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「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第四章「シュバルツェンベルク」:第9話「休日」
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第4章.第9話「休日」
二十五階突破後、訓練と迷宮探索を交互に繰り返し、レベル、スキルとも順調に上った。
二十六階からゴブリンウォーリア、ゴブリンアーチャー、ゴブリンシャーマンのゴブリンシリーズだが、コボルトウォーリアらと比べ、体力と攻撃力が若干上がっている他は特に問題なく、簡単に突破できた。
三十階の主であるゴブリンキングもほとんど瞬殺できるレベルの敵だったので、三十階までは一日でクリアできた。
三十一階から、グレイウルフ、ワイルドボア、ベアの野生動物系の魔物で、動きが早いグレイウルフ、突進力のワイルドボア、耐久力のあるベアの組合せにかなり苦戦した。
レベルアップ、スキルアップを重ね、十日でレベル十六、両手剣スキル三十五に到達。ようやく目途が付き、更に十日で何とか突破できた。
特に三十五階の主であるレッドベアは、体長十五フィート=四・五mの大物で、魔法を駆使し、ヒットアンドアウェーで少しずつ体力を削る方法で何とか倒すことができたが、HPが二千近い大物相手の戦いはいまだ苦手だ。
苦労した結果、レベル十八、両手剣スキル三十九になった。
ダグマルの鞘への細工もうまく機能し、魔法を使ったあとの剣を拾うまでのタイムラグが無くなった。
そのおかげで属性魔法もコツコツ使えるようになり、何とかすべての属性で第三階位まで使えるようになれた。
高山(タカヤマ) 大河(タイガ) 年齢23 LV18
STR1369, VIT1585, AGI1281, DEX1310, INT4216, MEN2228, CHA1085, LUC1075
HP1049, MP2228, AR5, SR5, DR5, SKL276, MAG153, PL34, EXP259882
スキル:両手剣39(複撃2、狙撃1)、回避30(見切り2)、
軽装鎧25(防御力向上1)、共通語5、隠密11、
探知13、追跡8、罠5、罠解除8、体術20、乗馬8、植物知識9、
水中行動4、上位古代語(上級ルーン)50
魔法:治癒魔法18、火属性16、水属性9、風属性9、土属性9
ミルコの訓練を受け始めて約二ヶ月。
「明日は休みだ。たまにはゆっくり休め」
昨日、ミルコがそう言った時、自分の耳を疑ってしまった。
「ここまで続くとは正直思わなかったぜ。まあ、俺の弟子を名乗ってもいいレベルにはなっただろう」
俺はミルコの言葉が信じられず、「ふぇ?」と変な声を上げて、固まっていた。
「明後日からは、大型の魔物相手の技を教えるから覚悟しておけよ」
やっぱり特訓は待っていた。そう甘くは無いということだ。
やられっぱなしでは癪なので、「俺も遂に”剣鬼”の弟子か。うんうん、いい響きだ」とからかっておく。
「てめぇ、その名を口にするんじゃねぇ! 恥ずかしくて、こうむずむずするんだよ!」
と背中を掻きながら、怒鳴るのが面白く、もう少しからかってやろうかとも思ったが、休みを取り消されると困るので早々に退散する。
自分でもよく体がもったなとも思うが、ミルコの言う”最後に勝つのは諦めない奴だ。”という意味が今ならよく判る。
人間一度限界を突破すると、少々のことでは動じなくなり、精神的なタフさというやつを持てるようになる。もちろんこのやり方がいいのかは何とも言えないが。
ミルコの無茶な方法のおかげかどうかはともかく、何度か迷宮で死にそうになった時も不思議と「自分はもう死んでしまうんだ」と思うことはなかった。
特にきつい時には、「ミルコの訓練の方がきついよな」と思うと自然と体が動くようになった。
ここまで到達したから、ようやく休みがもらえたのかもしれない。
今日は八時頃までゆっくり寝てから、朝食をとりに行く。
山シギ亭の主人のモリッツが、
「珍しいな。タイガがこんなに遅くに起きてくるなんて」
「ああ。二ヶ月ぶりの休みなんだ。今日は”鬼”にも会わずに済むし、迷宮にも入らなくてもいい。幸せな一日をゆっくり過ごそうと思ってね」
「そうかい。じゃ、ゆっくり食べな」と言って、朝食をおいて厨房に戻っていく。
朝食後、今日の予定を考える。
(そろそろ、四十一階からのアンデッドエリアに入る。アンデッド対策が必要だよな。剣の手入れと合わせてダグマルの店にでも行ってみるか。その後は、のんびりとシュバルツェンベルクの街を散策してみよう)
十時頃、宿を出発し、ダグマルの店に行く。
俺が入って行くと、ダグマルが工房から現れ、
「なんだ、タイガか。今日はやけに遅いじゃないか」と俺の姿に驚いている。
どうもみんな俺がゆっくりしていると違和感を覚えるようだ。
「今日は二ヶ月ぶりの休みなんだ。剣の手入れに合わせて、ちょっとダグマルに相談があってね」
俺が相談と言うと、「ほう、何の相談だ」と少し興味を持ったようだ。
「もうすぐ、四十一階からのアンデッドエリアに入るんだ。俺の剣は切れ味はいいんだが、アンデッドには効果がない。何かいいものがないかと思ってね」
「なるほど、ちょっと待ってろ」と言って、工房の方へ歩いていく。
五分ほど待っていると、「これなんかどうだ」と言って、一振りの両手剣を持ってきた。
形は俺が使っているものに似ている。
「これはな、鋼の剣にミスリルをコーティングした廉価版のミスリルソードなんだ。俺の試作品で一応アンデッドに効果があることは確認できている。欠点は頻繁にコーティングし直さないと効果が無くなることなんだが、二、三日は効果がもつから、使ってみないか」
俺は剣を手に取りながら、話を聞いていく。
「面白そうだな。再コーティングにはどのくらいの時間が掛かるんだ」
「一日貰えれば充分だ。中が鋼だから切れ味もいいし、自信作なんだが、使いこなせる奴がいなくてな。今なら、ただで使わせてやるぞ」
俺はミスリルを使っている剣がただで使えるという言葉に驚き、
「ただでいいのか! ミスリルのコーティングって結構金が掛かるんじゃないのか」
「まあ、そうなんだがな。アンデッドエリアに行くような奴は自前の装備を揃えているし、こういった誰も使ったことがない武器は使ってくれる奴が極端に少ない」
嫌な思いででもあるのか、ダグマルは続けて、
「それに慣れない奴が使うとすぐに壊される。その点、お前さんなら、あまり気にせず使ってくれそうだし、変な使い方で壊すことも無いだろう」
「まあ、ダグマルの作ったものなら信用してるから、気にせず使うな。ところで、効果は突然切れることはないんだろ。段々落ちていく感じか?」
「そうだな。コーティングが剥がれたところから効果がなくなるが、一気になくなることは無いよ」
大体のところは確認できたので、工房の奥の試し切り場に向かう。
振ってみるとディルクの剣と同じバランスでほとんど違和感はない。
(これならすぐにでも使えるな)
試し切りでワラ人形を切り裂くが、さすがに鋭い切れ味だ。
「OK。こいつを買おう。いくらだ」
「貸すだけでいいだろ。どうせ近いうちに師匠の剣を手に入れるのに俺の剣はいらないだろう」
「まあそうだが、本当にタダって訳にも行かないだろう」
「いや、まだ試作品だから金は取らない。その代りアンデッドを斬った時の感想と言うか、何か感じたことがあったら教えてくれ」
(モニタ契約みたいなものか)
「了解。じゃ、必要になったら借りに来るよ」
武器屋での用事も済んだので、街をブラブラと歩く。
(どこへ行こうかな。こっちの世界に来て随分経つが、遊びらしい遊びをしていないよな。色街でも行ってみるか)
することもなく、遊び仲間もいないので、娼館が並ぶ色街へ行ってみる。
色街は、シュバルツェンベルクの中心からやや北側に行ったところにあり、冒険者相手の娼館が多く並ぶ。
通りを歩くと、客引きがひっきりなしに声を掛け、娼婦、男娼などが出窓から手招きしてくる。
冒険者や隊商の護衛らしい男女が娼館の中をのぞき、値踏みをしながら、歩いており、時折、娼館に入っていく。
(すごい活気だな。昼間からこれなら、夜になったらどうなるんだろう)
俺もきょろきょろしながら、大通りを歩いていく。
学生時代を含め、大都会の歓楽街とは縁がなかった俺は、すぐに客引きの若い男に捕まってしまった。
「冒険者のお兄さん。うちで遊んでいきなよ。まあまあ、そんなに逃げ腰にならなくても、うちは別嬪揃いだし、エルフ、ドワーフ、獣人も揃えているよ。よりどりみどり、夕方までなら半金貨1枚でどうだい」
俺はエルフに、ドワーフ、獣人といったラインナップにも驚くが、半日で半金貨一枚=五万円という金額の方に驚く。
(金貨二枚で一家四人が都会で一ヶ月暮らせるって聞いたぞ。冒険者価格なのか?)
他にも獣人と言う言葉に魅かれ、「獣人ってどんな獣人がいるんだ?」と聞いてみる。
俺にその気があると見たのか、にやりと笑った客引きは、「狼人、猫人がいるよ。どっちも胸がでかくてかわいいよ」と言って、ドンドン引っ張っていく。
まだ、入っていく覚悟が出来ていないので、なんとか振り解こうとするが、どんな技なのか知らないが腕を取られたまま館の中に引き込まれてしまう。
(ジャイアントスパイダーの糸より強いんじゃないか。どうしよう、入っちまったよ)
「お一人様、ご来店だよ」と言って、入り口近くに座っている化粧の濃い年嵩の女に渡されてしまった。
完全に虜になってしまった俺は、「まずい」と思いながらも抜け出すことができない。
心のどこかにここで娼婦を買ってもいいかなという考えがあったのかもしれない。
「あら、お兄さん。こういうとこは初めてかしら? 今はお客を取っている子がいないから選びたい放題よ」
と腕を絡めながら、娼婦たちが控えている部屋に連れて行かれる。
クラクラするくらいキツイ香水の匂いが立ち込め、中には十人ほどの娼婦が扇情的な薄手の服を着て、こちらに流し目を送ってくる。
(こうなったら、腹を括って遊ぼう。俺にはウィルス耐性があるし、金もある)
と気合をいれて、部屋の中の娼婦たちを見てみる。
(結構美人が多いな。折角だから亜人がいいな。)
一人のエルフの女性に目が留まる。
鑑定で見てみると、年齢38歳で隷属の魔法が掛かっている。首には革製の首輪が着けられており、よく見ると娼婦全員が同じものを着けていた。
(全員奴隷なのか。奴隷ってことは、儲けも貰えないだろうから、客を喜ばせようっていうインセンティブが働かないんだよな)
そう考えると、急にやる気がなくなり、面倒になってきた。
(なんか一気にやる気がなくなったな。でも、このまま帰してくれるはずはないし、半金貨一枚なら払って帰るか)
一度萎えてしまうと、体臭がきついそうとか、目が死んでいるとか、毛じらみは大丈夫だろうかとか、悪いところばかりが気になってしまう。
(どうせ、一時間くらい話をするだけだから、一番客に相手にされそうにない子にしよう)
特に深い理由はなかったが、田舎者っぽい野暮ったい感じの二十五歳くらいの人間の娼婦を指差し、「この子」と指名する。
驚いた女将らしい女は、
「えっ! このエルナでいいのかい。他にもきれいどころが一杯いるじゃない。だれでも同じ値段だよ」
と他の子を薦めてくる。
俺はどうせ話をするだけだと思い、「この子がいいんだが、駄目なら帰るよ」と帰るそぶりを見せる
あきれ顔の女将は物好きだねと言いながら、
「判ったわよ。じゃ先払いで半金貨一枚。エルナだから朝まででいいわよ」
さっきの客引きとは違うことを言ってきたため、「日没までじゃなくてもいいのか」と聞き直してしまった。
「どうせ、夕方から客を取らせてもほとんど相手にされない子だからね。昼から客が着くなんて滅多にないことだよ。存分にかわいがってもらいな」
後半は野暮ったい娼婦のエルナに向けての言葉だ。
俺は半金貨一枚を支払い、奥の個室に向かった。
個室は四畳半くらいの大きさでベッドと小さなテーブルといすが置いてあるだけ。小さな明り取りの窓がひとつあるが、中は薄暗く、澱んだ空気の中にろうそくが一本灯されている。
エルナと呼ばれた娼婦は、身長は一六〇cmくらい、薄い栗色の髪で茶色の目、丸顔で鼻は低く、笑うと愛嬌がありそうだが、今は少しおどおどしており、知らない人に怯えるチワワみたいだ。
鑑定で調べると、歳は二十三歳、病気はしていないようだ。
俺がボーと立っていると、エルナは服を脱ぎ始め、
「あのぉ、お客さんも脱いで下さい。それともあたしが脱がした方がいいですか?」
と聞いてくる。
(そうだよな。こういうところに来て、することなんてひとつしかないんだから、突っ立ったままなのは変だよな)
そう考えている自分がおかしく、少し饒舌になる。
「まあ、時間はたっぷりあるんだから、ゆっくりしよう。ちょっと話をしないか」
不思議そうな顔で「はぁ?」と首を傾げ、服を脱ぐ手を止める。
「立っているのも変だし、ここに座って」
とベッドを指差し、先に座る。
エルナは俺のすぐ横に座り、しな垂れかかってきた。
「まあ、ゆっくり話をしないか。俺は見ての通りの冒険者。名前はタイガだ。そっちの名前はエルナでよかったよな」
「うん。でも、おかしなお客さんね。まあ、あたしを選んだ時点で変だけど」
彼女は思い出し笑いのようなクスクスと言った感じで笑っている。
俺もおかしなことをしている自覚はあったが、一応フォローを入れるように、
「そうかい。話して楽しそうだから、選んだんだが」
「そうよ。普通はエルフの子とか、獣人の子とかから選ばれていって、あたしはいつも一番最後。売れ残りのエルナなのよ」
自嘲気味だが嫌味な感じはなく、話し始めると予想通り愛嬌のある笑顔を見せてくれる。彼女自身、話をするのが好きなようでいろいろなことを話していった。
エルナは、北部のウンケルバッハ伯爵領のある村の農家の生まれで、四人兄弟の一番上。
十年前の不作の年に十三歳で奴隷商に売られたそうだ。
最初のうちは、商家の小間使いとして働いていたが、七年前にその商家が盗賊に荷を奪われて没落し、エルナはオークションに出された末、この娼館に買われてきたそうだ。
買われてきた当初から、娼婦としては全く売れず、酔っ払いか変わった趣味(どんな趣味かは教えてくれなかった)の客の相手ばかりしているそうだ。
話をしていると、よく笑う娘で、迷宮で時々舐める飴を渡すと物すごく喜んでくれた。
(中学の同級生にこんな感じの女子がいたな。なんか、“構ってほしい”って、じゃれつく子犬か何かみたいに、喜怒哀楽の判りやすい子だよな)
俺は彼女を見ながらそんなことを思っていた。
話が途切れ、沈黙が部屋を支配する。
彼女は場の空気を察したように
「お客さん、そろそろする?」
俺は抱いてもいいかなと思わなくもなかったが、久しぶりにプライベートでの会話の余韻を楽しみたいため、
「う?ん。今日は止めておくよ。どうも奴隷の娘(こ)と無理やりやるみたいで、やる気が起きないんだ」と断った。
彼女は眼を見開き、あきれた表情を見せた後、
「ここに来てそんなこと言うなんて、ほんと、変わってるね。でも抱いてもらえないとあたしが困るの。あとで女将さんから“客を満足させられないなんて何してんだい!”って叱られるから」
と女将の声色を真似ておどける。
「それなら、大丈夫だよ。帰りにチップを渡して“エルナは良かった”と言って帰るから」
俺の何気ない一言が、彼女の女性としてのプライドを傷つけてしまったようだ。
「やっぱり、あたしじゃダメか。魅力ないもんね」と今度は少し寂しそうな顔をして俯く。
俺は慌ててフォローを入れようと思うが、どう言っていいのか判らず、
「そんなことはないけど……話をするだけじゃ、ダメかい」
彼女もそれを察してくれたのか、「そんなことはないけど……無理に抱いてもらうのも変だし、う?ん」と微妙な表情で考え込んでしまう。
「俺も最近忙しかったから、仕事の話以外、あまり人と話しをしていないんだ。たまにくるから話に付き合ってくれよ」
俺は正直にそう話し、彼女も「変な人ね、でもいいわ」と言って話に付き合ってくれた。その後、二時間ほどいろいろ話をして個室を出ていく。
女将たちに変に思われないよう、エルナの腰を抱きながら、玄関のほうに歩いていき、
「今日は楽しかったよ。女将、チップだ」
と言って、半金貨一枚をポーンと投げる。
女将はビックリした顔をして、投げられた半金貨を慌てて受け取っていた。
「どうも……また、御贔屓に」と言って、頭を下げる。
俺は手を挙げて応え、
「忙しいから、滅多に来れないけど、楽しかったからまた来るよ」
俺はそのまま宿に向かって歩いていった。
(かなり散財したけど、楽しかったし、こんなに仕事以外の話をしたのは、ベッカルト村でギルやリサと食事しながら話をしたとき以来だもんな)
自分が思っているよりストレスが溜まっていたようだが、久しぶりに迷宮や剣術、装備以外の話ができ、かなり精神的な疲れが取れたようだ。
(ふ?。今日はいい休日だった)
その頃、娼館では、
「あのエルナが気に入られるなんて、どういう趣味をしているんだろうね」
と売れっ子の娼婦が言うと、女将がエルナに向かって
「そうだね。でも、今時、あの若さで半金貨一枚をぽんと出してくれるなんて、相当腕の立つ冒険者じゃないの。エルナ、絶対に逃がすんじゃないよ」
「でも、あの人、今日は二ヶ月ぶりに休めたから、次はいつになるか判らないって言っていたし、二ヶ月も経てば、あたしのことなんか忘れちゃうわよ」
「二ヶ月ねぇ……ところで名前はなんて言うんだい。まさか聞いてないなんて事はないだろうね」
「えっと、確か“タイガ”っていう変わった名前だった」
「タイガねぇ……どっかで聞いたけど、思い出せないわ。どっちにしても、うちの御贔屓になってもらうようにがんばりな」
「うん」
「運が良ければ身請けしてもらえるかもしれないんだよ。あんたの稼ぎはうちで一番悪いんだから、身請けしてもらえるんだったら、その方がうちにとっても助かるんだからね」
エルナは上の空で、
(ほんと、おかしな人だった。でも、久しぶりに普通に男の人と話したかな。また来てくれると嬉しいけど、あんまり期待しない方がいいかな)
二十五階突破後、訓練と迷宮探索を交互に繰り返し、レベル、スキルとも順調に上った。
二十六階からゴブリンウォーリア、ゴブリンアーチャー、ゴブリンシャーマンのゴブリンシリーズだが、コボルトウォーリアらと比べ、体力と攻撃力が若干上がっている他は特に問題なく、簡単に突破できた。
三十階の主であるゴブリンキングもほとんど瞬殺できるレベルの敵だったので、三十階までは一日でクリアできた。
三十一階から、グレイウルフ、ワイルドボア、ベアの野生動物系の魔物で、動きが早いグレイウルフ、突進力のワイルドボア、耐久力のあるベアの組合せにかなり苦戦した。
レベルアップ、スキルアップを重ね、十日でレベル十六、両手剣スキル三十五に到達。ようやく目途が付き、更に十日で何とか突破できた。
特に三十五階の主であるレッドベアは、体長十五フィート=四・五mの大物で、魔法を駆使し、ヒットアンドアウェーで少しずつ体力を削る方法で何とか倒すことができたが、HPが二千近い大物相手の戦いはいまだ苦手だ。
苦労した結果、レベル十八、両手剣スキル三十九になった。
ダグマルの鞘への細工もうまく機能し、魔法を使ったあとの剣を拾うまでのタイムラグが無くなった。
そのおかげで属性魔法もコツコツ使えるようになり、何とかすべての属性で第三階位まで使えるようになれた。
高山(タカヤマ) 大河(タイガ) 年齢23 LV18
STR1369, VIT1585, AGI1281, DEX1310, INT4216, MEN2228, CHA1085, LUC1075
HP1049, MP2228, AR5, SR5, DR5, SKL276, MAG153, PL34, EXP259882
スキル:両手剣39(複撃2、狙撃1)、回避30(見切り2)、
軽装鎧25(防御力向上1)、共通語5、隠密11、
探知13、追跡8、罠5、罠解除8、体術20、乗馬8、植物知識9、
水中行動4、上位古代語(上級ルーン)50
魔法:治癒魔法18、火属性16、水属性9、風属性9、土属性9
ミルコの訓練を受け始めて約二ヶ月。
「明日は休みだ。たまにはゆっくり休め」
昨日、ミルコがそう言った時、自分の耳を疑ってしまった。
「ここまで続くとは正直思わなかったぜ。まあ、俺の弟子を名乗ってもいいレベルにはなっただろう」
俺はミルコの言葉が信じられず、「ふぇ?」と変な声を上げて、固まっていた。
「明後日からは、大型の魔物相手の技を教えるから覚悟しておけよ」
やっぱり特訓は待っていた。そう甘くは無いということだ。
やられっぱなしでは癪なので、「俺も遂に”剣鬼”の弟子か。うんうん、いい響きだ」とからかっておく。
「てめぇ、その名を口にするんじゃねぇ! 恥ずかしくて、こうむずむずするんだよ!」
と背中を掻きながら、怒鳴るのが面白く、もう少しからかってやろうかとも思ったが、休みを取り消されると困るので早々に退散する。
自分でもよく体がもったなとも思うが、ミルコの言う”最後に勝つのは諦めない奴だ。”という意味が今ならよく判る。
人間一度限界を突破すると、少々のことでは動じなくなり、精神的なタフさというやつを持てるようになる。もちろんこのやり方がいいのかは何とも言えないが。
ミルコの無茶な方法のおかげかどうかはともかく、何度か迷宮で死にそうになった時も不思議と「自分はもう死んでしまうんだ」と思うことはなかった。
特にきつい時には、「ミルコの訓練の方がきついよな」と思うと自然と体が動くようになった。
ここまで到達したから、ようやく休みがもらえたのかもしれない。
今日は八時頃までゆっくり寝てから、朝食をとりに行く。
山シギ亭の主人のモリッツが、
「珍しいな。タイガがこんなに遅くに起きてくるなんて」
「ああ。二ヶ月ぶりの休みなんだ。今日は”鬼”にも会わずに済むし、迷宮にも入らなくてもいい。幸せな一日をゆっくり過ごそうと思ってね」
「そうかい。じゃ、ゆっくり食べな」と言って、朝食をおいて厨房に戻っていく。
朝食後、今日の予定を考える。
(そろそろ、四十一階からのアンデッドエリアに入る。アンデッド対策が必要だよな。剣の手入れと合わせてダグマルの店にでも行ってみるか。その後は、のんびりとシュバルツェンベルクの街を散策してみよう)
十時頃、宿を出発し、ダグマルの店に行く。
俺が入って行くと、ダグマルが工房から現れ、
「なんだ、タイガか。今日はやけに遅いじゃないか」と俺の姿に驚いている。
どうもみんな俺がゆっくりしていると違和感を覚えるようだ。
「今日は二ヶ月ぶりの休みなんだ。剣の手入れに合わせて、ちょっとダグマルに相談があってね」
俺が相談と言うと、「ほう、何の相談だ」と少し興味を持ったようだ。
「もうすぐ、四十一階からのアンデッドエリアに入るんだ。俺の剣は切れ味はいいんだが、アンデッドには効果がない。何かいいものがないかと思ってね」
「なるほど、ちょっと待ってろ」と言って、工房の方へ歩いていく。
五分ほど待っていると、「これなんかどうだ」と言って、一振りの両手剣を持ってきた。
形は俺が使っているものに似ている。
「これはな、鋼の剣にミスリルをコーティングした廉価版のミスリルソードなんだ。俺の試作品で一応アンデッドに効果があることは確認できている。欠点は頻繁にコーティングし直さないと効果が無くなることなんだが、二、三日は効果がもつから、使ってみないか」
俺は剣を手に取りながら、話を聞いていく。
「面白そうだな。再コーティングにはどのくらいの時間が掛かるんだ」
「一日貰えれば充分だ。中が鋼だから切れ味もいいし、自信作なんだが、使いこなせる奴がいなくてな。今なら、ただで使わせてやるぞ」
俺はミスリルを使っている剣がただで使えるという言葉に驚き、
「ただでいいのか! ミスリルのコーティングって結構金が掛かるんじゃないのか」
「まあ、そうなんだがな。アンデッドエリアに行くような奴は自前の装備を揃えているし、こういった誰も使ったことがない武器は使ってくれる奴が極端に少ない」
嫌な思いででもあるのか、ダグマルは続けて、
「それに慣れない奴が使うとすぐに壊される。その点、お前さんなら、あまり気にせず使ってくれそうだし、変な使い方で壊すことも無いだろう」
「まあ、ダグマルの作ったものなら信用してるから、気にせず使うな。ところで、効果は突然切れることはないんだろ。段々落ちていく感じか?」
「そうだな。コーティングが剥がれたところから効果がなくなるが、一気になくなることは無いよ」
大体のところは確認できたので、工房の奥の試し切り場に向かう。
振ってみるとディルクの剣と同じバランスでほとんど違和感はない。
(これならすぐにでも使えるな)
試し切りでワラ人形を切り裂くが、さすがに鋭い切れ味だ。
「OK。こいつを買おう。いくらだ」
「貸すだけでいいだろ。どうせ近いうちに師匠の剣を手に入れるのに俺の剣はいらないだろう」
「まあそうだが、本当にタダって訳にも行かないだろう」
「いや、まだ試作品だから金は取らない。その代りアンデッドを斬った時の感想と言うか、何か感じたことがあったら教えてくれ」
(モニタ契約みたいなものか)
「了解。じゃ、必要になったら借りに来るよ」
武器屋での用事も済んだので、街をブラブラと歩く。
(どこへ行こうかな。こっちの世界に来て随分経つが、遊びらしい遊びをしていないよな。色街でも行ってみるか)
することもなく、遊び仲間もいないので、娼館が並ぶ色街へ行ってみる。
色街は、シュバルツェンベルクの中心からやや北側に行ったところにあり、冒険者相手の娼館が多く並ぶ。
通りを歩くと、客引きがひっきりなしに声を掛け、娼婦、男娼などが出窓から手招きしてくる。
冒険者や隊商の護衛らしい男女が娼館の中をのぞき、値踏みをしながら、歩いており、時折、娼館に入っていく。
(すごい活気だな。昼間からこれなら、夜になったらどうなるんだろう)
俺もきょろきょろしながら、大通りを歩いていく。
学生時代を含め、大都会の歓楽街とは縁がなかった俺は、すぐに客引きの若い男に捕まってしまった。
「冒険者のお兄さん。うちで遊んでいきなよ。まあまあ、そんなに逃げ腰にならなくても、うちは別嬪揃いだし、エルフ、ドワーフ、獣人も揃えているよ。よりどりみどり、夕方までなら半金貨1枚でどうだい」
俺はエルフに、ドワーフ、獣人といったラインナップにも驚くが、半日で半金貨一枚=五万円という金額の方に驚く。
(金貨二枚で一家四人が都会で一ヶ月暮らせるって聞いたぞ。冒険者価格なのか?)
他にも獣人と言う言葉に魅かれ、「獣人ってどんな獣人がいるんだ?」と聞いてみる。
俺にその気があると見たのか、にやりと笑った客引きは、「狼人、猫人がいるよ。どっちも胸がでかくてかわいいよ」と言って、ドンドン引っ張っていく。
まだ、入っていく覚悟が出来ていないので、なんとか振り解こうとするが、どんな技なのか知らないが腕を取られたまま館の中に引き込まれてしまう。
(ジャイアントスパイダーの糸より強いんじゃないか。どうしよう、入っちまったよ)
「お一人様、ご来店だよ」と言って、入り口近くに座っている化粧の濃い年嵩の女に渡されてしまった。
完全に虜になってしまった俺は、「まずい」と思いながらも抜け出すことができない。
心のどこかにここで娼婦を買ってもいいかなという考えがあったのかもしれない。
「あら、お兄さん。こういうとこは初めてかしら? 今はお客を取っている子がいないから選びたい放題よ」
と腕を絡めながら、娼婦たちが控えている部屋に連れて行かれる。
クラクラするくらいキツイ香水の匂いが立ち込め、中には十人ほどの娼婦が扇情的な薄手の服を着て、こちらに流し目を送ってくる。
(こうなったら、腹を括って遊ぼう。俺にはウィルス耐性があるし、金もある)
と気合をいれて、部屋の中の娼婦たちを見てみる。
(結構美人が多いな。折角だから亜人がいいな。)
一人のエルフの女性に目が留まる。
鑑定で見てみると、年齢38歳で隷属の魔法が掛かっている。首には革製の首輪が着けられており、よく見ると娼婦全員が同じものを着けていた。
(全員奴隷なのか。奴隷ってことは、儲けも貰えないだろうから、客を喜ばせようっていうインセンティブが働かないんだよな)
そう考えると、急にやる気がなくなり、面倒になってきた。
(なんか一気にやる気がなくなったな。でも、このまま帰してくれるはずはないし、半金貨一枚なら払って帰るか)
一度萎えてしまうと、体臭がきついそうとか、目が死んでいるとか、毛じらみは大丈夫だろうかとか、悪いところばかりが気になってしまう。
(どうせ、一時間くらい話をするだけだから、一番客に相手にされそうにない子にしよう)
特に深い理由はなかったが、田舎者っぽい野暮ったい感じの二十五歳くらいの人間の娼婦を指差し、「この子」と指名する。
驚いた女将らしい女は、
「えっ! このエルナでいいのかい。他にもきれいどころが一杯いるじゃない。だれでも同じ値段だよ」
と他の子を薦めてくる。
俺はどうせ話をするだけだと思い、「この子がいいんだが、駄目なら帰るよ」と帰るそぶりを見せる
あきれ顔の女将は物好きだねと言いながら、
「判ったわよ。じゃ先払いで半金貨一枚。エルナだから朝まででいいわよ」
さっきの客引きとは違うことを言ってきたため、「日没までじゃなくてもいいのか」と聞き直してしまった。
「どうせ、夕方から客を取らせてもほとんど相手にされない子だからね。昼から客が着くなんて滅多にないことだよ。存分にかわいがってもらいな」
後半は野暮ったい娼婦のエルナに向けての言葉だ。
俺は半金貨一枚を支払い、奥の個室に向かった。
個室は四畳半くらいの大きさでベッドと小さなテーブルといすが置いてあるだけ。小さな明り取りの窓がひとつあるが、中は薄暗く、澱んだ空気の中にろうそくが一本灯されている。
エルナと呼ばれた娼婦は、身長は一六〇cmくらい、薄い栗色の髪で茶色の目、丸顔で鼻は低く、笑うと愛嬌がありそうだが、今は少しおどおどしており、知らない人に怯えるチワワみたいだ。
鑑定で調べると、歳は二十三歳、病気はしていないようだ。
俺がボーと立っていると、エルナは服を脱ぎ始め、
「あのぉ、お客さんも脱いで下さい。それともあたしが脱がした方がいいですか?」
と聞いてくる。
(そうだよな。こういうところに来て、することなんてひとつしかないんだから、突っ立ったままなのは変だよな)
そう考えている自分がおかしく、少し饒舌になる。
「まあ、時間はたっぷりあるんだから、ゆっくりしよう。ちょっと話をしないか」
不思議そうな顔で「はぁ?」と首を傾げ、服を脱ぐ手を止める。
「立っているのも変だし、ここに座って」
とベッドを指差し、先に座る。
エルナは俺のすぐ横に座り、しな垂れかかってきた。
「まあ、ゆっくり話をしないか。俺は見ての通りの冒険者。名前はタイガだ。そっちの名前はエルナでよかったよな」
「うん。でも、おかしなお客さんね。まあ、あたしを選んだ時点で変だけど」
彼女は思い出し笑いのようなクスクスと言った感じで笑っている。
俺もおかしなことをしている自覚はあったが、一応フォローを入れるように、
「そうかい。話して楽しそうだから、選んだんだが」
「そうよ。普通はエルフの子とか、獣人の子とかから選ばれていって、あたしはいつも一番最後。売れ残りのエルナなのよ」
自嘲気味だが嫌味な感じはなく、話し始めると予想通り愛嬌のある笑顔を見せてくれる。彼女自身、話をするのが好きなようでいろいろなことを話していった。
エルナは、北部のウンケルバッハ伯爵領のある村の農家の生まれで、四人兄弟の一番上。
十年前の不作の年に十三歳で奴隷商に売られたそうだ。
最初のうちは、商家の小間使いとして働いていたが、七年前にその商家が盗賊に荷を奪われて没落し、エルナはオークションに出された末、この娼館に買われてきたそうだ。
買われてきた当初から、娼婦としては全く売れず、酔っ払いか変わった趣味(どんな趣味かは教えてくれなかった)の客の相手ばかりしているそうだ。
話をしていると、よく笑う娘で、迷宮で時々舐める飴を渡すと物すごく喜んでくれた。
(中学の同級生にこんな感じの女子がいたな。なんか、“構ってほしい”って、じゃれつく子犬か何かみたいに、喜怒哀楽の判りやすい子だよな)
俺は彼女を見ながらそんなことを思っていた。
話が途切れ、沈黙が部屋を支配する。
彼女は場の空気を察したように
「お客さん、そろそろする?」
俺は抱いてもいいかなと思わなくもなかったが、久しぶりにプライベートでの会話の余韻を楽しみたいため、
「う?ん。今日は止めておくよ。どうも奴隷の娘(こ)と無理やりやるみたいで、やる気が起きないんだ」と断った。
彼女は眼を見開き、あきれた表情を見せた後、
「ここに来てそんなこと言うなんて、ほんと、変わってるね。でも抱いてもらえないとあたしが困るの。あとで女将さんから“客を満足させられないなんて何してんだい!”って叱られるから」
と女将の声色を真似ておどける。
「それなら、大丈夫だよ。帰りにチップを渡して“エルナは良かった”と言って帰るから」
俺の何気ない一言が、彼女の女性としてのプライドを傷つけてしまったようだ。
「やっぱり、あたしじゃダメか。魅力ないもんね」と今度は少し寂しそうな顔をして俯く。
俺は慌ててフォローを入れようと思うが、どう言っていいのか判らず、
「そんなことはないけど……話をするだけじゃ、ダメかい」
彼女もそれを察してくれたのか、「そんなことはないけど……無理に抱いてもらうのも変だし、う?ん」と微妙な表情で考え込んでしまう。
「俺も最近忙しかったから、仕事の話以外、あまり人と話しをしていないんだ。たまにくるから話に付き合ってくれよ」
俺は正直にそう話し、彼女も「変な人ね、でもいいわ」と言って話に付き合ってくれた。その後、二時間ほどいろいろ話をして個室を出ていく。
女将たちに変に思われないよう、エルナの腰を抱きながら、玄関のほうに歩いていき、
「今日は楽しかったよ。女将、チップだ」
と言って、半金貨一枚をポーンと投げる。
女将はビックリした顔をして、投げられた半金貨を慌てて受け取っていた。
「どうも……また、御贔屓に」と言って、頭を下げる。
俺は手を挙げて応え、
「忙しいから、滅多に来れないけど、楽しかったからまた来るよ」
俺はそのまま宿に向かって歩いていった。
(かなり散財したけど、楽しかったし、こんなに仕事以外の話をしたのは、ベッカルト村でギルやリサと食事しながら話をしたとき以来だもんな)
自分が思っているよりストレスが溜まっていたようだが、久しぶりに迷宮や剣術、装備以外の話ができ、かなり精神的な疲れが取れたようだ。
(ふ?。今日はいい休日だった)
その頃、娼館では、
「あのエルナが気に入られるなんて、どういう趣味をしているんだろうね」
と売れっ子の娼婦が言うと、女将がエルナに向かって
「そうだね。でも、今時、あの若さで半金貨一枚をぽんと出してくれるなんて、相当腕の立つ冒険者じゃないの。エルナ、絶対に逃がすんじゃないよ」
「でも、あの人、今日は二ヶ月ぶりに休めたから、次はいつになるか判らないって言っていたし、二ヶ月も経てば、あたしのことなんか忘れちゃうわよ」
「二ヶ月ねぇ……ところで名前はなんて言うんだい。まさか聞いてないなんて事はないだろうね」
「えっと、確か“タイガ”っていう変わった名前だった」
「タイガねぇ……どっかで聞いたけど、思い出せないわ。どっちにしても、うちの御贔屓になってもらうようにがんばりな」
「うん」
「運が良ければ身請けしてもらえるかもしれないんだよ。あんたの稼ぎはうちで一番悪いんだから、身請けしてもらえるんだったら、その方がうちにとっても助かるんだからね」
エルナは上の空で、
(ほんと、おかしな人だった。でも、久しぶりに普通に男の人と話したかな。また来てくれると嬉しいけど、あんまり期待しない方がいいかな)
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2012/12/26 21:23 更新日:2012/12/26 21:25 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
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