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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第二章「ゴスラー市」:第7話「後輩?」
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第2章.第7話「後輩?」
Fランクに昇格した後、いつものように明日のクエスト予定を立てていると、十代半ばの少年二人と少女二人が俺の後ろに立っていた。
少年の一人が「あの、ちょっといい?」と恐る恐るといった感じで声をかけてくる。
俺は内心、まだ子供じゃないか? こんな子供も冒険者になれるのか?と思ったが、ようやく落ち着き始めたギルド内で注目されたくなかったので、「なんだ」とぶっきらぼうに答える。
少年は少しびくついた感じで「あの、僕達2ヶ月前に冒険者になったんですけどまだGランクなんです。どうやったらあんなに早く採取ができるか教えてもらえませんか?」と話を始めた。
俺は他の冒険者が多くいるギルド内で商売上の秘密を明かせるはずもないという常識も判らない少年たちに対して、少しだけ憤りを感じ、「報酬は?」と彼らのほうを見もせずにそういうと
少年は全く想定しなかった言葉に「えっ!」と固まっている。
「一日で金貨一枚分近く稼ぐ方法をただで聞こうと思っていたのか。別にカネじゃなくても情報でもいいが、釣り合うものを持っているんだろうな」と低い声でそう言い、心の中では、ここまで言えば引き下がるだろうと思っていた。
彼は「ありません……でも、僕達もうすぐ手持ちの資金がなくなりそうなんです。どうしても稼がないといけないんです」と消え入りそうな声で俯きながら事情を話してきた。
俺も同情はするが、ここで話す話ではないだろうと考え、「悪いが、それはお前さんたちの事情だ。俺には関係ない」と冷たく言い放つ。
だが、心の中では、“そういう事情は静かなところで先に話して欲しいもんだ。これじゃ俺が悪者じゃないか”と思っていた。
彼は肩を落としながら、「そうですか、お邪魔してすいませんでした」と謝り、その場を去ろうとしている。
俺は掲示板から離れるようにして、少年の横を通り過ぎながら、
「知りたいなら、明日の朝、南門を出たところで待っていろ。俺より先に来ていなければ、この話はなしだ。それと」とここまで小声で言い、
「こんなところでそんな話をするな。冒険者として生きていくなら情報の重要性くらい理解しておけ」と少し大きな声で周りに聞こえる様に言ってからギルドを出ていった。
最初は教えてやるつもりはなかった。だが、本当に困っていそうだし、自分に余裕も出てきたことから、彼らに同情してしまったようだ。
最後の部分は他の冒険者の前で言う話でもないし、俺のノウハウを狙う奴がいそうなので少し芝居をうってみただけだった。
翌朝、俺はEランクの採取クエストを選択した。
場所は西の森。この森には灰色狼(グレイウルフ)や赤熊(レッドベア)などCランク対象の魔物が出るため、危険度は草原の比ではない。
その分報酬も倍以上と大きく、採取ポイントをうまく見つけられることができれば、草原以上に稼ぐことができる。
もう一つの理由は、森の中は見通しが効かないから、ファイアボールの練習ができることだ。
いい加減、剣を振り回しているだけの自主トレーニングに飽きてきていた。
いつものようにメモ帳に西の森にある薬草採取クエストをメモしておく。
さすがに数が多く二十件くらいある。
三十分ほどでメモを取り終わると、南門に向かって歩いていく。
昨日の少年たちは南門の外ですでに待っていた。
本当は張良の逸話のように夜明け前に南門行っておき、「教えを請う方が遅いとは何事か」とやってみたかったのだが、俺自身、西の森のデビュー戦を控えているので遊んでいる余裕がなかった。
少年たちは声をかけてきた少年がアントン、もう一人の少年がベリエス、少女2人がキャサリンとダニエラと言うそうだ。
四人とも十代半ば、いや十代前半の子供と言っていい年頃に見える。だが、かなり疲れているのか、思いつめたような、諦観したような歳不相応な表情が印象的だった。
アントンはくすんだ金髪で身長は俺とより少し低い百七十cmくらいの少年で、かなり痩せている。顔にニキビがあり幼い印象だが、この四人のリーダー格のようだ。
ベリエスは栗色の髪によく日焼けしたそばかすの多い顔の少年。人見知りをするのかほとんどしゃべらず、表情の変化も少ない。身長は俺と同じ百七十五cmくらい。アントンに比べると少しがっちりしているように見える。
キャサリンはきれいな金髪で少し鼻は低いが、かわいらしい顔付きの少女。ただ少し消極的な感じがする。身長百五十cmくらいで体形は発展途上。田舎の女の子って感じだ。
ダニエラは明るい赤毛でキャサリンとは反対に活発そうな感じのボーイッシュな少女。身長はキャサリンと同じく百五十cmくらいで、こちらもまだまだ発達途上の体形だ。
正直、最初はお遊び気分の子供たちの相手をするのかと思っていた。だが、話を聞くと、彼らもかなり苦労していることが判った。
彼らは皆十三歳。
三ヶ月前に住んでいた村が盗賊に襲われ、食料や家畜を奪われたそうだ。
幸い男たちは無抵抗を貫き、女たちは村の外に隠れていたので人的被害は出なかった。
秋の収穫期まで食糧がもたなさそうなので、奴隷商に売られるよりはと自ら口減らしのために着の身着のまま、ゴスラーの町にたどり着き、冒険者になったとのことだった。
ギルドの低利の融資で武器や装備を揃え、何とか糊口を凌いできたが、ついに資金がそこを尽きそうになったそうだ。
彼らの事情がわかったので、やり方を説明しようと思ったが、俺以外に鑑定を使えるやつはいない。場所と見分け方を簡単に教え、後は何とか自分たちだけでやっていってもらうしかないだろう。
この四人は誰にも頼らず自分たちだけで三ヶ月間過ごしてきたんだろう。だが、助け合って生きていく田舎の村の生き方が抜けていない。
これでは俺のノウハウを教えても、すぐに誰かに奪われて元に戻ってしまうのではないか。
俺は心を鬼にして、柄にもなく説教をする。
「先にお前たちに言っておくが、もっと周りの状況を見ておけ。昨日のような状況で俺に話を聞いたとしても他の冒険者が聞いていればお前たちにチャンスはないだろう。今も誰も後ろを気にしていないが、つけられていたら、どうするつもりなんだ?」とここまで言った後、更に先輩面をして講釈を垂れる。
「冒険者は皆食うためにクエストをこなしているんだ。少しでも有利になるためには少々汚い手を使うことも辞さないぞ。お前ら自身が食いものになりたくなければ、もっと周りを見ることだ」と我ながら偉そうなことを言っていると思っていた。
「これから、俺が知っている薬草の群生地に連れて行ってやる。場所は自分で覚えろ」
勝気そうなダニエラが俺に「報酬の話はどうなったの? 何も持っていないわよ。それとも私たち二人の体目当て?」とキャサリンと自分の体を見ながら、俺をにらみつけている。
俺は呆れながら、「俺は23だ、お前らみたいなお子様をどうこうしようとは思っていない。そういうことはもう少し女らしくなってからほざいてくれ」と両手を上にするポーズを交え、盛大なため息を吐く。
そして「折角だから、お前らが俺に支払う報酬について言っておく」と前置きした後、「俺がこのゴスラーにいる間はお前らには俺の耳になってもらう。町やギルド内での噂話を集め、それを俺に伝えろ。それがお前らの支払う報酬だ」と彼らに向かって宣言する。
ダニエラは真っ赤な顔をしているが、とりあえず無視し、不思議そうな顔したアントンが「噂話だけでいいんでしょうか。どこかに情報を取りにいかなくてもいいんですか」と聞いてくる。
「お前らにそんなことはできないだろう。それに噂話は馬鹿にできない。それも同じところではなく、いろいろなところで集めた話を分析すると意外と面白い話が出てくることもある」
四人はポカンとしたまま、俺の話についていけていない。出来るだけ具体的に指示した方がいいだろう。
「屋台の親父、宿の手伝いのおばちゃん、ギルドの受付嬢、武器屋の親方、誰とでもいい、どんな詰らんことでもいいから、俺に伝えてくれ」
アントンが「ギルドで伝えたらいいんですか?」と聞いてきたので、
「ギルド内ではできるだけ話を聞かれたくない。伝え方は週に一回、俺の泊まっているドラゴン亭の食堂で飯を食いながらにする。飯代は俺が出してやる」と具体的に教えておく。
俺は最近考えていたことがある。俺自身、この世界の常識がないということが気になっていた。
だが、自分で情報を手に入れに行くと逆に常識の無さがばれるかもしれない。その点、この四人なら常識外れの質問をしたとしても子供だからと気にされないだろう。
特に子供の方が手に入れやすい相手もいるし、俺としてもいい情報源になってくれればノウハウと食事代など安いものだと思っている。
「わかりました。なんか俺たちが無茶苦茶得をしているみたいですが、甘えさせていただきます」
そんな話をしながら、第一のアカヨモギ草ポイントに到着する。
「場所の見極め方を教えるぞ。まず、街を見ろ。町の監視塔があるだろう。あれと後ろの山の稜線の重なり方を覚えろ。次は南を見ろ。西の森の端と南の山の稜線の重なりを覚えれば、かならずこの場所に着ける。よく見ておけよ」といって、三角法の要領で位置を覚えさせる。
「次にアカヨモギ草とニセアカヨモギの見分け方だが、葉の付け根の形をよく見ろ……」と説明していく。
三時間ほどして西の草原の採取ポイントをすべて教えてやった。
「後は好きに管理しろ。俺はできるだけ採り尽くさないようにしておいた。場所は他の冒険者に見つからないように、後ろを付けられていないことを頻繁に確認すれば、見晴らしがいい草原なので多分大丈夫だろう」
四人はようやく収入の目途がついたと喜んでいる。
「本当にありがとうございました。これで当面の資金を確保できましたし、Fランクに昇格もできそうです」
「まだ礼を言うのは早いんじゃないか。少なくともFランク上がるまでは気を抜くなよ。それから今日は一種類だけにして、明日以降ソロで別々の採取にした方が目立たず儲けられるんじゃないか」と言った後、俺は自分のクエストに向かうため、一旦街道に戻ってから西の森に向った。
Fランクに昇格した後、いつものように明日のクエスト予定を立てていると、十代半ばの少年二人と少女二人が俺の後ろに立っていた。
少年の一人が「あの、ちょっといい?」と恐る恐るといった感じで声をかけてくる。
俺は内心、まだ子供じゃないか? こんな子供も冒険者になれるのか?と思ったが、ようやく落ち着き始めたギルド内で注目されたくなかったので、「なんだ」とぶっきらぼうに答える。
少年は少しびくついた感じで「あの、僕達2ヶ月前に冒険者になったんですけどまだGランクなんです。どうやったらあんなに早く採取ができるか教えてもらえませんか?」と話を始めた。
俺は他の冒険者が多くいるギルド内で商売上の秘密を明かせるはずもないという常識も判らない少年たちに対して、少しだけ憤りを感じ、「報酬は?」と彼らのほうを見もせずにそういうと
少年は全く想定しなかった言葉に「えっ!」と固まっている。
「一日で金貨一枚分近く稼ぐ方法をただで聞こうと思っていたのか。別にカネじゃなくても情報でもいいが、釣り合うものを持っているんだろうな」と低い声でそう言い、心の中では、ここまで言えば引き下がるだろうと思っていた。
彼は「ありません……でも、僕達もうすぐ手持ちの資金がなくなりそうなんです。どうしても稼がないといけないんです」と消え入りそうな声で俯きながら事情を話してきた。
俺も同情はするが、ここで話す話ではないだろうと考え、「悪いが、それはお前さんたちの事情だ。俺には関係ない」と冷たく言い放つ。
だが、心の中では、“そういう事情は静かなところで先に話して欲しいもんだ。これじゃ俺が悪者じゃないか”と思っていた。
彼は肩を落としながら、「そうですか、お邪魔してすいませんでした」と謝り、その場を去ろうとしている。
俺は掲示板から離れるようにして、少年の横を通り過ぎながら、
「知りたいなら、明日の朝、南門を出たところで待っていろ。俺より先に来ていなければ、この話はなしだ。それと」とここまで小声で言い、
「こんなところでそんな話をするな。冒険者として生きていくなら情報の重要性くらい理解しておけ」と少し大きな声で周りに聞こえる様に言ってからギルドを出ていった。
最初は教えてやるつもりはなかった。だが、本当に困っていそうだし、自分に余裕も出てきたことから、彼らに同情してしまったようだ。
最後の部分は他の冒険者の前で言う話でもないし、俺のノウハウを狙う奴がいそうなので少し芝居をうってみただけだった。
翌朝、俺はEランクの採取クエストを選択した。
場所は西の森。この森には灰色狼(グレイウルフ)や赤熊(レッドベア)などCランク対象の魔物が出るため、危険度は草原の比ではない。
その分報酬も倍以上と大きく、採取ポイントをうまく見つけられることができれば、草原以上に稼ぐことができる。
もう一つの理由は、森の中は見通しが効かないから、ファイアボールの練習ができることだ。
いい加減、剣を振り回しているだけの自主トレーニングに飽きてきていた。
いつものようにメモ帳に西の森にある薬草採取クエストをメモしておく。
さすがに数が多く二十件くらいある。
三十分ほどでメモを取り終わると、南門に向かって歩いていく。
昨日の少年たちは南門の外ですでに待っていた。
本当は張良の逸話のように夜明け前に南門行っておき、「教えを請う方が遅いとは何事か」とやってみたかったのだが、俺自身、西の森のデビュー戦を控えているので遊んでいる余裕がなかった。
少年たちは声をかけてきた少年がアントン、もう一人の少年がベリエス、少女2人がキャサリンとダニエラと言うそうだ。
四人とも十代半ば、いや十代前半の子供と言っていい年頃に見える。だが、かなり疲れているのか、思いつめたような、諦観したような歳不相応な表情が印象的だった。
アントンはくすんだ金髪で身長は俺とより少し低い百七十cmくらいの少年で、かなり痩せている。顔にニキビがあり幼い印象だが、この四人のリーダー格のようだ。
ベリエスは栗色の髪によく日焼けしたそばかすの多い顔の少年。人見知りをするのかほとんどしゃべらず、表情の変化も少ない。身長は俺と同じ百七十五cmくらい。アントンに比べると少しがっちりしているように見える。
キャサリンはきれいな金髪で少し鼻は低いが、かわいらしい顔付きの少女。ただ少し消極的な感じがする。身長百五十cmくらいで体形は発展途上。田舎の女の子って感じだ。
ダニエラは明るい赤毛でキャサリンとは反対に活発そうな感じのボーイッシュな少女。身長はキャサリンと同じく百五十cmくらいで、こちらもまだまだ発達途上の体形だ。
正直、最初はお遊び気分の子供たちの相手をするのかと思っていた。だが、話を聞くと、彼らもかなり苦労していることが判った。
彼らは皆十三歳。
三ヶ月前に住んでいた村が盗賊に襲われ、食料や家畜を奪われたそうだ。
幸い男たちは無抵抗を貫き、女たちは村の外に隠れていたので人的被害は出なかった。
秋の収穫期まで食糧がもたなさそうなので、奴隷商に売られるよりはと自ら口減らしのために着の身着のまま、ゴスラーの町にたどり着き、冒険者になったとのことだった。
ギルドの低利の融資で武器や装備を揃え、何とか糊口を凌いできたが、ついに資金がそこを尽きそうになったそうだ。
彼らの事情がわかったので、やり方を説明しようと思ったが、俺以外に鑑定を使えるやつはいない。場所と見分け方を簡単に教え、後は何とか自分たちだけでやっていってもらうしかないだろう。
この四人は誰にも頼らず自分たちだけで三ヶ月間過ごしてきたんだろう。だが、助け合って生きていく田舎の村の生き方が抜けていない。
これでは俺のノウハウを教えても、すぐに誰かに奪われて元に戻ってしまうのではないか。
俺は心を鬼にして、柄にもなく説教をする。
「先にお前たちに言っておくが、もっと周りの状況を見ておけ。昨日のような状況で俺に話を聞いたとしても他の冒険者が聞いていればお前たちにチャンスはないだろう。今も誰も後ろを気にしていないが、つけられていたら、どうするつもりなんだ?」とここまで言った後、更に先輩面をして講釈を垂れる。
「冒険者は皆食うためにクエストをこなしているんだ。少しでも有利になるためには少々汚い手を使うことも辞さないぞ。お前ら自身が食いものになりたくなければ、もっと周りを見ることだ」と我ながら偉そうなことを言っていると思っていた。
「これから、俺が知っている薬草の群生地に連れて行ってやる。場所は自分で覚えろ」
勝気そうなダニエラが俺に「報酬の話はどうなったの? 何も持っていないわよ。それとも私たち二人の体目当て?」とキャサリンと自分の体を見ながら、俺をにらみつけている。
俺は呆れながら、「俺は23だ、お前らみたいなお子様をどうこうしようとは思っていない。そういうことはもう少し女らしくなってからほざいてくれ」と両手を上にするポーズを交え、盛大なため息を吐く。
そして「折角だから、お前らが俺に支払う報酬について言っておく」と前置きした後、「俺がこのゴスラーにいる間はお前らには俺の耳になってもらう。町やギルド内での噂話を集め、それを俺に伝えろ。それがお前らの支払う報酬だ」と彼らに向かって宣言する。
ダニエラは真っ赤な顔をしているが、とりあえず無視し、不思議そうな顔したアントンが「噂話だけでいいんでしょうか。どこかに情報を取りにいかなくてもいいんですか」と聞いてくる。
「お前らにそんなことはできないだろう。それに噂話は馬鹿にできない。それも同じところではなく、いろいろなところで集めた話を分析すると意外と面白い話が出てくることもある」
四人はポカンとしたまま、俺の話についていけていない。出来るだけ具体的に指示した方がいいだろう。
「屋台の親父、宿の手伝いのおばちゃん、ギルドの受付嬢、武器屋の親方、誰とでもいい、どんな詰らんことでもいいから、俺に伝えてくれ」
アントンが「ギルドで伝えたらいいんですか?」と聞いてきたので、
「ギルド内ではできるだけ話を聞かれたくない。伝え方は週に一回、俺の泊まっているドラゴン亭の食堂で飯を食いながらにする。飯代は俺が出してやる」と具体的に教えておく。
俺は最近考えていたことがある。俺自身、この世界の常識がないということが気になっていた。
だが、自分で情報を手に入れに行くと逆に常識の無さがばれるかもしれない。その点、この四人なら常識外れの質問をしたとしても子供だからと気にされないだろう。
特に子供の方が手に入れやすい相手もいるし、俺としてもいい情報源になってくれればノウハウと食事代など安いものだと思っている。
「わかりました。なんか俺たちが無茶苦茶得をしているみたいですが、甘えさせていただきます」
そんな話をしながら、第一のアカヨモギ草ポイントに到着する。
「場所の見極め方を教えるぞ。まず、街を見ろ。町の監視塔があるだろう。あれと後ろの山の稜線の重なり方を覚えろ。次は南を見ろ。西の森の端と南の山の稜線の重なりを覚えれば、かならずこの場所に着ける。よく見ておけよ」といって、三角法の要領で位置を覚えさせる。
「次にアカヨモギ草とニセアカヨモギの見分け方だが、葉の付け根の形をよく見ろ……」と説明していく。
三時間ほどして西の草原の採取ポイントをすべて教えてやった。
「後は好きに管理しろ。俺はできるだけ採り尽くさないようにしておいた。場所は他の冒険者に見つからないように、後ろを付けられていないことを頻繁に確認すれば、見晴らしがいい草原なので多分大丈夫だろう」
四人はようやく収入の目途がついたと喜んでいる。
「本当にありがとうございました。これで当面の資金を確保できましたし、Fランクに昇格もできそうです」
「まだ礼を言うのは早いんじゃないか。少なくともFランク上がるまでは気を抜くなよ。それから今日は一種類だけにして、明日以降ソロで別々の採取にした方が目立たず儲けられるんじゃないか」と言った後、俺は自分のクエストに向かうため、一旦街道に戻ってから西の森に向った。
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2012/12/09 14:48 更新日:2012/12/09 14:49 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
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