作品ID:155
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バレンタイン×スイートサワー
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
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「…………はい」
そう言ってミホが差し出したのは、ハート型の箱だった。
眼前の少女――伊藤ミホは正直言って所謂ひとつの美少女で、クリーム色のセミロングの髪に少しきついけどぱっちりした目、鼻もすらっとしている誰もが認める美少女だ。
そして本日は二月十四日――俗に言う『バレンタインデー』であり、全国の男子が総じてそわそわする日である。
しかし僕は数少ない例外(?)であり、もはや諦めと化している。理由は言わずもがな、十六年の生まれてこのかた同年代にチョコをもらったことがない(いとこの幼女や近隣のオバチャンにはもらっているが同年代ではないだろう)。
幼馴染みであるにも拘わらず一度も僕にチョコを渡さなかったミホが、一体いどんな風の吹き回しで――
「ち、違うわよ!? パパにあげようかと思ったんだけど単身赴任しててでも郵送するとその間に腐っちゃうし友達にあげるにしては少し高いの買っちゃって気を遣わせるのも悪いし自分で食べるのも何だか切ないからってアンタにあげるだけなんだからッ!!」
息継ぎなしで真っ赤な顔して捲し立てたミホは、逃げるようにして走り去っていった。
……ていうか、昨日書店でエロ本を物色していた伊藤父を見たのは僕の気のせいか?
その日の夕方、自宅の前に立った僕ははたと思い至る。
今、このチョコを手に家に入れば母にあれこれと詮索されるのは必至、つまり今食わねば……。
「……よし、食うか」
誰に言うでもなく呟き、僕は庭へと直行。
何の気なしに頭を上げれば極細の三日月が空に浮いている。
「いただきます」
簡単に手を合わせ、開封する僕。……と、ここで僕は非常に驚いた。
中身のチョコが市販の形ではなかった。
え、これって……?
プルルルルル、ガチャ!
「あ、ミホ? このチョコってもしか――」
「うっさいバーカバーカチョコ喉に詰まらせて死んじゃえッ!!」
ツー、ツー、ツー……。
有無を言わせぬとは正にこの事。チョコで死んだ人がいるのかどうかはあえて触れないのは僕クオリティである。
手頃な石に腰を掛けてチョコをひと摘まみ、やっぱり市販の形ではなく、一口サイズのチョコがめちゃくちゃ詰まっていた。
一瞬戦慄を覚えたのは内緒で、一口食べてみる。
「……あ、ウマい」
率直な反応がそれで、つい沢山食べてしまい、気付いたら半分以上食べてしまっていた。
「……やっぱコレ、手作りじゃん」
そう思ったと同時に、さっきまで甘々だったチョコに、酸っぱさが追加された気がした。なんか、どこかむず痒いな……。
「よし、ホワイトデーには醤油せんべいでもあげるかな……」
きっと友達からのお返しで甘いものには食傷気味だと思うし、我ながらなんと気の利いたことをするんだろうか。
若干尊大な気分に陥りながらも、僕はチョコの箱を無理矢理鞄に詰めて玄関を開けた。
雨掬いの三日月が、ニヤニヤと笑っている顔に見えたのはきっと気のせいではないんだろう。
……因みに、その日の夕食はなんとチョコレートフォンデュで、僕が吐きそうになりながらも涙目で格闘したのは報告するだけ時間のムダって奴であろうか?
とにもかくにも、あの甘酸っぱいチョコが、他のどんなチョコより美味く感じたのは言うまでもない。
後書き
作者:長官 |
投稿日:2010/03/01 09:18 更新日:2010/03/01 09:18 『バレンタイン×スイートサワー』の著作権は、すべて作者 長官様に属します。 |
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