作品ID:1790
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異界の口
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
二章 瑠璃 二
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列車が走り出す。
ホームをすべり出し、向かうのは海の方向。
ホタルはもの珍しそうに窓の外を見ている。その目が宝石みたいにかがやいているのを見て、また穂高のことを思い出す。
穂高は変なやつだ。物静かなのに、何か言えば周りの人をひきつける。そう、ああいうやつのことをカリスマ性を持ったやつと言うのだろう。わたしはまったくついていきたくないが。
「なあ、穂高ってどんな兄貴なんだ?」
「急に言われてもなあ。」
ホタルは困ったように笑った。そのくせすらすらと言葉が出てくる。
「そうだなあ。兄さんは何でも知っているんだ。自分のこと以外ならなんでも。ぼくのたどる道も、ぼくのやってしまった失敗も。どんなに離れていても、ぼくのことをわかってくれるんだ。」
困り顔なのに、困ったように聞こえない。伝わってきたのは彼の兄への家族愛、だろうか。
「好きなんだ、穂高のこと。」
「うん。ぼくのゆいいつの家族だからね。」
迷いない言葉に、わたしはうなずくしかない。
正直、こういう感情は苦手だ。わたしは家族を知らないから。
「じゃあ、どうして穂高と離れることになったんだい?」
わたしは、少し事情があって穂高の使い走りをさせられている。恩があるからしょうがないが、こういう事情を何も知らされないのはいただけない。
ホタルは大真面目な顔で私を見ている。
「知らないよ、そんなこと。」
「いや……。それはないだろう?」
言い切った堂々とした態度と矛盾するように、ホタルは困った顔をした。
「だって、ぼくのことは兄さんが分かってくれるけれど、ぼくは兄さんのことはわからないもの。」
また窓の外を見はじめたホタルは、どこかさみしそうだった。
ホームをすべり出し、向かうのは海の方向。
ホタルはもの珍しそうに窓の外を見ている。その目が宝石みたいにかがやいているのを見て、また穂高のことを思い出す。
穂高は変なやつだ。物静かなのに、何か言えば周りの人をひきつける。そう、ああいうやつのことをカリスマ性を持ったやつと言うのだろう。わたしはまったくついていきたくないが。
「なあ、穂高ってどんな兄貴なんだ?」
「急に言われてもなあ。」
ホタルは困ったように笑った。そのくせすらすらと言葉が出てくる。
「そうだなあ。兄さんは何でも知っているんだ。自分のこと以外ならなんでも。ぼくのたどる道も、ぼくのやってしまった失敗も。どんなに離れていても、ぼくのことをわかってくれるんだ。」
困り顔なのに、困ったように聞こえない。伝わってきたのは彼の兄への家族愛、だろうか。
「好きなんだ、穂高のこと。」
「うん。ぼくのゆいいつの家族だからね。」
迷いない言葉に、わたしはうなずくしかない。
正直、こういう感情は苦手だ。わたしは家族を知らないから。
「じゃあ、どうして穂高と離れることになったんだい?」
わたしは、少し事情があって穂高の使い走りをさせられている。恩があるからしょうがないが、こういう事情を何も知らされないのはいただけない。
ホタルは大真面目な顔で私を見ている。
「知らないよ、そんなこと。」
「いや……。それはないだろう?」
言い切った堂々とした態度と矛盾するように、ホタルは困った顔をした。
「だって、ぼくのことは兄さんが分かってくれるけれど、ぼくは兄さんのことはわからないもの。」
また窓の外を見はじめたホタルは、どこかさみしそうだった。
後書き
作者:水沢妃 |
投稿日:2016/08/13 22:13 更新日:2016/08/13 22:13 『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。 |
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