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黄昏幻夢
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
二章 二 メイに会える夕方
前の話 | 目次 | 次の話 |
メイにあった次の日から、修行が始まった。
まだぎっくり腰の治らないじーさんの言うままに、細は小さなものを成らせていった。
あるときは、神社で泣いていた女の子の落としたハンカチだったり。
じーさんの老眼鏡だったり。
また、学校に忘れてきたノートを、「あ、忘れた!」と思った瞬間に目の前に成らせてしまったり。
次の日、ロッカーや机の引き出しを見てみると、ノートがなくなっていた。
「『成らせ』には、二種類ある。一つは、ないものを成らせること。もう一つは、あるものを自分の目の前に持ってくることで、成らせたように見せるもの」
腰の完治したじーさんは、いつものように石段に座り、竹箒を杖代わりにしていた。さながら仙人だ。
細は、階段から『仙人』を頬ずえついて見上げた。
夏も終わりに近づき、修行が始まって一ヶ月がたとうとしていた。その間、細はメイにお目にかかったことがなかった。
近道に懲りたのかなー、とじーさんの話を聞き流しながら考えていると、じーさんが竹箒で細の頭をバシッと叩いた。
「ったー!」
「魔術士よ。しっかり話を聞かんかい」
「まだ魔術士に完璧になったわけじゃないだろ」
「そう言うな。もうすぐ、お前は魔術士になれるぞ」
「……そうなのかっ?」
細は、真剣にじーさんを見た。
「修行を始めてから、一ヶ月になった。小さなものばかりだが、お前はあらゆるものを成らせられるようになった。それだけで、条件はそろうんじゃよ」
じーさんは慎重に立ちあがった。
「秋祭りの夜。お前は、幻成の魔術士になる」
まるで、予言のようだった。
なんだか、秋祭りの後、自分が別のものになる気がして、怖くなった。
(……いっそ、誰かを道ずれにするとか?)
細は、自分で思っておいて、いやいや、と首を振った。
じーさんが、なんだ、どうしたとでも言いたげな顔をした。
「細さーん! 覚えてます? メイでーす!」
細が竹林を歩いていくと、遠くに懐かしい人影が見えた。
「ああ、メイかあ。ずいぶんと久しぶりだな」
「はい。ちょっと家に篭もり気味だったので。……って、登校拒否とかじゃないですよっ。どうせ夏休みだったし、半分は旅行に行っていて、半分は家に篭もって宿題とか」
「ああ、そっか。……夏休みだもんな」
細は、修行で夏休みをつぶしていた。
「そうだ! 細さん、秋祭りに誰かと行きますか?」
唐突に、メイがチラシを取り出していった。
「秋祭り?」
さっきの話、聞こえてたのかなあ、と冷や汗をかいたが、どうやらもらったチラシを見ていたところで細にあったので、聞いてみただけらしい。
「特に予定はないけど」
と、言ってから魔術士になることを思い出して、(やべっ)と思ったが、
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
きらきらした目でメイが見てくるので、
「……う、うん……いいよ」
としか言いようがなかった細だった。
まだぎっくり腰の治らないじーさんの言うままに、細は小さなものを成らせていった。
あるときは、神社で泣いていた女の子の落としたハンカチだったり。
じーさんの老眼鏡だったり。
また、学校に忘れてきたノートを、「あ、忘れた!」と思った瞬間に目の前に成らせてしまったり。
次の日、ロッカーや机の引き出しを見てみると、ノートがなくなっていた。
「『成らせ』には、二種類ある。一つは、ないものを成らせること。もう一つは、あるものを自分の目の前に持ってくることで、成らせたように見せるもの」
腰の完治したじーさんは、いつものように石段に座り、竹箒を杖代わりにしていた。さながら仙人だ。
細は、階段から『仙人』を頬ずえついて見上げた。
夏も終わりに近づき、修行が始まって一ヶ月がたとうとしていた。その間、細はメイにお目にかかったことがなかった。
近道に懲りたのかなー、とじーさんの話を聞き流しながら考えていると、じーさんが竹箒で細の頭をバシッと叩いた。
「ったー!」
「魔術士よ。しっかり話を聞かんかい」
「まだ魔術士に完璧になったわけじゃないだろ」
「そう言うな。もうすぐ、お前は魔術士になれるぞ」
「……そうなのかっ?」
細は、真剣にじーさんを見た。
「修行を始めてから、一ヶ月になった。小さなものばかりだが、お前はあらゆるものを成らせられるようになった。それだけで、条件はそろうんじゃよ」
じーさんは慎重に立ちあがった。
「秋祭りの夜。お前は、幻成の魔術士になる」
まるで、予言のようだった。
なんだか、秋祭りの後、自分が別のものになる気がして、怖くなった。
(……いっそ、誰かを道ずれにするとか?)
細は、自分で思っておいて、いやいや、と首を振った。
じーさんが、なんだ、どうしたとでも言いたげな顔をした。
「細さーん! 覚えてます? メイでーす!」
細が竹林を歩いていくと、遠くに懐かしい人影が見えた。
「ああ、メイかあ。ずいぶんと久しぶりだな」
「はい。ちょっと家に篭もり気味だったので。……って、登校拒否とかじゃないですよっ。どうせ夏休みだったし、半分は旅行に行っていて、半分は家に篭もって宿題とか」
「ああ、そっか。……夏休みだもんな」
細は、修行で夏休みをつぶしていた。
「そうだ! 細さん、秋祭りに誰かと行きますか?」
唐突に、メイがチラシを取り出していった。
「秋祭り?」
さっきの話、聞こえてたのかなあ、と冷や汗をかいたが、どうやらもらったチラシを見ていたところで細にあったので、聞いてみただけらしい。
「特に予定はないけど」
と、言ってから魔術士になることを思い出して、(やべっ)と思ったが、
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
きらきらした目でメイが見てくるので、
「……う、うん……いいよ」
としか言いようがなかった細だった。
後書き
作者:水沢はやて |
投稿日:2011/05/07 22:10 更新日:2011/05/07 22:10 『黄昏幻夢』の著作権は、すべて作者 水沢はやて様に属します。 |
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