作品ID:734
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生まれ果てるは理のキマリ
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
参話 消えたい理由
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病院の窓から見える空。それがわたしの世界の全てだった。外から聞こえる鳥の声も、人の笑い声も、車の行きかう音も。わたしにとっては、夢の世界の出来事。見たくても見れなかった。
わたしは、とある病気が発覚してから、ずっと入院していた。
先天性再生不良貧血。
貧血、といは言うけれど、難病指定されている、命に関わる病気。
わたしは、どうやらその病気を生まれつき持っていたらしい。
医者曰く『遺伝子の異常』。わたしは、お父さんからその遺伝子を受け継いだみたいだった。
発病するまでに時間がかかったのは、この病気が無自覚で進むからだ。気付いたときは、もう手遅れ寸前だった。
慌てて入院したはいいものの、その時はわたしは運動すらまともに出来なくなっていた。
それからはずっと入院生活が続く。学校に入る前に入院したから、わたしは学校というものは分からない。そもそも学問を勉強している間にも病魔に命を狙われていたのだから。
この病気は症例が少なくて、10万に15人程度しか発病しない難病。しかも先天性のこの病気は、その人数の中でも更に稀な存在だという。幸い、わたしは骨格異常は無かったからよかった。本来なら発病してもおかしくなかった。
でも、骨髄が何だかおかしな症状を起こしていた。脂肪髄っていうものに変化していたらしい。詳しくは知らない。説明されても、理解できなかった。
それからだ。鼻血とか、皮膚から点状に血が出たりした。痛かった。辛かった。でも、誰にも言えなかった。どうせ、同情されるだけだったから。
わたしはいつもベットで寝ていた。少しでも擦り剥けば血が出てしまう。いつもいつも輸血ばかり。好きな物も食べられなかった。それすら許されなかった。
この時ほど、わたしは神を恨んだ時が無かった。どうしてわたしがこんな目に。許せない、神様なんていないんだ! っていつも思っていた。同年代の子達が、楽しそうに学校に行っているのが羨ましかった。わたしだって学校というものが見たかった。通ってみたかった。友達というものも作ってみたかった。
もちろん、病院に友達がいなかったわけではない。少なからずいたけれど、みんな退院したらそれっきり。お見舞いに来てくれたのは両親だけ。寂しかったな、あの時は。よく夜に一人で寂しくて泣いていたときもあった。孤独で。わたしの痛みは誰にもわかんない。だから泣く位しか出来なかった。助けを求めても、これ以上の助けは出せないことも、理解していたから。
何時だったかな。突然、頭が割れるように痛くなった。輸血している最中だったと思う。そこから、意識が乱雑に途切れてしまって、それ以降何が起きたのかわたし自身分からない。
今言えることは、多分その時わたしは死んじゃったんだと思う。だから今こうして、光の場としか言いようのない場所で、わたしは立っているんだと思うし、いつも体にあった倦怠感がまったくないのも説明がつく。しかも病院の入院着のまま。ああ、夢でもみているならもっと長くみていたい。現実は、もう戻りたくないから。
そこで、ようやくわたしは声を掛けられた。
「やあ」
と。
後書き
作者:Free Space |
投稿日:2011/05/25 15:09 更新日:2011/05/25 15:22 『生まれ果てるは理のキマリ』の著作権は、すべて作者 Free Space様に属します。 |
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