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桜の鬼
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
犬
前の話 | 目次 | 次の話 |
「なぁ、散歩したい」
「散歩?」
「ん。最近この桜の周辺から動いてないからな……歩きたいんだ」
少し考える桜火。
「…………まぁいいか…………この森は『根』の結界内だし…………」
なにやら呟くと咲をじーっと見つめ、頷く。
「わかった。この近くなら……」
「本当か!」
「ああ。でも、山犬とかいるから俺からあまり離れるなよ」
「……うん」
桜の木の枝の上で足をぶらぶらさせていた咲はひょいと飛び降り、桜火の隣に近寄る。
「じゃ、行くかー」
「待て」
「え?」
「お前、その足で行くつもりか?」
言われて自分の足を見下ろす咲。
……裸足だった。
「あ。山犬に追われてた時にどっかで落としてきたんだな……。どうしよう」
「これを履け。桜から作った」
「へー」
いそいそと履いてみる咲。そして驚く。
「おー。何か凄く履き心地が良い!」
「まぁな」
「凄いなー良いなー。ありがとう桜火!」
「いや」
そして二人は森へと歩いていった。
「涼しいな」
「年中こうだ」
「……羨ましい」
――オン、オン!
「え?」
「どうした」
「……何か声が」
「声?」
目を細めて辺りの気配を伺う桜火。
「……犬……人?」
「人?」
「誰だ……」
咲は初めて桜火が『鬼』なのだと実感した。その様子は何もしていないのに何か人を圧倒するような気配を纏っている。恐ろしいとは思わないが、新しい一面を知ったようで嬉しかった。
「帰るぞ」
「あ、ああ」
「まったく……ここ最近人が良く入り込んでくる……伝説はどうなったんだいったい」
「あーつかぬ事を聞くが」
「何?」
桜の元に戻りながら先は桜火に聞いてみた。
「お前の言う最近ってどのくらいの単位だ?」
「え、お前が来た時から」
「全然最近じゃないだろうが……」
「そうか?」
「そう」
首を傾げてしまう桜火。
桜に辿り着いた時、咲が「んっ?」と声を出した。訝しんで桜火が後ろを見ると、咲が消えていた。
「咲?」
「二度も同じ手に引っかかってくれるとはな……鬼も落ちたものだ」
「…………あの時の男か。山犬を使って気配を消したか」
「そうだ。気づかなかったようで重畳だなぁ」
「犬と人、切っては切れない縁の持ち主――か」
「……気づいていたのか」
「当然だ。この森は、山は、俺の守護の地。その程度気づかぬようでどうやって桜の鬼が伝説となろうか」
「くは、くははは! それもそうだなぁ。伝説は衰えていないということか!」
「どうやって衰えろというのだ」
「ならば、何故私の娘をむざむざ取られるような真似をしたのやらなぁ」
「……そろそろ戻した方が良いかと思ったのでな」
いつの間にやら咲のいた村へと戻っていた。
「桜、火?」
「確かに返した。好きにするといい」
「くくく……確かに鬼よな……」
桜火は武器を手に持つ村人たちと、咲を背にして山へ去っていった。
「散歩?」
「ん。最近この桜の周辺から動いてないからな……歩きたいんだ」
少し考える桜火。
「…………まぁいいか…………この森は『根』の結界内だし…………」
なにやら呟くと咲をじーっと見つめ、頷く。
「わかった。この近くなら……」
「本当か!」
「ああ。でも、山犬とかいるから俺からあまり離れるなよ」
「……うん」
桜の木の枝の上で足をぶらぶらさせていた咲はひょいと飛び降り、桜火の隣に近寄る。
「じゃ、行くかー」
「待て」
「え?」
「お前、その足で行くつもりか?」
言われて自分の足を見下ろす咲。
……裸足だった。
「あ。山犬に追われてた時にどっかで落としてきたんだな……。どうしよう」
「これを履け。桜から作った」
「へー」
いそいそと履いてみる咲。そして驚く。
「おー。何か凄く履き心地が良い!」
「まぁな」
「凄いなー良いなー。ありがとう桜火!」
「いや」
そして二人は森へと歩いていった。
「涼しいな」
「年中こうだ」
「……羨ましい」
――オン、オン!
「え?」
「どうした」
「……何か声が」
「声?」
目を細めて辺りの気配を伺う桜火。
「……犬……人?」
「人?」
「誰だ……」
咲は初めて桜火が『鬼』なのだと実感した。その様子は何もしていないのに何か人を圧倒するような気配を纏っている。恐ろしいとは思わないが、新しい一面を知ったようで嬉しかった。
「帰るぞ」
「あ、ああ」
「まったく……ここ最近人が良く入り込んでくる……伝説はどうなったんだいったい」
「あーつかぬ事を聞くが」
「何?」
桜の元に戻りながら先は桜火に聞いてみた。
「お前の言う最近ってどのくらいの単位だ?」
「え、お前が来た時から」
「全然最近じゃないだろうが……」
「そうか?」
「そう」
首を傾げてしまう桜火。
桜に辿り着いた時、咲が「んっ?」と声を出した。訝しんで桜火が後ろを見ると、咲が消えていた。
「咲?」
「二度も同じ手に引っかかってくれるとはな……鬼も落ちたものだ」
「…………あの時の男か。山犬を使って気配を消したか」
「そうだ。気づかなかったようで重畳だなぁ」
「犬と人、切っては切れない縁の持ち主――か」
「……気づいていたのか」
「当然だ。この森は、山は、俺の守護の地。その程度気づかぬようでどうやって桜の鬼が伝説となろうか」
「くは、くははは! それもそうだなぁ。伝説は衰えていないということか!」
「どうやって衰えろというのだ」
「ならば、何故私の娘をむざむざ取られるような真似をしたのやらなぁ」
「……そろそろ戻した方が良いかと思ったのでな」
いつの間にやら咲のいた村へと戻っていた。
「桜、火?」
「確かに返した。好きにするといい」
「くくく……確かに鬼よな……」
桜火は武器を手に持つ村人たちと、咲を背にして山へ去っていった。
後書き
作者:久遠 |
投稿日:2010/01/21 17:12 更新日:2010/01/21 17:12 『桜の鬼』の著作権は、すべて作者 久遠様に属します。 |
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