作品ID:195
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Devil+Angel=Reo
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第2話。〈途中から過去話〉
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桐生 刹那は覚えていない。覚えているはずもない。
彼女が『ネスタ』であることは昨日知った。
だけど彼女がこの学校の生徒で、初めて言葉を交わしたのは彼女が『ネスタ』の時ではない。
9年前。
正直、桐生なんていう家に用事はなかった。だが、一人の少女を見たときからこの家に居候することは決められていたと思う。
「あなた、だれ?」
自分を見上げる赤い髪の少女が桐生 刹那だと知ったのは桐生の家に初めて入ったとき。
そして彼女が天使であると分かったのはこのとき。
……非常に強いパワーだ。天使は自分たち、対照的な立場にある悪魔とは違う力を持っているが、天使のほとんどは弱弱しい力を体内から発する。
しかし、彼女だけは違った。彼女の力は他の天使たちとは違った力をもち、その性質も違った。
基本、天使たちは「聖なる力」を持ち、その首には金色の鎖で繋がれた、天秤を模したネックレスをつけている。
彼女の場合は聖なる力を持っているが、首には銀色の鎖で繋がれた、青いウォークマンをかけている。
思わず首をかしげた。
普通の天使ではないのは天秤ではなくウォークマンを持っていることからも十分に分かった。しかしだ。何故、天秤ではなくウォークマンなのか、という疑問は解消されるはずもなく。
少女は相変らず、目線を上にあげ、自分の顔を目に映して、首をかしげている。
「迷子か?」
「まいご?」
「……両親は?」
「……おとうさんとおかあさん、どこかいっちゃった……」
彼女が俯く。アスファルトが濡れる。彼女の俯いたその下のアスファルトが彼女の涙でゆっくりと濡れる。やがてアスファルトはこの快晴の中でゆっくりと乾いていく。
彼女の涙そのものすらなかったことにするように。
やがて彼女は顔をあげ、ウォークマンを手にとる。
「おばあちゃんがね、これはわたしがもっていて、って」
ウォークマンを両手で持って、微笑みながら話す彼女。
「あ、おばあちゃん!」
彼女が走り出す。自分の後ろ側に。
後ろを振り向くとかなりの高齢であろう、老婆と目が合った。
感覚が告げた。早く、逃げろと。
老婆といって甘くかかるな、と。
普通の天使たちと力が違った彼女の祖母ならば、その祖母も力が強くても何も違わない、が……。
〈青いウォークマン、本来の天使たちとは桁違いの力強さ、桐生家の者?〉
考えながら、足は無意識のうちに後ろへと行く。
老婆から発せられる殺気。それに怯えている自分を認めたくない。
老婆は少女に向かって笑っていた。
そして少女を連れた老婆がこちらに来たとき、初めて言葉を交わして。
初めて感覚が捉えたのは「恐怖」だった。
「おにいちゃん、ありがとー!」
少女がまた自分を見上げている。
笑顔でそう言った少女。
それが桐生 刹那。
そしてそれが、刹那とのはじめて言葉を交わした日。
刹那が5歳のとき。
彼女が『ネスタ』であることは昨日知った。
だけど彼女がこの学校の生徒で、初めて言葉を交わしたのは彼女が『ネスタ』の時ではない。
9年前。
正直、桐生なんていう家に用事はなかった。だが、一人の少女を見たときからこの家に居候することは決められていたと思う。
「あなた、だれ?」
自分を見上げる赤い髪の少女が桐生 刹那だと知ったのは桐生の家に初めて入ったとき。
そして彼女が天使であると分かったのはこのとき。
……非常に強いパワーだ。天使は自分たち、対照的な立場にある悪魔とは違う力を持っているが、天使のほとんどは弱弱しい力を体内から発する。
しかし、彼女だけは違った。彼女の力は他の天使たちとは違った力をもち、その性質も違った。
基本、天使たちは「聖なる力」を持ち、その首には金色の鎖で繋がれた、天秤を模したネックレスをつけている。
彼女の場合は聖なる力を持っているが、首には銀色の鎖で繋がれた、青いウォークマンをかけている。
思わず首をかしげた。
普通の天使ではないのは天秤ではなくウォークマンを持っていることからも十分に分かった。しかしだ。何故、天秤ではなくウォークマンなのか、という疑問は解消されるはずもなく。
少女は相変らず、目線を上にあげ、自分の顔を目に映して、首をかしげている。
「迷子か?」
「まいご?」
「……両親は?」
「……おとうさんとおかあさん、どこかいっちゃった……」
彼女が俯く。アスファルトが濡れる。彼女の俯いたその下のアスファルトが彼女の涙でゆっくりと濡れる。やがてアスファルトはこの快晴の中でゆっくりと乾いていく。
彼女の涙そのものすらなかったことにするように。
やがて彼女は顔をあげ、ウォークマンを手にとる。
「おばあちゃんがね、これはわたしがもっていて、って」
ウォークマンを両手で持って、微笑みながら話す彼女。
「あ、おばあちゃん!」
彼女が走り出す。自分の後ろ側に。
後ろを振り向くとかなりの高齢であろう、老婆と目が合った。
感覚が告げた。早く、逃げろと。
老婆といって甘くかかるな、と。
普通の天使たちと力が違った彼女の祖母ならば、その祖母も力が強くても何も違わない、が……。
〈青いウォークマン、本来の天使たちとは桁違いの力強さ、桐生家の者?〉
考えながら、足は無意識のうちに後ろへと行く。
老婆から発せられる殺気。それに怯えている自分を認めたくない。
老婆は少女に向かって笑っていた。
そして少女を連れた老婆がこちらに来たとき、初めて言葉を交わして。
初めて感覚が捉えたのは「恐怖」だった。
「おにいちゃん、ありがとー!」
少女がまた自分を見上げている。
笑顔でそう言った少女。
それが桐生 刹那。
そしてそれが、刹那とのはじめて言葉を交わした日。
刹那が5歳のとき。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/05/03 09:21 更新日:2010/05/03 09:21 『Devil+Angel=Reo』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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