目だ。
結局、どれだけ強い力を持っていても誓約や契約の元に生まれた力。
誓約・契約した者が居なくなればその力はなくなる。
そして召喚獣にとって力は存在に直結する。
力が無くなれば、存在もなくなる。
「なぁ。スカラ。答えてよ」
「ふぇ、フェクト」
「ん?」
「う、後ろ……!」
スカラを見るとその表情は歪んでいた。恐怖に。
スカラの言うとおりに後ろを見る。
「!」
周りに人がいた。どこをみても人、人、人。そしてフェクトとスカラにこう言い放った。
「せ、制御される側の獣のくせに……!」
「制御がなくなればただその力を振り回す化け物ッ!」
「あ……」
向けられる銃口と弓矢。とっさにスカラを庇う。降り注がれる銃弾。軌跡となる矢。弧を描く鞭。それらが全てフェクトに注がれる。フェクトの表情は苦痛に歪む。
「まだ、まだ生きている……まだ攻撃体制を解くな!」
フェクトはスカラに言った。
「逃げて」
「い、嫌だ!」
「ダメ。逃げて。俺、キレちゃいそうだもん」
弱弱しく笑う。
その表情には余裕がないことを裏付けていて。そして同じ召喚獣のスカラにはその余裕のなさは命の問題じゃない。
「わ、分かった!」
スカラは逃げた。フェクトに向けられていた攻撃がスカラとフェクトに別れる。
それでもスカラは逃げ続けた。服が破けて、途中転びそうになったけど逃げ続けた。
「これで、いい。俺はもう持たないし、ね」
命の問題ではない。もっとフェクトタクティスという存在の大きさを示す問題だ。
「これで……本当の俺に戻れる」
ゆっくりと立ち上がる。
甘い人間。本当に俺を殺そうとするならばもっと容赦ない攻撃を続ければいいものを。それをやらなかったお前たちが悪い。
そして、言ってはならない言葉をお前たちは言った。
召喚獣とは人間には成せぬ力を持ち、人間には成せぬことを成す存在の事である。
だがその力は制御なしであれば、国の軍隊など凌駕する。
そんな召喚獣の中でも攻撃力だけでは一番のフェクトが本来のフェクトになれば。
「スカラは逃げたな」
手を組み合わせる。祈りを捧げる。
自分が本来の自分になれるように。
スカラは後ろで大きな気配が動くことを察知した。
それはスカラが思っていた事。
人間たちは怒らせてはいけない者を怒らせた。決して怒らせてはいけない者を。
ふと。空を見上げる。
目を見張った。何もなかった。
空なんかない。あるのは単なる空虚。
単純な空虚のみがそこに存在していた。
それはフェクトが空をも飲み込む勢いで己を己として完成しつつある証拠だった。
空を見上げると、何もなかった。
空虚があって、穴があって。
私はそこに吸い込まれるんだ。
だけどとても心地よい感覚……単純だからか? それとも……。
フェクトは顔を空ではなく前へと向ける。
其処にはたった一匹の召喚獣。
とっても小さな、召喚獣。
「スカラタクティス……やっぱり……」
前に居る召喚獣は小さな生命体。
だが力はその体には合わない。それだけこのスカラタクティスというのは大きな力を持っている。
「大体、何で一時間ごとに天候、変えるかなぁ……」
「キュリス?」
「あ。違う違う。スカラ、俺。キュリスだけど。姿はね。でも中身は違うから」
「ならキュリスとフェクトが入れ替わった?」
「そういうことになる」
「あり得ない話ではないが、信じがたい。それよりもフェクトが何故この街に? 因みに私はとある依頼人から言われているだけだ。一時間ごとに天候を変えろ、とな」
「まぁスカラにしたらそんなに難しくないことだよな。すこし制御が効くか効かないかの違いだけで」
「そうだ」
「その依頼人って?」
「いえない」
「あららー。スカラ、口堅いもんね」
「否定はしない」
どうするかな。スカラは一気に晴天の状態から豪雨に変えることができる。もしも雨や雪などという天候に変われば自分が劣勢に立たされるのは明白。ならば。
「なぁスカラ。協力しないか」
「はぁ?」
その召喚獣は擬人化をしたまま。
因みに言えば擬人化というのは召喚獣だが人間の形をする。それを擬人化、という。
擬人化をしたままのスカラは12歳ぐらいの少女だ。だから。
「協力。実はさ、俺を召喚した奴が殺されたんだよね」
「えっ!?」
スカラは慌ててフェクトに近寄る。いくら常に冷めている態度をとっているとはいえ、他人を気遣う優しい少女なのだ。
……召喚獣だが、少女なのだ。
「スカラ。俺、消えかかってるかなぁ?」
自らを召喚したものが亡くなれば召喚された召喚獣は自然消滅する。
ある程度、現世界にはとどまれるがそれも時間の問題。
どの道、新たな主を見つけなければ召喚された召喚獣は消え去る運命。
召喚獣の消滅方は二通りある。
一つ目が霧のように段々と薄れ、やがて消える〈自然消滅〉。
二つ目が主、つまり召喚したものが亡くなったそのとき、突如として消えるタイプ。
よく見られるのが二つ目だ。
結局、どれだけ強い力を持っていても誓約や契約の元に生まれた力。
誓約・契約した者が居なくなればその力はなくなる。
そして召喚獣にとって力は存在に直結する。
力が無くなれば、存在もなくなる。
「なぁ。スカラ。答えてよ」
「ふぇ、フェクト」
「ん?」
「う、後ろ……!」
スカラを見るとその表情は歪んでいた。恐怖に。
スカラの言うとおりに後ろを見る。
「!」
周りに人がいた。どこをみても人、人、人。そしてフェクトとスカラにこう言い放った。
「せ、制御される側の獣のくせに……!」
「制御がなくなればただその力を振り回す化け物ッ!」
「あ……」
向けられる銃口と弓矢。とっさにスカラを庇う。降り注がれる銃弾。軌跡となる矢。弧を描く鞭。それらが全てフェクトに注がれる。フェクトの表情は苦痛に歪む。
「まだ、まだ生きている……まだ攻撃体制を解くな!」
フェクトはスカラに言った。
「逃げて」
「い、嫌だ!」
「ダメ。逃げて。俺、キレちゃいそうだもん」
弱弱しく笑う。
その表情には余裕がないことを裏付けていて。そして同じ召喚獣のスカラにはその余裕のなさは命の問題じゃない。
「わ、分かった!」
スカラは逃げた。フェクトに向けられていた攻撃がスカラとフェクトに別れる。
それでもスカラは逃げ続けた。服が破けて、途中転びそうになったけど逃げ続けた。
「これで、いい。俺はもう持たないし、ね」
命の問題ではない。もっとフェクトタクティスという存在の大きさを示す問題だ。
「これで……本当の俺に戻れる」
ゆっくりと立ち上がる。
甘い人間。本当に俺を殺そうとするならばもっと容赦ない攻撃を続ければいいものを。それをやらなかったお前たちが悪い。
そして、言ってはならない言葉をお前たちは言った。
召喚獣とは人間には成せぬ力を持ち、人間には成せぬことを成す存在の事である。
だがその力は制御なしであれば、国の軍隊など凌駕する。
そんな召喚獣の中でも攻撃力だけでは一番のフェクトが本来のフェクトになれば。
「スカラは逃げたな」
手を組み合わせる。祈りを捧げる。
自分が本来の自分になれるように。
スカラは後ろで大きな気配が動くことを察知した。
それはスカラが思っていた事。
人間たちは怒らせてはいけない者を怒らせた。決して怒らせてはいけない者を。
ふと。空を見上げる。
目を見張った。何もなかった。
空なんかない。あるのは単なる空虚。
単純な空虚のみがそこに存在していた。
それはフェクトが空をも飲み込む勢いで己を己として完成しつつある証拠だった。
空を見上げると、何もなかった。
空虚があって、穴があって。
私はそこに吸い込まれるんだ。
後書き
作者:フェクト |
投稿日:2009/12/25 20:47 更新日:2009/12/25 20:47 『炎に従う〈はずの〉召喚獣』の著作権は、すべて作者 フェクト様に属します。 |
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