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黄昏幻夢
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
一章 二 修行
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「わしが最初の成らせを終えたとき、ここの前の住職に言われたんじゃ。『お前は、一生、その力と生きる覚悟があるか?』と。そのときは、それくらいなら、と思っておったんじゃがなあ」
「それだけじゃなかったのか?」
細の言葉に、じーさんは沈黙という返事をよこした。
「……わしは、住職に手伝ってもらい、成らせの力を完璧にコントロール……つまり、成らせたい時に成らせが百発百通で成功するようにと訓練をつんだ。そして、先代の住職がなくなったとき、この神社の住職になった」
だんだん冷たくなっていく風に、鳥肌は立たない。夏場の風は、肌に優しかった。
「修行は成功したのか?」
「いいや。完成する前に、わしと力の波調が合わなくなった。――お前が生まれたからだ」
光が弱まり、吹く風にも元気がなくなっていく中、びっくりして、細は一心に、目を細めるじーさんに見た。
「……どういうことだ?」
じーさんは、静かに語るだけだ。
「一つの神社に魔術士は一人だけと決まっている。この神社から半径一キロ以内に新たな魔術士――この神社に収められたかつての魔術士の力とぴったり波調が合うものが生まれると、先代の、わしのようなものは力の波から外され、そやつを立派な魔術士にするために生きることになる。もしも次の魔術士が誤った道に進むと、先代は死ぬ。問答無用でな」
細は、固まった。
もしも、細が力を誤って使うと、このじーさんが死ぬのだ。
「……って、ちょっと待て。じゃあ、じーさんの前の住職が死んだのは」
「それは寿命じゃよ。もう、わしが修行を始めたときは九十を超えておったからな」
じーさんは、懐かしそうに虚空を見つめ、それから、今までのように、細を見た。
子供たちから恐れられる頑固なじーさんの顔だ。
「もう、お前は成らせてしまった。後戻りはできんが、進むことならたやすい。後は、道を踏み外さず、立派な魔術士になることだ」
じーさんは、細の前に、試練と運命を突きつけた。
その目が、さあ、どうする? と問いかけていた。
それを見た細は、
「……やるしか、ないんだろう?」
立ち上がって、じーさんをしっかりと見つめた。
「なら、いい。修行に励め」
じーさんも立ち上がった。
……すぐに、グキッとすさまじい音がした。
「じーさん、死ぬなよ!」
「……ぎ、ぎっくり腰では死なぬよ」
神社に、二人の言い合う声が響いた。
「それだけじゃなかったのか?」
細の言葉に、じーさんは沈黙という返事をよこした。
「……わしは、住職に手伝ってもらい、成らせの力を完璧にコントロール……つまり、成らせたい時に成らせが百発百通で成功するようにと訓練をつんだ。そして、先代の住職がなくなったとき、この神社の住職になった」
だんだん冷たくなっていく風に、鳥肌は立たない。夏場の風は、肌に優しかった。
「修行は成功したのか?」
「いいや。完成する前に、わしと力の波調が合わなくなった。――お前が生まれたからだ」
光が弱まり、吹く風にも元気がなくなっていく中、びっくりして、細は一心に、目を細めるじーさんに見た。
「……どういうことだ?」
じーさんは、静かに語るだけだ。
「一つの神社に魔術士は一人だけと決まっている。この神社から半径一キロ以内に新たな魔術士――この神社に収められたかつての魔術士の力とぴったり波調が合うものが生まれると、先代の、わしのようなものは力の波から外され、そやつを立派な魔術士にするために生きることになる。もしも次の魔術士が誤った道に進むと、先代は死ぬ。問答無用でな」
細は、固まった。
もしも、細が力を誤って使うと、このじーさんが死ぬのだ。
「……って、ちょっと待て。じゃあ、じーさんの前の住職が死んだのは」
「それは寿命じゃよ。もう、わしが修行を始めたときは九十を超えておったからな」
じーさんは、懐かしそうに虚空を見つめ、それから、今までのように、細を見た。
子供たちから恐れられる頑固なじーさんの顔だ。
「もう、お前は成らせてしまった。後戻りはできんが、進むことならたやすい。後は、道を踏み外さず、立派な魔術士になることだ」
じーさんは、細の前に、試練と運命を突きつけた。
その目が、さあ、どうする? と問いかけていた。
それを見た細は、
「……やるしか、ないんだろう?」
立ち上がって、じーさんをしっかりと見つめた。
「なら、いい。修行に励め」
じーさんも立ち上がった。
……すぐに、グキッとすさまじい音がした。
「じーさん、死ぬなよ!」
「……ぎ、ぎっくり腰では死なぬよ」
神社に、二人の言い合う声が響いた。
後書き
作者:水沢はやて |
投稿日:2011/05/01 13:33 更新日:2011/05/01 13:33 『黄昏幻夢』の著作権は、すべて作者 水沢はやて様に属します。 |
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