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「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第一章「ベッカルト村」:第7話「武器」
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第7話「武器」
ギルの家に戻り、獲物の処理を行っていると、五十歳過ぎの頭の薄くなった男性がやってきた。少し不機嫌そうな顔でギルに詰め寄っていった。
「おい、ギル。お前のところに治癒師がいるって聞いたが、いつこの村にやってきたんだ」
ギルは面倒臭そうに顔を上げ、「なんだ村長か」と言った後、「もう少ししたら村長のところに行こうと思っていたんだ。ちょうど良かった」と意外にもすました顔でそう告げていた。
村長は涼しい顔のギルに対して、少しだけ声の調子を上げていく。
「何がちょうど良かっただ! よそ者がトニーんとこのベルティの治療をしたってヤネットばあさん(薬師)が騒いでたぞ。よそ者が来たんなら、真っ先に俺のところに説明こい!」
ギルは少しだけ反省したふりをし、「ああ、悪かったよ。昨日森で拾ってきたから、今日の夜にでも村長のところに行こうと思っていたんだよ」と素直に謝っている。
そして彼は俺を指差しながら、「こいつがその治癒師のタイガだ」と紹介する。
「どうも名前以外の記憶がないみたいで行くとこもないから、うちの手伝いをさせていたんだ。さっきベルティがケガをしたって話があってな、こいつが治療できるって言うんで連れて行ったんだ」
村長は俺を胡散臭げに見るが、ギルはそれを無視して
「悪いやつじゃないから、村においてやってくれ」
俺も村長に疎まれるとやばいと思い、すかさず村長に挨拶をする。
「村長さん。俺、タイガって言います。ギルに迷惑が掛かるなら出て行きますが、できれば何日か置いてもらえませんか」
「トニーのとこでもおんなじことを言われた。ベルティのことがあるから二、三日ならいいだろう」
村長は渋い顔をしながら、しぶしぶ俺の滞在を認めた。
俺は何か糸口がないかと、こっそり村長を鑑定してみた。
(どうやら腰が悪いようだな。恩を売るために治療してみるか)
「村長さん。もしかしたら腰が悪いんじゃないですか。俺なら多分直せますよ」
村長は胡散ぐさげに俺を睨みながら、「もう五年以上続いている腰痛だぞ。そんなに簡単に直るもんか」と言うが、思い直したのか、「まあ、試しにやりたいっていうんだったら、やらせてやろう。」と言ってきた。
村長の許しが出たので、俺は治療を始めることにした。
再度、鑑定でしっかり確認してみると、背骨に異常があるようだ。
(やり方は良く判らないけど、何でもいいから直してしまおう)
ギルに村長の腰を引っ張ってもらい、治癒を掛ける。
鑑定では、完全に直ったとは出ていないが、緩和したような表示になっていた。
(どうやら改善はしたようだな)
俺は「とりあえず治癒しましたが、まだ完全じゃないです」と告げ、不安げな村長に治療の具合を聞いてみた。
「立ってみて、どうですか? 痛みとか調子が悪いとかはないですか?」
村長はゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと腰を回した。
最初は怪訝そうな表情だったが、急に明るい表情になり、「ああ、ほとんど痛みがない」と大きな声で叫んでいた。
「いやあ、本当に治癒師殿だ。できれば、ずっと村に居てもらえるとありがたいですな」
相当腰痛が堪えていたのか、手のひらを返したように下手に出てくる。
やっぱり治癒師は貴重なようだ。
ギルがすかさず、村長に謝礼について突っ込みを入れている。
「村長。腰を直してもらったのに、何にも礼をしないのか」
「ああ、忘れていたよ。治癒師殿、なにか、わしにできることはないかな」
俺が何か言おうとしたら、ギルが横から、「タイガはほとんど何も持っていない。村長のところに使わなくなった道具があれば、分けてやってくれないか」とギルが助け舟を出してくれた。
村長も使わなくなったものならと条件をつけた上で了承したので、後で村長宅に行くことになった。
腰が良くなった村長は、当初の目的も忘れ、スキップしそうな勢いで帰っていった。
ギルは最初から狙いがあったのか、
「村長の家には、以前村長が使っていた両手剣があったと思う。かなり古くなっていたが、売るに売れないし、息子は両手剣を使わないから、それを貰うのがいいと思うぞ」
武器の相場など知らないが、安いはずはないと思い、「いいのか、剣なんかかなり高価なんじゃないのか」と聞くが、
「新品なら、俺の半年分の儲けじゃきかないな。中古ならそれほどでもない。それにこの村に両手剣を使うやつはいないから宝の持ち腐れだ」と言った後、「だから遠慮せず貰っておけ」と笑いながら付け加える。
俺は彼の言葉を信じ、「わかった。そうする」と答えた。
その後、彼と二人で村長の家に行き、両手剣を譲ってもらう。
最初は高価な品と言うことで村長も渋っていたが、奥さんの捻挫を治してやったら、奥さんに押し切られる形で譲ってくれた。
日本では持てなかった武器、本物の剣を初めて持った。子供の頃のヒーローものを思い出し、ちょっと感激している。
ちょっとハイテンションになりながら、両手剣を鑑定してみる。
ツーハンドソード(小)
攻撃50/60、命中45、必要STR300、レンジ5ft、
長さ4.5ft、重量4.5lb
と出ている。
長さは一四〇cmくらいでずっしりと重い。
日本刀のような美しさはないが、鈍い金属性の武器にはなんとなく迫力がある。少し錆びているため、攻撃力が落ちているようだ。どこかで研いでもらった方がよさそうだ。
必要STRが全然足りていないが、使えるのだろうか、後で練習してみようと心の中にメモを書き込んだ。。
夕方、ギルの家の前で剣の素振りを行ってみた。
やはり、必要STRが足りないのか、剣を振るたびにふらついてしまう。
(大振りをすると自分を傷つけることになるな。日本刀も慣れないと自分の足を斬るって聞いたことがある。体がぶれない突きを中心に使う方がいいかもしれない)
その夜は朝からの狩りと治癒魔法の行使で疲れが溜まっていたのか、あっという間に眠りに落ちていった。
翌朝、トニーの家に行き、ベルティの治療を行う。
そして、結果を見るため、頭の傷を見るが傷跡はほとんどない。今治療した腕の骨折も鑑定で見る限りでは完全に治っている。
俺は治癒魔法と言うものが如何に重宝されるのか実感していた。
(しかし、治癒魔法っていうのは、現代医学以上の効果だな。いざとなったらこれで食っていける)
俺が帰ろうとした時、トニーがどうしても礼がしたいと言ってきた。俺は仕方なく余っている服や道具がないか聞いてみた。
トニーが家の中を漁ってみた結果、俺の体に合う服はベルティのものしかないそうだ。
トニーが革のシャツ、革のベスト、革のズボンとナイフも一本持ってきてくれたので、ありがたく頂いておいた。
しかし、外人さんが大きいのはわかるが、中学一年と同じ十三歳の子供と体格が同じというのは少し凹む。
これで下着と靴以外はようやく現地仕様になった。
見ため的には違和感はそうないはずだ。
ギルの家に帰り、服を着替える。鑑定で現在の持ち物を確認する。
・ツーハンドソード(小)1本
・小型ナイフ 1本
・ビジネススーツ上下1セット
・カッターシャツ1着
・ネクタイ1本
・携帯電話(充電率30%)1台
・ソーラー式腕時計 1台
・メモ帳 1冊
・財布 1個
・筆記用具:シャープペンシル1本、3色ボールペン1本
・ソーラー式携帯電話充電器1台
・所持金 0G、0S、0C
着ている服は通常の装備ではないのか、アイテム欄には出てこない。
予備の服としてスーツが載っている。深く考えてもしょうがないが、どういう基準なのだろう。
ナイフが手に入ったので、髭を剃ることにした。
シェービングクリームどころか石鹸すらないため、なかなか剃れない。
何度もナイフを研ぎ直して、ようやく髭を剃るが、顎のあたりは結構血まみれになっていた。自分に治癒魔法を掛け、事なきを得た。
その夜、携帯電話のバッテリ残量が少なくなっていたので、充電器から充電しておいた。
(普段からよく電池がなくなっていたから、ソーラー式の充電器を持っていたけど、こんなところで役に立つとは思わなかった。携帯電話が役に立つとは思わないけど暇つぶしにはなるし……)
俺は今のところ携帯電話の使い道は思い付かない。精々ライトかカメラ機能ぐらいが使えそうかなと思いながら、そのまま眠りに着いた。
ギルの家に戻り、獲物の処理を行っていると、五十歳過ぎの頭の薄くなった男性がやってきた。少し不機嫌そうな顔でギルに詰め寄っていった。
「おい、ギル。お前のところに治癒師がいるって聞いたが、いつこの村にやってきたんだ」
ギルは面倒臭そうに顔を上げ、「なんだ村長か」と言った後、「もう少ししたら村長のところに行こうと思っていたんだ。ちょうど良かった」と意外にもすました顔でそう告げていた。
村長は涼しい顔のギルに対して、少しだけ声の調子を上げていく。
「何がちょうど良かっただ! よそ者がトニーんとこのベルティの治療をしたってヤネットばあさん(薬師)が騒いでたぞ。よそ者が来たんなら、真っ先に俺のところに説明こい!」
ギルは少しだけ反省したふりをし、「ああ、悪かったよ。昨日森で拾ってきたから、今日の夜にでも村長のところに行こうと思っていたんだよ」と素直に謝っている。
そして彼は俺を指差しながら、「こいつがその治癒師のタイガだ」と紹介する。
「どうも名前以外の記憶がないみたいで行くとこもないから、うちの手伝いをさせていたんだ。さっきベルティがケガをしたって話があってな、こいつが治療できるって言うんで連れて行ったんだ」
村長は俺を胡散臭げに見るが、ギルはそれを無視して
「悪いやつじゃないから、村においてやってくれ」
俺も村長に疎まれるとやばいと思い、すかさず村長に挨拶をする。
「村長さん。俺、タイガって言います。ギルに迷惑が掛かるなら出て行きますが、できれば何日か置いてもらえませんか」
「トニーのとこでもおんなじことを言われた。ベルティのことがあるから二、三日ならいいだろう」
村長は渋い顔をしながら、しぶしぶ俺の滞在を認めた。
俺は何か糸口がないかと、こっそり村長を鑑定してみた。
(どうやら腰が悪いようだな。恩を売るために治療してみるか)
「村長さん。もしかしたら腰が悪いんじゃないですか。俺なら多分直せますよ」
村長は胡散ぐさげに俺を睨みながら、「もう五年以上続いている腰痛だぞ。そんなに簡単に直るもんか」と言うが、思い直したのか、「まあ、試しにやりたいっていうんだったら、やらせてやろう。」と言ってきた。
村長の許しが出たので、俺は治療を始めることにした。
再度、鑑定でしっかり確認してみると、背骨に異常があるようだ。
(やり方は良く判らないけど、何でもいいから直してしまおう)
ギルに村長の腰を引っ張ってもらい、治癒を掛ける。
鑑定では、完全に直ったとは出ていないが、緩和したような表示になっていた。
(どうやら改善はしたようだな)
俺は「とりあえず治癒しましたが、まだ完全じゃないです」と告げ、不安げな村長に治療の具合を聞いてみた。
「立ってみて、どうですか? 痛みとか調子が悪いとかはないですか?」
村長はゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと腰を回した。
最初は怪訝そうな表情だったが、急に明るい表情になり、「ああ、ほとんど痛みがない」と大きな声で叫んでいた。
「いやあ、本当に治癒師殿だ。できれば、ずっと村に居てもらえるとありがたいですな」
相当腰痛が堪えていたのか、手のひらを返したように下手に出てくる。
やっぱり治癒師は貴重なようだ。
ギルがすかさず、村長に謝礼について突っ込みを入れている。
「村長。腰を直してもらったのに、何にも礼をしないのか」
「ああ、忘れていたよ。治癒師殿、なにか、わしにできることはないかな」
俺が何か言おうとしたら、ギルが横から、「タイガはほとんど何も持っていない。村長のところに使わなくなった道具があれば、分けてやってくれないか」とギルが助け舟を出してくれた。
村長も使わなくなったものならと条件をつけた上で了承したので、後で村長宅に行くことになった。
腰が良くなった村長は、当初の目的も忘れ、スキップしそうな勢いで帰っていった。
ギルは最初から狙いがあったのか、
「村長の家には、以前村長が使っていた両手剣があったと思う。かなり古くなっていたが、売るに売れないし、息子は両手剣を使わないから、それを貰うのがいいと思うぞ」
武器の相場など知らないが、安いはずはないと思い、「いいのか、剣なんかかなり高価なんじゃないのか」と聞くが、
「新品なら、俺の半年分の儲けじゃきかないな。中古ならそれほどでもない。それにこの村に両手剣を使うやつはいないから宝の持ち腐れだ」と言った後、「だから遠慮せず貰っておけ」と笑いながら付け加える。
俺は彼の言葉を信じ、「わかった。そうする」と答えた。
その後、彼と二人で村長の家に行き、両手剣を譲ってもらう。
最初は高価な品と言うことで村長も渋っていたが、奥さんの捻挫を治してやったら、奥さんに押し切られる形で譲ってくれた。
日本では持てなかった武器、本物の剣を初めて持った。子供の頃のヒーローものを思い出し、ちょっと感激している。
ちょっとハイテンションになりながら、両手剣を鑑定してみる。
ツーハンドソード(小)
攻撃50/60、命中45、必要STR300、レンジ5ft、
長さ4.5ft、重量4.5lb
と出ている。
長さは一四〇cmくらいでずっしりと重い。
日本刀のような美しさはないが、鈍い金属性の武器にはなんとなく迫力がある。少し錆びているため、攻撃力が落ちているようだ。どこかで研いでもらった方がよさそうだ。
必要STRが全然足りていないが、使えるのだろうか、後で練習してみようと心の中にメモを書き込んだ。。
夕方、ギルの家の前で剣の素振りを行ってみた。
やはり、必要STRが足りないのか、剣を振るたびにふらついてしまう。
(大振りをすると自分を傷つけることになるな。日本刀も慣れないと自分の足を斬るって聞いたことがある。体がぶれない突きを中心に使う方がいいかもしれない)
その夜は朝からの狩りと治癒魔法の行使で疲れが溜まっていたのか、あっという間に眠りに落ちていった。
翌朝、トニーの家に行き、ベルティの治療を行う。
そして、結果を見るため、頭の傷を見るが傷跡はほとんどない。今治療した腕の骨折も鑑定で見る限りでは完全に治っている。
俺は治癒魔法と言うものが如何に重宝されるのか実感していた。
(しかし、治癒魔法っていうのは、現代医学以上の効果だな。いざとなったらこれで食っていける)
俺が帰ろうとした時、トニーがどうしても礼がしたいと言ってきた。俺は仕方なく余っている服や道具がないか聞いてみた。
トニーが家の中を漁ってみた結果、俺の体に合う服はベルティのものしかないそうだ。
トニーが革のシャツ、革のベスト、革のズボンとナイフも一本持ってきてくれたので、ありがたく頂いておいた。
しかし、外人さんが大きいのはわかるが、中学一年と同じ十三歳の子供と体格が同じというのは少し凹む。
これで下着と靴以外はようやく現地仕様になった。
見ため的には違和感はそうないはずだ。
ギルの家に帰り、服を着替える。鑑定で現在の持ち物を確認する。
・ツーハンドソード(小)1本
・小型ナイフ 1本
・ビジネススーツ上下1セット
・カッターシャツ1着
・ネクタイ1本
・携帯電話(充電率30%)1台
・ソーラー式腕時計 1台
・メモ帳 1冊
・財布 1個
・筆記用具:シャープペンシル1本、3色ボールペン1本
・ソーラー式携帯電話充電器1台
・所持金 0G、0S、0C
着ている服は通常の装備ではないのか、アイテム欄には出てこない。
予備の服としてスーツが載っている。深く考えてもしょうがないが、どういう基準なのだろう。
ナイフが手に入ったので、髭を剃ることにした。
シェービングクリームどころか石鹸すらないため、なかなか剃れない。
何度もナイフを研ぎ直して、ようやく髭を剃るが、顎のあたりは結構血まみれになっていた。自分に治癒魔法を掛け、事なきを得た。
その夜、携帯電話のバッテリ残量が少なくなっていたので、充電器から充電しておいた。
(普段からよく電池がなくなっていたから、ソーラー式の充電器を持っていたけど、こんなところで役に立つとは思わなかった。携帯電話が役に立つとは思わないけど暇つぶしにはなるし……)
俺は今のところ携帯電話の使い道は思い付かない。精々ライトかカメラ機能ぐらいが使えそうかなと思いながら、そのまま眠りに着いた。
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2012/12/05 20:42 更新日:2012/12/06 08:56 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
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