作品ID:149
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炎に従う〈はずの〉召喚獣
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
見るのは新たな空と不吉な夢。
前の話 | 目次 | 次の話 |
さて。オーティスの〈無駄に長い〉昔話も終わり、フェクトは新たな空を創造する作業に取り掛かった。
だが、フェクトの予想していた作業とは異なった作業。
「あのさ。凄く気になるんだけど」
「何だ」
フェクトの問いに対して興味もなさそうなオーティスが答える。
大体、オーティスがこの空の中にとどまっている理由はもうない。オーティスは高濃度……まあ現実には最高濃度エネルギーを蓄積し、その上であの昔話をフェクトに聞かせるのが此処に留まる理由。そしてそれを果たした今、彼女が此処に留まる理由はない。
「この作業って凄く地味、なんだけどさ」
「それを言ったら前に空を支えていたスカラはどうなる?」
オーティスの真っ白い穢れなき髪が揺れるので彼女がこちらを向いたのが分かった。
溜息一つ。確かにこの地味な作業、書類整理をスカラは一人で行っていた。
そういえば、スカラが人間の住む世界、つまり人間界に来ているときだってこんな分厚い書類と真剣な顔で対峙、していた。
〈はぁ……こう考えてみるとスカラが居ないって、結構重大な問題なんだな〉
ここまできてやっと理解した。ただ単純に空を支える召喚獣が居なくなった、で済まされる問題ではないことがだんだん、分かってきた。
まず第一に、その単純に空を支える召喚獣であるスカラが居なくなったこと。
第二。スカラのような天候を自由自在に変えることができる召喚獣は稀少であること。
第三。召喚獣の源はエネルギーであるため、そのエネルギーを攻撃に使ってしまう。そのため、スカラのような情報収集等の作業は苦手な事〈現在、自分がその状況〉。
「オーティス。本当にこれだけでいいのか?」
「構わないだろう。寧ろ、書類整理のみでいいというのなら簡単な話だ。余計な被害を生まずに済むのだから」
「それは、そうなんだけどさ」
「不満そう、というより不満なんだろう」
「我儘を言わせてもらえれば、これだけでは最高濃度エネルギーを蓄積した意味がない」
「意味はある。ただそれをお前が行っていないだけ」
「最高エネルギーを蓄積した意味? それを行う?」
「さて、お前はその答えを出せるかどうか。本当にお前は私という存在を飽きさせない」
オーティスという存在は俺たち以上に不安定かつ、狙われやすい。無属性というのは正直な話、そこら辺にいくらでも居る。
逆にいえば俺たちのような何らかの属性がついている召喚獣のほうが稀少。
だから常々、何故にオーティスは狙われやすいのか? 嘗て、対召喚獣戦を制した桐生ネルと共にいた召喚獣だから? と考えてしまう。考えるたびに、納得いく結果が見えてこないのが難点だけど。
「手が止まっている。お前が思考をめぐらせてもどうせ結果なんて見えてこないんだから、考えるだけ無駄というものだ」
嘲笑と交わらせたその声の主は当然、オーティスだ。黄色いパーカーを着ているあたり、人間界にでも戻るのだろうか。
「分かってるよ。だけどさ、何でオーティスが狙われるのかな? ていう疑問になれない思考という行為をしていたんですー。どうせ、結果なんてないんですけどねー!」
自分でも子供っぽいと思う。よく……義理の姉には馬鹿にされた。だが事実で自分も自覚しているので何も言い返せなかった。
デスクの上に堂々とその姿を見せているこの書類の数々から目を上げるとそこには見た事がないオーティスが居た。
基本的に。
オーティスタクティスという無属性召喚獣の外見での印象というのは厳かな印象があるという。
先ほども述べたが、真っ白い肩までしかない髪。この俺でさえ一瞬、目を見張ったほどの鋭い眼光を晒す印象強い目。
そして何より、擬人化しているときの彼女のスタイルとそれを覆す古めかしい口調。
……キュリスに言わせればいつも硬いというか無表情なオーティスが時々見せる微笑がとても綺麗だそうで。
残念ながら、俺はそんなオーティスを見た事がない。記憶を掘り返したらまず、先ほどのような嘲笑しか笑いの類を見た事がない。
以前、オーティスが人間界で公園に設置してあるベンチに腰掛け、子供たちと遊んでいる姿を見た。そのときのオーティスの表情はものすごく笑顔だった。まあ彼女は昔、こういう子供と触れ合う機会が多い仕事についていたから懐かしさからくる笑みだったのかもしれない。
オーティスの印象はまず、優しさや女性らしさという言葉ではあらわさない。必ず、誰に言わせても「厳か」と答える。
そんな彼女が今は、
「オーティス?」
「何でそんなことを聞く?」
怒りと困惑と色々な表情が混じった顔は見た事がないモノで。
この空の中、暗闇の中でもはっきりと分かるぐらい彼女の目は訴えていた。
今まで、その問いをしてこなかったくせに。何故今更。
「お、オーティスにとって、そんなに狙われる理由って何なのかな? と思っただけだから!」
「それは即ち、私を召喚した人物が誰か? と聞きたいわけか……」
「何でそういう方向に思考が行っちゃうのかな! そうじゃなくて、あぁもう兎に角、オーティスについて考えるのはもうやめる! それでオーケー?」
「オーケーなわけないだろう。大体」
「何!? まだ何か? オーティスはいっつもそうだろう! 自分に関係のないことはどうでもいいみたいな表情で構えてて、急にその態度を変える! おかげでこっちは困ってることをいい加減、自覚しろ!」
「自覚しろ? 困ってる? それは元はといえばお前たちが原因ではないのか?」
「いいや、たとえ俺たちが原因だとしてもそういう態度をとるオーティスもどうかと思うんだが、俺は!?」
「人の態度にまでお前は口出しできるのか。そうか。そういうことなら教えてやる。無属性の中でも私が狙われるのは」
〈まったく。オーティスだけ悪いっていうのはないけど! でも急に態度を変えるのだけは勘弁してほしい、それだけなのに〉
「フェクト?」
「はい?」
「はい? じゃない。折角、私自らが説明してやろうと言っているのに」
「少し、自己嫌悪に陥っていただけだから。んで? 説明は?」
「……私は嘗てネルと共に対召喚獣戦を制圧、これを鎮圧させた。それが原因だ」
オーティスはデスクに乗っかる書類の中でも特に面倒そうな緑色のファイルを取り出し、めくり始めた。
「この出来事。原因不明のガス爆発事故。これが次なる事件の発端だった。私はこのガス爆発事故の原因として指名手配された」
「ちょっと待て。何故そこでお前の名が出る?」
「私は無属性召喚獣だ。ガスを爆発させるならば炎を使う事だってできる」
「それなら炎属性召喚獣を指名手配したほうがいいだろう」
「いや、それではアバウトすぎた。お前を含めて召喚獣の中で炎属性は無属性の次に多い。まあ無属性に比べたら稀少なほうだが。そして私は嘗て対召喚獣戦を制圧した召喚獣。名は知れ渡っていたし、顔もそれなりに知られていた。だからだ」
「要するに、指名手配するには一番楽で、お前の名を下げる事もできていいと」
「当時、私のことを指名手配したやつらの中には私のことを良く思わない者も大勢居た。そしてこれが発端となり私は今でも狙われている」
気がつけばあたりは明るかった。真っ赤に燃えて。不思議と怖いとは思わず、綺麗だと思った。
「灯ったじゃないか。お前の炎が」
「これが、空?」
「そう。そして此処はその空の内部」
初めて灯った自分の創った空。
だけど……。
「フェクト。もういいだろう。私は」
「? ネオと約束、してなかったか? また遊ぶって」
「果たせそうにない、といっておいてくれればいい」
オーティスの姿が掻き消える。
彼女もまた……。
だが、フェクトの予想していた作業とは異なった作業。
「あのさ。凄く気になるんだけど」
「何だ」
フェクトの問いに対して興味もなさそうなオーティスが答える。
大体、オーティスがこの空の中にとどまっている理由はもうない。オーティスは高濃度……まあ現実には最高濃度エネルギーを蓄積し、その上であの昔話をフェクトに聞かせるのが此処に留まる理由。そしてそれを果たした今、彼女が此処に留まる理由はない。
「この作業って凄く地味、なんだけどさ」
「それを言ったら前に空を支えていたスカラはどうなる?」
オーティスの真っ白い穢れなき髪が揺れるので彼女がこちらを向いたのが分かった。
溜息一つ。確かにこの地味な作業、書類整理をスカラは一人で行っていた。
そういえば、スカラが人間の住む世界、つまり人間界に来ているときだってこんな分厚い書類と真剣な顔で対峙、していた。
〈はぁ……こう考えてみるとスカラが居ないって、結構重大な問題なんだな〉
ここまできてやっと理解した。ただ単純に空を支える召喚獣が居なくなった、で済まされる問題ではないことがだんだん、分かってきた。
まず第一に、その単純に空を支える召喚獣であるスカラが居なくなったこと。
第二。スカラのような天候を自由自在に変えることができる召喚獣は稀少であること。
第三。召喚獣の源はエネルギーであるため、そのエネルギーを攻撃に使ってしまう。そのため、スカラのような情報収集等の作業は苦手な事〈現在、自分がその状況〉。
「オーティス。本当にこれだけでいいのか?」
「構わないだろう。寧ろ、書類整理のみでいいというのなら簡単な話だ。余計な被害を生まずに済むのだから」
「それは、そうなんだけどさ」
「不満そう、というより不満なんだろう」
「我儘を言わせてもらえれば、これだけでは最高濃度エネルギーを蓄積した意味がない」
「意味はある。ただそれをお前が行っていないだけ」
「最高エネルギーを蓄積した意味? それを行う?」
「さて、お前はその答えを出せるかどうか。本当にお前は私という存在を飽きさせない」
オーティスという存在は俺たち以上に不安定かつ、狙われやすい。無属性というのは正直な話、そこら辺にいくらでも居る。
逆にいえば俺たちのような何らかの属性がついている召喚獣のほうが稀少。
だから常々、何故にオーティスは狙われやすいのか? 嘗て、対召喚獣戦を制した桐生ネルと共にいた召喚獣だから? と考えてしまう。考えるたびに、納得いく結果が見えてこないのが難点だけど。
「手が止まっている。お前が思考をめぐらせてもどうせ結果なんて見えてこないんだから、考えるだけ無駄というものだ」
嘲笑と交わらせたその声の主は当然、オーティスだ。黄色いパーカーを着ているあたり、人間界にでも戻るのだろうか。
「分かってるよ。だけどさ、何でオーティスが狙われるのかな? ていう疑問になれない思考という行為をしていたんですー。どうせ、結果なんてないんですけどねー!」
自分でも子供っぽいと思う。よく……義理の姉には馬鹿にされた。だが事実で自分も自覚しているので何も言い返せなかった。
デスクの上に堂々とその姿を見せているこの書類の数々から目を上げるとそこには見た事がないオーティスが居た。
基本的に。
オーティスタクティスという無属性召喚獣の外見での印象というのは厳かな印象があるという。
先ほども述べたが、真っ白い肩までしかない髪。この俺でさえ一瞬、目を見張ったほどの鋭い眼光を晒す印象強い目。
そして何より、擬人化しているときの彼女のスタイルとそれを覆す古めかしい口調。
……キュリスに言わせればいつも硬いというか無表情なオーティスが時々見せる微笑がとても綺麗だそうで。
残念ながら、俺はそんなオーティスを見た事がない。記憶を掘り返したらまず、先ほどのような嘲笑しか笑いの類を見た事がない。
以前、オーティスが人間界で公園に設置してあるベンチに腰掛け、子供たちと遊んでいる姿を見た。そのときのオーティスの表情はものすごく笑顔だった。まあ彼女は昔、こういう子供と触れ合う機会が多い仕事についていたから懐かしさからくる笑みだったのかもしれない。
オーティスの印象はまず、優しさや女性らしさという言葉ではあらわさない。必ず、誰に言わせても「厳か」と答える。
そんな彼女が今は、
「オーティス?」
「何でそんなことを聞く?」
怒りと困惑と色々な表情が混じった顔は見た事がないモノで。
この空の中、暗闇の中でもはっきりと分かるぐらい彼女の目は訴えていた。
今まで、その問いをしてこなかったくせに。何故今更。
「お、オーティスにとって、そんなに狙われる理由って何なのかな? と思っただけだから!」
「それは即ち、私を召喚した人物が誰か? と聞きたいわけか……」
「何でそういう方向に思考が行っちゃうのかな! そうじゃなくて、あぁもう兎に角、オーティスについて考えるのはもうやめる! それでオーケー?」
「オーケーなわけないだろう。大体」
「何!? まだ何か? オーティスはいっつもそうだろう! 自分に関係のないことはどうでもいいみたいな表情で構えてて、急にその態度を変える! おかげでこっちは困ってることをいい加減、自覚しろ!」
「自覚しろ? 困ってる? それは元はといえばお前たちが原因ではないのか?」
「いいや、たとえ俺たちが原因だとしてもそういう態度をとるオーティスもどうかと思うんだが、俺は!?」
「人の態度にまでお前は口出しできるのか。そうか。そういうことなら教えてやる。無属性の中でも私が狙われるのは」
〈まったく。オーティスだけ悪いっていうのはないけど! でも急に態度を変えるのだけは勘弁してほしい、それだけなのに〉
「フェクト?」
「はい?」
「はい? じゃない。折角、私自らが説明してやろうと言っているのに」
「少し、自己嫌悪に陥っていただけだから。んで? 説明は?」
「……私は嘗てネルと共に対召喚獣戦を制圧、これを鎮圧させた。それが原因だ」
オーティスはデスクに乗っかる書類の中でも特に面倒そうな緑色のファイルを取り出し、めくり始めた。
「この出来事。原因不明のガス爆発事故。これが次なる事件の発端だった。私はこのガス爆発事故の原因として指名手配された」
「ちょっと待て。何故そこでお前の名が出る?」
「私は無属性召喚獣だ。ガスを爆発させるならば炎を使う事だってできる」
「それなら炎属性召喚獣を指名手配したほうがいいだろう」
「いや、それではアバウトすぎた。お前を含めて召喚獣の中で炎属性は無属性の次に多い。まあ無属性に比べたら稀少なほうだが。そして私は嘗て対召喚獣戦を制圧した召喚獣。名は知れ渡っていたし、顔もそれなりに知られていた。だからだ」
「要するに、指名手配するには一番楽で、お前の名を下げる事もできていいと」
「当時、私のことを指名手配したやつらの中には私のことを良く思わない者も大勢居た。そしてこれが発端となり私は今でも狙われている」
気がつけばあたりは明るかった。真っ赤に燃えて。不思議と怖いとは思わず、綺麗だと思った。
「灯ったじゃないか。お前の炎が」
「これが、空?」
「そう。そして此処はその空の内部」
初めて灯った自分の創った空。
だけど……。
「フェクト。もういいだろう。私は」
「? ネオと約束、してなかったか? また遊ぶって」
「果たせそうにない、といっておいてくれればいい」
オーティスの姿が掻き消える。
彼女もまた……。
後書き
作者:フェクト |
投稿日:2010/02/16 09:43 更新日:2010/02/16 09:43 『炎に従う〈はずの〉召喚獣』の著作権は、すべて作者 フェクト様に属します。 |
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