作品ID:1813
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ラドウィグ・クールガイ・グラブストーン冒険譚
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
無視できないお客
目次 |
今は無きデラウエア川。そこにかかる巨大なセント・ビクトリー橋の麓には一軒のトタンで荒々しく造られた家がある。ギリギリ家と認識できるようなボロ小屋であったが、少なくとも建造から一度も倒潰はしたことがない。家屋は全体的に斜めっており、上階に行くほど下階とは逆の方向へ反っている。このジェンガの様な不自然な構造のおかげで安全性を保てているのだと、ちょうど破れたストームドアを開けながら、家主のラドウィグ・グラブストーンは思った。
ラドウィグは朝の哨戒も兼ねて旧世代のリボルヴ銃を片手に持ちフラフラした足取りで、しかし瞳だけは大きく、かつ周りをぐらぐらと見渡しながらゆっくりと水置き場兼畑に向かった。水置き場で大きな木のたらいのふたを開け、濁った薄い黄土色の水を近くに置いてある小さな塗料の剥げた水色の洗面器に汲み、渋った様子も見せずに両手ですくい上げ顔を洗った。それから持ってきたやかんに洗面器に残った水を零さぬよう入れ、畑に実っている萎びたトウモロコシとじゃがいもを二つずつ掴み、またフラフラと、しかしぐらぐらと辺りを見渡しながら家に戻った。
朝食を食べ終えると家をどんどんと叩く音が玄関から聞こえた。ラドウィグが入りなさいと言うとストームドアが開き、若い黒人の青年が頬の傷を抑えながらやってきた。
「すみませんね、旦那。なにぶんドアを叩けば壊れちまいそうなもんでしたから、お許しくだせえ」
ラドウィグが何か用か、それとも仕事かと聞くと若い黒人の青年は頬においた手をパッと離した。そこには、毟られたような丸形の赤い傷があり、ところどころ歯が見えている所もあった。血は彼が息をするごとにしたたり落ちて、あっという間に血だまりができた。彼が痛みに顔をしかめながら話そうとすると、まあ待ちなさい、その傷をふさいでからにしようとラドウィグは止めに入り、部屋の奥にある診察台に併設された椅子に腰かけるように促した。
しばらくの間、傷を縫う音と若い黒人の青年のうめき声が小さく聞こえ、最後にラドウィグは男に五本のケアフル錠を渡した。痛みがひどくなれば飲みなさいと言った。
「へえ。なにからなにまでありがとごぜえます。御恩は一生忘れませんで」
「それで、この傷なんですが、この傷を作った原因がおるんです。ワシの村は……まあ、ご存知の通り細々と暮らしとったんです。どこも同じですわ、今時ダスト・フィールドで悠々
自適に暮らしてるのなんてマロ・ロジョスとシティの連中だけでさあ。でも、それなりに不自由はしなかったんで。それで、そう。しかし最近、噛みつき虫が出るようになったんです。
ええ、ダニがでっかくなったヤツです。始めはちょこちょこ出るだけだったんですがね、そのうち数がどんどんでかくなっちまって、ワシらは洞窟に住んでるんですが、入り口にそりゃ
もう大量の虫どもがはびこってましてね。カウンターの連中も寄り付かなくなっちまったんです。弾薬もそろそろ底をつきそうで、わしが村の代表として旦那に依頼するようにと選ばれ
たんで。この傷は洞窟から出る時に襲い掛かられて……。旦那のお噂はかねがね聞いとります。腕利きの何でも屋だとか。報酬もこの通り、前金として4つ。コインセルを持ってきました」
若い黒人の青年はコインセルをラドウィグの手に置いた。彼はそれを机の上に置いてあるへんてこなカチューシャの機械に二つセットし、頭にかけた。
「ふうう。いや、助かったよ、君。いいもんだね、音が聞こえるってのは。あー申し訳ないけど、もう一回説明してもらってもいいかな、全く聞こえなかったんだ。何分耳が悪くてね」
先程とうってかわって飄々とした態度に驚きながら、若い黒人の青年はラドウィグに同じことをまた話しはじめた。
後書き
作者:香草 |
投稿日:2016/08/23 03:22 更新日:2016/08/23 03:22 『ラドウィグ・クールガイ・グラブストーン冒険譚 』の著作権は、すべて作者 香草様に属します。 |
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