作品ID:1792
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異界の口
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
二章 瑠璃 四
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和宮の駅に着くと、わたしとホタルは大きくのびをした。走り去った汽車を見送って、町に出る。
夕暮れの町は、どこか浮かれていた。
「お祭りでもあるの?」
ホタルが見上げてくるのが分かったが、わたしはなんとも返事ができなかった。
「瑠璃さん?」
ホタルがわたしの目線を追って、道の先を見た。大通りから一本外れた細い道を、着流し姿の若い男がこちらに向かって歩いてくる。後ろでぎりぎり結べる髪をひもでくくった、相変わらずの細いメガネ。
人ごみの中に消えてしまいそうな人影なのに、どうして見失うことがないのだろう。
まっすぐ歩いてきた穂高は、ホタルを見下ろした。
「久しぶり、兄さん。」
「よく来たね、ホタル。」
わたしは一歩後ろに下がった。
この空気が苦手だ。家族の空気。それぞれの家のにおいが違うように、家族が集まると独特の空気が流れる。
その空気が流れると、部外者はどうしようもない疎外感を味わう。
けれど、この兄弟はどこかよそよそしかった。
特に会話もないままに、こちらを見ている。ホタルが無邪気にわたしの手をとる。
「行こう、瑠璃さん。」
わたしはちらりと穂高を見たが、特に何の感情もないのか、ホタルを横に歩いてく。ホタルが歩き出したので、つられてわたしも歩き出した。
なんだろう。
この二人の間には入れない。けれど、隣を歩くことならできそうな気がした。
夕暮れの町は、どこか浮かれていた。
「お祭りでもあるの?」
ホタルが見上げてくるのが分かったが、わたしはなんとも返事ができなかった。
「瑠璃さん?」
ホタルがわたしの目線を追って、道の先を見た。大通りから一本外れた細い道を、着流し姿の若い男がこちらに向かって歩いてくる。後ろでぎりぎり結べる髪をひもでくくった、相変わらずの細いメガネ。
人ごみの中に消えてしまいそうな人影なのに、どうして見失うことがないのだろう。
まっすぐ歩いてきた穂高は、ホタルを見下ろした。
「久しぶり、兄さん。」
「よく来たね、ホタル。」
わたしは一歩後ろに下がった。
この空気が苦手だ。家族の空気。それぞれの家のにおいが違うように、家族が集まると独特の空気が流れる。
その空気が流れると、部外者はどうしようもない疎外感を味わう。
けれど、この兄弟はどこかよそよそしかった。
特に会話もないままに、こちらを見ている。ホタルが無邪気にわたしの手をとる。
「行こう、瑠璃さん。」
わたしはちらりと穂高を見たが、特に何の感情もないのか、ホタルを横に歩いてく。ホタルが歩き出したので、つられてわたしも歩き出した。
なんだろう。
この二人の間には入れない。けれど、隣を歩くことならできそうな気がした。
後書き
作者:水沢妃 |
投稿日:2016/08/13 22:21 更新日:2016/08/13 22:21 『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。 |
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