作品ID:1251
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さよならメモリー
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
1 ○月×日 朝
前の話 | 目次 | 次の話 |
目を開けた。
白い天井が映っている。
自分の現在地を理解するために僕は僕の今までの記憶を再生し目に映る景色と同じものを探す。ヒットする。ここまでの経過時間0.5秒。
僕はここが自分の家だと理解する。
かけ布団をめくりベッドから降りた。ついでに体にさしていたコンセントを引き抜く。毎夜充電をしなくてもそう簡単に僕のバッテリーは切れないらしいが、用心するにこしたことはないと思う。
首を回して部屋の中を確認する。ベッド、クローゼット、机、本棚…。昨日の記憶と比べ位置が変化しているものはない。僕以外のだれかが侵入している気配もない。
異常なしと判断した僕は、洗面所に向い顔を洗った。歯を磨いた。鏡に映る僕の姿は人間の男と変わらなかった。17歳ほどと思われる少年の姿だった。その口が横に直線に引き結ばれているのが分かる。
この表情は無表情に分類されるだろうかと考えて、口の両端をつりあげてみた。笑った僕が映った。この行為に意味があるとは思えなかった。
キッチンで朝食をつくった。飲食をしなくても生きていけるのだから一人のときは何も食べなくてよいのではないかと思うが、以前研究者たちにその提案は却下された。
やはり用心にこしたことはないということだろう。というよりも仕方がないのだろう。そう思いながら目玉焼きをのせたトーストを咀嚼し、コーヒーを流し込む。僕の内部でそれらは細かく分解されていく。
人としての生活に、食事は必要不可欠だ。
制服に着替えて教科書諸々の収納された鞄を持ち家であるマンションを出た。晴れていたため傘は持たなかった。
少し歩いたところで中年の女性が「あら、佐藤くん」と声をかけてきた。
記憶を再生し照らし合わせ、同じマンションに住む寺田さんと判断した僕は、彼女にあいさつをする。
寺田さんは、佐藤くん疲れてるの、と言った。どうやら口角を上げる作業を僕は忘れていたらしい。
今度は笑顔をつくって、「昨日遅くまで勉強していたんです」と答えると、「そうだったの、ほどほどにね」と言って彼女は去っていった。
青空で輝く太陽が、僕を照らしている。体感温度が上がる。太陽は眩しくて、熱い。
はやく学校に向かわないと、と思った。
僕はふつうの人間として、公立高校に通っている。
教室で、人間と一緒に同じ授業を受ける。クラスメートたちと笑顔で会話をする。テストでのミスは無く、秀才という扱いになっている。
僕がロボットだと知っている人は、誰一人いない。
僕は人として、マンションに住み、食事をし、会話をし、学校にいっている。
テストだからだ。
大通りは人で賑わっていた。ぶつからないように避けながら歩く。横の道路を残像が残るほどの速さで車が走り去った。一定の間隔をあけて別の車がまた同じ速度で走り抜ける。通行人に注意を促す電子音が鳴っていた。
現在日本は少子化により、働き盛りの世代の人口が極端に減った。政府は対策として、僕らを使うことを考えた。ロボットを、人とともに働かせるのだ。疲れを感じることもない、使える労働力。
この政策はまだ民間人には知られていない。僕らがちゃんと使えることが証明されてから、伝えるのだろう。または伝えずに行うのかもしれない。
人のかわりとして人とともに問題なく日常生活が送れるか。それがロボットにできるのかというテストが、今僕らに課せられていることだ。
僕ら、と思っているが、実際に僕以外のロボットの存在は分からない。しかし僕以外にもきっといるだろう。この雑踏の中にだって、僕のように暮らすロボットがいるかもしれないのだ。
けれど、その存在に特に興味はない。
とにかくいつものように学校へ行き、あとは研究者たちに今日あった出来事の報告をして、家に帰る。
そうしてまた僕の新しい記憶ができる。
それだけだ。
白い天井が映っている。
自分の現在地を理解するために僕は僕の今までの記憶を再生し目に映る景色と同じものを探す。ヒットする。ここまでの経過時間0.5秒。
僕はここが自分の家だと理解する。
かけ布団をめくりベッドから降りた。ついでに体にさしていたコンセントを引き抜く。毎夜充電をしなくてもそう簡単に僕のバッテリーは切れないらしいが、用心するにこしたことはないと思う。
首を回して部屋の中を確認する。ベッド、クローゼット、机、本棚…。昨日の記憶と比べ位置が変化しているものはない。僕以外のだれかが侵入している気配もない。
異常なしと判断した僕は、洗面所に向い顔を洗った。歯を磨いた。鏡に映る僕の姿は人間の男と変わらなかった。17歳ほどと思われる少年の姿だった。その口が横に直線に引き結ばれているのが分かる。
この表情は無表情に分類されるだろうかと考えて、口の両端をつりあげてみた。笑った僕が映った。この行為に意味があるとは思えなかった。
キッチンで朝食をつくった。飲食をしなくても生きていけるのだから一人のときは何も食べなくてよいのではないかと思うが、以前研究者たちにその提案は却下された。
やはり用心にこしたことはないということだろう。というよりも仕方がないのだろう。そう思いながら目玉焼きをのせたトーストを咀嚼し、コーヒーを流し込む。僕の内部でそれらは細かく分解されていく。
人としての生活に、食事は必要不可欠だ。
制服に着替えて教科書諸々の収納された鞄を持ち家であるマンションを出た。晴れていたため傘は持たなかった。
少し歩いたところで中年の女性が「あら、佐藤くん」と声をかけてきた。
記憶を再生し照らし合わせ、同じマンションに住む寺田さんと判断した僕は、彼女にあいさつをする。
寺田さんは、佐藤くん疲れてるの、と言った。どうやら口角を上げる作業を僕は忘れていたらしい。
今度は笑顔をつくって、「昨日遅くまで勉強していたんです」と答えると、「そうだったの、ほどほどにね」と言って彼女は去っていった。
青空で輝く太陽が、僕を照らしている。体感温度が上がる。太陽は眩しくて、熱い。
はやく学校に向かわないと、と思った。
僕はふつうの人間として、公立高校に通っている。
教室で、人間と一緒に同じ授業を受ける。クラスメートたちと笑顔で会話をする。テストでのミスは無く、秀才という扱いになっている。
僕がロボットだと知っている人は、誰一人いない。
僕は人として、マンションに住み、食事をし、会話をし、学校にいっている。
テストだからだ。
大通りは人で賑わっていた。ぶつからないように避けながら歩く。横の道路を残像が残るほどの速さで車が走り去った。一定の間隔をあけて別の車がまた同じ速度で走り抜ける。通行人に注意を促す電子音が鳴っていた。
現在日本は少子化により、働き盛りの世代の人口が極端に減った。政府は対策として、僕らを使うことを考えた。ロボットを、人とともに働かせるのだ。疲れを感じることもない、使える労働力。
この政策はまだ民間人には知られていない。僕らがちゃんと使えることが証明されてから、伝えるのだろう。または伝えずに行うのかもしれない。
人のかわりとして人とともに問題なく日常生活が送れるか。それがロボットにできるのかというテストが、今僕らに課せられていることだ。
僕ら、と思っているが、実際に僕以外のロボットの存在は分からない。しかし僕以外にもきっといるだろう。この雑踏の中にだって、僕のように暮らすロボットがいるかもしれないのだ。
けれど、その存在に特に興味はない。
とにかくいつものように学校へ行き、あとは研究者たちに今日あった出来事の報告をして、家に帰る。
そうしてまた僕の新しい記憶ができる。
それだけだ。
後書き
作者:柑子 |
投稿日:2012/11/10 16:03 更新日:2012/11/13 15:32 『さよならメモリー』の著作権は、すべて作者 柑子様に属します。 |
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