作品ID:1354
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(50)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(330)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第三章「街道」:第16話「シュバルツェン街道」
前の話 | 目次 | 次の話 |
第3章.第16話「シュバルツェン街道」
クロイツタール城を出て、昼食をとった後、ギルドに向かう。
次の目的地のシュバルツェンベルクは、元々は山間(やまあい)の小さな村であったが、百年ほど前に現れたシュバルツェン迷宮のおかげで冒険者が多く集まるようになり、徐々に都市に発展していった町である。
主要な産業は迷宮内で取れる魔石の売買であり、魔石を採取する冒険者目当ての施設が徐々にできていく一種の鉱山町のような発展を遂げている。
このため、食料、衣料、武具などの必要な物資はシュバルツェンベルクで僅かに生産されている分を除けば、王国各地からクロイツタールを経由して運ばれていくことになる。
クロイツタールからシュバルツェンベルクまでのシュバルツェン街道は、シュバルツェンベルク行きが食料、武具などを運ぶ隊商で、クロイツタール行きが採取・加工された魔石やシュバルツェンベルクで生産されている魔道具を運ぶ隊商で賑わっている。
シュバルツェン街道は、クロイツタール周辺こそ治安はいいものの、一日も進むと冒険者用の高価な物資を狙った盗賊や山賊、食料や人間を狙う魔物が襲ってくるドライセン王国内でも危険なことで有名な街道である。
街道の長さは約八十マイル=百三十kmで、標準的な隊商の行程では六日だが、険しい山道、急変する天候などで、途中で夜営が必要になることもしばしば発生する。
このような条件から、シュバルツェン街道の護衛クエストは非常に多い。
(ソロで受け付けてくれる護衛ってあるのかな。一人で街道を進むと盗賊に襲われそうで嫌なんだがな)
俺はそう思いながら、ギルドの入口を潜り、掲示板に向かう。
掲示板には、多数の護衛依頼があるが、やはりパーティでの募集が多い。
ソロの場合、戦闘中で不利になれば逃げ出すこともあるだろうし、単純に戦闘力だけ考えてもソロ五人の組合せよりパーティ五人の方が連携の面でも有利になる。
(できれば大規模な隊商の穴埋め要員として入る方がいいんだが、そんな都合のいい依頼はないだろうな。ノイレンシュタットの時と同じように受付嬢に声を掛けておこうかな)
と思って、受付に向かおうとしたとき、後ろから声を掛けられた。
「もうクエストを受けるのか」
その声にびっくりして振り返ると、そこにはマックスが立っていた。
彼はウンケルバッハの盗賊十二人分の装備を二十四Gで売ったので、俺の分の四Gを渡すためにわざわざギルドにやってきたそうだ。
俺がシュバルツェンベルク行きの護衛クエストを探していると知ると、
「俺の知り合いが明後日、シュバルツェンベルク行きの護衛クエストを受けたと聞いている。その人に声を掛けてみようか」
「助かる。ソロの需要が少なくて困っていたんだ」
マックスは知り合いを連れてくると言い、ギルドから出て行き、三十分後、一人の冒険者を連れて戻ってきた。
「こいつがさっき言った知り合いのカスパーだ。シュバルツェン街道専門の護衛で今回大きい隊商の護衛を受けたそうだ」
「Dランクのタイガだ。シュバルツェンベルク行きの護衛を探していたんだが、なかなか見つからなくてね」
「カスパーだ。五人でパーティを組んでいる。今回は荷馬車十台の護衛なんだが、俺たちのパーティにソロで四、五人プラスしようと思っている。今のところ四人は決まったんだが、もう一人欲しいと思っていたところだ。よければ話を聞いてもらえないか」
カスパーは俺より少し背が高く一八〇cmくらい、誠実そうな感じの二十代後半の人間の男だ。鑑定で確認すると、レベルは三十、片手剣が得意なようだ。
護衛の概要は、荷馬車十台と御者十人、商人三人とともに明後日の朝出発し、六日掛けてシュバルツェンベルクに向かう。この時期は山の天候が不安定なので、短時間のにわか雨が降りやすく、夜営の予定は無いが、シュバルツェンベルクに着くまでに一回は夜営が必要だろうとのことだ。
夜営場所については、比較的安全な場所を数箇所知っているので不安はないそうだ。
報酬は二G。宿泊等の経費は商人持ちで一日遅れるごとに十Sの経費が差し引かれる点はマックス達と受けたクエストと同じだった。
はっきり言って、報酬に興味は無いが、不審に思われないよう真剣に聞いておく。
一通り聞いた後、カスパーに「その条件で問題ない。ぜひ参加させてくれ」と言って右手を差し出す。
「マックスから腕は確かだし、機転も利くと聞いている。あとで雇い主のルーブレヒトさんに会ってくれ」と握手を返してくれた。
ギルドで護衛クエストの受付をし、シュバルツェン街道の情報を仕入れておく。
調べた限りでは、魔物の活動が極端に活発になったとか、盗賊が増えたとかのネガティブな情報は無かった。天候については、カスパーが言ったとおり、この時期はいきなり大雨が降ることが多く、道に水が溢れ、荷馬車が移動できなくなることが多い。一時間も待てば再出発できるので、ビバークして待つのが基本だそうだ。
夜の山の中は急に冷え込むので、雨具とともに防寒対策もしておいた方がいいとのことで、道具屋でオイルスキンのフード付マントを一枚購入した。
翌日は特にすることも無かったので、宿で魔導書を読むことにした。
さすがに参考書ということもあり、最初の方は受験のノウハウが多く書かれている。
概要のところに魔法理論が少し書かれており、
・魔法は呪文=言霊(ことだま)を介して、マナを様々な現象に変える行為である
・マナは様々ところに存在するが、密度が低く、高階位の魔法ほどマナを集めるのに時間が必要
・術者の持つ魔力はマナを現象に変換するための起爆剤となる
・呪文のほかに魔方陣などを描くとより効率的にマナを集められる
・使える階位は術者の魔法レベルで決まる。
・第一階位はレベル一、第二階位はレベル四、第三階位はレベル九と続いていく
・一定レベルに達しないと上位の呪文を覚えていても魔法は発動しない
など、今まで疑問に思っていたことが記載されていた。
魔法の種類についても記載されており、今まで使っていた火属性のファイアボールは第一階位、ファイアストームは第二階位、ファイアは階位なしの生活魔法だそうだ。
今の俺の火属性レベルでは第三階位まで使えるので、第三階位のフレイムアローとフラッシュを新たに覚える。
他に水、風、土の三属性の呪文のうち、第一階位に相当するアイスバレット、マジックアロー、ストーンバレットと生活魔法に相当する流水(ウォーター)、そよ風(ブリーズ)、掘削(ディギング)を覚えたが、使える場所が無かったので、実際には生活魔法しか使えていない。
仕方が無いので、流水やそよ風の魔法の改造を行って、流水の改良で氷の製造=凍結(フリーズ)とそよ風の改良で圧縮(コンプレッション)を作り出す。
流水は一回で〇・五リットルくらいの水を作り出し、凍結ではそれを凍らせることができる。
そよ風は扇風機の強風くらいの風を起こし、圧縮はボンベに貯めた空気が噴き出すイメージの風が得られた。
掘削は、手を当てた地面に直径十五cm、深さ十五cmくらいの穴が掘れるが、これの使い道は農業以外には思いつかない。
早くシュバルツェン迷宮に入り、気兼ねなく攻撃魔法を使い、レベルアップを図りたいと思っている。
食堂でマックスたちにあったが、彼らも明日ノイレンシュタットへ出発するそうだ。
その後、マックスたちと酒を酌み交わし、お互いの安全を祈って別れを済ました。
クロイツタール城を出て、昼食をとった後、ギルドに向かう。
次の目的地のシュバルツェンベルクは、元々は山間(やまあい)の小さな村であったが、百年ほど前に現れたシュバルツェン迷宮のおかげで冒険者が多く集まるようになり、徐々に都市に発展していった町である。
主要な産業は迷宮内で取れる魔石の売買であり、魔石を採取する冒険者目当ての施設が徐々にできていく一種の鉱山町のような発展を遂げている。
このため、食料、衣料、武具などの必要な物資はシュバルツェンベルクで僅かに生産されている分を除けば、王国各地からクロイツタールを経由して運ばれていくことになる。
クロイツタールからシュバルツェンベルクまでのシュバルツェン街道は、シュバルツェンベルク行きが食料、武具などを運ぶ隊商で、クロイツタール行きが採取・加工された魔石やシュバルツェンベルクで生産されている魔道具を運ぶ隊商で賑わっている。
シュバルツェン街道は、クロイツタール周辺こそ治安はいいものの、一日も進むと冒険者用の高価な物資を狙った盗賊や山賊、食料や人間を狙う魔物が襲ってくるドライセン王国内でも危険なことで有名な街道である。
街道の長さは約八十マイル=百三十kmで、標準的な隊商の行程では六日だが、険しい山道、急変する天候などで、途中で夜営が必要になることもしばしば発生する。
このような条件から、シュバルツェン街道の護衛クエストは非常に多い。
(ソロで受け付けてくれる護衛ってあるのかな。一人で街道を進むと盗賊に襲われそうで嫌なんだがな)
俺はそう思いながら、ギルドの入口を潜り、掲示板に向かう。
掲示板には、多数の護衛依頼があるが、やはりパーティでの募集が多い。
ソロの場合、戦闘中で不利になれば逃げ出すこともあるだろうし、単純に戦闘力だけ考えてもソロ五人の組合せよりパーティ五人の方が連携の面でも有利になる。
(できれば大規模な隊商の穴埋め要員として入る方がいいんだが、そんな都合のいい依頼はないだろうな。ノイレンシュタットの時と同じように受付嬢に声を掛けておこうかな)
と思って、受付に向かおうとしたとき、後ろから声を掛けられた。
「もうクエストを受けるのか」
その声にびっくりして振り返ると、そこにはマックスが立っていた。
彼はウンケルバッハの盗賊十二人分の装備を二十四Gで売ったので、俺の分の四Gを渡すためにわざわざギルドにやってきたそうだ。
俺がシュバルツェンベルク行きの護衛クエストを探していると知ると、
「俺の知り合いが明後日、シュバルツェンベルク行きの護衛クエストを受けたと聞いている。その人に声を掛けてみようか」
「助かる。ソロの需要が少なくて困っていたんだ」
マックスは知り合いを連れてくると言い、ギルドから出て行き、三十分後、一人の冒険者を連れて戻ってきた。
「こいつがさっき言った知り合いのカスパーだ。シュバルツェン街道専門の護衛で今回大きい隊商の護衛を受けたそうだ」
「Dランクのタイガだ。シュバルツェンベルク行きの護衛を探していたんだが、なかなか見つからなくてね」
「カスパーだ。五人でパーティを組んでいる。今回は荷馬車十台の護衛なんだが、俺たちのパーティにソロで四、五人プラスしようと思っている。今のところ四人は決まったんだが、もう一人欲しいと思っていたところだ。よければ話を聞いてもらえないか」
カスパーは俺より少し背が高く一八〇cmくらい、誠実そうな感じの二十代後半の人間の男だ。鑑定で確認すると、レベルは三十、片手剣が得意なようだ。
護衛の概要は、荷馬車十台と御者十人、商人三人とともに明後日の朝出発し、六日掛けてシュバルツェンベルクに向かう。この時期は山の天候が不安定なので、短時間のにわか雨が降りやすく、夜営の予定は無いが、シュバルツェンベルクに着くまでに一回は夜営が必要だろうとのことだ。
夜営場所については、比較的安全な場所を数箇所知っているので不安はないそうだ。
報酬は二G。宿泊等の経費は商人持ちで一日遅れるごとに十Sの経費が差し引かれる点はマックス達と受けたクエストと同じだった。
はっきり言って、報酬に興味は無いが、不審に思われないよう真剣に聞いておく。
一通り聞いた後、カスパーに「その条件で問題ない。ぜひ参加させてくれ」と言って右手を差し出す。
「マックスから腕は確かだし、機転も利くと聞いている。あとで雇い主のルーブレヒトさんに会ってくれ」と握手を返してくれた。
ギルドで護衛クエストの受付をし、シュバルツェン街道の情報を仕入れておく。
調べた限りでは、魔物の活動が極端に活発になったとか、盗賊が増えたとかのネガティブな情報は無かった。天候については、カスパーが言ったとおり、この時期はいきなり大雨が降ることが多く、道に水が溢れ、荷馬車が移動できなくなることが多い。一時間も待てば再出発できるので、ビバークして待つのが基本だそうだ。
夜の山の中は急に冷え込むので、雨具とともに防寒対策もしておいた方がいいとのことで、道具屋でオイルスキンのフード付マントを一枚購入した。
翌日は特にすることも無かったので、宿で魔導書を読むことにした。
さすがに参考書ということもあり、最初の方は受験のノウハウが多く書かれている。
概要のところに魔法理論が少し書かれており、
・魔法は呪文=言霊(ことだま)を介して、マナを様々な現象に変える行為である
・マナは様々ところに存在するが、密度が低く、高階位の魔法ほどマナを集めるのに時間が必要
・術者の持つ魔力はマナを現象に変換するための起爆剤となる
・呪文のほかに魔方陣などを描くとより効率的にマナを集められる
・使える階位は術者の魔法レベルで決まる。
・第一階位はレベル一、第二階位はレベル四、第三階位はレベル九と続いていく
・一定レベルに達しないと上位の呪文を覚えていても魔法は発動しない
など、今まで疑問に思っていたことが記載されていた。
魔法の種類についても記載されており、今まで使っていた火属性のファイアボールは第一階位、ファイアストームは第二階位、ファイアは階位なしの生活魔法だそうだ。
今の俺の火属性レベルでは第三階位まで使えるので、第三階位のフレイムアローとフラッシュを新たに覚える。
他に水、風、土の三属性の呪文のうち、第一階位に相当するアイスバレット、マジックアロー、ストーンバレットと生活魔法に相当する流水(ウォーター)、そよ風(ブリーズ)、掘削(ディギング)を覚えたが、使える場所が無かったので、実際には生活魔法しか使えていない。
仕方が無いので、流水やそよ風の魔法の改造を行って、流水の改良で氷の製造=凍結(フリーズ)とそよ風の改良で圧縮(コンプレッション)を作り出す。
流水は一回で〇・五リットルくらいの水を作り出し、凍結ではそれを凍らせることができる。
そよ風は扇風機の強風くらいの風を起こし、圧縮はボンベに貯めた空気が噴き出すイメージの風が得られた。
掘削は、手を当てた地面に直径十五cm、深さ十五cmくらいの穴が掘れるが、これの使い道は農業以外には思いつかない。
早くシュバルツェン迷宮に入り、気兼ねなく攻撃魔法を使い、レベルアップを図りたいと思っている。
食堂でマックスたちにあったが、彼らも明日ノイレンシュタットへ出発するそうだ。
その後、マックスたちと酒を酌み交わし、お互いの安全を祈って別れを済ました。
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2012/12/22 15:34 更新日:2012/12/22 15:34 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
前の話 | 目次 | 次の話 |
読了ボタン