作品ID:735
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生まれ果てるは理のキマリ
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
終わり 導かれる答え、新たなる命
前の話 | 目次 |
「やあ」
「…」
わたしの後ろから声を掛けたのは、一人の少年だった。
見た目は10代のアイドルのようなカッコいい人。でも、わたしはそんなもの見たこと無いから分からないけど。とにかくとても容姿が目立つ人だと思った。
「突然、こんな場所に呼び出してごめんなさい」
「……」
今度は目の前に突如誰か現れた。今まで誰もいなかった筈。女の子だ。すごく、髪の毛の長い女の子。前髪も後ろ髪も異常に長い。前髪で顔は完全に隠れ、後ろの髪が床(?)について引き摺られている。
「誰ですか?」
「誰? と言われても」
男の子が言う。
「定義が難しいね」
「名前を聞いています」
「名前? 名前か。キミ達風の名前かい?」
「意味が分かりません。名前を名乗るのは人として当たり前です」
「そもそも『人』じゃないわよ?」
今度は女の子が答えた。睨みつけるけど、表情が見えなくて怖い。まるでお化けだ。
「どういう意味ですか」
「言葉通り。『人』じゃない。貴女も。貴女、死んでるの。自覚はあるでしょう?」
人じゃない? どういう意味か分からない。でも、最低でもこの二人とこの場所は関係している。でなきゃ、こんな冷静に告げられる筈がない。
「死んでる? わたし、やっぱり死んでるんですね。何となく、分かりますけど」
「冷静だね。普通は取り乱したりしない?」
「そうでもないですよ。結構驚いてますけど、それ以上に喜んでます」
「貴女も先ほどの方と同じ?」
「は? 何が?」
会話が微妙に噛みあってない。何でだろう。
「ここ、どこですか?」
「一種の夢の中、かな」
「死んでるのに夢も何もないでしょう」
「じゃあ異界?」
「じゃあって何ですかじゃあって」
「ツッコミが激しいね?」
「律儀にあなたがボケるからです」
「ボケてないよ? 全て事実だから」
「あなたは人間ですか幽霊ですか」
「両方ともはずれ」
「じゃあ何ですか? 神とでも言うんですか」
「一部じゃそう呼ばれているね」
「じゃあ死んでください」
「いきなり物騒な」
「わたしは神嫌いです。何でわたしにこんなもの押し付けたんですか」
「ん? それは俺達の管轄外だよ? むしろ勝手に他の連中が決めてるし」
「管轄とかあるんですか」
「あるよ。俺達はただ眺めているだけの存在だ」
「一種の傍観者ですか」
「察しがいいねキミ。聡い子は助かるよ」
「何時までこのアホな会話続けるんですか」
「アホ?」
「女の子の方が呆然としてますよ」
「おっとこれはいけない」
少年との会話は終わる。わたしの聞きたいことは全て聞いた。
「私達がここに貴女を呼んだのは、聞きたいことがあるからです」
「聞きたいこと?」
「貴女、死んでるのを自覚しているなら話は早いけど。まだ、生きたかった?」
…何だか、適当な質問のような気もしたけれど、しっかり答える。
「生きたかった……つまり未練がないといえば、嘘になります。わたしは、学校に行きたかったし、友達も作ってみたかった。それは、生きている時のわたしには到底無理な話です。一緒に授業受けている間に、死んでしまうかもしれませんでしたから」
「…やり直したい?」
「可能ではないと分かっていますが、それでも健康な体で生活してみたいと今でも強く思います。やり直したいと、心から思っています。……まあ、無理でしょうけど」
「……」
女の子は、わたしの言葉を吟味するかのように何度か頷く。そして男の子にこう言った。
「満点の答え、じゃないかしら?」
「ああ。納得のいく、何がやりたいか。それを彼女は答えてくれた。しかもこれ以上ないくらい具体的に。なるほど、やり残したことがあると、人間は強く生きたいと思うのか」
「それは違いますよ」
「違う?」
勝手に納得している男の子に、わたしは言った。
「人間、誰でも死ぬのは怖いもの。わたしみたいに、自覚なしに死ねればまだしも、死に触れることで人間は死を拒絶すると思います。それは、理由あるなしに、生理反応なんですよ。死に本能的な恐怖を抱くのは仕方ないこと。よほど達観していない限り、これは否定できませんよ」
「……キミは随分詳しいんだね」
男の子が感心したみたいに言った。
「病院にいれば、嫌でも人間の死に触れる機会が多いです。大体の人は未練を残しているようでした。未練の無い人は、妙にすっきりした死に顔だと医者が言っていました」
「…ほう」
「これは、わたしの持論です。合っているとは思いませんが、納得していただきました?」
「ああ、最高の答えだ」
男の子のその顔はとても嬉しそうだ。
「お礼に、キミの望むものを何かあげるよ」
そう切り出した。
「望むもの?」
「そう。概念でも、物質的なものでも、何でも構わない」
「……」
考える。わたしはもう死んでいる。(らしい)そして、この二人はどうやら神様らしい(自称)なら、物を望んでも意味はない。
「概念、つまり生き返りたいと望めば、叶うんですか?」
「ああ。キミの言っていた学校にも即、行ける。健康な体も、キミの望む全てを俺達はキミにプレゼントしよう」
「私も、賛成」
女の子の声が弾んでいる。
「貴女のその答え、私達に対する最高級の答え。貴女は『不可能』の壁を越える権利を今、手に入れたの」
「権利?」
「気にしなくていい」
男の子は言う。
「さあ、望むことを言ってくれ。俺達は、キミの望む全てを叶えよう! 神の名に誓って!」
両手を広げ、宣言した。
「……」
今わたしは、運命の分岐点にいるのだろうか? なら、この選択を間違えちゃいけない。
「…新しい命が欲しい。そして、わたしに新しい人生を、幸せな時間を下さい!」
わたしは叫んでいた。力の限り。どうしても手に入らないと思ったものが手に入ると思ったら、勝手に叫んだ。
「よく言った! 俺達に答えをくれた友のため、俺達は全ての願いを傍受しよう!」
「私達に教えをくれた者に、全ての願いを叶えましょう。そして、もう一度。生を楽しんできて」
女の子と男の子の宣言で、その場所自体が煌々と煌いた。わたしは思わず手で目を塞いでしまった。
後書き
作者:Free Space |
投稿日:2011/05/25 16:39 更新日:2011/06/05 11:26 『生まれ果てるは理のキマリ』の著作権は、すべて作者 Free Space様に属します。 |
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