作品ID:1287
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(64)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(478)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第一章「ベッカルト村」:第1話「森、遭遇」
前の話 | 目次 | 次の話 |
第1話「森、遭遇」
俺は周りを見回し、どこをどう落ちてきたんだと不思議に思っていた。
湿った草や葉が放つ濃密な森の香り、生命力が直接肌から入ってくるような気さえする強い森の力を感じながら、気を失う直前の状況を思い出そうとしていた。
だが、車を出た後の記憶があやふやで何か怪奇現象のようなものを見たような気がしたが、それ以上のことは思い出せない。
俺は状況を確認するため、再度、自分の周りを見渡した。
起伏はあるが、崖などない森の中。
自分が落ちてきたと思しき跡は全く見当たらない。
俺は周りを見るたびにどこかおかしい、何かが違うと思い始めていた。
森の木を見てみると杉やヒノキといった針葉樹やケヤキなどの雑木林ではなく、大きなブナか樫のような木が多い。
なんとなく自分の知っている日本の森林という感じがしない。
強いて言うなら、TVでしか見たことないが、白神山地のブナ林が近い感じがする。
そこまで考えたが、来るときに森の状況をしっかりと見ていたわけでもないし、じっとしていても仕方がないので携帯が繋がりそうな場所がないか、動いてみることにした。
確か携帯の電波は、高いところなら意外と遠くまで飛ぶはずだ。
登山者が高山の尾根から携帯で救助を呼んだという話もある。とりあえず、高いところを目指してみた。
三十分くらい上っている思える方向に歩いてみたが、一向に風景が変わらない。
車の音もしないし、人が入った形跡すら見当たらない。
革靴とビジネススーツでのトレッキングは正直きついが、少なくとも一キロメートルくらいは進んでいるはずだ。
昨日行った工場は山間地の谷沿いにあったから、少なくとも山か川にはぶつかるはずだが、ただ森が続いているだけのこんな地形ではなかったはずだ。
(ここはどこなんだ? 日本にこんな広い森はそう多くないはずだが……)
なにかキツネにつままれたような、おかしな感覚で森を進んでいく。
しばらくすると喉が渇き、腹が減り始めてきた。
そう言えば、昨日の昼から何も食べていない。
車からちょっと離れるだけのつもりだったので、ペットボトルも食料も当然持っていない。
俺は方針を転換して、川か湧き水が出ているところを探すことにした。
空腹については、サバイバル経験もない理系学生だったので、森の中で食料を調達することは正直期待していない。
逆に変なものを食べて動けなくなる方がよっぽど怖い。
水を探すこと二十分。
ようやくちょろちょろと流れるだけの小さな水の流れを発見した。
水の流れを見てみると、湧水地が近いのか、かなりきれいな水だ。
手を漬けると雪解け水のようなとても冷たい水で、両手ですくって飲んでみた。
「うまい」
思わず声に出してしまうほどうまい。
十分に水を飲み、ここで少し休憩し、この後の方針を考えてみることにした。
この小川に沿って下っていけば、大きな川に出るだろう。
川に出れば、釣り人に出会えるかもしれない。確か渓流釣りの釣り人が竿を出していたの見た気がする。
それに川沿いを走る道に出る可能性もあるし、少なくとも水に困ることはない。
(出来る限り小川に沿って、歩くことにしよう)
俺は携帯を使うことをとりあえず諦め、小川に沿って下っていくことに決めた。
歩き始めてから数十分。いつまで経っても水量が増すこともなく、風景も変わらない。
状況を変えるために小川を沿って下るのをやめるか、悩んでみるが、対案が思いつかないため、そのまま歩き続けている。
結局そのまま五時間近く歩いているが、一向に森を出る雰囲気もなく、川に出ることもなかった。
そして、時刻も既に正午を越え、午後2時を過ぎていた。森の木を通して見る太陽は、少し西に傾いてきている。
歩き疲れたため、休憩するが、一向に人の気配も大きな川に出る気配もない。もちろん、携帯も圏外のままだ。
この先どうしようかと考えていたら、突然、後ろからガサっという物音に驚かされた。
俺がビクッとして振り返ってみると、見知らぬ動物、大きさは中型犬くらいの耳が長いウサギのような生き物がこちらを見つめている。
ただし、ウサギのような可愛げは全くなく、目つきが異様に鋭い。
極めつけは、額に二〇cmくらいの鋭い角が生えている。
(なんだこいつは?)
疑問を持ちつつも本能が警鐘を鳴らしている。
(こっちに来るな!)
そう願うが、仮称ツノウサギは少しずつにじり寄ってくる。
気圧された俺も少しずつ後ろに下がっていくが、張り出した木の根に躓き、尻もちをついてしまった。
その瞬間、ツノウサギは俺に向かって猛然と突撃を開始してきた。
俺の方はというと、完全にパニックになり、立ち上がることも逃げだすこともできなかった。ただ、偶然右手にあたった木の枝をつかんでいた。
木の枝という低スペックの武器とはいえ、素手よりましだ。これで少しだけ落ち着くが、奴は既に目の前まで来ている。
(あの角で刺されたら怪我では済まないよな。あのウサギの歯ってよく見ると肉食系の歯だよな)
愚にもつかないことを頭は考えていた。だが、生存本能がそうさせたのか、不思議なことに体が勝手に反応し、気が付くと木の枝を奴に向かって突き出していた。
ツノウサギの方も目の前に棒が出てくるとは思わず、角の軌道が逸れ、俺の左ほほをかすめるだけで一旦通り過ぎていった。
俺のほほから血が流れていた。
俺は無意識に左手をほほに当て、血が流れていることに気付いた。そしてこの状況の理不尽さに一気に逆上し、諸悪の根源がツノウサギであるかのように感じていた。
俺は傷を無視して立ち上がり、理不尽の象徴を睨みつけた。
そして「やってやろうじゃねぇか!」と逆上し、完全に我を失ってしまった。
俺は大声で叫び声を上げながら、奴に向かって突っ込んでいく。
ツノウサギもまさか突っ込んでくるとは思わなかったのだろう。
奴の目が少し丸くなる。
逆上していた俺は、ちょっとだけウサギっぽい顔になるじゃねぇかなどと一瞬思うが、一度走り出した足は止まらない。
だが、その考えが無駄に熱くなった俺の心をクールダウンさせ、急激に冷静になっていく。
止まるわけにもいかない俺は、この後どうしようかとこの状況を収拾する方法を走りながら考えていた。
そんな時にいい考えが思いつくはずもない。
俺の突撃にツノウサギがパニックになってくれれば、そのまま走って逃げようかと考えたが、ここまで来たら、もうどうすることもできないと腹を括り、“向かってきたらそれはそれ。どうとでもなれ!”と半ばやけになって、そのまま突っ込んでいった
俺が奴まであと少しという距離に来たとき、俺の右側を“ヒュッ!“という鋭い風切り音が耳を突いた後、通り過ぎていった。
目の端に何かが見えたと思った瞬間、ツノウサギの咽喉に矢が突き刺さり、奴は“キュッ!”という鋭い悲鳴を上げ、倒れていった。
その光景を見てから、数瞬後、ようやく俺は自分が助かったことに気付く。
(ふうー。なんとか助かったみたいだ)
そして、どう見ても地球の生き物に見えないツノウサギを見ながら、
(どう見ても地球の動物じゃないよな。昨日の森と今日の森は違う植生だし……)
俺の頭の中に“別の世界”という言葉がちらつくが、今時、弓で動物を殺すなんて珍しいと現実逃避をしながら、矢が飛んできた方を見てみた。
そこには二メートル近い身長の髭面の大男が立っていた。
服装は映画に出てくる中世ヨーロッパの狩人そのもので、つば付きの帽子に革のジャケットとズボン、大型の弓を持ち、腰には矢筒と無骨な剣、足元には今日の成果であろう獣を何匹か置いてあった。
相手がどのようなことを考えているかなど無視して、俺は日本の大学生の本能として「どうも」と軽薄に頭を下げてしまう。
そこでこれではいけないと気付き、きちんと礼を言うべくその狩人氏にもう一度頭を下げながら、「危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」と日本語で話しかけてみた。
顔は髭が濃くて何人なのかは判らないが、少なくとも日本人ではないような気がする。
向こうは理解しているのかいないのか、何も言わずこちらに向かってきた。
「××××??」
俺は初めて聞くその言葉に何語なんだと首を傾げていた。
聞いた感じ英語ではない。フランス語でもないと思う。
まあ、俺の語学力は英語でも中学生並み、フランス語に至っては雰囲気程度しかわからないから、訛りの強い英語でも聞き取れない可能性はある。
もう一度、狩人氏が「××××○○△△??」と何か言うが、やはり全く判らない。
よく見ると狩人氏は二十?三十歳くらいのヨーロッパ系っぽい感じだったので、こちらも拙い英語も交えて話しかけてみるが、やはり意思の疎通ができない。
危険が去ってほっとしたのか、腹が空いていることと疲労がたまっていることを急に思い出し、その場に座り込んでしまった。
狩人氏が「どうしたのだ」という感じで寄ってきたので、なんとかボディランゲージで空腹と疲労を伝えた。
狩人氏は自分を指差し、「GIL・・・ギル・・・」と言っている。ギルと言うのか?と思い、こちらも自分を指し、「タイガ、タイガ」と言ってみる。
ギルは理解できたのか、俺のことをタイガと呼んでくれたので、食べ物をボディランゲージでねだってみた。
ギルは腰のポーチから干し肉を一片、手渡してくれた。
お礼が言えないので、何度も頭を下げて感謝の意を伝え、干し肉をかじりだす。
干し肉はキツイ塩味が付いるだけだが、二十四時間以上何も食べていない俺には思いほかうまかった。
小川の水を飲んでいると、ギルがツノウサギを手際よく処理していた。
その光景を見ていたが、腹を裂き内臓を取り出してから、丁寧に皮を剥いでいるところはちょっとエグい。つい目をそらしてしまう。
十分くらいで作業は終わり、ギルが、「ついてこい」というジェスチャーをするので、黙って付いていくことにした。
俺は周りを見回し、どこをどう落ちてきたんだと不思議に思っていた。
湿った草や葉が放つ濃密な森の香り、生命力が直接肌から入ってくるような気さえする強い森の力を感じながら、気を失う直前の状況を思い出そうとしていた。
だが、車を出た後の記憶があやふやで何か怪奇現象のようなものを見たような気がしたが、それ以上のことは思い出せない。
俺は状況を確認するため、再度、自分の周りを見渡した。
起伏はあるが、崖などない森の中。
自分が落ちてきたと思しき跡は全く見当たらない。
俺は周りを見るたびにどこかおかしい、何かが違うと思い始めていた。
森の木を見てみると杉やヒノキといった針葉樹やケヤキなどの雑木林ではなく、大きなブナか樫のような木が多い。
なんとなく自分の知っている日本の森林という感じがしない。
強いて言うなら、TVでしか見たことないが、白神山地のブナ林が近い感じがする。
そこまで考えたが、来るときに森の状況をしっかりと見ていたわけでもないし、じっとしていても仕方がないので携帯が繋がりそうな場所がないか、動いてみることにした。
確か携帯の電波は、高いところなら意外と遠くまで飛ぶはずだ。
登山者が高山の尾根から携帯で救助を呼んだという話もある。とりあえず、高いところを目指してみた。
三十分くらい上っている思える方向に歩いてみたが、一向に風景が変わらない。
車の音もしないし、人が入った形跡すら見当たらない。
革靴とビジネススーツでのトレッキングは正直きついが、少なくとも一キロメートルくらいは進んでいるはずだ。
昨日行った工場は山間地の谷沿いにあったから、少なくとも山か川にはぶつかるはずだが、ただ森が続いているだけのこんな地形ではなかったはずだ。
(ここはどこなんだ? 日本にこんな広い森はそう多くないはずだが……)
なにかキツネにつままれたような、おかしな感覚で森を進んでいく。
しばらくすると喉が渇き、腹が減り始めてきた。
そう言えば、昨日の昼から何も食べていない。
車からちょっと離れるだけのつもりだったので、ペットボトルも食料も当然持っていない。
俺は方針を転換して、川か湧き水が出ているところを探すことにした。
空腹については、サバイバル経験もない理系学生だったので、森の中で食料を調達することは正直期待していない。
逆に変なものを食べて動けなくなる方がよっぽど怖い。
水を探すこと二十分。
ようやくちょろちょろと流れるだけの小さな水の流れを発見した。
水の流れを見てみると、湧水地が近いのか、かなりきれいな水だ。
手を漬けると雪解け水のようなとても冷たい水で、両手ですくって飲んでみた。
「うまい」
思わず声に出してしまうほどうまい。
十分に水を飲み、ここで少し休憩し、この後の方針を考えてみることにした。
この小川に沿って下っていけば、大きな川に出るだろう。
川に出れば、釣り人に出会えるかもしれない。確か渓流釣りの釣り人が竿を出していたの見た気がする。
それに川沿いを走る道に出る可能性もあるし、少なくとも水に困ることはない。
(出来る限り小川に沿って、歩くことにしよう)
俺は携帯を使うことをとりあえず諦め、小川に沿って下っていくことに決めた。
歩き始めてから数十分。いつまで経っても水量が増すこともなく、風景も変わらない。
状況を変えるために小川を沿って下るのをやめるか、悩んでみるが、対案が思いつかないため、そのまま歩き続けている。
結局そのまま五時間近く歩いているが、一向に森を出る雰囲気もなく、川に出ることもなかった。
そして、時刻も既に正午を越え、午後2時を過ぎていた。森の木を通して見る太陽は、少し西に傾いてきている。
歩き疲れたため、休憩するが、一向に人の気配も大きな川に出る気配もない。もちろん、携帯も圏外のままだ。
この先どうしようかと考えていたら、突然、後ろからガサっという物音に驚かされた。
俺がビクッとして振り返ってみると、見知らぬ動物、大きさは中型犬くらいの耳が長いウサギのような生き物がこちらを見つめている。
ただし、ウサギのような可愛げは全くなく、目つきが異様に鋭い。
極めつけは、額に二〇cmくらいの鋭い角が生えている。
(なんだこいつは?)
疑問を持ちつつも本能が警鐘を鳴らしている。
(こっちに来るな!)
そう願うが、仮称ツノウサギは少しずつにじり寄ってくる。
気圧された俺も少しずつ後ろに下がっていくが、張り出した木の根に躓き、尻もちをついてしまった。
その瞬間、ツノウサギは俺に向かって猛然と突撃を開始してきた。
俺の方はというと、完全にパニックになり、立ち上がることも逃げだすこともできなかった。ただ、偶然右手にあたった木の枝をつかんでいた。
木の枝という低スペックの武器とはいえ、素手よりましだ。これで少しだけ落ち着くが、奴は既に目の前まで来ている。
(あの角で刺されたら怪我では済まないよな。あのウサギの歯ってよく見ると肉食系の歯だよな)
愚にもつかないことを頭は考えていた。だが、生存本能がそうさせたのか、不思議なことに体が勝手に反応し、気が付くと木の枝を奴に向かって突き出していた。
ツノウサギの方も目の前に棒が出てくるとは思わず、角の軌道が逸れ、俺の左ほほをかすめるだけで一旦通り過ぎていった。
俺のほほから血が流れていた。
俺は無意識に左手をほほに当て、血が流れていることに気付いた。そしてこの状況の理不尽さに一気に逆上し、諸悪の根源がツノウサギであるかのように感じていた。
俺は傷を無視して立ち上がり、理不尽の象徴を睨みつけた。
そして「やってやろうじゃねぇか!」と逆上し、完全に我を失ってしまった。
俺は大声で叫び声を上げながら、奴に向かって突っ込んでいく。
ツノウサギもまさか突っ込んでくるとは思わなかったのだろう。
奴の目が少し丸くなる。
逆上していた俺は、ちょっとだけウサギっぽい顔になるじゃねぇかなどと一瞬思うが、一度走り出した足は止まらない。
だが、その考えが無駄に熱くなった俺の心をクールダウンさせ、急激に冷静になっていく。
止まるわけにもいかない俺は、この後どうしようかとこの状況を収拾する方法を走りながら考えていた。
そんな時にいい考えが思いつくはずもない。
俺の突撃にツノウサギがパニックになってくれれば、そのまま走って逃げようかと考えたが、ここまで来たら、もうどうすることもできないと腹を括り、“向かってきたらそれはそれ。どうとでもなれ!”と半ばやけになって、そのまま突っ込んでいった
俺が奴まであと少しという距離に来たとき、俺の右側を“ヒュッ!“という鋭い風切り音が耳を突いた後、通り過ぎていった。
目の端に何かが見えたと思った瞬間、ツノウサギの咽喉に矢が突き刺さり、奴は“キュッ!”という鋭い悲鳴を上げ、倒れていった。
その光景を見てから、数瞬後、ようやく俺は自分が助かったことに気付く。
(ふうー。なんとか助かったみたいだ)
そして、どう見ても地球の生き物に見えないツノウサギを見ながら、
(どう見ても地球の動物じゃないよな。昨日の森と今日の森は違う植生だし……)
俺の頭の中に“別の世界”という言葉がちらつくが、今時、弓で動物を殺すなんて珍しいと現実逃避をしながら、矢が飛んできた方を見てみた。
そこには二メートル近い身長の髭面の大男が立っていた。
服装は映画に出てくる中世ヨーロッパの狩人そのもので、つば付きの帽子に革のジャケットとズボン、大型の弓を持ち、腰には矢筒と無骨な剣、足元には今日の成果であろう獣を何匹か置いてあった。
相手がどのようなことを考えているかなど無視して、俺は日本の大学生の本能として「どうも」と軽薄に頭を下げてしまう。
そこでこれではいけないと気付き、きちんと礼を言うべくその狩人氏にもう一度頭を下げながら、「危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」と日本語で話しかけてみた。
顔は髭が濃くて何人なのかは判らないが、少なくとも日本人ではないような気がする。
向こうは理解しているのかいないのか、何も言わずこちらに向かってきた。
「××××??」
俺は初めて聞くその言葉に何語なんだと首を傾げていた。
聞いた感じ英語ではない。フランス語でもないと思う。
まあ、俺の語学力は英語でも中学生並み、フランス語に至っては雰囲気程度しかわからないから、訛りの強い英語でも聞き取れない可能性はある。
もう一度、狩人氏が「××××○○△△??」と何か言うが、やはり全く判らない。
よく見ると狩人氏は二十?三十歳くらいのヨーロッパ系っぽい感じだったので、こちらも拙い英語も交えて話しかけてみるが、やはり意思の疎通ができない。
危険が去ってほっとしたのか、腹が空いていることと疲労がたまっていることを急に思い出し、その場に座り込んでしまった。
狩人氏が「どうしたのだ」という感じで寄ってきたので、なんとかボディランゲージで空腹と疲労を伝えた。
狩人氏は自分を指差し、「GIL・・・ギル・・・」と言っている。ギルと言うのか?と思い、こちらも自分を指し、「タイガ、タイガ」と言ってみる。
ギルは理解できたのか、俺のことをタイガと呼んでくれたので、食べ物をボディランゲージでねだってみた。
ギルは腰のポーチから干し肉を一片、手渡してくれた。
お礼が言えないので、何度も頭を下げて感謝の意を伝え、干し肉をかじりだす。
干し肉はキツイ塩味が付いるだけだが、二十四時間以上何も食べていない俺には思いほかうまかった。
小川の水を飲んでいると、ギルがツノウサギを手際よく処理していた。
その光景を見ていたが、腹を裂き内臓を取り出してから、丁寧に皮を剥いでいるところはちょっとエグい。つい目をそらしてしまう。
十分くらいで作業は終わり、ギルが、「ついてこい」というジェスチャーをするので、黙って付いていくことにした。
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2012/12/04 21:24 更新日:2012/12/06 08:56 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
前の話 | 目次 | 次の話 |
読了ボタン