作品ID:669
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「黄昏幻夢」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(64)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(189)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
黄昏幻夢
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
二章 一 メイ
前の話 | 目次 | 次の話 |
「じゃあなー、じーさん。くれぐれも腰には気をつけて」
「魔術士。明日も来い。修行のやり方を教えてやろう」
じーさんは、弱々しく手を振った。
すでに回りは闇しかなく、遠くの街灯だけが頼りとなっている。
細は、駆け足で境内の砂利道を通った。神社にしては珍しく、木はない。代わりに、何百本という竹が植わっていて、ちょっと怖かった。
「ああ、早く帰りたい。大体、何で誰もいないんだよ! 誰かいたっていいだろ」
いまさらだけど、と細は考えた。
(なんで魔術士なんかになったんだろう。別に、俺がなんなくてもいいだろ。もっと頭のいいやつとか、ほかに、この力を必要としているやつに譲ってやりたいよ。別になくってもいけるし)
そんな考え事をしていたせいか、竹林からふらり、と出てきた人影に思いきってぶつかった。
「って!」
「ひゃあっ」
踏みとどまった細に対して、相手のほうはすっ転んでしまい、砂利の上を滑った。
「あっ、すいません! 大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか」
相手のほう――近くの中学のセーラー服を着た女の子に手を貸してやりながら、細は、心に何かが引っかかった。
腰までの長い黒髪の少女に、なんとなく見覚えがあったのだ。
少女は、さっさとスカートについた埃をはらって手提げカバンを持った。
「近道しようと思って、竹林を突っ走ってきたんです」
「ああ、それ、俺もよくやるよ」
気軽に話しながら、細は少女を見る。
小柄な、どこにでもいそうな女の子だった。勘違いかな、と思いながら、じっと少女を見ていると、
「あ、私、メイって言います。そこの中学の生徒です」
何かを勘違いしたのか、自己紹介をされた。
「あ、俺、渡辺細。細いって漢字を書いて、さいって読む」
「細さんですか。いいなあ、漢字。私も漢字の名前がよかった」
「……俺はいいと思うよ? メイって名前」
そう言うと、メイは細のほうを見て笑った。
「ありがとう! そう言ってくれるのは細さんが初めて!」
「喜んでもらえて何より」
そう言った時、細は心臓の辺りがちくっと痛んだのを感じた。
「魔術士。明日も来い。修行のやり方を教えてやろう」
じーさんは、弱々しく手を振った。
すでに回りは闇しかなく、遠くの街灯だけが頼りとなっている。
細は、駆け足で境内の砂利道を通った。神社にしては珍しく、木はない。代わりに、何百本という竹が植わっていて、ちょっと怖かった。
「ああ、早く帰りたい。大体、何で誰もいないんだよ! 誰かいたっていいだろ」
いまさらだけど、と細は考えた。
(なんで魔術士なんかになったんだろう。別に、俺がなんなくてもいいだろ。もっと頭のいいやつとか、ほかに、この力を必要としているやつに譲ってやりたいよ。別になくってもいけるし)
そんな考え事をしていたせいか、竹林からふらり、と出てきた人影に思いきってぶつかった。
「って!」
「ひゃあっ」
踏みとどまった細に対して、相手のほうはすっ転んでしまい、砂利の上を滑った。
「あっ、すいません! 大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか」
相手のほう――近くの中学のセーラー服を着た女の子に手を貸してやりながら、細は、心に何かが引っかかった。
腰までの長い黒髪の少女に、なんとなく見覚えがあったのだ。
少女は、さっさとスカートについた埃をはらって手提げカバンを持った。
「近道しようと思って、竹林を突っ走ってきたんです」
「ああ、それ、俺もよくやるよ」
気軽に話しながら、細は少女を見る。
小柄な、どこにでもいそうな女の子だった。勘違いかな、と思いながら、じっと少女を見ていると、
「あ、私、メイって言います。そこの中学の生徒です」
何かを勘違いしたのか、自己紹介をされた。
「あ、俺、渡辺細。細いって漢字を書いて、さいって読む」
「細さんですか。いいなあ、漢字。私も漢字の名前がよかった」
「……俺はいいと思うよ? メイって名前」
そう言うと、メイは細のほうを見て笑った。
「ありがとう! そう言ってくれるのは細さんが初めて!」
「喜んでもらえて何より」
そう言った時、細は心臓の辺りがちくっと痛んだのを感じた。
後書き
作者:水沢はやて |
投稿日:2011/05/04 16:46 更新日:2011/05/04 16:46 『黄昏幻夢』の著作権は、すべて作者 水沢はやて様に属します。 |
前の話 | 目次 | 次の話 |
読了ボタン