作品ID:102
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炎に従う〈はずの〉召喚獣
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
人を信じる覚悟。それはどんな覚悟よりもつらい
前の話 | 目次 | 次の話 |
フェクトタクティスがオーバーヒートしたということはすぐに他の召喚獣の耳にも入った。
色々な種族の召喚獣たちがひしめくその場所は真新しい傷がついている。
「もしかしたら、フェクトは雨とか、水とかに弱いのかもしれない」
水を媒体として生まれたキュリスがスカラに質問する。
「……でも今のフェクトに勝るエネルギーは私たちにはないし」
召喚獣は万能ではない。その力も無尽蔵ではない。不必要にエネルギーを消費してしまえばフェクトのようになる。
「でもフェクト、つらそう」
スカラは今言った己の発言を翻すような言葉をつくった。
フェクトに真正面から勝負して勝てる、なんてそんなことは思っていない。誰も。
だが、そんなことを思っている召喚獣が一匹だけ居た。
「ならフェクトを助ければいい。その後で全て解決すればいい。今優先すべきなのは何? フェクトを見捨ててその答えを探す事? そうなったらフェクトは居なくなっちゃう。それに居なくなるまでフェクトにつらい思いさせるの? それこそ「死」なんじゃないの? フェクトを助けたいんでしょ? なら助ければいい。ただこれは私個人の意見。全ての判断はあなた自身が決める。あなた達が何をしようが、それはあなた達が決めたこと。私は何も言わない。ただ、私ができることはこの場で発言する事だけ」
「オーティス」
「そう。キュリス。貴女が今、私の名を呼んだように。それは貴女が決めたことだから」
「オーティスっていう名を呼んだみたいに、全て私で決めるの?」
「そう。貴女の行動は貴女のもの」
「……じゃあさ。オーティスはどっちの見方でもないの? 傍観者なの?」
「いいえ。でも半分あたり。私はどっちの見方からも答えを下した。けれど傍観者になるつもりもない」
それっきり「オーティス」は口を閉ざした。
稀に召喚獣の中から変異種と呼ばれるものが出現する。変異種は天然から生まれた召喚獣よりもその力の制御が難しくなる。
だから変異種がキュリスたちのような天然の召喚獣と行動を共にする事はあり得ない。
でもそんなあり得ない、というのを覆してしまっているのが。
オーティスタクティス。
動物の変異種召喚獣。
元は動物だったという。それに死にかけの召喚獣を組み合わせた変異種。
「スカラ。この晴天の状況を豪雨に変えて、どれぐらい保てる?」
「キュリスの手助けがあれば多分……4時間は保つ。だけど私個人だと2時間」
「そっか。でも大丈夫だと思う。とにかく今のフェクトと闘うっていう考えじゃダメだから。まず、フェクトの力を削り削った後で一斉射撃が一番、いいと思うから」
「じゃあ私はその時間、どれだけフェクトの攻撃力を削れるか、ってこと?」
「そういうこと。大丈夫?」
「オーケー。ただ晴天からだから、本当に2時間保つかどうか」
「ならフェクトに範囲を絞って、フェクトだけに雨を降らす、っていうのは?」
キュリスの提案にスカラが乗る。勿論答えはオーケー。
「えーと。オーティスは」
「私はフェクト自身を止めてみる。その間キュリス。お前がフェクトを説得しろ」
「分かった。やってみる」
「まぁ、私のエネルギーとフェクトのエネルギーがぶつかり、あっちこっちにエネルギーが飛散するとは思うがそれは何とかしてくれ。其処まで手が回るほど器用じゃない」
そういい終えるとオーティスは擬人化を解き、本来の姿へと戻る。
神から貰った名はオーティス。その本来の姿が其処にある。
大きな風も何もかも吹き飛ばし、切り裂くような翼のような物体。彫られた文字はオーティス。otis。ゆるやかなラインを実現した体躯には幾多の戦場を駆け抜けてきた証の傷。色々な傷。
上は長袖で分からないがスカートから伸びる足は日焼けしていた。またその足に履いたスニーカーは彼女の雰囲気を見事なまでにぶち壊していた。
彼女を纏う雰囲気をたとえるならば。
「荘厳」でもない。「豪奢」でもない。
ただそこにある、当たり前のような「静けさ」。
彼女の存在を雰囲気を表すのならばその言葉が一番、似合っているだろう。
「キュリス。スカラ。早くしないとフェクトが気づいてしまう」
オーティスに見とれていたキュリスたちは慌てて己も擬人化を解く。
神から貰った名はキュリス。その本来の姿が此処にあって。
水に護られたようで水を従えている。彼女の周りはオーティスとは違う「静けさ」があった。
ふわふわのラインを保ったフリルがついたミニスカートの上から薄い灰色のベルトが見える。
その周りには湖や川といった狭いフィールドを嫌ったかのように集まった水の泡たち。
神から貰った名、と聞かれればスカラ、と答えるのが一番だろう。
その姿は常にサポートに徹しようとする気持ちとそれをあらわしたかのように手にもっているのは十字架。
十字架は治癒の目的やそれらに使われる。だが本当のところは違う。
十字架はどんな武器よりも、何よりも強い。
十字架を背負ったものとしての覚悟があるのかスカラの目にはこれからフェクトを苦しませるという躊躇とそれ以上にこれ以上フェクトやキュリス、オーティスといった面々を苦しませたくないという輝きを持っていた。
神から貰った名。フェクト。
炎から生まれ、炎の中で散っていく事を定められた彼はどんな召喚獣よりもつらい覚悟を抱いた。
人を信じる覚悟。それを抱いた彼には今はもう大切な人など居ない。
いや現実には居る。それを認めたくないだけで。その失ったときの消失感をもう味わいたくないだけで。
本当は現実から目を逸らし続けているのは自分なのかもしれない。
色々な種族の召喚獣たちがひしめくその場所は真新しい傷がついている。
「もしかしたら、フェクトは雨とか、水とかに弱いのかもしれない」
水を媒体として生まれたキュリスがスカラに質問する。
「……でも今のフェクトに勝るエネルギーは私たちにはないし」
召喚獣は万能ではない。その力も無尽蔵ではない。不必要にエネルギーを消費してしまえばフェクトのようになる。
「でもフェクト、つらそう」
スカラは今言った己の発言を翻すような言葉をつくった。
フェクトに真正面から勝負して勝てる、なんてそんなことは思っていない。誰も。
だが、そんなことを思っている召喚獣が一匹だけ居た。
「ならフェクトを助ければいい。その後で全て解決すればいい。今優先すべきなのは何? フェクトを見捨ててその答えを探す事? そうなったらフェクトは居なくなっちゃう。それに居なくなるまでフェクトにつらい思いさせるの? それこそ「死」なんじゃないの? フェクトを助けたいんでしょ? なら助ければいい。ただこれは私個人の意見。全ての判断はあなた自身が決める。あなた達が何をしようが、それはあなた達が決めたこと。私は何も言わない。ただ、私ができることはこの場で発言する事だけ」
「オーティス」
「そう。キュリス。貴女が今、私の名を呼んだように。それは貴女が決めたことだから」
「オーティスっていう名を呼んだみたいに、全て私で決めるの?」
「そう。貴女の行動は貴女のもの」
「……じゃあさ。オーティスはどっちの見方でもないの? 傍観者なの?」
「いいえ。でも半分あたり。私はどっちの見方からも答えを下した。けれど傍観者になるつもりもない」
それっきり「オーティス」は口を閉ざした。
稀に召喚獣の中から変異種と呼ばれるものが出現する。変異種は天然から生まれた召喚獣よりもその力の制御が難しくなる。
だから変異種がキュリスたちのような天然の召喚獣と行動を共にする事はあり得ない。
でもそんなあり得ない、というのを覆してしまっているのが。
オーティスタクティス。
動物の変異種召喚獣。
元は動物だったという。それに死にかけの召喚獣を組み合わせた変異種。
「スカラ。この晴天の状況を豪雨に変えて、どれぐらい保てる?」
「キュリスの手助けがあれば多分……4時間は保つ。だけど私個人だと2時間」
「そっか。でも大丈夫だと思う。とにかく今のフェクトと闘うっていう考えじゃダメだから。まず、フェクトの力を削り削った後で一斉射撃が一番、いいと思うから」
「じゃあ私はその時間、どれだけフェクトの攻撃力を削れるか、ってこと?」
「そういうこと。大丈夫?」
「オーケー。ただ晴天からだから、本当に2時間保つかどうか」
「ならフェクトに範囲を絞って、フェクトだけに雨を降らす、っていうのは?」
キュリスの提案にスカラが乗る。勿論答えはオーケー。
「えーと。オーティスは」
「私はフェクト自身を止めてみる。その間キュリス。お前がフェクトを説得しろ」
「分かった。やってみる」
「まぁ、私のエネルギーとフェクトのエネルギーがぶつかり、あっちこっちにエネルギーが飛散するとは思うがそれは何とかしてくれ。其処まで手が回るほど器用じゃない」
そういい終えるとオーティスは擬人化を解き、本来の姿へと戻る。
神から貰った名はオーティス。その本来の姿が其処にある。
大きな風も何もかも吹き飛ばし、切り裂くような翼のような物体。彫られた文字はオーティス。otis。ゆるやかなラインを実現した体躯には幾多の戦場を駆け抜けてきた証の傷。色々な傷。
上は長袖で分からないがスカートから伸びる足は日焼けしていた。またその足に履いたスニーカーは彼女の雰囲気を見事なまでにぶち壊していた。
彼女を纏う雰囲気をたとえるならば。
「荘厳」でもない。「豪奢」でもない。
ただそこにある、当たり前のような「静けさ」。
彼女の存在を雰囲気を表すのならばその言葉が一番、似合っているだろう。
「キュリス。スカラ。早くしないとフェクトが気づいてしまう」
オーティスに見とれていたキュリスたちは慌てて己も擬人化を解く。
神から貰った名はキュリス。その本来の姿が此処にあって。
水に護られたようで水を従えている。彼女の周りはオーティスとは違う「静けさ」があった。
ふわふわのラインを保ったフリルがついたミニスカートの上から薄い灰色のベルトが見える。
その周りには湖や川といった狭いフィールドを嫌ったかのように集まった水の泡たち。
神から貰った名、と聞かれればスカラ、と答えるのが一番だろう。
その姿は常にサポートに徹しようとする気持ちとそれをあらわしたかのように手にもっているのは十字架。
十字架は治癒の目的やそれらに使われる。だが本当のところは違う。
十字架はどんな武器よりも、何よりも強い。
十字架を背負ったものとしての覚悟があるのかスカラの目にはこれからフェクトを苦しませるという躊躇とそれ以上にこれ以上フェクトやキュリス、オーティスといった面々を苦しませたくないという輝きを持っていた。
神から貰った名。フェクト。
炎から生まれ、炎の中で散っていく事を定められた彼はどんな召喚獣よりもつらい覚悟を抱いた。
人を信じる覚悟。それを抱いた彼には今はもう大切な人など居ない。
いや現実には居る。それを認めたくないだけで。その失ったときの消失感をもう味わいたくないだけで。
本当は現実から目を逸らし続けているのは自分なのかもしれない。
後書き
作者:フェクト |
投稿日:2009/12/29 18:12 更新日:2009/12/31 09:41 『炎に従う〈はずの〉召喚獣』の著作権は、すべて作者 フェクト様に属します。 |
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