作品ID:1787
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異界の口
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
一章 セイ 十
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学園を出てからは、後ろを時折確認しながら、走るだけだった。
「ホタル、もう時間がないぞ!」
寮母さんと言い争っている間に、汽車の時間が迫っていた。
学園から駅までは、一本道。
田んぼの間の農道とは思えない広い道。ホタルはもの珍しそうに周りを見渡しながら、自分の横を身軽に走っている。
……そういえば、ホタルの荷物は自分が持っているのだ。
そう気がついたら、ホタルが憎らしくなってきた。
さっきの寮母さんの時もそうだった。
不思議な子。
声には出さず、呟く。
いったい、ホタルとはどんなやつなのだろう。
自分は、ホタルについて何も知らなかったのだ。
「なあ、ホタル。」
「なんだい、セイ。」
息切れの激しいホタルに、自分は目を向ける余裕がなかった。
目の前に迫ってきた駅をまっすぐと見る。
「海に着くまでの長い間、一緒に話をしよう。たくさん、話をしよう。」
「いいよ。」
ホタルの顔は見えない。
しかし、きっと笑顔で答えていると思う。
駅に飛び込むと、すでに汽車は来ていた。
まだ大丈夫だろう。と思っていた。
そのまま飛び込もうとするホタルを止めるのに手間取って、時間はさらに短くなったのだ。
「切符の存在を忘れていたよ。」
「ああもう、早く乗れ!」
汽車が走り出す。
最初に、ホタルが飛び乗った。
汽車はどんどんスピードを上げていく。
「セイ!」
ホタルの顔が遠のいた。
がんばって追いついて、荷物を預ける。ホタルが向こう側に倒れこむのが見えて、奥にいた人の声が聞こえた。
「セイ!」
また、声が聞こえる。
荷物を預けて安心してしまったのか、足がもつれた。
「うわ!」
転びそうになって、立て直す。
列車の最後尾が、すぐ横にあった。
そこに、女の子がいた。
列車の一番後ろのテラスに立つ少女。黒髪があおられて、後ろにたなびいている。
おどろかしてしまったんだろう。涙目の彼女は、それでも自分に手を伸ばしてくれた。
だれだろう。でも、きっとやさしい子なんだろうな。
のばされた手をとって、自分は列車にとびついた。
「ホタル、もう時間がないぞ!」
寮母さんと言い争っている間に、汽車の時間が迫っていた。
学園から駅までは、一本道。
田んぼの間の農道とは思えない広い道。ホタルはもの珍しそうに周りを見渡しながら、自分の横を身軽に走っている。
……そういえば、ホタルの荷物は自分が持っているのだ。
そう気がついたら、ホタルが憎らしくなってきた。
さっきの寮母さんの時もそうだった。
不思議な子。
声には出さず、呟く。
いったい、ホタルとはどんなやつなのだろう。
自分は、ホタルについて何も知らなかったのだ。
「なあ、ホタル。」
「なんだい、セイ。」
息切れの激しいホタルに、自分は目を向ける余裕がなかった。
目の前に迫ってきた駅をまっすぐと見る。
「海に着くまでの長い間、一緒に話をしよう。たくさん、話をしよう。」
「いいよ。」
ホタルの顔は見えない。
しかし、きっと笑顔で答えていると思う。
駅に飛び込むと、すでに汽車は来ていた。
まだ大丈夫だろう。と思っていた。
そのまま飛び込もうとするホタルを止めるのに手間取って、時間はさらに短くなったのだ。
「切符の存在を忘れていたよ。」
「ああもう、早く乗れ!」
汽車が走り出す。
最初に、ホタルが飛び乗った。
汽車はどんどんスピードを上げていく。
「セイ!」
ホタルの顔が遠のいた。
がんばって追いついて、荷物を預ける。ホタルが向こう側に倒れこむのが見えて、奥にいた人の声が聞こえた。
「セイ!」
また、声が聞こえる。
荷物を預けて安心してしまったのか、足がもつれた。
「うわ!」
転びそうになって、立て直す。
列車の最後尾が、すぐ横にあった。
そこに、女の子がいた。
列車の一番後ろのテラスに立つ少女。黒髪があおられて、後ろにたなびいている。
おどろかしてしまったんだろう。涙目の彼女は、それでも自分に手を伸ばしてくれた。
だれだろう。でも、きっとやさしい子なんだろうな。
のばされた手をとって、自分は列車にとびついた。
後書き
作者:水沢妃 |
投稿日:2016/08/13 22:05 更新日:2016/08/13 22:05 『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。 |
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