作品ID:1598
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永遠の終わりを待ち続けてる
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
ルーシアの涙
前の話 | 目次 | 次の話 |
ヴィルフリートとウィリアムを激しく非難しながら、ルーシアは心の中で泣いていた。ルーシアとして生きた時代に、妹の身に起こり得るかもしれない異変に気付いたとき、ルーシアは必死で妹を救う術を探してまわったけれど、探して探して探し回って、出さざるを得なかった結論は無情なもの。
ルーシアの危惧した通りの異変がシエルリーデの身体に現れてしまったならば、当時のリーデに残された道は、急速に訪れる死を受け入れることしか許されてはいなかった。
高貴な血筋の姫君と称えられようと、シエルリーデの育った家庭は冷たく複雑な家だった。厄介払いに養子に出されたルーシアの方が、幸せな家庭を与えられていた。
ルーシアはただ、妹が幸せになってくれることを望んで、妹が出逢った恋人が、当時のルーシアやシエルリーデの家の宿敵とも言うべき存在であると知っていながら、そこにリーデの幸せと笑顔があるのならば構わないと想って、シエルリーデを縛り付ける窮屈で冷たい家から逃がしたのだ。
永遠を生きるこの人だから、私は共に永遠を誓いたいの。そう言って微笑んだシエルリーデの瞳はとても幸せな色に満ちていて。ルーシアは別れの言葉に代えて、告げた。『永遠の幸せを生きなさい』と。
けれど、袂を別った妹にはとても残酷な定めが待ち受けていた。そのことに気付いたとき、ルーシアは本気で神を恨んだ。クロスを教会の床に投げ付けて、聖堂の十字架に向かって大声で喚いた。
――――そんなにあの子を苦しめたいのっ!? あんたなんかどれほどの存在だっていうのよ!!
訪れる死を受け入れる定めしか残されてはいないというのならば、せめてルーシアにしてやれることは何か残ってはいないのか。妹のために、そして、残されてしまう弟のために……。
残される哀しみならば、ルーシアだって知っていた。愛情深く育ててくれた養親達は勿論だけれど、ルーシアは伴侶との別れも早かったのだ。ルーシアはたった三年の結婚生活で、夫から置いてゆかれた。
当時のルーシアは、妹の恋人がどれだけ妹を大事にしてくれていたかを知っていた。ルーシアがルーシアとして生きた時代、確かにシエルリーデはヴィルフリートから大きな愛情で包まれ、大切にされていた。
永遠を誓ったはずの恋人を残して逝くことに、シエルリーデはどれだけ胸を痛めるだろうか。永遠に一人残されていく妹の大事な人は、ルーシアの弟は、どれほど孤独に嘆くだろうか。
そう考えれば、いてもたってもいられなかった。幾つも幾つも分厚い本を読み漁り、何か、何かないかと探して回った。何か、あの子達の救いを見出す手立てはないのかと。
そこに一つの話を聞いた。ルーシアは迷わなかった。迷わず診療所を息子達に明け渡した。突如と引退を言い渡し、診療所を預けると言い出したルーシアに、息子と義娘は困惑した。
『母さんならまだまだ現役で通るじゃないか』と主張する息子に、やりたいことが出来たからと言って、ルーシアは退かなかった。ルーシアの一貫した態度に、息子達も首を傾げながら、最後は折れた。
風の便りに一度だけ耳にしたことのある話を、そのときのルーシアはどうしても確かめてみたかった。いや、確かめる必要があったのだ。
それは、当時のルーシア達の世界観では考えられない話ではあったのだけれど、広い世界の中のごく一部の人々が、生まれる前の記憶を持っていると口にしたという話だ。
ルーシアはそういった話があったと伝えられる場所を、何年も何年もの旅を続けながら、力の及ぶ限り、足の届く限り、廻って回った。そうして幾年もの旅を続けて、結論を出した。人は生まれ変わると。
ルーシアは旅を続ける中で、旅の中で聞き及んだ話の記録を全て書き綴っていた。ルーシアが結論を得る頃には、記録を綴った日誌は膨大な量になっていた。
ルーシアは旅の生活から息子達の待つ家へと戻り、膨大な記録を整理しながら、二つの手紙を書き綴った。一つは孫のエルフリッドに宛てて。一つは袂を別った妹の伴侶に向けて。
ルーシアは息子には妹の本当の消息を知らせなかった。それは、ルディエットという家を知るルーシアにとっては当然の防衛策だった。
ルーシアの息子はそれなりに若い年齢で結婚していて、子宝にも恵まれた。五人生まれた孫達の中で、ルーシアが選んだのは末孫のエルフリッド。
ルーシアの末孫は不器用にも過ぎるほど真っ直ぐで純粋なきらいがあって、ルーシアは自分の感覚を信じようと想った。末孫ならば、この手紙を託せる、と。
今は三才のエルフリッドに宛てた遺書の中、ルーシアはこっそりと妹達への手紙を忍ばせた。それから数カ月がする頃に、慣れない長旅生活も影響して、ルーシアは眠りに就いた。当時、永眠とされた眠りに。
話しかけられている感覚に、ルーシアが瞳を開けたとき、そこはとても小汚い小さな部屋で、女性が何かを言っていた。いや、ルーシアはその女性に抱かれていたのだ。
そして、気付いた。眠りに就いたはずの自分が瞳を開いていることに。ああ、あの旅生活は決して無駄なものなどではなかった。可愛いあの子はどうなっただろうか。恐らく当時は眠りに就いた。
今はあれからどれほどの時が経ったのだろうか。そんなことを考えていると、女性の腕の中のルーシアを興味深げに見つめる瞳とかちあった。黒い髪、褐色の肌。
女性がルーシアに向かって告げた。『お姉ちゃんのヴィマラよ、タラ。ヴィマラは口がきけないの、ご挨拶が出来ないことは、許してやってね』と。
けれど、そんなことはどうでもよかった。ヴィマラと呼ばれた少女はルーシアと瞳があった瞬間に、泣き出しそうな表情を浮かべた。ルーシアを胸に抱く女性の腕を掴み、部屋の外へと引っ張った。
小さな小屋の外には、むき出しの地面。近くに落ちていた木の枝を拾い、地面に文字が綴られてゆく。ルーシアが生きた時代のルーシアの祖国と妹の伴侶の祖国の文字、そして、ルディエット家が流れを汲む古代ローマ帝国の王室の文字で二通りに。
――――今度は私がお姉ちゃんみたいよ、姉さま。私を覚えていらっしゃる? 姉さまの妹を覚えて? シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット。
『私がお姉ちゃんみたいよ』と綴られた文字は、妹の伴侶の祖国のもので、ルーシアや妹自身の祖国のものでもある文字。『シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット』と綴られたサインは、ルディエット家の祖国とも言える古代ローマ王朝の文字。
リーデと紡がれたはずの声は、ただの赤子の泣き声だった。けれど、ルーシアの声にリーデは瞳を輝かせた。ああ、リーデはあたしに気付いている。
あたしがリーデに気付いたことにも。ルーシアの胸の中いっぱいに歓喜の心が広がっていった。
なのに次の瞬間、ルーシアの目の前で、妹はルーシアを抱いた女性から力一杯の平手打ちを食らって小さな身体を地面に転ばせた。
ルーシアが何が起こったのかが解らずにいると、ルーシアを抱く女性が妹を怒鳴り付けた。それも、とてもとても冷たくて怒りに満ちた声で。
『ヴィマラ!! アンタはまたつまんない遊びでわけのわかんない落書きで地面を汚しやがって!! とっととそのみょうちきりんな落書きを消して掃除しな!! 終わったら普段の仕事だ』
ルーシアは唖然とした。この女性は何を馬鹿なことを言ってるんだろうと。自分の娘がどれだけの賢さを見せたのかが解らないのだろうか、と。
タラであるルーシアの目に映ったヴィマラ、かつての妹は、どう見ても三つかそこらの年頃だ。三つの子どもが流暢に文字を綴れることの凄さが、この女性には理解出来ないのかと。
けれど、それから三月も経てば、ルーシアの目にも色々なことが映り出した。まず、自分達が眠りに就いてから二百年近くの年月が流れたらしいということ。
そして、ルーシアと妹、いや、タラとヴィマラが生まれた国をインドと呼ぶらしいこと。タラとヴィマラの家庭や周辺の家庭は決して裕福ではなく、むしろ、昔のルーシアや妹達からいうところの労働階級以下の貧しい家庭だということ。
そうしたことを呑み込んでいくうちに、ルーシアは理解した。女性はヴィマラが綴ったのが文字だと解らなかったのだ。高度な教養のある階級層ではないゆえに、ただの落書きとしか映らないのだ。
それからも女性のヴィマラに対する態度は酷かった。口がきけないというハンデで、ヴィマラは、シエルリーデはルーシアに語りかけようと思えば、地面や手の平に文字を綴ることしか出来なかった。
その度にヴィマラは女性から最初の日と同じように平手を上げられ、小さな身体を打ち倒されていた。ルーシアがタラとして生を受けて、一才になって少しの頃、人買いがヴィマラとタラの家にやって来た。
ヴィマラとタラの家庭はとても貧しくて、なのに子どもは多かった。丁度、口減らしと厄介払いになる。母親はそう言って迷わずヴィマラを売り渡した。ルーシアは人買いに渡されるヴィマラの衣を引っ掴んだ。
険しい目付きで母親を睨み付け、インドの言葉でもって投げ付けた。『この悪魔』と。母親は怒り狂って、ヴィマラとタラをセットで買えと人買いに告げた。人買いはホクホク顔で、値段を交渉させて、タラはヴィマラと共に売りに出された。
それから一年。あちらに売られ、こちらに売られ……。けれど、タラは構わなかった。ヴィマラと一緒だったから、構わないと想っていたのだ。ルーシアは、リーデと一緒なら構わないと想っていたのだ。
一緒にいてやれる。共にこの子の昔の恋人を探してやることが出来る。一年の間に、ヴィマラとタラはかつてのルーシアとリーデとして会話を繰り返した。
『早くヴィルフリートのところに、私のヴィリーの許に帰りたい。寂しがりなあの人を残して眠ってしまったから、一刻も早く戻りたい』と、それがヴィマラの口癖だった。
拙い言葉で少しだけ話せるようになったタラ。ヴィマラが文字を綴る。『姉さまはあれからどうして暮していらしたの?』と。タラは『孫に書くの通り』と応える。
そんな日々が続いたある日、ヴィマラとタラは新たな買い手として現れた男に身を固くした。男はヴィマラとタラを見て、『玩具には良さそうだな』と獲物を見つめる瞳で告げた。
港で、船から降ろされ、今の主である奴隷商人と男が値段の交渉をしているときだった。ヴィマラが突如とタラの手を引っ張った。逃げられるものなら逃げたいのは、タラとて同じだけれど、無謀な逃走が叶うとも思えない。
そんな想いで見上げたタラの瞳に映ったヴィマラの口は音の響かないままに、『ヴィリーとウィル!!』と紡がれ、瞳は希望に満ち溢れて輝いていた。
走って走って、けれどタラは小さくて……。床に転んだタラを、ヴィマラが抱えて走った。背後から奴隷商人の大きく耳障りな怒鳴り声、罵声が聞こえる。追いかけてくる足音もどんどんと近くなる。
駄目!! タラがそう感じた瞬間が、ヴィマラが希望を掴んだときだった。コインが一枚、放られた。『僕が買う』と懐かしい響きの声がインドの言葉で奴隷商人に向けられる。
そっと、地面に下ろされたタラは、そこにいる二人の人影を見て泣きたくなった。ああ、この子はもう大丈夫だわ。今度こそ、幸せに生きられればいい。
それにしても、買うとは何よ、買うとは。助けの手を出すにしたって、言いようというものがあるでしょうにっ!! そんなことをのんきに考えていたタラは、目の前で信じられない光景を見せつけられた。
ヴィマラが、リーデが喜びに満ちた瞳でヴィルフリートの服の裾を離さない姿を見て、ヴィルフリートは言ってのけたのだ。『本気で買ったわけじゃない。おまえの主になる気はない』と。
彼は気付いていない。彼には判っていない? 彼が愛したはずのルーシアの妹のことが? ヴィルフリートの言葉を聞いて、喜びの瞳を少し陰らせたヴィマラは、口を尖らせる仕草で、ヴィルフリートの服を引っ張った。服の裾を掴んだまま、落ちていた木切れを拾い、地面に綴り始めた文字。
『シエルリーデ』と、或いは、『シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット』と綴られるはずだった文字は、ヴィルフリートの隣に立つ青年が、まるで毛虫でも見るように瞳を向けて踏み消した。
『お前みたいな子に相応しい綴りじゃない』と消された文字に、唖然としたのはヴィマラもだろうけれど、衝撃を受けたのはタラの方もだった。それでもヴィマラは、リーデは挫けなかった。
『ヴィリー』と地面に綴り、嬉しそうな瞳を向けた。これなら! ルーシアは、タラは、そう想ったのに……。あろうことかその文字は今度はヴィルフリートによって踏み消された。
『おまえにそんな口を聞かれる筋合いはないよ』と、ヴィルフリートは冷たく言いのけた。ヴィマラが泣きそうな顔をしたのが、タラにははっきりと見えていた。
ヴィマラ、リーデはありったけの名前の文字を綴り、ヴィルフリートに訴えていた。気付いてほしい、気付いて、気付いてと。どれだけ文字を綴っても気付かないヴィルフリートに、リーデは木切れを置いた。
木切れを地面に置いたリーデは、ニコリと微笑み、みすぼらしい衣の裾を摘み上げて、優雅に貴婦人の、貴族の姫君のお辞儀をしてみせた。
そして、そのまま衣を翻し、美しくワルツのステップを踏んで踊ってみせる。リーデがそこまでしてみせたというのに…………。見ているだけなど出来るはずもなくて、タラも口に出来る限りの言葉を紡いだ。
かつての祖国の文字でヴィマラが綴ったのは、『王女・高貴な生まれ・神』の三つ。ヴィルフリートは何も気付かなかった。苛立ちを込めた声でルーシアが叫んだ、『弟・あたしの弟・昔・妹』の四つの言葉。
ヴィルフリートは気付かなかった。否、耳を傾けようとすらしやしなかった。ルーシアは内心で歯噛みした。『彼は何を考えてるのっ!? リーデがこんなに必死になって、私よ、気付いてと言っているのに!』
そんなルーシアの心やリーデの必死の想いを嘲笑うかの如く、そこに、ルーシアとリーデの、いや、ヴィマラとタラの父親を名乗る男が現れた。
ヴィルフリートの瞳を見れば、彼の瞳は明らかに男の言葉を胡散臭いと語っていた。男の言葉は嘘だと知っている瞳だった。
なのに!! ヴィルフリートはあたかも男の言葉を信じたような口ぶりで、あっさりとヴィマラとタラを男に引き渡そうとした。いや、引き渡したのだ、実際に!
抵抗しようと暴れて、ヴィマラが、リーデが必死に伸ばした手を彼は呆気なく振り解いた。いや、むしろその仕草は、厄介者を扱う邪険に払い除けるものだった。
売られた先でリーデは毎晩泣いていた。心配して声をかけるルーシアに、リーデは口癖のように毎回、昔の祖国の文字で綴った。
――――駄目ね、姉さま。こんなみすぼらしくて汚い女の子じゃいけないんだわ。大丈夫よ、私、絶対に綺麗になって、ヴィルフリートに気付いてもらえるように努力する。
リーデは言葉を破らなかった。奴隷仕事の合間合間をぬって肌を磨き、髪を整え、二年も経つ頃には街でも評判の美しい子ども奴隷になっていた。
それが悲劇を再び招いた。ヴィマラを欲しいと言ってきた男がいる。子ども好きの色狂いで有名な男で、リーデを見て瞳をぎらつかせて交渉してきた。
『買うのはヴィマラ単品だ。随分と値段を吹っ掛けてくれたんだ、逃がしたり傷を付けたりしたら承知しねぇぞ。ああ、だけど暫くはちょっと、他の用事があるんでな。
折角の新しい玩具だ。自分で迎えに来たいから、引き取り期日は……そうだな、三日後ってとこでどうだ? 繰り返すが、逃がしたり傷が付いてたら、買値の三倍は違約金を払ってもらうからな』
主の下で引き合わされ、聞かされた男の言葉に、リーデは真っ青になって唇を恐怖で震わせていた。逃げよう! 今度はあたしがリーデを連れて逃げるのよ!!
けれど、そんなルーシアの想いは叶わなかった。男が返ったその日の内に、ルーシアはリーデと引き離された。二日間、ルーシアはリーデの姿を見ることが出来なかった。
男が示した受け取り期日の前夜、ルーシアは食事を運べと命じられた。主は言った。『姉妹最後のお別れをさせてやろってんだから、有難く思いな』と。
地下の倉庫に繋がる階段を、質素な食事の皿を持って下りたルーシアは、そこに広がる光景に言葉を失くした。見るからに重い鉄球を幾つも付けた鎖で両足を拘束されたヴィマラが、静かに膝を抱えていた。
絶対、助けてあげるから!! ルーシアの言葉に、リーデは微笑んだ。けれど、ルーシアは直ぐに引き戻されてしまって、再びヴィマラから遠ざけられた。主の警戒の強さは普通ではなかった。
どうすることも出来ないままで期日の日、約束の時刻に男はやってきてしまった。逃がしちゃいねぇだろうなと言う男に、主はルーシアを馬鹿にするようにして笑った。勿論、と。
けれど、ルーシアは諦めてはいなかった。引き渡されるときには重しも鎖も外されるはずだ。そのときに連れて逃げよう。そんなルーシアを嘲笑うように、主は告げた。
『妹と最後の別れを済ましてから連れて行ってやってもらえますかね。ああ、心配ありやせんよ。手枷を嵌めたままお渡し出来るように、荷車は用意させてもらってますからね』
『おう、流石だねぇ。姉妹の別れをさせてやろうってのも気にいった!! ヴィマラも喜ぶだろうよ。新しいお人形さんが喜んでくれるのは、嬉しいね』
主と男の会話に青褪めながら、地下倉庫への階段を二人と共に下りたルーシアが見たのは、妹の深い孤独と哀しみの嘆き。リーデは……ヴィマラは自分を繋ぐ鎖で首をくくっていた。
倉庫の床には、朝食の皿と思しき破片が散らばっていて……。破片で切った指の血で、床に綴られていたのは、二つの文字。かつての祖国の文字で、『ヴィルフリート』と『さよなら』……。
――――あまりにも深いリーデの嘆きと絶望に、ルーシアが絶望と共に憎悪を覚えた瞬間だった。赦さない、と。ヴィルフリートを赦さない、絶対に赦してなどやらない、と!!
ルーシアの危惧した通りの異変がシエルリーデの身体に現れてしまったならば、当時のリーデに残された道は、急速に訪れる死を受け入れることしか許されてはいなかった。
高貴な血筋の姫君と称えられようと、シエルリーデの育った家庭は冷たく複雑な家だった。厄介払いに養子に出されたルーシアの方が、幸せな家庭を与えられていた。
ルーシアはただ、妹が幸せになってくれることを望んで、妹が出逢った恋人が、当時のルーシアやシエルリーデの家の宿敵とも言うべき存在であると知っていながら、そこにリーデの幸せと笑顔があるのならば構わないと想って、シエルリーデを縛り付ける窮屈で冷たい家から逃がしたのだ。
永遠を生きるこの人だから、私は共に永遠を誓いたいの。そう言って微笑んだシエルリーデの瞳はとても幸せな色に満ちていて。ルーシアは別れの言葉に代えて、告げた。『永遠の幸せを生きなさい』と。
けれど、袂を別った妹にはとても残酷な定めが待ち受けていた。そのことに気付いたとき、ルーシアは本気で神を恨んだ。クロスを教会の床に投げ付けて、聖堂の十字架に向かって大声で喚いた。
――――そんなにあの子を苦しめたいのっ!? あんたなんかどれほどの存在だっていうのよ!!
訪れる死を受け入れる定めしか残されてはいないというのならば、せめてルーシアにしてやれることは何か残ってはいないのか。妹のために、そして、残されてしまう弟のために……。
残される哀しみならば、ルーシアだって知っていた。愛情深く育ててくれた養親達は勿論だけれど、ルーシアは伴侶との別れも早かったのだ。ルーシアはたった三年の結婚生活で、夫から置いてゆかれた。
当時のルーシアは、妹の恋人がどれだけ妹を大事にしてくれていたかを知っていた。ルーシアがルーシアとして生きた時代、確かにシエルリーデはヴィルフリートから大きな愛情で包まれ、大切にされていた。
永遠を誓ったはずの恋人を残して逝くことに、シエルリーデはどれだけ胸を痛めるだろうか。永遠に一人残されていく妹の大事な人は、ルーシアの弟は、どれほど孤独に嘆くだろうか。
そう考えれば、いてもたってもいられなかった。幾つも幾つも分厚い本を読み漁り、何か、何かないかと探して回った。何か、あの子達の救いを見出す手立てはないのかと。
そこに一つの話を聞いた。ルーシアは迷わなかった。迷わず診療所を息子達に明け渡した。突如と引退を言い渡し、診療所を預けると言い出したルーシアに、息子と義娘は困惑した。
『母さんならまだまだ現役で通るじゃないか』と主張する息子に、やりたいことが出来たからと言って、ルーシアは退かなかった。ルーシアの一貫した態度に、息子達も首を傾げながら、最後は折れた。
風の便りに一度だけ耳にしたことのある話を、そのときのルーシアはどうしても確かめてみたかった。いや、確かめる必要があったのだ。
それは、当時のルーシア達の世界観では考えられない話ではあったのだけれど、広い世界の中のごく一部の人々が、生まれる前の記憶を持っていると口にしたという話だ。
ルーシアはそういった話があったと伝えられる場所を、何年も何年もの旅を続けながら、力の及ぶ限り、足の届く限り、廻って回った。そうして幾年もの旅を続けて、結論を出した。人は生まれ変わると。
ルーシアは旅を続ける中で、旅の中で聞き及んだ話の記録を全て書き綴っていた。ルーシアが結論を得る頃には、記録を綴った日誌は膨大な量になっていた。
ルーシアは旅の生活から息子達の待つ家へと戻り、膨大な記録を整理しながら、二つの手紙を書き綴った。一つは孫のエルフリッドに宛てて。一つは袂を別った妹の伴侶に向けて。
ルーシアは息子には妹の本当の消息を知らせなかった。それは、ルディエットという家を知るルーシアにとっては当然の防衛策だった。
ルーシアの息子はそれなりに若い年齢で結婚していて、子宝にも恵まれた。五人生まれた孫達の中で、ルーシアが選んだのは末孫のエルフリッド。
ルーシアの末孫は不器用にも過ぎるほど真っ直ぐで純粋なきらいがあって、ルーシアは自分の感覚を信じようと想った。末孫ならば、この手紙を託せる、と。
今は三才のエルフリッドに宛てた遺書の中、ルーシアはこっそりと妹達への手紙を忍ばせた。それから数カ月がする頃に、慣れない長旅生活も影響して、ルーシアは眠りに就いた。当時、永眠とされた眠りに。
話しかけられている感覚に、ルーシアが瞳を開けたとき、そこはとても小汚い小さな部屋で、女性が何かを言っていた。いや、ルーシアはその女性に抱かれていたのだ。
そして、気付いた。眠りに就いたはずの自分が瞳を開いていることに。ああ、あの旅生活は決して無駄なものなどではなかった。可愛いあの子はどうなっただろうか。恐らく当時は眠りに就いた。
今はあれからどれほどの時が経ったのだろうか。そんなことを考えていると、女性の腕の中のルーシアを興味深げに見つめる瞳とかちあった。黒い髪、褐色の肌。
女性がルーシアに向かって告げた。『お姉ちゃんのヴィマラよ、タラ。ヴィマラは口がきけないの、ご挨拶が出来ないことは、許してやってね』と。
けれど、そんなことはどうでもよかった。ヴィマラと呼ばれた少女はルーシアと瞳があった瞬間に、泣き出しそうな表情を浮かべた。ルーシアを胸に抱く女性の腕を掴み、部屋の外へと引っ張った。
小さな小屋の外には、むき出しの地面。近くに落ちていた木の枝を拾い、地面に文字が綴られてゆく。ルーシアが生きた時代のルーシアの祖国と妹の伴侶の祖国の文字、そして、ルディエット家が流れを汲む古代ローマ帝国の王室の文字で二通りに。
――――今度は私がお姉ちゃんみたいよ、姉さま。私を覚えていらっしゃる? 姉さまの妹を覚えて? シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット。
『私がお姉ちゃんみたいよ』と綴られた文字は、妹の伴侶の祖国のもので、ルーシアや妹自身の祖国のものでもある文字。『シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット』と綴られたサインは、ルディエット家の祖国とも言える古代ローマ王朝の文字。
リーデと紡がれたはずの声は、ただの赤子の泣き声だった。けれど、ルーシアの声にリーデは瞳を輝かせた。ああ、リーデはあたしに気付いている。
あたしがリーデに気付いたことにも。ルーシアの胸の中いっぱいに歓喜の心が広がっていった。
なのに次の瞬間、ルーシアの目の前で、妹はルーシアを抱いた女性から力一杯の平手打ちを食らって小さな身体を地面に転ばせた。
ルーシアが何が起こったのかが解らずにいると、ルーシアを抱く女性が妹を怒鳴り付けた。それも、とてもとても冷たくて怒りに満ちた声で。
『ヴィマラ!! アンタはまたつまんない遊びでわけのわかんない落書きで地面を汚しやがって!! とっととそのみょうちきりんな落書きを消して掃除しな!! 終わったら普段の仕事だ』
ルーシアは唖然とした。この女性は何を馬鹿なことを言ってるんだろうと。自分の娘がどれだけの賢さを見せたのかが解らないのだろうか、と。
タラであるルーシアの目に映ったヴィマラ、かつての妹は、どう見ても三つかそこらの年頃だ。三つの子どもが流暢に文字を綴れることの凄さが、この女性には理解出来ないのかと。
けれど、それから三月も経てば、ルーシアの目にも色々なことが映り出した。まず、自分達が眠りに就いてから二百年近くの年月が流れたらしいということ。
そして、ルーシアと妹、いや、タラとヴィマラが生まれた国をインドと呼ぶらしいこと。タラとヴィマラの家庭や周辺の家庭は決して裕福ではなく、むしろ、昔のルーシアや妹達からいうところの労働階級以下の貧しい家庭だということ。
そうしたことを呑み込んでいくうちに、ルーシアは理解した。女性はヴィマラが綴ったのが文字だと解らなかったのだ。高度な教養のある階級層ではないゆえに、ただの落書きとしか映らないのだ。
それからも女性のヴィマラに対する態度は酷かった。口がきけないというハンデで、ヴィマラは、シエルリーデはルーシアに語りかけようと思えば、地面や手の平に文字を綴ることしか出来なかった。
その度にヴィマラは女性から最初の日と同じように平手を上げられ、小さな身体を打ち倒されていた。ルーシアがタラとして生を受けて、一才になって少しの頃、人買いがヴィマラとタラの家にやって来た。
ヴィマラとタラの家庭はとても貧しくて、なのに子どもは多かった。丁度、口減らしと厄介払いになる。母親はそう言って迷わずヴィマラを売り渡した。ルーシアは人買いに渡されるヴィマラの衣を引っ掴んだ。
険しい目付きで母親を睨み付け、インドの言葉でもって投げ付けた。『この悪魔』と。母親は怒り狂って、ヴィマラとタラをセットで買えと人買いに告げた。人買いはホクホク顔で、値段を交渉させて、タラはヴィマラと共に売りに出された。
それから一年。あちらに売られ、こちらに売られ……。けれど、タラは構わなかった。ヴィマラと一緒だったから、構わないと想っていたのだ。ルーシアは、リーデと一緒なら構わないと想っていたのだ。
一緒にいてやれる。共にこの子の昔の恋人を探してやることが出来る。一年の間に、ヴィマラとタラはかつてのルーシアとリーデとして会話を繰り返した。
『早くヴィルフリートのところに、私のヴィリーの許に帰りたい。寂しがりなあの人を残して眠ってしまったから、一刻も早く戻りたい』と、それがヴィマラの口癖だった。
拙い言葉で少しだけ話せるようになったタラ。ヴィマラが文字を綴る。『姉さまはあれからどうして暮していらしたの?』と。タラは『孫に書くの通り』と応える。
そんな日々が続いたある日、ヴィマラとタラは新たな買い手として現れた男に身を固くした。男はヴィマラとタラを見て、『玩具には良さそうだな』と獲物を見つめる瞳で告げた。
港で、船から降ろされ、今の主である奴隷商人と男が値段の交渉をしているときだった。ヴィマラが突如とタラの手を引っ張った。逃げられるものなら逃げたいのは、タラとて同じだけれど、無謀な逃走が叶うとも思えない。
そんな想いで見上げたタラの瞳に映ったヴィマラの口は音の響かないままに、『ヴィリーとウィル!!』と紡がれ、瞳は希望に満ち溢れて輝いていた。
走って走って、けれどタラは小さくて……。床に転んだタラを、ヴィマラが抱えて走った。背後から奴隷商人の大きく耳障りな怒鳴り声、罵声が聞こえる。追いかけてくる足音もどんどんと近くなる。
駄目!! タラがそう感じた瞬間が、ヴィマラが希望を掴んだときだった。コインが一枚、放られた。『僕が買う』と懐かしい響きの声がインドの言葉で奴隷商人に向けられる。
そっと、地面に下ろされたタラは、そこにいる二人の人影を見て泣きたくなった。ああ、この子はもう大丈夫だわ。今度こそ、幸せに生きられればいい。
それにしても、買うとは何よ、買うとは。助けの手を出すにしたって、言いようというものがあるでしょうにっ!! そんなことをのんきに考えていたタラは、目の前で信じられない光景を見せつけられた。
ヴィマラが、リーデが喜びに満ちた瞳でヴィルフリートの服の裾を離さない姿を見て、ヴィルフリートは言ってのけたのだ。『本気で買ったわけじゃない。おまえの主になる気はない』と。
彼は気付いていない。彼には判っていない? 彼が愛したはずのルーシアの妹のことが? ヴィルフリートの言葉を聞いて、喜びの瞳を少し陰らせたヴィマラは、口を尖らせる仕草で、ヴィルフリートの服を引っ張った。服の裾を掴んだまま、落ちていた木切れを拾い、地面に綴り始めた文字。
『シエルリーデ』と、或いは、『シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット』と綴られるはずだった文字は、ヴィルフリートの隣に立つ青年が、まるで毛虫でも見るように瞳を向けて踏み消した。
『お前みたいな子に相応しい綴りじゃない』と消された文字に、唖然としたのはヴィマラもだろうけれど、衝撃を受けたのはタラの方もだった。それでもヴィマラは、リーデは挫けなかった。
『ヴィリー』と地面に綴り、嬉しそうな瞳を向けた。これなら! ルーシアは、タラは、そう想ったのに……。あろうことかその文字は今度はヴィルフリートによって踏み消された。
『おまえにそんな口を聞かれる筋合いはないよ』と、ヴィルフリートは冷たく言いのけた。ヴィマラが泣きそうな顔をしたのが、タラにははっきりと見えていた。
ヴィマラ、リーデはありったけの名前の文字を綴り、ヴィルフリートに訴えていた。気付いてほしい、気付いて、気付いてと。どれだけ文字を綴っても気付かないヴィルフリートに、リーデは木切れを置いた。
木切れを地面に置いたリーデは、ニコリと微笑み、みすぼらしい衣の裾を摘み上げて、優雅に貴婦人の、貴族の姫君のお辞儀をしてみせた。
そして、そのまま衣を翻し、美しくワルツのステップを踏んで踊ってみせる。リーデがそこまでしてみせたというのに…………。見ているだけなど出来るはずもなくて、タラも口に出来る限りの言葉を紡いだ。
かつての祖国の文字でヴィマラが綴ったのは、『王女・高貴な生まれ・神』の三つ。ヴィルフリートは何も気付かなかった。苛立ちを込めた声でルーシアが叫んだ、『弟・あたしの弟・昔・妹』の四つの言葉。
ヴィルフリートは気付かなかった。否、耳を傾けようとすらしやしなかった。ルーシアは内心で歯噛みした。『彼は何を考えてるのっ!? リーデがこんなに必死になって、私よ、気付いてと言っているのに!』
そんなルーシアの心やリーデの必死の想いを嘲笑うかの如く、そこに、ルーシアとリーデの、いや、ヴィマラとタラの父親を名乗る男が現れた。
ヴィルフリートの瞳を見れば、彼の瞳は明らかに男の言葉を胡散臭いと語っていた。男の言葉は嘘だと知っている瞳だった。
なのに!! ヴィルフリートはあたかも男の言葉を信じたような口ぶりで、あっさりとヴィマラとタラを男に引き渡そうとした。いや、引き渡したのだ、実際に!
抵抗しようと暴れて、ヴィマラが、リーデが必死に伸ばした手を彼は呆気なく振り解いた。いや、むしろその仕草は、厄介者を扱う邪険に払い除けるものだった。
売られた先でリーデは毎晩泣いていた。心配して声をかけるルーシアに、リーデは口癖のように毎回、昔の祖国の文字で綴った。
――――駄目ね、姉さま。こんなみすぼらしくて汚い女の子じゃいけないんだわ。大丈夫よ、私、絶対に綺麗になって、ヴィルフリートに気付いてもらえるように努力する。
リーデは言葉を破らなかった。奴隷仕事の合間合間をぬって肌を磨き、髪を整え、二年も経つ頃には街でも評判の美しい子ども奴隷になっていた。
それが悲劇を再び招いた。ヴィマラを欲しいと言ってきた男がいる。子ども好きの色狂いで有名な男で、リーデを見て瞳をぎらつかせて交渉してきた。
『買うのはヴィマラ単品だ。随分と値段を吹っ掛けてくれたんだ、逃がしたり傷を付けたりしたら承知しねぇぞ。ああ、だけど暫くはちょっと、他の用事があるんでな。
折角の新しい玩具だ。自分で迎えに来たいから、引き取り期日は……そうだな、三日後ってとこでどうだ? 繰り返すが、逃がしたり傷が付いてたら、買値の三倍は違約金を払ってもらうからな』
主の下で引き合わされ、聞かされた男の言葉に、リーデは真っ青になって唇を恐怖で震わせていた。逃げよう! 今度はあたしがリーデを連れて逃げるのよ!!
けれど、そんなルーシアの想いは叶わなかった。男が返ったその日の内に、ルーシアはリーデと引き離された。二日間、ルーシアはリーデの姿を見ることが出来なかった。
男が示した受け取り期日の前夜、ルーシアは食事を運べと命じられた。主は言った。『姉妹最後のお別れをさせてやろってんだから、有難く思いな』と。
地下の倉庫に繋がる階段を、質素な食事の皿を持って下りたルーシアは、そこに広がる光景に言葉を失くした。見るからに重い鉄球を幾つも付けた鎖で両足を拘束されたヴィマラが、静かに膝を抱えていた。
絶対、助けてあげるから!! ルーシアの言葉に、リーデは微笑んだ。けれど、ルーシアは直ぐに引き戻されてしまって、再びヴィマラから遠ざけられた。主の警戒の強さは普通ではなかった。
どうすることも出来ないままで期日の日、約束の時刻に男はやってきてしまった。逃がしちゃいねぇだろうなと言う男に、主はルーシアを馬鹿にするようにして笑った。勿論、と。
けれど、ルーシアは諦めてはいなかった。引き渡されるときには重しも鎖も外されるはずだ。そのときに連れて逃げよう。そんなルーシアを嘲笑うように、主は告げた。
『妹と最後の別れを済ましてから連れて行ってやってもらえますかね。ああ、心配ありやせんよ。手枷を嵌めたままお渡し出来るように、荷車は用意させてもらってますからね』
『おう、流石だねぇ。姉妹の別れをさせてやろうってのも気にいった!! ヴィマラも喜ぶだろうよ。新しいお人形さんが喜んでくれるのは、嬉しいね』
主と男の会話に青褪めながら、地下倉庫への階段を二人と共に下りたルーシアが見たのは、妹の深い孤独と哀しみの嘆き。リーデは……ヴィマラは自分を繋ぐ鎖で首をくくっていた。
倉庫の床には、朝食の皿と思しき破片が散らばっていて……。破片で切った指の血で、床に綴られていたのは、二つの文字。かつての祖国の文字で、『ヴィルフリート』と『さよなら』……。
――――あまりにも深いリーデの嘆きと絶望に、ルーシアが絶望と共に憎悪を覚えた瞬間だった。赦さない、と。ヴィルフリートを赦さない、絶対に赦してなどやらない、と!!
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2015/11/18 22:37 更新日:2015/11/18 22:37 『永遠の終わりを待ち続けてる』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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