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「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)
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前書き・紹介
第六章「死闘」:第16話「グンドルフ無双」
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第6章.第16話「グンドルフ無双」
グンドルフらは夜の街道を東に進み、隠れ家に帰っていく。
夜明け前に隠れ家に戻るが、疲労と空腹で手下たちの不満が溜まって行く。
彼への恐怖により、いまのところ表面化はしていないが、手下たちの表情に徐々に不満の色が見え始めていることに彼は気付いていた。
(拙いな。一度ここから離れるか。だが……)
彼の本能はここから離れるべきと警鐘を鳴らしている。だが、ここを離れた隙にクロイツタール城に入られると更に困難な状況になることは目に見えている。
隠れ家に戻った彼にシュバルツェンベルクに潜入している手下からの報告が来ていた。
大河が迷宮にもぐったこと、クロイツタールから三十名の騎士が増援としてやってきたことが報告される。
「迷宮? 何のためだ?」
「聞いた話じゃ、何日か迷宮にもぐって力をつけるって叫んでいたそうで」
「一人でか?」
「へい、そう聞きやしたぜ。ソロだそうで、いつものことだそうですが」
(迷宮から出てきたところを襲うにしても無理だな。しかし、三日や四日迷宮にもぐったからってそんなに急激に力はつかねぇ。何が狙いだ?)
彼は大河の思惑が判らず、苛立ちが更に募っていく。
ここで様子を見るにしても、移動するにしても、当面の食料の確保は必要である。
彼はもう一度シュバルツェンベルクを襲撃することを決めた。
昼過ぎまで休息をとった後、手下たちを集め、次々と指示を出していく。
彼の考えは、手下たちを囮部隊と襲撃部隊に分け、囮部隊が町を偽装襲撃し、守備隊の巡邏隊を森に引き擦り込む。追いかけてきた守備隊を有利な地形に追い込み、弓で攻撃し、殲滅する。
襲撃部隊は守備隊が囮部隊に釣られて森に入るのを確認してから、商家を襲い、物資を調達する。
「囮は俺が指揮を執る。弓使いは全員、俺と共に囮だ。街の南の森に先に行って、有利な場所を探しておけ。残りは俺が守備隊を森に引き擦り込んだら、すぐに町を襲え。引き上げる時に火を掛けろ。判ったか!」
氷の月、第二週土の曜(二月十日)の午後五時、罠を設置し終えたグンドルフらは街の南側に移動し、襲撃のタイミングを図っていた。
午後十時、街が寝静まった頃、グンドルフら囮部隊は巡回中の守備隊に襲い掛かる。
守備隊は二十五名。うち、十五名が第三騎士団所属のシュバルツェンベルク守備隊員、残り十名が冒険者の構成であった。
グンドルフは守備隊が街の南側を通過するときに、鉢合わせたようなタイミングで姿を現した。
「くそっ! ずらかるぞ!」
守備隊は逃げ出す盗賊たちの人数が少ないことから、罠を警戒して追撃を手控えた。
だが、ロングボウで射掛けられ、逆上した冒険者らに引き摺られる形で、森の中に入っていってしまう。
「止まれ! 森に入るな!」
守備隊の責任者である騎士がそう叫ぶが、冒険者たちは盗賊の人数が少ないことに気付き、報奨金目当てに暴走していた。ここで経験の浅さが裏目に出る。
時折、足を止めるが、その度に矢を射掛けられ、追撃を再開してしまう。
守備隊の騎士も冒険者たちを見捨てるわけにも行かず、徐々に森の奥に引き摺り込まれていった。
三十分ほど追いかけた頃、ようやく冒険者たちも自分たちが危険な森の奥にいることに気付く。
冷静になって周りを見ると、そこは窪地のような地形になっており、自分たちが入ってきた方向以外は、かなり急な上り坂になっている。
盗賊たちはロープか何かを使って軽快に坂を登っているが、自分たちは雪に足をとられ、歩くこともままならない。
どうやら、木の枝の雪を落とし、更に深く、柔らかくしてあるようだ。
すぐに正規の守備隊員たちが追いついてくるが、彼らも同様に深い雪に足をとられてしまう。
その時、ヒュッ、ヒュッという音が複数聞こえ、何人かの仲間が悲鳴を上げて倒れていく。
三方向から矢が射掛けられ、次々と守備隊員、冒険者たちに矢が突き刺さっていく。
「引き返せ! 守備隊を殿(しんがり)に、来た方向に引け!」
守備隊の騎士の叫びに、一斉に後退していく。
深い雪に足をとられているため、軽快とは言えない速度ではあるが、危険な窪地を少しずつ脱出していく。
彼らの後ろでは守備隊員が盾で壁を作っているが、射ち降ろされる矢の威力は強く、数人の守備隊員が倒れていた。
既に十人近い守備隊員、冒険者が倒れているが、騎士は先頭に立ち、撤退を命じていた。
危険な窪地を脱したと思ったとき、一人の双剣使いが待ち構えていた。
「さて、全員ここで死んでもらうとするか」
松明の光に照らされた双剣使いの顔が、恍惚とした表情になり、彼はゆっくりと先頭の騎士に近づいていく。
「全員、ここを突破して街に撤退する! 全力で走り抜け! 街に戻るぞ!」
先頭の騎士はそう叫ぶと、長剣と盾を構え、双剣使いに突っ込んでいく。
双剣使いは特に構えるわけでもなく、騎士が近づいてくるのを、手をだらりと下げた状態で面白そうに見ていた。
騎士の長剣が双剣使いを捕らえると思われた瞬間、双剣使いは雪に覆われた地面をものともせず、軽い足裁きでその斬撃を避ける。両手に持つ二本の剣が金色の光となって騎士の右腕と首を掠めていった。
次の瞬間、騎士の右腕が雪の中に落ち、同時に首から血が噴出していた。そして、そのままの勢いで数歩進んだ騎士は、雪の中に棒のように倒れこんでいく。
白い雪の上に赤い血が流れ、松明の光を怪しく反射した後、血はゆっくりと雪に吸い込まれていった。
騎士の後ろを走っていた冒険者たちは、その姿を見て、思わず足を止めてしまった。
後ろからはまだ矢が降り注いでいるため、背中に矢が突き刺さり、悲鳴を上げているものもいるが、双剣使いの姿を見ると前に進めない。
殿を務めている守備隊員が進めと怒鳴るが、冒険者たちは怯えたウサギのように足を竦ませたまま動けない。
鎧の隙間に何本も矢が刺さったままの守備隊の騎士三人が、業を煮やして前に進み出る。
活路を見出すため、三人が一斉に斬りかかるが、双剣使いは面白く無さそうに剣を振るっていく。剣風が唸り、松明に光を反射したオレンジ色の数条の光が煌くと、たちまち二人は斬り伏せられてしまう。
残った一人は盾をかざして突進し、退路を切り開こうとするが、双剣使いは無造作に接近していく。
二本の剣が鋭い風切り音を数回鳴らすと、無数の血煙が上がり、守備隊員はゆっくりと倒れていった。
三人の騎士があっという間に殺された情景を目の当たりにし、守備隊の兵士五人は自暴自棄に近い決死の攻撃を双剣使いに仕掛けるが、縦横に振るわれる二本の剣の前に次々と倒されていった。
そして最後の兵士が倒れされると、生き残った冒険者たちは皆武器を捨て、這いつくばるようにして降伏を願い出る。だが、双剣使いはゆっくりと近づいていき、一人ずつ斬り殺していった。
彼の表情は無表情になったり、恍惚な表情となったりとさまざまであったが、二本の剣が振られるたびに悲鳴と共に、真っ赤な血の噴水が上がっていく。
「連中の装備は使えるものだけ回収しろ。矢はできるだけ多くだ。終わったら、別働隊と合流だ!」
彼はここで殺戮などなかったかのように、冷徹に物資の回収を命じていた。
(守備隊如きで俺を倒せると考えているんだったら、大間違いだぜ、タイガ。早く出て来いよ。こいつらと同じように切り刻んでやるからよぉ)
一方、別働の襲撃隊十一人は、巡邏隊が森の中に入っていった隙に、商業地区にある食料品店を襲っていた。
予め目を付けてあったのか、わずか十分でその店の店主、家族、店員ら十名を殺害しいた。
そして、持てるだけの食料を持ち、店に火をかけた後、森の中に消えていった。
巡邏隊がグンドルフたちを追いかけていった後、連絡を受けたシュバルツェンベルクの代官モーゼス・ホフマイスターはすぐに守備隊を招集し、巡邏隊の後を追わせる。
その途中、商業地区で火災が発生したとの報告があり、守備隊は消火活動に回らざるを得なかった。
幸い、火事はその一軒が全焼するだけで鎮火できたが、焼け跡から十体の遺体が現れた。その遺体には斬り殺されたと思われる傷があり、盗賊たちに襲撃された後、焼き討ちにあったと報告された。
翌朝、巡邏隊が戻らないことを心配したホフマイスターは、南の森に捜索隊を派遣した。昼過ぎ、無残に殺された巡邏隊の遺体を発見。巡邏隊を襲った敵の足跡は南に続いているとの報告を受ける。
彼は自らの行政手腕には自信はあるが、戦闘指揮があるとは自惚れていない。そこで彼は、クロイツタール騎士団の隊長二人を呼び出し、今後の方針について協議することを思いつく。
「フォーベック殿、レイナルド殿。お呼び立てして申し訳ない。昨夜のことは既にお聞き及びと思うが、貴騎士団にも協力を仰ぎたいと思ってな」
ラザファム・フォーベックはその言葉に頷き、
「昨夜のことは聞いております。協力することは吝かではありませんが、我々もタイガ卿の命令を受ける身。まずはモーゼス卿のご要望を伺いたいのですが」
「うむ。昨夜の戦闘で我が隊は十五名の騎士、兵を失った。ベルクヴァイラー村に派遣している三十名を差し引くと現状ではほぼ半数にまで減っておる。更に冒険者ギルドのクラウス支部長が、巡回参加の依頼条件をCランク以上に引き上げたいと、申し出てきおった。これで巡回に使える戦力が大幅に低下したのだ」
数合わせの冒険者たちとは言え、四十名が一気に抜けると百三十名から五十五名へと半数以下になってしまう。
二人は初めて聞くその事実に顔を見合わせている。
「幸いレイナルド殿が増援として到着され、貴騎士団の戦力が増強されておる。出来うるなら、貴騎士団より二十名程度の増援をお願いしたい」
それに対し、フォーベックは即座に了解を伝える。
「二十名をお貸ししましょう。連携のこともありますので、レイナルドを隊長とした一隊として運用して頂きたいが、いかがでしょうかな」
ホフマイスターは大きく頷き、その提案を了承する。
その後、三人で今後の方針を話し合うが、抜本的な良い案が思いつかない。
とりあえず、街の中の警備を厳重にすること、盗賊が現れても深追いはしないことを徹底させることとし、森の中の捜索等は行わないこととなった。
レイナルドは、森の中の死体の状況から、かなりの使い手がいると聞いていた。更に食料品店を襲った盗賊の数も十名前後という情報もあり、森の中には十名程度しかいなかっただろうとの推測も聞いた。
(副長代理がおられれば、何か手を考えて下さったのだろうが、我々では思いつかない。それにしてもグンドルフという盗賊、経験が浅い冒険者が混じっていたとは言え、倍近い守備隊を相手に皆殺しとは。我々もたかが盗賊と侮ると足元をすくわれるかもしれない……)
その日(氷の月第三週日の曜(二月十一日))から、クロイツタール騎士団によるシュバルツェンベルクの巡回が始まった。
彼らの表情には街の中の巡邏という意識はなく、戦場に赴いているという緊張感が溢れていた。
その緊張感が守備隊にも伝わっていった。そして、街の住民たちにもグンドルフの行いが噂となって広がり、いつものどこか自由な雰囲気が失われていった。
隠れ家に戻ったグンドルフは、手に入れた食料を見て、五日は大丈夫だと考えていた。
そして、三日後にもう一度襲撃をかけることを決め、部下たちと共に祝杯を挙げることにした。
(何度でも襲ってやる。クロイツタールの騎士が来ようが、森に引き込めばこっちのものよ。奴が音を上げて出てくるまで何度でも襲ってやる)
グンドルフが守備隊の巡邏隊を壊滅させた前日の氷の月、第二週土の曜(二月十日)。
俺は前日の第二週水の曜(二月九日)の深夜に五十階のボス、ナイトメアを倒した後、階段室で魔力を回復させていた。
充分に魔力が回復した朝の七時頃、階段室に誰もいないことを確認した上で、変身の魔道具を使って金髪の男前(イケメン)に変身する。
携帯のカメラで自分の姿を確認し、問題ないと判断してから、迷宮を出て行くことにした。
(凄い魔道具だな。全く別人だよ。これだけ目立つ顔立ちなら絶対俺だとは気付かないだろう)
変身の魔道具は、身長、体格は変えられないし、服装や装備類にも効かない。顔立ち、髪、肌、目の色などを変えることができ、消費する魔力も俺にとっては気にならないほどなので、長時間使用することが出来る。
但し、変身の魔法が掛かっている間は魔力の回復量が少ないため、魔法の使用は避けた方がいいようだ。
俺は転送室から迷宮の入口に戻り、迷宮を出て行く。
迷宮の入口ではギルドの職員がこんな奴がいたかという顔をするが、朝の交替時間の後なので、特に誰何されることなく出て行くことが出来た。
(とりあえず、迷宮の外に怪しげな奴は見当たらないな。まあ、監視されていることを前提に動いた方がいいだろうな)
俺は普通の冒険者と同じように、まず近くの食堂で朝食をとる。三十分もすると迷宮の入口は大勢の冒険者でごった返してきており、俺は人ごみに紛れて、ギルドの受付に行き、金を降ろしてから、ギラー商会に向かっていった。
ギラー商会に入り、年嵩の従業員に金を見せ、取引したいから会長と話がしたいとギラーを呼び出してもらった。
ギラーは初めてみる冒険者に警戒しながらも、大金を持った冒険者が取引を求めていると聞き、慎重に近づいてきた。
「儂がギラーじゃが、どういったご用件かな」
「俺はタイロン。ちょっと用意してもらいたい物があるんだが、二人で話が出来ないか」
彼は警戒していることを隠そうともせず、
「最近物騒での。それは無理じゃな」
俺は彼にだけ見えるように、クロイツタール騎士団のエンブレムと俺のギルドカードを見せ、カードに名前を表示させる。
彼は驚いたのか、目を見開き、
「タイ、タイロン殿と言ったかの。よろしい応接室に来ていただこうかの。応接室でタイロン殿と話をする。誰も通すな」
彼は俺と共に応接室に入り、椅子に腰を下ろすとふぅと息を吐いている。
「驚きましたぞ! どうやって姿を変えておるのですかの」
「この魔道具ですよ。ノイレンシュタットで手に入れた物ですが、使用回数に制限があるのでこの姿のままで失礼させてもらいます」
「いや、儂としてもその方が好都合じゃ。で、この危険な状況で儂の所に来たのはどういった用件かの」
「まずは情報料の五十Gを支払います」
俺はシュバルツェンベルクを出発する時に約束した情報料について話を切り出す。
「よろしいのですかな。儂の情報は間に合わなかったのですぞ」
「ええ、間に合わなかったのは俺の油断のせいです。ギラーさんのところにもっと早く行っていれば、二人は助けられた……契約通り支払います」
ギラーは珍しく渋るが、結局受け取った。
そして、俺はあるものを用意してもらいたいと予め用意したメモを渡す。
「ここからが本当の用件です。ここに書いてある物を氷の月、第四週風の曜(二月十八日)の朝までに用意して欲しい。荷馬車つきで」
ギラーはメモに書かれたリストを見て、
「八日後ですか。まあ何とかなるでしょうな。荷馬車つきじゃと全部で、百Gでいかがですかな」
(こんな状況でも足元を見るか。さすがギラーさんといったところか。だが、口止め料込みと考えれば高くは無い)
「いいでしょう。前金で百G払います。あと二つお願いがあるんですが……」
俺は白金貨十枚を取り出しながら、一つ目の依頼内容を話していく。
「一つ目はカスパーという冒険者たちのパーティがシュバルツェンベルクにやってきたら、伝言をお願いしたい。荷馬車を用意した氷の月、第四週風の曜(二月十八日)から三日間護衛クエストを受けて欲しいと。報酬は待機期間を含め、一人、一日金貨一枚。俺の名前を出してもいいですが、絶対に秘密は守るよう念を押してください。ギラーさんには斡旋料として金貨五枚お支払いしましょう」
「うむ。了解しましたぞ。カスパーという冒険者が来ない場合はどうしたらよろしいかの」
「ギラーさんが信用できる護衛を五人雇って欲しいのですが、条件は三日で一人金貨一枚。ベルクヴァイラー村までの往復ということで。可能ですか?」
「可能ですな。判りました、その条件でお受けしますぞ」
「もう一つの頼みなのですが、ギラーさんの情報網を使って、ある情報を流して欲しいんです」
ギラーは先を促すように頷く。
「流して欲しい情報なんですが、俺が迷宮で血眼になって戦っていることと、焦りと疲れでまともな判断力が無くなって来ていることを徐々に流して欲しいんです」
「五日後の次の土の曜(二月十五日)になったら、冒険者が見た情報として、俺がかなりボロボロになっていたから、明日にでも出てくるという噂を流してください。そして、その噂を毎日流し続けて欲しいんです。それにあわせて、騎士団は俺がまともな判断力を無くしているから、迷宮から出てきたら落ち着くまで屋敷に軟禁するつもりのようだとも付け加えて下さい」
「うむ。それは構わんのじゃが、三日もすれば誰も信じませんぞ」
「構いません。出来るだけ多くの情報屋を使ってください。お願いします」
その後、最新情報がないか確認する。
「そうじゃ、昨日の夕方、クロイツタールからレイナルド隊長率いる三十名の騎士が到着しましたぞ。顔を出した方がよいのではないですかな」
俺は増援が来たという事実に驚くが、
「屋敷には行きません。すみませんが、ギラーさんも俺がここに来たことを、騎士団に言わないで下さい」
彼は不思議そうな顔をするが、聞かない方がいいだろうと頷くだけに留めている。
俺はグンドルフが街や商人を襲っていないか確認した。
「今のところ盗賊に襲撃されたという話は聞きませんな」
俺は翌日起こる巡邏隊の壊滅という事実を知ることなく、再び迷宮に戻っていった。
(ギラーは計算のできる男だ。俺が姿を変えてここに来たからリスクが小さいと判断するはずだ。目的のものも確実に用意して置くだろう。後はカスパーたちが運良く来てくれれば万々歳なんだが……)
俺は弁当を買い、携行食料を買い足した後、金髪イケメンの姿のまま、迷宮に入っていった。
グンドルフらは夜の街道を東に進み、隠れ家に帰っていく。
夜明け前に隠れ家に戻るが、疲労と空腹で手下たちの不満が溜まって行く。
彼への恐怖により、いまのところ表面化はしていないが、手下たちの表情に徐々に不満の色が見え始めていることに彼は気付いていた。
(拙いな。一度ここから離れるか。だが……)
彼の本能はここから離れるべきと警鐘を鳴らしている。だが、ここを離れた隙にクロイツタール城に入られると更に困難な状況になることは目に見えている。
隠れ家に戻った彼にシュバルツェンベルクに潜入している手下からの報告が来ていた。
大河が迷宮にもぐったこと、クロイツタールから三十名の騎士が増援としてやってきたことが報告される。
「迷宮? 何のためだ?」
「聞いた話じゃ、何日か迷宮にもぐって力をつけるって叫んでいたそうで」
「一人でか?」
「へい、そう聞きやしたぜ。ソロだそうで、いつものことだそうですが」
(迷宮から出てきたところを襲うにしても無理だな。しかし、三日や四日迷宮にもぐったからってそんなに急激に力はつかねぇ。何が狙いだ?)
彼は大河の思惑が判らず、苛立ちが更に募っていく。
ここで様子を見るにしても、移動するにしても、当面の食料の確保は必要である。
彼はもう一度シュバルツェンベルクを襲撃することを決めた。
昼過ぎまで休息をとった後、手下たちを集め、次々と指示を出していく。
彼の考えは、手下たちを囮部隊と襲撃部隊に分け、囮部隊が町を偽装襲撃し、守備隊の巡邏隊を森に引き擦り込む。追いかけてきた守備隊を有利な地形に追い込み、弓で攻撃し、殲滅する。
襲撃部隊は守備隊が囮部隊に釣られて森に入るのを確認してから、商家を襲い、物資を調達する。
「囮は俺が指揮を執る。弓使いは全員、俺と共に囮だ。街の南の森に先に行って、有利な場所を探しておけ。残りは俺が守備隊を森に引き擦り込んだら、すぐに町を襲え。引き上げる時に火を掛けろ。判ったか!」
氷の月、第二週土の曜(二月十日)の午後五時、罠を設置し終えたグンドルフらは街の南側に移動し、襲撃のタイミングを図っていた。
午後十時、街が寝静まった頃、グンドルフら囮部隊は巡回中の守備隊に襲い掛かる。
守備隊は二十五名。うち、十五名が第三騎士団所属のシュバルツェンベルク守備隊員、残り十名が冒険者の構成であった。
グンドルフは守備隊が街の南側を通過するときに、鉢合わせたようなタイミングで姿を現した。
「くそっ! ずらかるぞ!」
守備隊は逃げ出す盗賊たちの人数が少ないことから、罠を警戒して追撃を手控えた。
だが、ロングボウで射掛けられ、逆上した冒険者らに引き摺られる形で、森の中に入っていってしまう。
「止まれ! 森に入るな!」
守備隊の責任者である騎士がそう叫ぶが、冒険者たちは盗賊の人数が少ないことに気付き、報奨金目当てに暴走していた。ここで経験の浅さが裏目に出る。
時折、足を止めるが、その度に矢を射掛けられ、追撃を再開してしまう。
守備隊の騎士も冒険者たちを見捨てるわけにも行かず、徐々に森の奥に引き摺り込まれていった。
三十分ほど追いかけた頃、ようやく冒険者たちも自分たちが危険な森の奥にいることに気付く。
冷静になって周りを見ると、そこは窪地のような地形になっており、自分たちが入ってきた方向以外は、かなり急な上り坂になっている。
盗賊たちはロープか何かを使って軽快に坂を登っているが、自分たちは雪に足をとられ、歩くこともままならない。
どうやら、木の枝の雪を落とし、更に深く、柔らかくしてあるようだ。
すぐに正規の守備隊員たちが追いついてくるが、彼らも同様に深い雪に足をとられてしまう。
その時、ヒュッ、ヒュッという音が複数聞こえ、何人かの仲間が悲鳴を上げて倒れていく。
三方向から矢が射掛けられ、次々と守備隊員、冒険者たちに矢が突き刺さっていく。
「引き返せ! 守備隊を殿(しんがり)に、来た方向に引け!」
守備隊の騎士の叫びに、一斉に後退していく。
深い雪に足をとられているため、軽快とは言えない速度ではあるが、危険な窪地を少しずつ脱出していく。
彼らの後ろでは守備隊員が盾で壁を作っているが、射ち降ろされる矢の威力は強く、数人の守備隊員が倒れていた。
既に十人近い守備隊員、冒険者が倒れているが、騎士は先頭に立ち、撤退を命じていた。
危険な窪地を脱したと思ったとき、一人の双剣使いが待ち構えていた。
「さて、全員ここで死んでもらうとするか」
松明の光に照らされた双剣使いの顔が、恍惚とした表情になり、彼はゆっくりと先頭の騎士に近づいていく。
「全員、ここを突破して街に撤退する! 全力で走り抜け! 街に戻るぞ!」
先頭の騎士はそう叫ぶと、長剣と盾を構え、双剣使いに突っ込んでいく。
双剣使いは特に構えるわけでもなく、騎士が近づいてくるのを、手をだらりと下げた状態で面白そうに見ていた。
騎士の長剣が双剣使いを捕らえると思われた瞬間、双剣使いは雪に覆われた地面をものともせず、軽い足裁きでその斬撃を避ける。両手に持つ二本の剣が金色の光となって騎士の右腕と首を掠めていった。
次の瞬間、騎士の右腕が雪の中に落ち、同時に首から血が噴出していた。そして、そのままの勢いで数歩進んだ騎士は、雪の中に棒のように倒れこんでいく。
白い雪の上に赤い血が流れ、松明の光を怪しく反射した後、血はゆっくりと雪に吸い込まれていった。
騎士の後ろを走っていた冒険者たちは、その姿を見て、思わず足を止めてしまった。
後ろからはまだ矢が降り注いでいるため、背中に矢が突き刺さり、悲鳴を上げているものもいるが、双剣使いの姿を見ると前に進めない。
殿を務めている守備隊員が進めと怒鳴るが、冒険者たちは怯えたウサギのように足を竦ませたまま動けない。
鎧の隙間に何本も矢が刺さったままの守備隊の騎士三人が、業を煮やして前に進み出る。
活路を見出すため、三人が一斉に斬りかかるが、双剣使いは面白く無さそうに剣を振るっていく。剣風が唸り、松明に光を反射したオレンジ色の数条の光が煌くと、たちまち二人は斬り伏せられてしまう。
残った一人は盾をかざして突進し、退路を切り開こうとするが、双剣使いは無造作に接近していく。
二本の剣が鋭い風切り音を数回鳴らすと、無数の血煙が上がり、守備隊員はゆっくりと倒れていった。
三人の騎士があっという間に殺された情景を目の当たりにし、守備隊の兵士五人は自暴自棄に近い決死の攻撃を双剣使いに仕掛けるが、縦横に振るわれる二本の剣の前に次々と倒されていった。
そして最後の兵士が倒れされると、生き残った冒険者たちは皆武器を捨て、這いつくばるようにして降伏を願い出る。だが、双剣使いはゆっくりと近づいていき、一人ずつ斬り殺していった。
彼の表情は無表情になったり、恍惚な表情となったりとさまざまであったが、二本の剣が振られるたびに悲鳴と共に、真っ赤な血の噴水が上がっていく。
「連中の装備は使えるものだけ回収しろ。矢はできるだけ多くだ。終わったら、別働隊と合流だ!」
彼はここで殺戮などなかったかのように、冷徹に物資の回収を命じていた。
(守備隊如きで俺を倒せると考えているんだったら、大間違いだぜ、タイガ。早く出て来いよ。こいつらと同じように切り刻んでやるからよぉ)
一方、別働の襲撃隊十一人は、巡邏隊が森の中に入っていった隙に、商業地区にある食料品店を襲っていた。
予め目を付けてあったのか、わずか十分でその店の店主、家族、店員ら十名を殺害しいた。
そして、持てるだけの食料を持ち、店に火をかけた後、森の中に消えていった。
巡邏隊がグンドルフたちを追いかけていった後、連絡を受けたシュバルツェンベルクの代官モーゼス・ホフマイスターはすぐに守備隊を招集し、巡邏隊の後を追わせる。
その途中、商業地区で火災が発生したとの報告があり、守備隊は消火活動に回らざるを得なかった。
幸い、火事はその一軒が全焼するだけで鎮火できたが、焼け跡から十体の遺体が現れた。その遺体には斬り殺されたと思われる傷があり、盗賊たちに襲撃された後、焼き討ちにあったと報告された。
翌朝、巡邏隊が戻らないことを心配したホフマイスターは、南の森に捜索隊を派遣した。昼過ぎ、無残に殺された巡邏隊の遺体を発見。巡邏隊を襲った敵の足跡は南に続いているとの報告を受ける。
彼は自らの行政手腕には自信はあるが、戦闘指揮があるとは自惚れていない。そこで彼は、クロイツタール騎士団の隊長二人を呼び出し、今後の方針について協議することを思いつく。
「フォーベック殿、レイナルド殿。お呼び立てして申し訳ない。昨夜のことは既にお聞き及びと思うが、貴騎士団にも協力を仰ぎたいと思ってな」
ラザファム・フォーベックはその言葉に頷き、
「昨夜のことは聞いております。協力することは吝かではありませんが、我々もタイガ卿の命令を受ける身。まずはモーゼス卿のご要望を伺いたいのですが」
「うむ。昨夜の戦闘で我が隊は十五名の騎士、兵を失った。ベルクヴァイラー村に派遣している三十名を差し引くと現状ではほぼ半数にまで減っておる。更に冒険者ギルドのクラウス支部長が、巡回参加の依頼条件をCランク以上に引き上げたいと、申し出てきおった。これで巡回に使える戦力が大幅に低下したのだ」
数合わせの冒険者たちとは言え、四十名が一気に抜けると百三十名から五十五名へと半数以下になってしまう。
二人は初めて聞くその事実に顔を見合わせている。
「幸いレイナルド殿が増援として到着され、貴騎士団の戦力が増強されておる。出来うるなら、貴騎士団より二十名程度の増援をお願いしたい」
それに対し、フォーベックは即座に了解を伝える。
「二十名をお貸ししましょう。連携のこともありますので、レイナルドを隊長とした一隊として運用して頂きたいが、いかがでしょうかな」
ホフマイスターは大きく頷き、その提案を了承する。
その後、三人で今後の方針を話し合うが、抜本的な良い案が思いつかない。
とりあえず、街の中の警備を厳重にすること、盗賊が現れても深追いはしないことを徹底させることとし、森の中の捜索等は行わないこととなった。
レイナルドは、森の中の死体の状況から、かなりの使い手がいると聞いていた。更に食料品店を襲った盗賊の数も十名前後という情報もあり、森の中には十名程度しかいなかっただろうとの推測も聞いた。
(副長代理がおられれば、何か手を考えて下さったのだろうが、我々では思いつかない。それにしてもグンドルフという盗賊、経験が浅い冒険者が混じっていたとは言え、倍近い守備隊を相手に皆殺しとは。我々もたかが盗賊と侮ると足元をすくわれるかもしれない……)
その日(氷の月第三週日の曜(二月十一日))から、クロイツタール騎士団によるシュバルツェンベルクの巡回が始まった。
彼らの表情には街の中の巡邏という意識はなく、戦場に赴いているという緊張感が溢れていた。
その緊張感が守備隊にも伝わっていった。そして、街の住民たちにもグンドルフの行いが噂となって広がり、いつものどこか自由な雰囲気が失われていった。
隠れ家に戻ったグンドルフは、手に入れた食料を見て、五日は大丈夫だと考えていた。
そして、三日後にもう一度襲撃をかけることを決め、部下たちと共に祝杯を挙げることにした。
(何度でも襲ってやる。クロイツタールの騎士が来ようが、森に引き込めばこっちのものよ。奴が音を上げて出てくるまで何度でも襲ってやる)
グンドルフが守備隊の巡邏隊を壊滅させた前日の氷の月、第二週土の曜(二月十日)。
俺は前日の第二週水の曜(二月九日)の深夜に五十階のボス、ナイトメアを倒した後、階段室で魔力を回復させていた。
充分に魔力が回復した朝の七時頃、階段室に誰もいないことを確認した上で、変身の魔道具を使って金髪の男前(イケメン)に変身する。
携帯のカメラで自分の姿を確認し、問題ないと判断してから、迷宮を出て行くことにした。
(凄い魔道具だな。全く別人だよ。これだけ目立つ顔立ちなら絶対俺だとは気付かないだろう)
変身の魔道具は、身長、体格は変えられないし、服装や装備類にも効かない。顔立ち、髪、肌、目の色などを変えることができ、消費する魔力も俺にとっては気にならないほどなので、長時間使用することが出来る。
但し、変身の魔法が掛かっている間は魔力の回復量が少ないため、魔法の使用は避けた方がいいようだ。
俺は転送室から迷宮の入口に戻り、迷宮を出て行く。
迷宮の入口ではギルドの職員がこんな奴がいたかという顔をするが、朝の交替時間の後なので、特に誰何されることなく出て行くことが出来た。
(とりあえず、迷宮の外に怪しげな奴は見当たらないな。まあ、監視されていることを前提に動いた方がいいだろうな)
俺は普通の冒険者と同じように、まず近くの食堂で朝食をとる。三十分もすると迷宮の入口は大勢の冒険者でごった返してきており、俺は人ごみに紛れて、ギルドの受付に行き、金を降ろしてから、ギラー商会に向かっていった。
ギラー商会に入り、年嵩の従業員に金を見せ、取引したいから会長と話がしたいとギラーを呼び出してもらった。
ギラーは初めてみる冒険者に警戒しながらも、大金を持った冒険者が取引を求めていると聞き、慎重に近づいてきた。
「儂がギラーじゃが、どういったご用件かな」
「俺はタイロン。ちょっと用意してもらいたい物があるんだが、二人で話が出来ないか」
彼は警戒していることを隠そうともせず、
「最近物騒での。それは無理じゃな」
俺は彼にだけ見えるように、クロイツタール騎士団のエンブレムと俺のギルドカードを見せ、カードに名前を表示させる。
彼は驚いたのか、目を見開き、
「タイ、タイロン殿と言ったかの。よろしい応接室に来ていただこうかの。応接室でタイロン殿と話をする。誰も通すな」
彼は俺と共に応接室に入り、椅子に腰を下ろすとふぅと息を吐いている。
「驚きましたぞ! どうやって姿を変えておるのですかの」
「この魔道具ですよ。ノイレンシュタットで手に入れた物ですが、使用回数に制限があるのでこの姿のままで失礼させてもらいます」
「いや、儂としてもその方が好都合じゃ。で、この危険な状況で儂の所に来たのはどういった用件かの」
「まずは情報料の五十Gを支払います」
俺はシュバルツェンベルクを出発する時に約束した情報料について話を切り出す。
「よろしいのですかな。儂の情報は間に合わなかったのですぞ」
「ええ、間に合わなかったのは俺の油断のせいです。ギラーさんのところにもっと早く行っていれば、二人は助けられた……契約通り支払います」
ギラーは珍しく渋るが、結局受け取った。
そして、俺はあるものを用意してもらいたいと予め用意したメモを渡す。
「ここからが本当の用件です。ここに書いてある物を氷の月、第四週風の曜(二月十八日)の朝までに用意して欲しい。荷馬車つきで」
ギラーはメモに書かれたリストを見て、
「八日後ですか。まあ何とかなるでしょうな。荷馬車つきじゃと全部で、百Gでいかがですかな」
(こんな状況でも足元を見るか。さすがギラーさんといったところか。だが、口止め料込みと考えれば高くは無い)
「いいでしょう。前金で百G払います。あと二つお願いがあるんですが……」
俺は白金貨十枚を取り出しながら、一つ目の依頼内容を話していく。
「一つ目はカスパーという冒険者たちのパーティがシュバルツェンベルクにやってきたら、伝言をお願いしたい。荷馬車を用意した氷の月、第四週風の曜(二月十八日)から三日間護衛クエストを受けて欲しいと。報酬は待機期間を含め、一人、一日金貨一枚。俺の名前を出してもいいですが、絶対に秘密は守るよう念を押してください。ギラーさんには斡旋料として金貨五枚お支払いしましょう」
「うむ。了解しましたぞ。カスパーという冒険者が来ない場合はどうしたらよろしいかの」
「ギラーさんが信用できる護衛を五人雇って欲しいのですが、条件は三日で一人金貨一枚。ベルクヴァイラー村までの往復ということで。可能ですか?」
「可能ですな。判りました、その条件でお受けしますぞ」
「もう一つの頼みなのですが、ギラーさんの情報網を使って、ある情報を流して欲しいんです」
ギラーは先を促すように頷く。
「流して欲しい情報なんですが、俺が迷宮で血眼になって戦っていることと、焦りと疲れでまともな判断力が無くなって来ていることを徐々に流して欲しいんです」
「五日後の次の土の曜(二月十五日)になったら、冒険者が見た情報として、俺がかなりボロボロになっていたから、明日にでも出てくるという噂を流してください。そして、その噂を毎日流し続けて欲しいんです。それにあわせて、騎士団は俺がまともな判断力を無くしているから、迷宮から出てきたら落ち着くまで屋敷に軟禁するつもりのようだとも付け加えて下さい」
「うむ。それは構わんのじゃが、三日もすれば誰も信じませんぞ」
「構いません。出来るだけ多くの情報屋を使ってください。お願いします」
その後、最新情報がないか確認する。
「そうじゃ、昨日の夕方、クロイツタールからレイナルド隊長率いる三十名の騎士が到着しましたぞ。顔を出した方がよいのではないですかな」
俺は増援が来たという事実に驚くが、
「屋敷には行きません。すみませんが、ギラーさんも俺がここに来たことを、騎士団に言わないで下さい」
彼は不思議そうな顔をするが、聞かない方がいいだろうと頷くだけに留めている。
俺はグンドルフが街や商人を襲っていないか確認した。
「今のところ盗賊に襲撃されたという話は聞きませんな」
俺は翌日起こる巡邏隊の壊滅という事実を知ることなく、再び迷宮に戻っていった。
(ギラーは計算のできる男だ。俺が姿を変えてここに来たからリスクが小さいと判断するはずだ。目的のものも確実に用意して置くだろう。後はカスパーたちが運良く来てくれれば万々歳なんだが……)
俺は弁当を買い、携行食料を買い足した後、金髪イケメンの姿のまま、迷宮に入っていった。
後書き
作者:狩坂 東風 |
投稿日:2013/01/26 15:51 更新日:2013/01/26 15:51 『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。 |
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