作品ID:283
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Devil+Angel=Reo
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第二部・第17話。
前の話 | 目次 | 次の話 |
嫌になるくらい、マリア……じゃなくって、旧ガブリエルこと桐生刹那の母・ナツメは俺につきまとった。
「ちょっとぉ?。そろそろ返事いただいてもいいんじゃないのぉ??」
「ダダをこねるな。お前はガキか」
「ちょ、ガキに言われたくないんですけどぉ?」
間延びした声で話しかけてくる、桐生ナツメに苛立ちと鬱陶しさに眉間にしわを寄せながらも、仕方なく、ナツメの問いに答える。
「あの件、だろ? 正直、両親も祖父母も反対の姿勢を崩そうとしないんだ」
「それをどうにかしてって言ってるでしょ?」
「どうにかって……ナツメやジュン兄みたいに天使も悪魔も関係ないっていう考えの奴らばかりじゃないんだ。それを分かって言ってるのか?」
「むぅ……。まあ、紅來っていったら相当大きなエネルギーを持つ家だし全員、悪魔と天使は区別するっていう人たちばかりだしねぇ」
溜息をついて、ナツメは紅來璃維の部屋から去る直前に、
「諦めるわ。他の家に頼むから。じゃあね」
「ナツメ」
「何よぉ」
不満気に首だけをこちらに向けるナツメ。その動作に伴い、ナツメの赤く長い髪が広がる。
「……俺が家出したらどうだ?」
「はっ!?」
ナツメの黒い両目が驚愕の色に染まる。目をこれ以上ないほど見開く。
「いやいやいや。あんたね、悪魔家系ではかなりの有名な紅來家のお坊ちゃん、紅來璃維が家出したなんて見出しの新聞やニュースを聞きたくも見たくもないんですが、私は」
「……大丈夫じゃない? 多分」
「多分って! 完全に言い切れないんじゃない!」
「当然じゃん。ま。ナツメには、関係なくすればオーケーでしょ?」
「……私に関係なく? んなこと、できるわけないでしょーが」
「なんとかなるんじゃない? 多分だけど」
璃維の言葉に溜息をついて、ナツメは仕方ない、と覚悟を決める。
「もしかしたら、私にも被害や影響が及ぶかもしれない。そのときどうするのよ?」
「ま、ナツメ次第?」
「……貴方が提案してきたわりには軽いわよね」
最もな意見である。
「そしてそれから俺は、家出した。そこまでは予想通りだった。
……ナツメが、ジュン兄が事故で亡くなる前は」
桐生刹那の中に入ったままの精神だけの状態である旧ガブリエルこと、桐生ナツメを睨みつけながら璃維はいい始めた過去。
ナツメとの秘密の会話。
「確かに、あの時ナツメはガブリエルでジュン兄はそれを守護する役目にあった。
けれど、まさか事故で亡くなるなんて予想できもしなかったし、予想なんてしなかった。
だから、刹那と出会うことになってしまった」
予定よりも早い時期に。
刹那とであったとき、自分は5歳で今よりも感情の幅なんてなかった。
それに。
〈あの時はまだ、NEVに入ってたしな〉
「正直、刹那があの場に居て、まさか喪服を着ていてナツメやジュン兄の葬式にでてたなんて知らなかった。けれど、刹那の祖母が現れたとき、どこかで分かった」
あぁ、ナツメとジュン兄はもう居ない。
唇を噛み、璃維は刹那の姿をしたナツメに問いかける。
「どうして今なんだ? どうして今、刹那としてレオ争奪戦に参加しようとした?」
「はぁ。あのね。あの朝日奈翼? 現ラファエルの」
「翼が関係してるのか?」
「ま、いいから聞きなさいよ。その朝日奈翼がアッラーフ復職に反対意見を出し始めたの!」
「何故?」
ナツメの言葉に含まれていた翼のアッラーフ復職反対意見。その言葉に璃維は心中で驚きながらも、表情は無を守ったままで。
「なぜって貴方ね。どうせ、朝日奈翼の目の前で刹那を気絶でもさせたんでしょ」
「……なんで知ってるんだ……」
頭を抱えて璃維が溜息と共に言い放つとナツメは平然と。
「あら。合ってたぁ?」
「え!?」
「あら、さっきの言葉は適当に言ったんだけど」
「……適当かよ」
「だってぇ。それしか思い当たらなかったんだもの!
あの優しい優しい朝日奈翼様がそれまで頑なにアッラーフ復職を声高に叫んでたのに、急に復職には反対だー! って言うのよ? そんな状況になるんだったら、旧アッラーフの刹那に何かあったとしか考えられない。それも朝日奈翼の目の前で」
可愛らしく両手を組み合わせ、上目遣いで璃維を見るナツメ。
「んなことしても、中身がお前だと考えると吐き気すらしてくる」
「んま! 酷い! 聞いた、今のぉ?」
「いちいち間延びさせるな。うざい」
璃維の容赦ない言葉がナツメに降り注ぐ。
……たとえ外見があの桐生刹那だとしても、中身がそうじゃなければどうでもいいということだ。
「ま、いいわ。ちょっとグサリときて精神的ダメージ多いけど、かなりキツいけど、私頑張るわ」
今度はガッツポーズをするナツメ。
「ナツメ、今すぐ刹那からでていけ」
「やっぱり言われると思ったわよ?」
「で? 返事は?」
「……駄目」
「どうしてだ?」
璃維の言葉にナツメは拒否を示す。その心中は。
「刹那が、心配なの」
俯いたそのとき、刹那の赤いパーマ済みの髪が下に落ちる。
「刹那が心配なのっ! 母親として、当たり前でしょう!?
大体、私はアッラーフ復職だって反対なのよ!
どうして!? どうして刹那をアッラーフにしたの!?」
ナツメは刹那の細い腕で璃維に掴みかかる。
璃維の白いシャツの胸元にのびた両手は璃維を揺さぶる。
「どうして、刹那がアッラーフなの?」
「……ナツメとジュン兄の娘だからだ」
「それが!? だったら鈴也にしなさいよ!」
「鈴也じゃ、エネルギーが足りないんだ」
「エネルギーなんて、いくらでも分け与えられるでしょう!?」
「それじゃ駄目なんだ。エネルギーは自分で生成して始めて効果がある。
代用したエネルギーでは、本来の自分のエネルギーと多少の差異がある。
それでは、エネルギーを最大限に活用できないんだよ」
璃維の言葉にナツメは重力に従い、両手を下ろしていく。
「分かったわよ……でていくわよ……でもね、刹那を鈴也の件で責めるのは間違ってる。
これ以上、この子にアッラーフのことを」
「大丈夫。そのために俺が居る」
その言葉にナツメは笑い、ゆっくりと目を閉じる。
「ねぇ、璃維」
「……」
「私、わがままだったかなぁ?」
「わがまますぎる。ジュン兄も大変だっただろうな。こんな奥さんもらって」
「そっか。朝日奈翼、戻ってくるといいね」
「戻ってこなかったら、探しに行くだけだ」
「貴方らしい」
噴出すように笑ってからナツメは本当の最期の言葉を残す。
「刹那を、わが娘をよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げて、ナツメは、ナツメの精神体は重力に逆らって天に昇っていくように空気中で霧散する。
「よろしくされますか。たまには」
苦笑した一人の悪魔少年は、その霧散した精神体に笑いかけた。
「ちょっとぉ?。そろそろ返事いただいてもいいんじゃないのぉ??」
「ダダをこねるな。お前はガキか」
「ちょ、ガキに言われたくないんですけどぉ?」
間延びした声で話しかけてくる、桐生ナツメに苛立ちと鬱陶しさに眉間にしわを寄せながらも、仕方なく、ナツメの問いに答える。
「あの件、だろ? 正直、両親も祖父母も反対の姿勢を崩そうとしないんだ」
「それをどうにかしてって言ってるでしょ?」
「どうにかって……ナツメやジュン兄みたいに天使も悪魔も関係ないっていう考えの奴らばかりじゃないんだ。それを分かって言ってるのか?」
「むぅ……。まあ、紅來っていったら相当大きなエネルギーを持つ家だし全員、悪魔と天使は区別するっていう人たちばかりだしねぇ」
溜息をついて、ナツメは紅來璃維の部屋から去る直前に、
「諦めるわ。他の家に頼むから。じゃあね」
「ナツメ」
「何よぉ」
不満気に首だけをこちらに向けるナツメ。その動作に伴い、ナツメの赤く長い髪が広がる。
「……俺が家出したらどうだ?」
「はっ!?」
ナツメの黒い両目が驚愕の色に染まる。目をこれ以上ないほど見開く。
「いやいやいや。あんたね、悪魔家系ではかなりの有名な紅來家のお坊ちゃん、紅來璃維が家出したなんて見出しの新聞やニュースを聞きたくも見たくもないんですが、私は」
「……大丈夫じゃない? 多分」
「多分って! 完全に言い切れないんじゃない!」
「当然じゃん。ま。ナツメには、関係なくすればオーケーでしょ?」
「……私に関係なく? んなこと、できるわけないでしょーが」
「なんとかなるんじゃない? 多分だけど」
璃維の言葉に溜息をついて、ナツメは仕方ない、と覚悟を決める。
「もしかしたら、私にも被害や影響が及ぶかもしれない。そのときどうするのよ?」
「ま、ナツメ次第?」
「……貴方が提案してきたわりには軽いわよね」
最もな意見である。
「そしてそれから俺は、家出した。そこまでは予想通りだった。
……ナツメが、ジュン兄が事故で亡くなる前は」
桐生刹那の中に入ったままの精神だけの状態である旧ガブリエルこと、桐生ナツメを睨みつけながら璃維はいい始めた過去。
ナツメとの秘密の会話。
「確かに、あの時ナツメはガブリエルでジュン兄はそれを守護する役目にあった。
けれど、まさか事故で亡くなるなんて予想できもしなかったし、予想なんてしなかった。
だから、刹那と出会うことになってしまった」
予定よりも早い時期に。
刹那とであったとき、自分は5歳で今よりも感情の幅なんてなかった。
それに。
〈あの時はまだ、NEVに入ってたしな〉
「正直、刹那があの場に居て、まさか喪服を着ていてナツメやジュン兄の葬式にでてたなんて知らなかった。けれど、刹那の祖母が現れたとき、どこかで分かった」
あぁ、ナツメとジュン兄はもう居ない。
唇を噛み、璃維は刹那の姿をしたナツメに問いかける。
「どうして今なんだ? どうして今、刹那としてレオ争奪戦に参加しようとした?」
「はぁ。あのね。あの朝日奈翼? 現ラファエルの」
「翼が関係してるのか?」
「ま、いいから聞きなさいよ。その朝日奈翼がアッラーフ復職に反対意見を出し始めたの!」
「何故?」
ナツメの言葉に含まれていた翼のアッラーフ復職反対意見。その言葉に璃維は心中で驚きながらも、表情は無を守ったままで。
「なぜって貴方ね。どうせ、朝日奈翼の目の前で刹那を気絶でもさせたんでしょ」
「……なんで知ってるんだ……」
頭を抱えて璃維が溜息と共に言い放つとナツメは平然と。
「あら。合ってたぁ?」
「え!?」
「あら、さっきの言葉は適当に言ったんだけど」
「……適当かよ」
「だってぇ。それしか思い当たらなかったんだもの!
あの優しい優しい朝日奈翼様がそれまで頑なにアッラーフ復職を声高に叫んでたのに、急に復職には反対だー! って言うのよ? そんな状況になるんだったら、旧アッラーフの刹那に何かあったとしか考えられない。それも朝日奈翼の目の前で」
可愛らしく両手を組み合わせ、上目遣いで璃維を見るナツメ。
「んなことしても、中身がお前だと考えると吐き気すらしてくる」
「んま! 酷い! 聞いた、今のぉ?」
「いちいち間延びさせるな。うざい」
璃維の容赦ない言葉がナツメに降り注ぐ。
……たとえ外見があの桐生刹那だとしても、中身がそうじゃなければどうでもいいということだ。
「ま、いいわ。ちょっとグサリときて精神的ダメージ多いけど、かなりキツいけど、私頑張るわ」
今度はガッツポーズをするナツメ。
「ナツメ、今すぐ刹那からでていけ」
「やっぱり言われると思ったわよ?」
「で? 返事は?」
「……駄目」
「どうしてだ?」
璃維の言葉にナツメは拒否を示す。その心中は。
「刹那が、心配なの」
俯いたそのとき、刹那の赤いパーマ済みの髪が下に落ちる。
「刹那が心配なのっ! 母親として、当たり前でしょう!?
大体、私はアッラーフ復職だって反対なのよ!
どうして!? どうして刹那をアッラーフにしたの!?」
ナツメは刹那の細い腕で璃維に掴みかかる。
璃維の白いシャツの胸元にのびた両手は璃維を揺さぶる。
「どうして、刹那がアッラーフなの?」
「……ナツメとジュン兄の娘だからだ」
「それが!? だったら鈴也にしなさいよ!」
「鈴也じゃ、エネルギーが足りないんだ」
「エネルギーなんて、いくらでも分け与えられるでしょう!?」
「それじゃ駄目なんだ。エネルギーは自分で生成して始めて効果がある。
代用したエネルギーでは、本来の自分のエネルギーと多少の差異がある。
それでは、エネルギーを最大限に活用できないんだよ」
璃維の言葉にナツメは重力に従い、両手を下ろしていく。
「分かったわよ……でていくわよ……でもね、刹那を鈴也の件で責めるのは間違ってる。
これ以上、この子にアッラーフのことを」
「大丈夫。そのために俺が居る」
その言葉にナツメは笑い、ゆっくりと目を閉じる。
「ねぇ、璃維」
「……」
「私、わがままだったかなぁ?」
「わがまますぎる。ジュン兄も大変だっただろうな。こんな奥さんもらって」
「そっか。朝日奈翼、戻ってくるといいね」
「戻ってこなかったら、探しに行くだけだ」
「貴方らしい」
噴出すように笑ってからナツメは本当の最期の言葉を残す。
「刹那を、わが娘をよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げて、ナツメは、ナツメの精神体は重力に逆らって天に昇っていくように空気中で霧散する。
「よろしくされますか。たまには」
苦笑した一人の悪魔少年は、その霧散した精神体に笑いかけた。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/08/10 18:59 更新日:2010/08/10 18:59 『Devil+Angel=Reo』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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