作品ID:784
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もう未練はありませんか?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
最終話
前の話 | 目次 |
「それにしても未練がない・・・いや、分からないと来ましたか・・・これは難題ですね」
安奈は額に手を当てて悩み始めた。隣でディーも彼女のように思考の海へダイビングする。
楓は傍らでそれを見守る・・・。
しばらくして
「とりあえず一回『転生の扉』にチャレンジしません?」
口にする必要は無いのだが提案を口にする。
「ええ、ぜひそうしてみます」
楓の肯定を受けて安奈は『転生の扉』の出現作業を開始する。壁にそっと触れて扉を出現させる呪文を唱える。
「来たれ、転生の扉」
安奈の前に『転生の扉』が出現する。安奈は「どうぞ」と言って道をあける。奏がドアノブに手をかけて・・・。
がちゃ! がちゃがちゃがちゃ! ガン!
ちなみに最後のは奏が『転生の扉』に後ろ回し蹴りをした音である。
「・・・やっぱりダメですか」
「ええ、ダメだったみたいね」
再び思考の海へとダイビングしよとしたところへ奏が話を始める。
「・・・たぶん、私は『人』じゃないからわからないのかも知れないわ」
「人じゃ・・・無い?」
奏の言葉に安奈は顔をしかめた。
「あなたは人じゃないですか、どこからどう見ても間違いなく人ですよ奏さんは」
「確かにそうかもしれないわね・・・でも、私が言ってるのはそういうことじゃないの」
さらに安奈の顔が険しくなるのを見た・・・もとい察知した奏は語り始めた。
「私は生まれたことに目の機能を意図的にマヒさせられてたのよ。でも、気づいた時にはもうこの心眼は開花していたわ」
自分の目を指さす。そして手を開いてその手を見えないのに見える目で見る。
「そして次に気づいた時には私利私欲に目がくらんだ人間の元にいたわ。人の心が見える子供・・・いいえ、道具として」
安奈の顔がさっと青ざめる。それを当然のごとく察知した・・・してしまう楓は安奈の方を向いて笑った。自嘲とも自虐ともとれるような笑みだった。
「私は・・・人一倍心に見た・・・いや、見させられたわ。だけど見えるのは欲望やどんな人間でも分かるような上っ面だけの笑顔みたいな・・・胸がどっしりする物・・・」
奏はまるでそれが何かわからないように胸に手を当てて撫でおろす。
「そして・・・気が付くとここに居たんです。皮肉なものですね・・・人一倍心が理解できてしまうがゆえに人の心が理解できない・・・私は『人』ではなく・・・『道具』なんですよ」
黙って聞いていた安奈の目から雫がこぼれ落ちたのはちょうど奏が語り終えたのと同時だった。
「泣いて・・・くれているの? 私のために?」
「・・・・・・はい」
奏の問いに安奈はか細い声ながらしっかりと肯定した。奏は安奈に歩み寄り涙に触れる。
「暖かい・・・物ね」
奏は笑った。それは公園で遊ぶ子供のような無邪気な笑みだった。それを涙でぼやけた視界にとらえた安奈は涙をぬぐってからディーに告げる。
「ディー・・・奏さんに・・・時間をあげられないでしょうか? 私は・・・彼女を『人』としてここから送り出したいです」
「・・・そう・・・ならうってつけの機能があえるよ?」
「ディー・・・『アレ』ですか?」
こくり、とディーが肯定する。安奈は振り向いて『転生の扉』を見る。そして、扉に歩み寄り再び手をかける。
「来たれ・・・・・・待ち人(まちびと)の扉」
『転生の扉』のあった場所に出現したのは広々とした草原のような緑が広がる扉だった。
「これは『待ち人の扉』あなたのような迷える人が時間を経て考えるための場所に繋がっています」
説明する必要は無い・・・だけど安奈は律儀に説明する。
「そう・・・それは私にうってつけね・・・」
安奈は扉から一歩下がる。奏はドアノブに手をかけて開く。
「今はまだ私だけなのね。利用者第一号・・・なんか嬉しいわね」
それは裏を返せばこの場所で延々と一人になるのと変わりはなかった。
「奏さんは・・・ここで自分を見つけてください」
「ええ、そうするわ・・・ここで私は『人』になるわ」
「暇な時ぐらい様子を見に行くよ」
「ありがとうディーさん・・・では」
そして奏は扉の向こうへ消えた。
奏が行ってから少したって。
「ディー」
「ん? なんだいアンナ?」
「次のお客さんが来るまで何しましょうか?」
「そうだね・・・・・・じゃあ・・・」
ここは未練を遂げる場所・・・そこには、無邪気で優しい女の子と、真っ黒い猫が居た。
安奈は額に手を当てて悩み始めた。隣でディーも彼女のように思考の海へダイビングする。
楓は傍らでそれを見守る・・・。
しばらくして
「とりあえず一回『転生の扉』にチャレンジしません?」
口にする必要は無いのだが提案を口にする。
「ええ、ぜひそうしてみます」
楓の肯定を受けて安奈は『転生の扉』の出現作業を開始する。壁にそっと触れて扉を出現させる呪文を唱える。
「来たれ、転生の扉」
安奈の前に『転生の扉』が出現する。安奈は「どうぞ」と言って道をあける。奏がドアノブに手をかけて・・・。
がちゃ! がちゃがちゃがちゃ! ガン!
ちなみに最後のは奏が『転生の扉』に後ろ回し蹴りをした音である。
「・・・やっぱりダメですか」
「ええ、ダメだったみたいね」
再び思考の海へとダイビングしよとしたところへ奏が話を始める。
「・・・たぶん、私は『人』じゃないからわからないのかも知れないわ」
「人じゃ・・・無い?」
奏の言葉に安奈は顔をしかめた。
「あなたは人じゃないですか、どこからどう見ても間違いなく人ですよ奏さんは」
「確かにそうかもしれないわね・・・でも、私が言ってるのはそういうことじゃないの」
さらに安奈の顔が険しくなるのを見た・・・もとい察知した奏は語り始めた。
「私は生まれたことに目の機能を意図的にマヒさせられてたのよ。でも、気づいた時にはもうこの心眼は開花していたわ」
自分の目を指さす。そして手を開いてその手を見えないのに見える目で見る。
「そして次に気づいた時には私利私欲に目がくらんだ人間の元にいたわ。人の心が見える子供・・・いいえ、道具として」
安奈の顔がさっと青ざめる。それを当然のごとく察知した・・・してしまう楓は安奈の方を向いて笑った。自嘲とも自虐ともとれるような笑みだった。
「私は・・・人一倍心に見た・・・いや、見させられたわ。だけど見えるのは欲望やどんな人間でも分かるような上っ面だけの笑顔みたいな・・・胸がどっしりする物・・・」
奏はまるでそれが何かわからないように胸に手を当てて撫でおろす。
「そして・・・気が付くとここに居たんです。皮肉なものですね・・・人一倍心が理解できてしまうがゆえに人の心が理解できない・・・私は『人』ではなく・・・『道具』なんですよ」
黙って聞いていた安奈の目から雫がこぼれ落ちたのはちょうど奏が語り終えたのと同時だった。
「泣いて・・・くれているの? 私のために?」
「・・・・・・はい」
奏の問いに安奈はか細い声ながらしっかりと肯定した。奏は安奈に歩み寄り涙に触れる。
「暖かい・・・物ね」
奏は笑った。それは公園で遊ぶ子供のような無邪気な笑みだった。それを涙でぼやけた視界にとらえた安奈は涙をぬぐってからディーに告げる。
「ディー・・・奏さんに・・・時間をあげられないでしょうか? 私は・・・彼女を『人』としてここから送り出したいです」
「・・・そう・・・ならうってつけの機能があえるよ?」
「ディー・・・『アレ』ですか?」
こくり、とディーが肯定する。安奈は振り向いて『転生の扉』を見る。そして、扉に歩み寄り再び手をかける。
「来たれ・・・・・・待ち人(まちびと)の扉」
『転生の扉』のあった場所に出現したのは広々とした草原のような緑が広がる扉だった。
「これは『待ち人の扉』あなたのような迷える人が時間を経て考えるための場所に繋がっています」
説明する必要は無い・・・だけど安奈は律儀に説明する。
「そう・・・それは私にうってつけね・・・」
安奈は扉から一歩下がる。奏はドアノブに手をかけて開く。
「今はまだ私だけなのね。利用者第一号・・・なんか嬉しいわね」
それは裏を返せばこの場所で延々と一人になるのと変わりはなかった。
「奏さんは・・・ここで自分を見つけてください」
「ええ、そうするわ・・・ここで私は『人』になるわ」
「暇な時ぐらい様子を見に行くよ」
「ありがとうディーさん・・・では」
そして奏は扉の向こうへ消えた。
奏が行ってから少したって。
「ディー」
「ん? なんだいアンナ?」
「次のお客さんが来るまで何しましょうか?」
「そうだね・・・・・・じゃあ・・・」
ここは未練を遂げる場所・・・そこには、無邪気で優しい女の子と、真っ黒い猫が居た。
後書き
作者:総 誉 |
投稿日:2011/06/26 21:35 更新日:2011/06/26 21:35 『もう未練はありませんか?』の著作権は、すべて作者 総 誉様に属します。 |
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