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「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第二章「ゴスラー市」:第23話「出発」
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第2章.第23話「出発」
翌日、朝一番にアントンたちの泊まっている宿に向かう。
アントンたちを捕まえ、「昨日の俺の噂を聞いたか」と尋ねると、
「はい、聞いています。すごいですよね。盗賊十五人をやっつけてしまうなんて」と感心されるが、彼らですら知っているということに昨日の不安が現実のものになると確信した。
俺は、「ああ、あれは運が良かっただけだ」と軽く答えた後、大事な頼みがあることを伝える。
彼らは俺の話について行けず、首を傾げている。
「俺は盗賊の生き残りに命を狙われることになる。そこで明日にはこのゴスラーを出て別の土地に行こうと思っている」
「「えっ!」」と彼らは一様に驚き、
「この町からいなくなっちゃうんですか!」
「どこに行くんですか?」
四人は口々に俺に聞いてくる。
「ああ、とりあえずオステンシュタットに行くことだけ決めている。そんなことより、四人に頼みがあるんだが、俺がこの町を出て行った後にある噂を流して欲しい」
「どんな噂ですか?」
「俺が盗賊の報復を恐れて、オステンシュタットを経て東のプルゼニ王国に逃げようとしているという噂だ。俺が東方の生まれでプルゼニ王国から大陸東部域に逃げ出そうとしていると思わせてくれればいい。俺と一番仲が良かったのがお前たちだ。だから色々聞いてくる奴がいるだろう。その時にこの噂を流してくれると助かる」
「そんなことでよければ。他に何か手伝うことはないですか?」と真剣な目でアントンが言うと他の三人も同意するように頷いている。
俺はこれ以上頼むことはないと思ったが、彼らに危険が及ぶのではないかとふと思い付く。
「特にないが……当分町から離れない方がいい。俺を狙う盗賊がお前たちを狙わないとも限らないからな……クエストを受けられなくなるから、これで凌いでくれ」といって、懐から金貨十枚を出し、アントンの手に握らせる。
アントンは、「こんなの貰えませんよ」と言って突き返そうとするが、
「すまないが、一ヶ月間クエストを受けないでおいてくれないか。俺のせいで誰かが不幸になるのは嫌なんだ。頼む。受け取ってもらえないと俺が安心できない……」といって、頭を下げる。
「判りました。じゃ頂きます。ちょうどいい機会なんで、一ヶ月間はクエストを受けず、訓練に励みます」と俺の心中を察してくれたようだ。
「そうか。すまないな。それじゃ当分戻ってこないが、いつか必ず帰ってくる。それまで元気でな」と言って、アントンたちと別れた。
ギルドに行き、ギルド長にも事情を説明しておく。
「グンドルフと言えば、元Aランクの冒険者だ。いくらお前さんでも間違いなくにやられてしまうだろう。ああ、この町を出るのは賢明な選択だ」と俺の考えを理解してくれた。
そして、「オステンシュタットまでは郵便の配達クエストにしておいてやる。後でクエストを受けておけ。噂についてはわしも積極的に流しておいてやるし、あの若いもんのこともわしに任せておけ」と言ってくれた。
俺はその配慮に目頭が熱くなる。
「クエストの件、ありがとうございます。あいつらのこともよろしくお願いします」と言って、頭を下げてから受付に向かった。
挨拶をするのはこのくらいだろう。
約二ヶ月いたのに狭い交友関係だった。ベッカルト村の方が余程知り合いは多かった気がする。
昼食を取り、守備隊詰所に向かうと、守備隊の責任者から懸賞金を渡された。
懸賞金は全部で二百二十二Gだ。
十五人分だと考えると多いか少ないか良く判らない金額だ。
「副頭目のザムエルが金貨五十枚で他に八人が一人当たり金貨二十枚、その他の六人は懸賞金が掛かっていなかったが、報奨金として一人当たり金貨二枚が支払われる」
「盗賊の装備類や持ち物はどうでしょうか」
「装備類はそちらで勝手に処分していい。馬はできれば守備隊に売って欲しいがどうだろうか」
金には困っていないので、どこに売っても同じだが、「一頭だけ残して残りはお売りします。四頭でいくらになるんでしょうか」と一応尋ねてみた。
「一番いい馬以外だと全部で金貨十枚ならどうだ」と言われたので、すぐに了承した。
懸賞金と馬の売却金合計二百三十二Gを得た。
守備隊で荷車を借り、武器屋、防具屋、雑貨屋に向かう。
結構いい武器や防具を持っていたので、百G近くになった。
ツーハンドソードもいいものがあったが、盗賊が使っていたものだったので、どこで生き残りに目を付けられるか判らない。だから、すべて売ってしまうことにした。
荷車を返してから、馬とともにドラゴン亭に帰る。
主人のマルティンに、「明日の朝、オステンシュタットに行くんだ。世話になったよ。ゴスラーに来た時には必ずここに泊まるよ」と明日出発することを告げた。
彼は少し名残惜しそうな顔をするが、すぐに笑顔になる。
「そうか、お別れか。あんたには面白い料理を教えてもらったし、楽しかったよ。オステンシュタットで冒険者をやるのかい?」
「いや、オステンシュタットは通るだけのつもりだ。多分プルゼニ王国に行くと思う」
俺はここでも情報操作をしておいた。
「そうか、明日の弁当はあんたの”ベーコン”ってやつで腕によりを掛けておいてやるよ」と言ってくれるが、明日の朝は開門と同時に出発する予定だ。
「明日の朝、夜明けとともに出発の予定だから、気持ちだけ受け取っておくよ」
「気にするな。朝食と弁当は用意してやる。いつでも泊りに来いよ」とマルティンが右手を差し出してきた。
俺は彼の手を取り、もう一度感謝の言葉を掛けた。
明日からは知らない土地だから、いつ浴室を使えるかわからない。マルティンに浴室の準備を頼み、明日の出発に備えることにした。
夕食を取った後、今日は早めに就寝するつもりだったが、明日からのことを考えると目が冴えてしまう。
そういえばステータスを確認していなかったと思い、確認すると、一気にレベルが十一に上がっていた。
高山(タカヤマ) 大河(タイガ) 年齢23 LV11
STR830, VIT715, AGI780, DEX820, INT3715, MEN1640, CHA665, LUC655
HP664, MP1640, AR2, SR2, DR2, SKL227, MAG90, PL28, EXP73489
スキル:両手剣14、回避9、軽装鎧5、共通語5、隠密9、探知6、追跡6、
罠5、体術3、乗馬1、植物知識9、水中行動4、
上位古代語(上級ルーン)50
魔法:治癒魔法6(治癒1、治癒2、解毒1)
火属性9(ファイアボール、ファイアストーム、ファイアウォール)
両手剣のスキルも順調に上がっている。
魔法のレベルも上がっているが、呪文は増えていかない。初期設定で火属性五にした特典分だけで、新たな魔法は自分で覚える必要があるようだ。
金は現金だけでも六百G近くある。無事に都会に出たら、魔導書を探してみようと思った。
翌朝、まだ暗いうちに出発の準備をし、外が白み始めた頃、食堂に下りる。
マルティンは約束通り、朝食と弁当を準備していてくれた。
「済まないな、早起きさせちまって」と謝ると、
「気にするな。あんたには世話になっているからな。また今度面白い料理を教えてくれ」
朝食の準備があるのか、マルティンは片手を一度上げ、厨房に戻っていく。
朝食を取ってから、部屋に戻り、部屋を見渡し、「ここが冒険者としての出発点か……二ヶ月ですっかり俺の部屋って感じになったな」と感慨深く呟いた後、もう一度部屋の中を見渡した。
外を見るとかなり明るくなってきている。
荷物を馬に載せ、宿を出る。
荷物も二ヶ月で大分多くなり、背負い袋と大き目の皮袋が二つになっていた。
皮袋は途中で回収する財宝を入れるため、かなり余裕がある。
北門の前で開門を待っていると、アントンたちがやってきた。
俺は内心嬉しかったが、照れ隠しに「昨日別れは済ませたつもりだったんだが」と言ってしまう。
アントンは、「どうしても見送りたくて来ちゃいました」と少し鼻声でそう言ってくれた。
「絶対戻ってきてくださいよ。じゃあ、気をつけて」
「ありがとうございました」
「こんど帰ってきたら、女らしい私を見せてビックリさせてやるから」
「元気で帰ってきてください」
アントン、ベリエス、ダニエラ、キャサリンがそれぞれ別れの言葉を掛けてくれる。
「いつになるか判らないが、必ず戻ってくる。みんなも無理せずがんばってくれ」と言った後、馬に跨る。
そして、「じゃあ行くわ」と軽く手を上げ、開門と同時に馬を進めていった。
後ろは振り向かない。
ここが俺の出発点だから……
「行っちゃったね」
ダニエラが誰に言うでもなくポツリと呟く。
「うん。これから本当に僕たちだけなんだよな」
アントンがそう答える。
「タイガさんに会えていなかったら、私たち今頃どうなっていたのかしら?」
キャサリンも呟いている。
「多分、今頃お金も住む所もなく、誰かに騙されて売られていたかもしれないな」
その呟きにベリエスが答える。
「俺たちが今あるのはタイガさんのおかげだよな。これから色々経験して、今度会った時にビックリさせてやろう」とアントン。
「「そうね(だな)」」と三人も声を揃える。
「しかし、タイガさん、これから大丈夫かな。盗賊の頭目って無茶苦茶強いんでしょ」とダニエラがアントンに聞く。
「タイガさんだから大丈夫だよ。それより俺たちの方もあんまり悠長にしていられないよ。タイガさんの心配って結構当るから、言いつけ通り、一ヶ月間町で特訓をするぞ」
「そうね。あの人に言われた噂を広めることもやらなきゃいけないし」
「じゃあ、朝飯を食べに戻ろう。今日は忙しくなりそうだ」
四人は一度だけ北を見つめ、宿に戻っていった。
――七年後――
ゴスラーギルド支部の前に多くの冒険者が集まっている。皆明るい表情でいいニュースが発表されるようだ。
「今日、このゴスラーの町に三十年ぶりにBランク冒険者が誕生した」とキルヒナーギルド長がそう宣言した。
ギルド長の横には、若い男女四人が赤い顔をして恥ずかしそうに並んでいる。
「アントン、ベリエス、ダニエラ、キャサリン。四人ともよくがんばったな。ここにいる四人は、七年前ここゴスラーギルド支部の扉をくぐり、冒険者になるべく……」
「ギルド長、話がなげえぞ! さっさと終われ!」と集まった冒険者から野次が飛ぶ。
「ええい、うるさいわ。こっちも久しぶりに盛り上がってんだ。好きに挨拶させろ!」とギルド長も怒鳴り返す。
「まあいい。四人ともこれからも町のためにがんばってくれ! みんなも彼らを祝福してやってくれ!」
ギルド長の一言で集まった冒険者たちから大歓声が沸く。
四人はますます赤い顔になり、少し俯いてしまう。
「アントン、みんなになんか言ってやれ」とギルド長がアントンの尻を叩く。
「で、でも……」と、もじもじと尻込みをしている。
業を煮やしたギルド長が、「お前がリーダーなんだから、なんか言わないとみんな納得しないぞ!」と脅すようにそう言うと、彼も諦めて挨拶を始めた。
「皆さん。僕たちのために祝ってくれてありがとうございます。僕たちはギルド長始め皆さんのおかげでここまでやって来られました。今日、ここにいない恩人にこの姿を見せられないのが……あっ!」
アントンは観衆の向こうにある人物を見つけ、言葉を失った。
他の三人も口を開け、呆然としている。
観衆は一瞬静まり、一斉に後ろを振り返る。
振り返った先には黒一色の装備を身に着け、背中に無骨な両手剣を背負った剣士風の男が立っていた。
「アントン! 馬鹿面してないでちゃんと挨拶しろ! 折角、遥々(はるばる)遠くから二十歳のBランカーってやつを見に来たんだからな!」
男は満面の笑みを浮かべ、そう叫んだ。
「「お帰りなさい!」」
四人は式典も観衆も忘れ、彼らの恩人に向かって走り出していった。
翌日、朝一番にアントンたちの泊まっている宿に向かう。
アントンたちを捕まえ、「昨日の俺の噂を聞いたか」と尋ねると、
「はい、聞いています。すごいですよね。盗賊十五人をやっつけてしまうなんて」と感心されるが、彼らですら知っているということに昨日の不安が現実のものになると確信した。
俺は、「ああ、あれは運が良かっただけだ」と軽く答えた後、大事な頼みがあることを伝える。
彼らは俺の話について行けず、首を傾げている。
「俺は盗賊の生き残りに命を狙われることになる。そこで明日にはこのゴスラーを出て別の土地に行こうと思っている」
「「えっ!」」と彼らは一様に驚き、
「この町からいなくなっちゃうんですか!」
「どこに行くんですか?」
四人は口々に俺に聞いてくる。
「ああ、とりあえずオステンシュタットに行くことだけ決めている。そんなことより、四人に頼みがあるんだが、俺がこの町を出て行った後にある噂を流して欲しい」
「どんな噂ですか?」
「俺が盗賊の報復を恐れて、オステンシュタットを経て東のプルゼニ王国に逃げようとしているという噂だ。俺が東方の生まれでプルゼニ王国から大陸東部域に逃げ出そうとしていると思わせてくれればいい。俺と一番仲が良かったのがお前たちだ。だから色々聞いてくる奴がいるだろう。その時にこの噂を流してくれると助かる」
「そんなことでよければ。他に何か手伝うことはないですか?」と真剣な目でアントンが言うと他の三人も同意するように頷いている。
俺はこれ以上頼むことはないと思ったが、彼らに危険が及ぶのではないかとふと思い付く。
「特にないが……当分町から離れない方がいい。俺を狙う盗賊がお前たちを狙わないとも限らないからな……クエストを受けられなくなるから、これで凌いでくれ」といって、懐から金貨十枚を出し、アントンの手に握らせる。
アントンは、「こんなの貰えませんよ」と言って突き返そうとするが、
「すまないが、一ヶ月間クエストを受けないでおいてくれないか。俺のせいで誰かが不幸になるのは嫌なんだ。頼む。受け取ってもらえないと俺が安心できない……」といって、頭を下げる。
「判りました。じゃ頂きます。ちょうどいい機会なんで、一ヶ月間はクエストを受けず、訓練に励みます」と俺の心中を察してくれたようだ。
「そうか。すまないな。それじゃ当分戻ってこないが、いつか必ず帰ってくる。それまで元気でな」と言って、アントンたちと別れた。
ギルドに行き、ギルド長にも事情を説明しておく。
「グンドルフと言えば、元Aランクの冒険者だ。いくらお前さんでも間違いなくにやられてしまうだろう。ああ、この町を出るのは賢明な選択だ」と俺の考えを理解してくれた。
そして、「オステンシュタットまでは郵便の配達クエストにしておいてやる。後でクエストを受けておけ。噂についてはわしも積極的に流しておいてやるし、あの若いもんのこともわしに任せておけ」と言ってくれた。
俺はその配慮に目頭が熱くなる。
「クエストの件、ありがとうございます。あいつらのこともよろしくお願いします」と言って、頭を下げてから受付に向かった。
挨拶をするのはこのくらいだろう。
約二ヶ月いたのに狭い交友関係だった。ベッカルト村の方が余程知り合いは多かった気がする。
昼食を取り、守備隊詰所に向かうと、守備隊の責任者から懸賞金を渡された。
懸賞金は全部で二百二十二Gだ。
十五人分だと考えると多いか少ないか良く判らない金額だ。
「副頭目のザムエルが金貨五十枚で他に八人が一人当たり金貨二十枚、その他の六人は懸賞金が掛かっていなかったが、報奨金として一人当たり金貨二枚が支払われる」
「盗賊の装備類や持ち物はどうでしょうか」
「装備類はそちらで勝手に処分していい。馬はできれば守備隊に売って欲しいがどうだろうか」
金には困っていないので、どこに売っても同じだが、「一頭だけ残して残りはお売りします。四頭でいくらになるんでしょうか」と一応尋ねてみた。
「一番いい馬以外だと全部で金貨十枚ならどうだ」と言われたので、すぐに了承した。
懸賞金と馬の売却金合計二百三十二Gを得た。
守備隊で荷車を借り、武器屋、防具屋、雑貨屋に向かう。
結構いい武器や防具を持っていたので、百G近くになった。
ツーハンドソードもいいものがあったが、盗賊が使っていたものだったので、どこで生き残りに目を付けられるか判らない。だから、すべて売ってしまうことにした。
荷車を返してから、馬とともにドラゴン亭に帰る。
主人のマルティンに、「明日の朝、オステンシュタットに行くんだ。世話になったよ。ゴスラーに来た時には必ずここに泊まるよ」と明日出発することを告げた。
彼は少し名残惜しそうな顔をするが、すぐに笑顔になる。
「そうか、お別れか。あんたには面白い料理を教えてもらったし、楽しかったよ。オステンシュタットで冒険者をやるのかい?」
「いや、オステンシュタットは通るだけのつもりだ。多分プルゼニ王国に行くと思う」
俺はここでも情報操作をしておいた。
「そうか、明日の弁当はあんたの”ベーコン”ってやつで腕によりを掛けておいてやるよ」と言ってくれるが、明日の朝は開門と同時に出発する予定だ。
「明日の朝、夜明けとともに出発の予定だから、気持ちだけ受け取っておくよ」
「気にするな。朝食と弁当は用意してやる。いつでも泊りに来いよ」とマルティンが右手を差し出してきた。
俺は彼の手を取り、もう一度感謝の言葉を掛けた。
明日からは知らない土地だから、いつ浴室を使えるかわからない。マルティンに浴室の準備を頼み、明日の出発に備えることにした。
夕食を取った後、今日は早めに就寝するつもりだったが、明日からのことを考えると目が冴えてしまう。
そういえばステータスを確認していなかったと思い、確認すると、一気にレベルが十一に上がっていた。
高山(タカヤマ) 大河(タイガ) 年齢23 LV11
STR830, VIT715, AGI780, DEX820, INT3715, MEN1640, CHA665, LUC655
HP664, MP1640, AR2, SR2, DR2, SKL227, MAG90, PL28, EXP73489
スキル:両手剣14、回避9、軽装鎧5、共通語5、隠密9、探知6、追跡6、
罠5、体術3、乗馬1、植物知識9、水中行動4、
上位古代語(上級ルーン)50
魔法:治癒魔法6(治癒1、治癒2、解毒1)
火属性9(ファイアボール、ファイアストーム、ファイアウォール)
両手剣のスキルも順調に上がっている。
魔法のレベルも上がっているが、呪文は増えていかない。初期設定で火属性五にした特典分だけで、新たな魔法は自分で覚える必要があるようだ。
金は現金だけでも六百G近くある。無事に都会に出たら、魔導書を探してみようと思った。
翌朝、まだ暗いうちに出発の準備をし、外が白み始めた頃、食堂に下りる。
マルティンは約束通り、朝食と弁当を準備していてくれた。
「済まないな、早起きさせちまって」と謝ると、
「気にするな。あんたには世話になっているからな。また今度面白い料理を教えてくれ」
朝食の準備があるのか、マルティンは片手を一度上げ、厨房に戻っていく。
朝食を取ってから、部屋に戻り、部屋を見渡し、「ここが冒険者としての出発点か……二ヶ月ですっかり俺の部屋って感じになったな」と感慨深く呟いた後、もう一度部屋の中を見渡した。
外を見るとかなり明るくなってきている。
荷物を馬に載せ、宿を出る。
荷物も二ヶ月で大分多くなり、背負い袋と大き目の皮袋が二つになっていた。
皮袋は途中で回収する財宝を入れるため、かなり余裕がある。
北門の前で開門を待っていると、アントンたちがやってきた。
俺は内心嬉しかったが、照れ隠しに「昨日別れは済ませたつもりだったんだが」と言ってしまう。
アントンは、「どうしても見送りたくて来ちゃいました」と少し鼻声でそう言ってくれた。
「絶対戻ってきてくださいよ。じゃあ、気をつけて」
「ありがとうございました」
「こんど帰ってきたら、女らしい私を見せてビックリさせてやるから」
「元気で帰ってきてください」
アントン、ベリエス、ダニエラ、キャサリンがそれぞれ別れの言葉を掛けてくれる。
「いつになるか判らないが、必ず戻ってくる。みんなも無理せずがんばってくれ」と言った後、馬に跨る。
そして、「じゃあ行くわ」と軽く手を上げ、開門と同時に馬を進めていった。
後ろは振り向かない。
ここが俺の出発点だから……
「行っちゃったね」
ダニエラが誰に言うでもなくポツリと呟く。
「うん。これから本当に僕たちだけなんだよな」
アントンがそう答える。
「タイガさんに会えていなかったら、私たち今頃どうなっていたのかしら?」
キャサリンも呟いている。
「多分、今頃お金も住む所もなく、誰かに騙されて売られていたかもしれないな」
その呟きにベリエスが答える。
「俺たちが今あるのはタイガさんのおかげだよな。これから色々経験して、今度会った時にビックリさせてやろう」とアントン。
「「そうね(だな)」」と三人も声を揃える。
「しかし、タイガさん、これから大丈夫かな。盗賊の頭目って無茶苦茶強いんでしょ」とダニエラがアントンに聞く。
「タイガさんだから大丈夫だよ。それより俺たちの方もあんまり悠長にしていられないよ。タイガさんの心配って結構当るから、言いつけ通り、一ヶ月間町で特訓をするぞ」
「そうね。あの人に言われた噂を広めることもやらなきゃいけないし」
「じゃあ、朝飯を食べに戻ろう。今日は忙しくなりそうだ」
四人は一度だけ北を見つめ、宿に戻っていった。
――七年後――
ゴスラーギルド支部の前に多くの冒険者が集まっている。皆明るい表情でいいニュースが発表されるようだ。
「今日、このゴスラーの町に三十年ぶりにBランク冒険者が誕生した」とキルヒナーギルド長がそう宣言した。
ギルド長の横には、若い男女四人が赤い顔をして恥ずかしそうに並んでいる。
「アントン、ベリエス、ダニエラ、キャサリン。四人ともよくがんばったな。ここにいる四人は、七年前ここゴスラーギルド支部の扉をくぐり、冒険者になるべく……」
「ギルド長、話がなげえぞ! さっさと終われ!」と集まった冒険者から野次が飛ぶ。
「ええい、うるさいわ。こっちも久しぶりに盛り上がってんだ。好きに挨拶させろ!」とギルド長も怒鳴り返す。
「まあいい。四人ともこれからも町のためにがんばってくれ! みんなも彼らを祝福してやってくれ!」
ギルド長の一言で集まった冒険者たちから大歓声が沸く。
四人はますます赤い顔になり、少し俯いてしまう。
「アントン、みんなになんか言ってやれ」とギルド長がアントンの尻を叩く。
「で、でも……」と、もじもじと尻込みをしている。
業を煮やしたギルド長が、「お前がリーダーなんだから、なんか言わないとみんな納得しないぞ!」と脅すようにそう言うと、彼も諦めて挨拶を始めた。
「皆さん。僕たちのために祝ってくれてありがとうございます。僕たちはギルド長始め皆さんのおかげでここまでやって来られました。今日、ここにいない恩人にこの姿を見せられないのが……あっ!」
アントンは観衆の向こうにある人物を見つけ、言葉を失った。
他の三人も口を開け、呆然としている。
観衆は一瞬静まり、一斉に後ろを振り返る。
振り返った先には黒一色の装備を身に着け、背中に無骨な両手剣を背負った剣士風の男が立っていた。
「アントン! 馬鹿面してないでちゃんと挨拶しろ! 折角、遥々(はるばる)遠くから二十歳のBランカーってやつを見に来たんだからな!」
男は満面の笑みを浮かべ、そう叫んだ。
「「お帰りなさい!」」
四人は式典も観衆も忘れ、彼らの恩人に向かって走り出していった。
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2012/12/15 16:32 更新日:2012/12/15 16:32 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
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