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Verdecken Reich
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
第1章 第2節 亡霊との闘い
前の話 | 目次 | 次の話 |
1
まだ日中だというのに屋敷の中は薄暗かった。屋敷中の電気がついておらず、また窓にかかったカーテンはすべて締め切られてるせいもあるだろう。それでも心なしか薄暗く見えるのは雰囲気のせいだろうか。屋敷内の空気もどこかひんやりとしてるように思えた。屋敷の入り口をくぐった先には広いエントランスホールが広がっていた。両サイドには2階に続く階段があり、そこからさらに左右中央に奥へと続く扉があった。1階も同様である。外から見た様子だと3階建てのようだが、ホールには3階への階段は見当たらなかった。どこか2階の奥にでもあるのかもしれない。
「なんだ、『亡霊屋敷』なんて呼ばれてからもっと古めかしくておどろおどろしいのかと思ってたのに、ずいぶんと普通じゃないか」
「そうですねえ、そこまで埃っぽくないですし、結構綺麗なものですね」
瑛真と蓬が拍子抜けだというような感想を漏らした。だが、理佳と識海はそうは思っていないようだ。
「な、なんか不気味だね・・・」
「ええ、これは恐ろしく妙ですね・・・」
「どこがだ、お前のところの屋敷だって暗くすればこんな感じになるんじゃないか?」
「だから、ですよ」
確かに瑛真の言うとおり、この『亡霊屋敷』は外観も、今4人が見ている内観も、どこにでもあるような屋敷にしか見えなかった。そして識海の言うように、『だからこそ』妙なのだ。約1世紀も前から存在してるような古い屋敷、おまけに人がいるのかすら怪しい。そんな有様で『ずいぶんと普通』に見えてしまうのはどういうことなのだろうか。理佳が不気味に思うのも無理はない。
「そ、そう言われてみれば・・・」
「確かに妙だな・・・」
瑛真と蓬も、説明されてあらためて妙だと思い始めたようだ。
「でも、このまま構えててもしょうがないぞ。どうする、手分けして見回るか?」
「もっとも、私は理佳が心配でついてきたんだから理佳と一緒に行くが」と瑛真は言葉を付け足した。識海も賛同しかけたが、その直後あることに気づいた。
「いえ、どうやら全員固まって行動した方が得策のようです」
「なんでだよ、今お前も賛成しかけたじゃないか」
「バラバラに行動したが最後、合流できる保証はないようですから」
そう言って、識海は懐からあるものを取り出した。
「お前の妹が作った無意味に高性能な携帯端末じゃないか」
「ええ。そしてご覧のとおりすっかり沈黙してしまってます」
満上家の三姉妹と理佳は、次女が作った携帯端末(スマートフォンのようなもの)を所持している。一般に発売されてるようなものとは比べ物にならないほど高性能だが、識海の取り出したそれは電源が落ち、見事に起動しなくなっっていた。瑛真と蓬もすぐさま自分の携帯を確認するが、識海家次女手製のものよりはるかに機能の劣る携帯が無事なわけがなかった。つまり、連絡手段が経たれてしまっている今、屋敷内で連絡を取り合うことはできなくなっているということだ。
「なるほどなあ。これじゃあ行方不明者が量産されるわけだよ・・・」
「はぐれたら一巻の終わりですからねえ」
すっかり音沙汰なしになってしまった自分の携帯を悲しそうに見つめながら、蓬は元気なくそう言った。
「というわけなので、全員で固まって行動しましょう。しかし、ある程度予想していたとはいえ、これではなにが起こるか分かったものじゃないですねえ・・・」
「うん、なんか得体の知れないものを感じるよ・・・」
理佳の持つ図抜けた直感は、この屋敷に巣食う正体不明の不気味な気配を正確に感じ取っているようだった。
2
一つ目の部屋、4人はとりあえず入り口から一番近かった扉に入った。どこの屋敷にでもあるような普通の洋室だった。おそらく、多数あるうちの客室の一つなのだろう。もしくは住み込みの使用人の部屋なのかもしれない。
「なにやら凡庸的な屋敷の洋室といった感じですね、客室か何かでしょうか」
「それでも置いてある家具は私の部屋のよりいいなあ・・・」
部屋にある家具を調べていた瑛真が、自分の部屋と比べてなにやらへこんでいた。とはいえ、置いてあるものは客室においてあるような一般的な家具ばかりで、特に変わったものはないようだ。
「ここは特に何も変わったところはないようですねえ」
「うん、そうみた・・・、・・・?」
蓬の出した結論に同意しかけた理佳だったが、途中でなぜか言葉を切り、おもむろに自分の背後へと顔を向けた。しかし、理佳の背後にあるのは部屋の壁だけだった。
「どうかしましたか?」
「・・・今、なんか変な感じが」
識海の声に答えつつ、妙な感じがしたという壁をぺたぺたと触り始める。しかし、軽く触った感じではただの壁と変わりがないようだった。
「うーん、気のせいかなあ・・・」
得心のいかない様子でしばらく壁を調べていた理佳だったが、やはり特におかしなところは見つからなかったようだった。首を捻りつつも壁から離れ、次の部屋を調べるためにこの部屋を全員で後にした。
それから二三の部屋を調べたが、一つ目とあまり変わり映えはしなかった。部屋を探索するたびになにやら首をかしげる理佳だったが、結局何事もなく部屋の探索は進んでいった。
「どうやら全ての部屋の扉が空いてるわけではなさそうですね」
「鍵がかかってる部屋も多数あるようですね」
「どうする、扉を破壊するか?」
「・・・いえ、おそらくその必要はないでしょう」
鍵のかかった扉に対し実力行使での強行突破を提案するが、識海はその提案を却下した。その判断は理佳の様子を見た上での判断で、鍵のかかった部屋に対して理佳は大して反応を示さないので、何もないだろうと判断したのだ。当の理佳は時折廊下の所々でなにやらぺたぺたと廊下の壁を触って確認をしていたが、やはりこれといって変わったところは見つからないようだ。こうして進んでいくうちに一番奥の部屋へとたどり着いた。部屋の中はこれまでの部屋とあまり変わりはなかったのだが、部屋の壁に大きな鏡が飾ってあった。それは人一人を映すには十分な大きさだった。
「こんなに大きな鏡が飾ってる部屋は、この屋敷では初めてですね」
「うん。でも・・・」
理佳はその大鏡を興味深そうに調べていく。だが、ただの豪勢な大鏡のようだった。
「ただの贅沢な鏡のようだな」
「うん、そうみたい」
その大鏡は目の前に立つ理佳の姿をしっかりと映し出していた。
「ここもなにもないようだな」
「そうですね」
結局、その部屋でも何事も起こることなく無事部屋の探索を終えた。
まだ日中だというのに屋敷の中は薄暗かった。屋敷中の電気がついておらず、また窓にかかったカーテンはすべて締め切られてるせいもあるだろう。それでも心なしか薄暗く見えるのは雰囲気のせいだろうか。屋敷内の空気もどこかひんやりとしてるように思えた。屋敷の入り口をくぐった先には広いエントランスホールが広がっていた。両サイドには2階に続く階段があり、そこからさらに左右中央に奥へと続く扉があった。1階も同様である。外から見た様子だと3階建てのようだが、ホールには3階への階段は見当たらなかった。どこか2階の奥にでもあるのかもしれない。
「なんだ、『亡霊屋敷』なんて呼ばれてからもっと古めかしくておどろおどろしいのかと思ってたのに、ずいぶんと普通じゃないか」
「そうですねえ、そこまで埃っぽくないですし、結構綺麗なものですね」
瑛真と蓬が拍子抜けだというような感想を漏らした。だが、理佳と識海はそうは思っていないようだ。
「な、なんか不気味だね・・・」
「ええ、これは恐ろしく妙ですね・・・」
「どこがだ、お前のところの屋敷だって暗くすればこんな感じになるんじゃないか?」
「だから、ですよ」
確かに瑛真の言うとおり、この『亡霊屋敷』は外観も、今4人が見ている内観も、どこにでもあるような屋敷にしか見えなかった。そして識海の言うように、『だからこそ』妙なのだ。約1世紀も前から存在してるような古い屋敷、おまけに人がいるのかすら怪しい。そんな有様で『ずいぶんと普通』に見えてしまうのはどういうことなのだろうか。理佳が不気味に思うのも無理はない。
「そ、そう言われてみれば・・・」
「確かに妙だな・・・」
瑛真と蓬も、説明されてあらためて妙だと思い始めたようだ。
「でも、このまま構えててもしょうがないぞ。どうする、手分けして見回るか?」
「もっとも、私は理佳が心配でついてきたんだから理佳と一緒に行くが」と瑛真は言葉を付け足した。識海も賛同しかけたが、その直後あることに気づいた。
「いえ、どうやら全員固まって行動した方が得策のようです」
「なんでだよ、今お前も賛成しかけたじゃないか」
「バラバラに行動したが最後、合流できる保証はないようですから」
そう言って、識海は懐からあるものを取り出した。
「お前の妹が作った無意味に高性能な携帯端末じゃないか」
「ええ。そしてご覧のとおりすっかり沈黙してしまってます」
満上家の三姉妹と理佳は、次女が作った携帯端末(スマートフォンのようなもの)を所持している。一般に発売されてるようなものとは比べ物にならないほど高性能だが、識海の取り出したそれは電源が落ち、見事に起動しなくなっっていた。瑛真と蓬もすぐさま自分の携帯を確認するが、識海家次女手製のものよりはるかに機能の劣る携帯が無事なわけがなかった。つまり、連絡手段が経たれてしまっている今、屋敷内で連絡を取り合うことはできなくなっているということだ。
「なるほどなあ。これじゃあ行方不明者が量産されるわけだよ・・・」
「はぐれたら一巻の終わりですからねえ」
すっかり音沙汰なしになってしまった自分の携帯を悲しそうに見つめながら、蓬は元気なくそう言った。
「というわけなので、全員で固まって行動しましょう。しかし、ある程度予想していたとはいえ、これではなにが起こるか分かったものじゃないですねえ・・・」
「うん、なんか得体の知れないものを感じるよ・・・」
理佳の持つ図抜けた直感は、この屋敷に巣食う正体不明の不気味な気配を正確に感じ取っているようだった。
2
一つ目の部屋、4人はとりあえず入り口から一番近かった扉に入った。どこの屋敷にでもあるような普通の洋室だった。おそらく、多数あるうちの客室の一つなのだろう。もしくは住み込みの使用人の部屋なのかもしれない。
「なにやら凡庸的な屋敷の洋室といった感じですね、客室か何かでしょうか」
「それでも置いてある家具は私の部屋のよりいいなあ・・・」
部屋にある家具を調べていた瑛真が、自分の部屋と比べてなにやらへこんでいた。とはいえ、置いてあるものは客室においてあるような一般的な家具ばかりで、特に変わったものはないようだ。
「ここは特に何も変わったところはないようですねえ」
「うん、そうみた・・・、・・・?」
蓬の出した結論に同意しかけた理佳だったが、途中でなぜか言葉を切り、おもむろに自分の背後へと顔を向けた。しかし、理佳の背後にあるのは部屋の壁だけだった。
「どうかしましたか?」
「・・・今、なんか変な感じが」
識海の声に答えつつ、妙な感じがしたという壁をぺたぺたと触り始める。しかし、軽く触った感じではただの壁と変わりがないようだった。
「うーん、気のせいかなあ・・・」
得心のいかない様子でしばらく壁を調べていた理佳だったが、やはり特におかしなところは見つからなかったようだった。首を捻りつつも壁から離れ、次の部屋を調べるためにこの部屋を全員で後にした。
それから二三の部屋を調べたが、一つ目とあまり変わり映えはしなかった。部屋を探索するたびになにやら首をかしげる理佳だったが、結局何事もなく部屋の探索は進んでいった。
「どうやら全ての部屋の扉が空いてるわけではなさそうですね」
「鍵がかかってる部屋も多数あるようですね」
「どうする、扉を破壊するか?」
「・・・いえ、おそらくその必要はないでしょう」
鍵のかかった扉に対し実力行使での強行突破を提案するが、識海はその提案を却下した。その判断は理佳の様子を見た上での判断で、鍵のかかった部屋に対して理佳は大して反応を示さないので、何もないだろうと判断したのだ。当の理佳は時折廊下の所々でなにやらぺたぺたと廊下の壁を触って確認をしていたが、やはりこれといって変わったところは見つからないようだ。こうして進んでいくうちに一番奥の部屋へとたどり着いた。部屋の中はこれまでの部屋とあまり変わりはなかったのだが、部屋の壁に大きな鏡が飾ってあった。それは人一人を映すには十分な大きさだった。
「こんなに大きな鏡が飾ってる部屋は、この屋敷では初めてですね」
「うん。でも・・・」
理佳はその大鏡を興味深そうに調べていく。だが、ただの豪勢な大鏡のようだった。
「ただの贅沢な鏡のようだな」
「うん、そうみたい」
その大鏡は目の前に立つ理佳の姿をしっかりと映し出していた。
「ここもなにもないようだな」
「そうですね」
結局、その部屋でも何事も起こることなく無事部屋の探索を終えた。
後書き
作者:風太 |
投稿日:2012/07/19 14:55 更新日:2012/07/19 14:57 『Verdecken Reich』の著作権は、すべて作者 風太様に属します。 |
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