作品ID:1872
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千年戦争物語
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / R-15 / 連載中
こちらの作品には、暴力的・グロテスクな表現・内容が含まれています。15歳以下の方、また苦手な方はお戻り下さい。
前書き・紹介
彼の始まり
前の話 | 目次 |
ラードナル平原~フェードリア砦、病棟前~
時刻12:32分
金髪の短めの髪、蒼の美しい瞳の少年はスヤスヤと眠る
水をたっぷり含んだタオルをのせられ、眠っている
「・・・おーい、・・・だめか」
商人の用な服を着た、黒狼の少女は話しかける
だが、少年は・・・、アーサーは起きる気配はない
少女は振り向き
「お父さんー?本当にこの子大丈夫なの?3日3晩起きてないんだけどー?・・・え?何?怪我してないし、単なる栄養失調なだけ?・・・んー、ならショック症状なのかな・・・」
するとその時
「ぐ・・・」
少年は唸り、夢から覚める
「あっ!起きた起きた!お父さん!起きたよー!」
そんな叫び声が聞こえるが、意識は薄れていく
・・・長い夢を見ていた
勝手に話が進んで勝手に話が終わった夢
・・・勇者?宿命?
その文字は一瞬浮かび、すぐに消えた
一瞬、真っ暗な闇に微笑む青髪の少女が微笑む
湖の乙女・・・、でも、どこかであったことのある少女
記憶によぎるそれをもう一度呼び起こそうとするが、まったく浮かびもしなかった、ただ、はっきりとその姿は覚えている
それだけでない、夢の前の記憶はすべて消えている、何一つとして過去の記憶が思い出せない
全て・・・、忘れてしまったのだろうか?
自分の親でさえ何もかも・・・
絶望することなのに、表現のしようがない
悲しくも・・・、嬉しくもないのだ、皮肉にも過去の記憶が失われても、常識的な事は覚えている、・・・それが、誰に教えて貰ったのかが、思い出せないのだ
そっと頭に手が乗せられ、タオルを取られる
「・・・ふむ、もう大丈夫そうだな」
ぼんやりと見える茶髪の白衣の男・・・、誰だろう
視界が開け、しっかりとその姿が映る
「なんでおれ・・・、ここは・・・」
岩に包まれた無骨な部屋、小さなベッド、茶髪の医者とそれを援護する黒髪の狼族、・・・どれも見覚えのない人物である
「・・・オリヴィア、この子の情報は?」
オリヴィア・・・、狼族の彼女の事か
すると、少女は首を振る、
「ぜんっぜんっないね、身元や服装を見たけどスパイとか自爆とかそういうものはまったくなかったし、・・・てっ、勝手に君の私物見せてもらったから、まっ、ごめんね~」
悪びれない様子で彼女は言った
「どうして俺は・・・?」
すると、医者は怪訝な顔をする
「君、覚えてないのかい?4日前、君はこの砦の入り口前で倒れていたんだよ?・・・知らないだろうけど、見張りの兵士が拾ってくれたのさ」
そんなこと、もちろん覚えていない
「・・・残党狩りとかで返り討ちにあったのかな?ここは今のところ安全だし、ゆっくり体を休めてきなよ!」
彼女はそう元気良く尻尾を振りながらそう言った
医者もそれに同意する
「一人で、ましてや子供が何の考えもなく魔物が多い外に出るのは危険だ、完治してからでも遅くはないよ、娘の言うとおり、しばらくはここにいなさい」
「・・・ありがとう、ございます」
病棟を出る、・・・状況が飲み込めず、頭を掻く
まず、自分は目覚めたら病棟で眠っていた
・・・あの二人が、助けてくれたみたいだ
その二人の話によると、俺は外で倒れていたらしい(それを兵士が見つけて、拾ってくれたそうだ)
しかし、残党狩りをしていたか?と言われると、どうもそんな気がしない
少なくとも、何か悪事をしていた気はしなかった・・・、しないだけであるけども、最低でも残党狩りなら一人じゃないはずだ、一人で立ち向かうなんて無謀な輩は子供でもいないはずだろう
フサリ
背中に何かがある感覚がして、手を伸ばす
そこには、大きな鳥のような羽がついていた、・・・違和感は特になく、さわると、フサフサと羽が揺れて、感覚が伝わってくる
・・・鳥の羽?俺は鳥族だったのか
いや、なーんか違うな、鳥というより・・・、天使の羽と言った方があってる形状をしているし・・・、そういえば、鳥族とか羽を持つ種族って飛べたよな・・・
なら、俺も飛べるかも?
よし、早速大地を強めに蹴り上げ、ジャンプする
体は一気に空へと飛び立つ
「!?」
思わず声がでかけたが、必死に抑える
・・・本当に飛べるとは思いもしなかったからだ
一気に砦の病棟の屋上へと空を舞った
不思議な事に、飛んだときの感覚は妙に軽く、地上を蹴るだけで、一気に屋上へと昇る
そこから東の塔へと更にジャンプする
滞空時間が妙に長く、普通ならもっと慌てる筈だが、体はそれに慣れていて、考えずとも狙った場所へと冷静に移動できる、きっと前の俺は飛ぶことに慣れていたからだろう、・・・背中の羽もしっかりと動き、服のなかをカサカサと揺れる
服を着ているから動かす意味はないはずなのに・・・?
着地音も殆どしなく、見張りの兵士が気づかせず、後ろにたった
・・・が、兵士はその気配に気づき振り向いた
紫の翼と、真っ黒な瞳・・・、もしかしたら俺と同じ種族なのかもしれない
「・・・おや?いつのまにここに?・・・ふーむ、まだまだ俺も未熟ってことか・・・、実戦なら死んでいたなぁ」
階段から上がって来たと思われているようだ
兵士はポンと頭を叩き、悔しそうな顔をしていたが、すぐやめ、深呼吸をする
その後兵士は隣においてあるコーヒーを手に取り
「良かった、無事みたいで何よりだよ」
安堵の表情を浮かべ、コーヒーをすすった
どうやら、俺がここまで飛んで(?)来たことに気づいてないらしい
「ありがとうございました」
その兵士に、深々と頭を下げる
「なーに、気にすることないさ、困った時はお互い様だろう?・・・っても俺が困ってなくとも困っている人を助けちゃダメなんことないさ、ラッキーだったね」
と、兵士は外を見ながら手を振る
・・・この砦は
「そういえば、ここって・・・」
「ここはラードナル平原
座標623,294,378、ノーランド国軍第253駐留所フェードリア砦さ、今は戦闘中じゃないから安全だよ、とはいえ、外には魔物が住み着いているし、こっちに軍が来たら真っ先に戦うことになるだろうね、魔物を倒すくらい腕っぷしがあるなら、とっとと出ていくのが正解だ、・・・一応、医者親子が居るけど、この砦が襲われた時、怪我したすべての兵士を二人だけで治療するなんて現実的に不可能さ、しかもここの砦は足止めするように罠は多いが兵士はすくない、つまり、ここは時間稼ぎの為にある砦ってこと、助けてもらった恩を捨てたくなければ残ってもいいけど、少しでも長生きしたけりゃ、この砦から出ていく事をお薦めするよ」
と、ペラペラと話す
時間稼ぎの為にだけある砦・・・
だが、それが現実なのだろうと、割りきるしかなかった
「あの、飛んで来たので、足音はしなかったと思います」
と、軽めのフォローを入れる、・・・事実だし
すると、兵士は笑った
「・・・はは、君は面白い事言うね、鳥族は助走が無いと飛べないよ?俺みたいにカラス族でも5秒以上の助走は必要さ、・・・それにそんなことしたら階段を上る前に走る音で間違いなく気づくかな、ショック症状だって聞いているし・・・、おまけに俺と同じ鳥族だって聞いたよ?音も立てずに飛べるなんて、もしかしたら前の君は何か偵察兵だったのかも」
いや、飛んだっていうか浮いたっていうかなんつーか
・・・助走無しで飛んでるのはおかしいってことなのかな?
それとも、この人の言うとおり、俺は偵察兵だったのか?
「いや、偵察だったらあんなモノ持たないハズ・・・」
「あの、あんなものって?」
「ん、ああ、武器さ、残党狩りにしては扱いが難しいし、偵察には間違いなく不向きだからねぇ・・・、ていうか、あれを扱うのは、いや、背負うことでさえ大人でも難しい重さの代物さ、・・・本当に君のものかい?」
なんじゃそりゃ
「・・・その武器って?どこですか?」
「ん、実際に見てもらって返したほうが早いか、確かオリヴィアちゃんが君の為に用意してくれた部屋がある、東棟223号室ね、そこにおいてあるよ」
病棟を出てすぐ、持ち物を検査されたらしい、仮に敵軍の手紙など機密情報があれば大助かりだし、逆の可能性だってある、・・・たが、特に問題はなかったそうだ、もしかしたら、持ち物の中に俺の記憶の手がかりがあるかもしれない
「ありがとうございました、持ち物を確認して、これからの予定を決めます」
そっと、頭を下げる
すると、兵士は笑顔で返す
「付きっきりで看病だなんて・・・・、砦の兵士全員を敵に回したも同然だね、僕は君をどうこうしようとは思わないけど気を付けなよ?決闘とか申し込まれるかもね、はぁ、オリヴィアちゃん、俺にもそういうことしてほしいなあぁ~」
と、鳥の囀りのように口ずさんでいる
・・・よし、行ってみよう
階段を降りようと考えていたが、行動が先に出る
ひょいっと塀を登りそのまま、落ちる
嘘ぉぉぉ!
・・・が、体はゆっくりと降りて行き、トサッと足がつく、・・・先程の事はまぐれかもしれない、だが、そんなことも考えず、躊躇なく飛び降りていた
・・・無茶はいけないだろう
フェードリア砦、東棟住居区223号室
扉を開けて、中に入る
整った寝具、その左にはタンスがあり、奥には机がある、いたって普通の部屋だ
そして、寝具の上に、大きめの袋と
どうみても場違いな雰囲気を放つ、宝石の装飾が施され、大きな両刃、全長は軽く1,5メートルだろうか? しかも2つある、片方はルビーや、ダイヤモンド、金をふんだんに使った装飾で、もう片方は銀とアクアマリンやエメラルドをの装飾、ロマン溢れる素晴らしい剣である、こんなの男が見たら真っ先に予定を忘れてーー
「違うわ!なんじゃこりゃっ!!」
素直な感想である、だって実際そんなの目の前にあって、驚かないほうががおかしいでしょ!いやロマンあるけどもさ!満ち満ちているけどね!?
・・・とりあえず、どかさないと・・・
「いやいや!こんなんどかすの無理だって、大の大人が背負うのが無茶なんだし、あ、・・・ならずらして降ろすか」
と、柄を持ち、軽くずらそうとするーーー
「軽っ!?」
本日三回目の驚き、「重そうだと考えていた剣が中身ないんじゃないの?ってほど軽い、いや本当に軽い、例えるなら・・・、木の棒?」一気に弱くなるな・・・、魔法装飾でもされているのだろうか?だとしたら、かなりの貴重品のハズだ
・・・とりあえず、落ち着こう
予定は武器の確認じゃない、そう、記憶の手がかりを探すのがメインの予定ということを忘れてはダメだろう
とりあえず、大きめの袋をあける
そこには、携帯食料、空の水筒、・・・なんかわからない指輪(綺麗な宝石だが・・・)と小箱(開かないな・・・、こんどこじ開けてみるか)それと、一つの分厚い本だ
とりあえず、指輪と謎の箱(?)は無視して、分厚いこの本を読んでみることにする
タイトルは・・・、
「・・・ん?き、君が、困らない為にー」
あれ?こんな字が読めなかったっけ?
だが、みるみるうちにさらりと読めてくる
「これからの未来に困らない為にこの本を作った、・・・君はどういう存在なのか、知りたい物が多すぎると思う、・・・だから、この手帳に全てを記す、貴方がどうか無事であるように、自分の道を突き進めるように
ーーーーより」
きたこれ!過去の手がかりキター!
と、はしゃぐものの、一度落ち着く
ここだけペンで塗りつぶされている?
なんでだよ、と軽い突っ込みを入れて、気を取り直して続きを読むかな
パラリ
「っと、えーと、・・・ここに、記されているものは、真実であり、君が知りたくない、事実で、いー、いっぱいである、・・・でも絶望しないでほしい、まずー『千年戦争において、何より大事で奪い取ってでも欲しかったものがあった、 人 々の戦う意志は消えないなら、人の意志人が求めたものは何か、と、・・・それは、戦局を一度で変えることのできる力と魔力を持つもの、それを満たす種族ーーー、それが「神族」』
神族ーーー、確か、この世界に存在する伝説の種族の総称だったはず
圧倒的な力と魔力を持ち、全てにおいて上位となる種族である、・・・伝承に度々と現れるその姿は、英雄を神族として扱ったとも言われていて、・・・要は、神族なんて都合のいいものはーー
『私たちは、その姿を隠し、時にーー、来るべき日に現れて世界を変えるーー、決して、この世界にはいない種族と、思われるようにしていなければならなかった、・・・それが、約5年前までの話
・・・神族が戦争に現れ、瞬く間に・・・」
「神族が存在する?それにーーそんな種族が戦争に参加したなんて・・・!」
『その日、北の大国「龍国オーンド」と、その支配国に集結していた勢力が一瞬にして魔導国アルカードの手に落ちた、闇の神族、・・・魔王が
直々に出撃、天は闇に包まれ、地は毒に満たされーーー、苦しむにながら、全て戦死・・・、一瞬にて戦局を変え、兵士に恐怖を与えーー』
『だけど、中央国ノーランドはそれを神族の仕業だと気づく、そして今神族を生け捕りにして、そのまま戦場に出して、敵国を全て虐殺できれば、「千年戦争」は終わる、という結論となった』
話をまとめると、つまりこうだ
この世界には人に気がつかれないように神族は生きていた
だが、度重なる長い戦争で、ついに闇を司る神族「魔王」が出撃
これにより、長く三つの大国にて戦争を行っていたものは、今、ノーランド対アルカードのみとなる
ノーランドは大国を滅ぼすことに成功したアルカードの秘密を探った
その結果・・・、その原因は神族だと気づく
力は圧倒的であり、一つあれば大国も滅ぼせる・・・
是非とも、それはノーランドを入手したい
ならば、すべきことは一つだ
・・・神族を拉致すれば良い
全ての国が滅び、そして・・・
国が一つだけになれば、「千年戦争」は終わる、と
『この文は貴方を怖がらせる為にあるわけではない
・・・・・受け止めてほしいからだ』
何を?
『貴方も・・・、神族「ヴァルキリー」であるということを、知って欲しい、貴方は追われる身でありながら、神族の中で唯一、・・・普通の方法ではわからない能力を持っているーーー、神族の中で自由に動けるのは貴方だけなのだ、と』
「・・・嘘だろ」
俺はーーー、追われるのだろう
ノーランド帝国が、俺が仮に神族だと気づけば
きっと、どんな手を使ってでも俺を手に入れようとするのだろう
「前の俺なら、この事実を嫌がるのだろうか?」
と、薄く笑う
不思議なのだ、・・・嫌な気はしない
・・・本当に不思議な気分だった
俺のしたいことができる、だが、多少のリスクは負うこととなる
それも、悪くないのだ
思い通り進むだけでは何もつまらない
遮るものがあってこそ、今ワクワクした気分になれるからだ
書物をめくる
「ヴァルキリーは、羽は天使の用な翼を持っていて、唯一助走無しに空を飛ぶ特殊能力、「風の翼(グライド)」をもっている、この能力は常に起動していて、走れば早くなり、そのまま飛ぶとゆっくりと浮く、・・・もし、知っていたのならば余計かもしれないけど、知らなかったら、覚えていなさい、空を制することは、大地で戦う者に大きな優位(アドバンテージ)となる
他にも、光魔術に関してはヴァルキリーは誰にも負けない
記憶を失った今、魔術を思い出すことは難しいと思う
でも神族ならそれは必要ない、・・・思い描いた事をそのまま解き放ちなさい、神族の魔力なら、それを思い通りにできる」
先程の飛翔は、グライドという能力のお陰らしい
助走なしに空を飛べる、単純だが確かに強力な効果だろう
更に俺にはもう一つ、光魔術を扱えるそうだ
・・・不確定な部分だし、検証するしかない・・・、よな
書物には、他にも地図や、簡単な情報
その他生き抜く為に、とどっしり小さな文字で書かれたページが続く
そしてーー、書物は、少しずつ丁寧な文字から、殴り書きへと変わった
読み辛いが、読めないわけではない、少しずつ解読する
『絶対に誰にも屈することのないように
貴方は神族、ヴァルキリーなのだから、戦えば誰にも負けることはない、でも戦うことだけが、決して正しい道ではない
躊躇はしないように、躊躇をするだけ、失うものは増える、貴方なら、きっと、躊躇なく踏み出せるはずたから
そして最後にーーー』
真っ赤な文字でこう、書いてある
『探しなさいあなたの「望み」を、見つけなさいあなたの「理想」を』
『それとーーー』
ここからが何やら赤黒く染まっており、内容は確認できなかった
・・・もしかしたら、これを書いたのは
本を閉じる
少年は蒼い瞳を一度つむり、静かに瞑想する
そしてーーー
カッと目を開き
煌めく2つの刀身の柄を握りしめ、右手と左手に二つ構える
「探しなさい、・・・か」
少年は真剣な顔であったが
とても、悲しげな顔をしていた
見つけ出すよ、俺の望みを
神族だからなのではない
俺はーーー、俺の為に戦うんだ
アーサーと呼ばれし英雄は、一つの書物から、戦う決心した
ただ、あくまで本人から聞いたもので、更にその肝心の書物は見つかっていない、・・・その真実は闇に包まれたままである
私はこの後に彼と出会うこととなる
「白き天使」と呼ばれた英雄は、少年であった
だが、その決意は誰にも負けぬ、美しい宝石のようなものである
誰が為に、血を流すなど、綺麗事なのだろう
自分の為にはやがてーーー
誰かの為になるのだから
時刻12:32分
金髪の短めの髪、蒼の美しい瞳の少年はスヤスヤと眠る
水をたっぷり含んだタオルをのせられ、眠っている
「・・・おーい、・・・だめか」
商人の用な服を着た、黒狼の少女は話しかける
だが、少年は・・・、アーサーは起きる気配はない
少女は振り向き
「お父さんー?本当にこの子大丈夫なの?3日3晩起きてないんだけどー?・・・え?何?怪我してないし、単なる栄養失調なだけ?・・・んー、ならショック症状なのかな・・・」
するとその時
「ぐ・・・」
少年は唸り、夢から覚める
「あっ!起きた起きた!お父さん!起きたよー!」
そんな叫び声が聞こえるが、意識は薄れていく
・・・長い夢を見ていた
勝手に話が進んで勝手に話が終わった夢
・・・勇者?宿命?
その文字は一瞬浮かび、すぐに消えた
一瞬、真っ暗な闇に微笑む青髪の少女が微笑む
湖の乙女・・・、でも、どこかであったことのある少女
記憶によぎるそれをもう一度呼び起こそうとするが、まったく浮かびもしなかった、ただ、はっきりとその姿は覚えている
それだけでない、夢の前の記憶はすべて消えている、何一つとして過去の記憶が思い出せない
全て・・・、忘れてしまったのだろうか?
自分の親でさえ何もかも・・・
絶望することなのに、表現のしようがない
悲しくも・・・、嬉しくもないのだ、皮肉にも過去の記憶が失われても、常識的な事は覚えている、・・・それが、誰に教えて貰ったのかが、思い出せないのだ
そっと頭に手が乗せられ、タオルを取られる
「・・・ふむ、もう大丈夫そうだな」
ぼんやりと見える茶髪の白衣の男・・・、誰だろう
視界が開け、しっかりとその姿が映る
「なんでおれ・・・、ここは・・・」
岩に包まれた無骨な部屋、小さなベッド、茶髪の医者とそれを援護する黒髪の狼族、・・・どれも見覚えのない人物である
「・・・オリヴィア、この子の情報は?」
オリヴィア・・・、狼族の彼女の事か
すると、少女は首を振る、
「ぜんっぜんっないね、身元や服装を見たけどスパイとか自爆とかそういうものはまったくなかったし、・・・てっ、勝手に君の私物見せてもらったから、まっ、ごめんね~」
悪びれない様子で彼女は言った
「どうして俺は・・・?」
すると、医者は怪訝な顔をする
「君、覚えてないのかい?4日前、君はこの砦の入り口前で倒れていたんだよ?・・・知らないだろうけど、見張りの兵士が拾ってくれたのさ」
そんなこと、もちろん覚えていない
「・・・残党狩りとかで返り討ちにあったのかな?ここは今のところ安全だし、ゆっくり体を休めてきなよ!」
彼女はそう元気良く尻尾を振りながらそう言った
医者もそれに同意する
「一人で、ましてや子供が何の考えもなく魔物が多い外に出るのは危険だ、完治してからでも遅くはないよ、娘の言うとおり、しばらくはここにいなさい」
「・・・ありがとう、ございます」
病棟を出る、・・・状況が飲み込めず、頭を掻く
まず、自分は目覚めたら病棟で眠っていた
・・・あの二人が、助けてくれたみたいだ
その二人の話によると、俺は外で倒れていたらしい(それを兵士が見つけて、拾ってくれたそうだ)
しかし、残党狩りをしていたか?と言われると、どうもそんな気がしない
少なくとも、何か悪事をしていた気はしなかった・・・、しないだけであるけども、最低でも残党狩りなら一人じゃないはずだ、一人で立ち向かうなんて無謀な輩は子供でもいないはずだろう
フサリ
背中に何かがある感覚がして、手を伸ばす
そこには、大きな鳥のような羽がついていた、・・・違和感は特になく、さわると、フサフサと羽が揺れて、感覚が伝わってくる
・・・鳥の羽?俺は鳥族だったのか
いや、なーんか違うな、鳥というより・・・、天使の羽と言った方があってる形状をしているし・・・、そういえば、鳥族とか羽を持つ種族って飛べたよな・・・
なら、俺も飛べるかも?
よし、早速大地を強めに蹴り上げ、ジャンプする
体は一気に空へと飛び立つ
「!?」
思わず声がでかけたが、必死に抑える
・・・本当に飛べるとは思いもしなかったからだ
一気に砦の病棟の屋上へと空を舞った
不思議な事に、飛んだときの感覚は妙に軽く、地上を蹴るだけで、一気に屋上へと昇る
そこから東の塔へと更にジャンプする
滞空時間が妙に長く、普通ならもっと慌てる筈だが、体はそれに慣れていて、考えずとも狙った場所へと冷静に移動できる、きっと前の俺は飛ぶことに慣れていたからだろう、・・・背中の羽もしっかりと動き、服のなかをカサカサと揺れる
服を着ているから動かす意味はないはずなのに・・・?
着地音も殆どしなく、見張りの兵士が気づかせず、後ろにたった
・・・が、兵士はその気配に気づき振り向いた
紫の翼と、真っ黒な瞳・・・、もしかしたら俺と同じ種族なのかもしれない
「・・・おや?いつのまにここに?・・・ふーむ、まだまだ俺も未熟ってことか・・・、実戦なら死んでいたなぁ」
階段から上がって来たと思われているようだ
兵士はポンと頭を叩き、悔しそうな顔をしていたが、すぐやめ、深呼吸をする
その後兵士は隣においてあるコーヒーを手に取り
「良かった、無事みたいで何よりだよ」
安堵の表情を浮かべ、コーヒーをすすった
どうやら、俺がここまで飛んで(?)来たことに気づいてないらしい
「ありがとうございました」
その兵士に、深々と頭を下げる
「なーに、気にすることないさ、困った時はお互い様だろう?・・・っても俺が困ってなくとも困っている人を助けちゃダメなんことないさ、ラッキーだったね」
と、兵士は外を見ながら手を振る
・・・この砦は
「そういえば、ここって・・・」
「ここはラードナル平原
座標623,294,378、ノーランド国軍第253駐留所フェードリア砦さ、今は戦闘中じゃないから安全だよ、とはいえ、外には魔物が住み着いているし、こっちに軍が来たら真っ先に戦うことになるだろうね、魔物を倒すくらい腕っぷしがあるなら、とっとと出ていくのが正解だ、・・・一応、医者親子が居るけど、この砦が襲われた時、怪我したすべての兵士を二人だけで治療するなんて現実的に不可能さ、しかもここの砦は足止めするように罠は多いが兵士はすくない、つまり、ここは時間稼ぎの為にある砦ってこと、助けてもらった恩を捨てたくなければ残ってもいいけど、少しでも長生きしたけりゃ、この砦から出ていく事をお薦めするよ」
と、ペラペラと話す
時間稼ぎの為にだけある砦・・・
だが、それが現実なのだろうと、割りきるしかなかった
「あの、飛んで来たので、足音はしなかったと思います」
と、軽めのフォローを入れる、・・・事実だし
すると、兵士は笑った
「・・・はは、君は面白い事言うね、鳥族は助走が無いと飛べないよ?俺みたいにカラス族でも5秒以上の助走は必要さ、・・・それにそんなことしたら階段を上る前に走る音で間違いなく気づくかな、ショック症状だって聞いているし・・・、おまけに俺と同じ鳥族だって聞いたよ?音も立てずに飛べるなんて、もしかしたら前の君は何か偵察兵だったのかも」
いや、飛んだっていうか浮いたっていうかなんつーか
・・・助走無しで飛んでるのはおかしいってことなのかな?
それとも、この人の言うとおり、俺は偵察兵だったのか?
「いや、偵察だったらあんなモノ持たないハズ・・・」
「あの、あんなものって?」
「ん、ああ、武器さ、残党狩りにしては扱いが難しいし、偵察には間違いなく不向きだからねぇ・・・、ていうか、あれを扱うのは、いや、背負うことでさえ大人でも難しい重さの代物さ、・・・本当に君のものかい?」
なんじゃそりゃ
「・・・その武器って?どこですか?」
「ん、実際に見てもらって返したほうが早いか、確かオリヴィアちゃんが君の為に用意してくれた部屋がある、東棟223号室ね、そこにおいてあるよ」
病棟を出てすぐ、持ち物を検査されたらしい、仮に敵軍の手紙など機密情報があれば大助かりだし、逆の可能性だってある、・・・たが、特に問題はなかったそうだ、もしかしたら、持ち物の中に俺の記憶の手がかりがあるかもしれない
「ありがとうございました、持ち物を確認して、これからの予定を決めます」
そっと、頭を下げる
すると、兵士は笑顔で返す
「付きっきりで看病だなんて・・・・、砦の兵士全員を敵に回したも同然だね、僕は君をどうこうしようとは思わないけど気を付けなよ?決闘とか申し込まれるかもね、はぁ、オリヴィアちゃん、俺にもそういうことしてほしいなあぁ~」
と、鳥の囀りのように口ずさんでいる
・・・よし、行ってみよう
階段を降りようと考えていたが、行動が先に出る
ひょいっと塀を登りそのまま、落ちる
嘘ぉぉぉ!
・・・が、体はゆっくりと降りて行き、トサッと足がつく、・・・先程の事はまぐれかもしれない、だが、そんなことも考えず、躊躇なく飛び降りていた
・・・無茶はいけないだろう
フェードリア砦、東棟住居区223号室
扉を開けて、中に入る
整った寝具、その左にはタンスがあり、奥には机がある、いたって普通の部屋だ
そして、寝具の上に、大きめの袋と
どうみても場違いな雰囲気を放つ、宝石の装飾が施され、大きな両刃、全長は軽く1,5メートルだろうか? しかも2つある、片方はルビーや、ダイヤモンド、金をふんだんに使った装飾で、もう片方は銀とアクアマリンやエメラルドをの装飾、ロマン溢れる素晴らしい剣である、こんなの男が見たら真っ先に予定を忘れてーー
「違うわ!なんじゃこりゃっ!!」
素直な感想である、だって実際そんなの目の前にあって、驚かないほうががおかしいでしょ!いやロマンあるけどもさ!満ち満ちているけどね!?
・・・とりあえず、どかさないと・・・
「いやいや!こんなんどかすの無理だって、大の大人が背負うのが無茶なんだし、あ、・・・ならずらして降ろすか」
と、柄を持ち、軽くずらそうとするーーー
「軽っ!?」
本日三回目の驚き、「重そうだと考えていた剣が中身ないんじゃないの?ってほど軽い、いや本当に軽い、例えるなら・・・、木の棒?」一気に弱くなるな・・・、魔法装飾でもされているのだろうか?だとしたら、かなりの貴重品のハズだ
・・・とりあえず、落ち着こう
予定は武器の確認じゃない、そう、記憶の手がかりを探すのがメインの予定ということを忘れてはダメだろう
とりあえず、大きめの袋をあける
そこには、携帯食料、空の水筒、・・・なんかわからない指輪(綺麗な宝石だが・・・)と小箱(開かないな・・・、こんどこじ開けてみるか)それと、一つの分厚い本だ
とりあえず、指輪と謎の箱(?)は無視して、分厚いこの本を読んでみることにする
タイトルは・・・、
「・・・ん?き、君が、困らない為にー」
あれ?こんな字が読めなかったっけ?
だが、みるみるうちにさらりと読めてくる
「これからの未来に困らない為にこの本を作った、・・・君はどういう存在なのか、知りたい物が多すぎると思う、・・・だから、この手帳に全てを記す、貴方がどうか無事であるように、自分の道を突き進めるように
ーーーーより」
きたこれ!過去の手がかりキター!
と、はしゃぐものの、一度落ち着く
ここだけペンで塗りつぶされている?
なんでだよ、と軽い突っ込みを入れて、気を取り直して続きを読むかな
パラリ
「っと、えーと、・・・ここに、記されているものは、真実であり、君が知りたくない、事実で、いー、いっぱいである、・・・でも絶望しないでほしい、まずー『千年戦争において、何より大事で奪い取ってでも欲しかったものがあった、 人 々の戦う意志は消えないなら、人の意志人が求めたものは何か、と、・・・それは、戦局を一度で変えることのできる力と魔力を持つもの、それを満たす種族ーーー、それが「神族」』
神族ーーー、確か、この世界に存在する伝説の種族の総称だったはず
圧倒的な力と魔力を持ち、全てにおいて上位となる種族である、・・・伝承に度々と現れるその姿は、英雄を神族として扱ったとも言われていて、・・・要は、神族なんて都合のいいものはーー
『私たちは、その姿を隠し、時にーー、来るべき日に現れて世界を変えるーー、決して、この世界にはいない種族と、思われるようにしていなければならなかった、・・・それが、約5年前までの話
・・・神族が戦争に現れ、瞬く間に・・・」
「神族が存在する?それにーーそんな種族が戦争に参加したなんて・・・!」
『その日、北の大国「龍国オーンド」と、その支配国に集結していた勢力が一瞬にして魔導国アルカードの手に落ちた、闇の神族、・・・魔王が
直々に出撃、天は闇に包まれ、地は毒に満たされーーー、苦しむにながら、全て戦死・・・、一瞬にて戦局を変え、兵士に恐怖を与えーー』
『だけど、中央国ノーランドはそれを神族の仕業だと気づく、そして今神族を生け捕りにして、そのまま戦場に出して、敵国を全て虐殺できれば、「千年戦争」は終わる、という結論となった』
話をまとめると、つまりこうだ
この世界には人に気がつかれないように神族は生きていた
だが、度重なる長い戦争で、ついに闇を司る神族「魔王」が出撃
これにより、長く三つの大国にて戦争を行っていたものは、今、ノーランド対アルカードのみとなる
ノーランドは大国を滅ぼすことに成功したアルカードの秘密を探った
その結果・・・、その原因は神族だと気づく
力は圧倒的であり、一つあれば大国も滅ぼせる・・・
是非とも、それはノーランドを入手したい
ならば、すべきことは一つだ
・・・神族を拉致すれば良い
全ての国が滅び、そして・・・
国が一つだけになれば、「千年戦争」は終わる、と
『この文は貴方を怖がらせる為にあるわけではない
・・・・・受け止めてほしいからだ』
何を?
『貴方も・・・、神族「ヴァルキリー」であるということを、知って欲しい、貴方は追われる身でありながら、神族の中で唯一、・・・普通の方法ではわからない能力を持っているーーー、神族の中で自由に動けるのは貴方だけなのだ、と』
「・・・嘘だろ」
俺はーーー、追われるのだろう
ノーランド帝国が、俺が仮に神族だと気づけば
きっと、どんな手を使ってでも俺を手に入れようとするのだろう
「前の俺なら、この事実を嫌がるのだろうか?」
と、薄く笑う
不思議なのだ、・・・嫌な気はしない
・・・本当に不思議な気分だった
俺のしたいことができる、だが、多少のリスクは負うこととなる
それも、悪くないのだ
思い通り進むだけでは何もつまらない
遮るものがあってこそ、今ワクワクした気分になれるからだ
書物をめくる
「ヴァルキリーは、羽は天使の用な翼を持っていて、唯一助走無しに空を飛ぶ特殊能力、「風の翼(グライド)」をもっている、この能力は常に起動していて、走れば早くなり、そのまま飛ぶとゆっくりと浮く、・・・もし、知っていたのならば余計かもしれないけど、知らなかったら、覚えていなさい、空を制することは、大地で戦う者に大きな優位(アドバンテージ)となる
他にも、光魔術に関してはヴァルキリーは誰にも負けない
記憶を失った今、魔術を思い出すことは難しいと思う
でも神族ならそれは必要ない、・・・思い描いた事をそのまま解き放ちなさい、神族の魔力なら、それを思い通りにできる」
先程の飛翔は、グライドという能力のお陰らしい
助走なしに空を飛べる、単純だが確かに強力な効果だろう
更に俺にはもう一つ、光魔術を扱えるそうだ
・・・不確定な部分だし、検証するしかない・・・、よな
書物には、他にも地図や、簡単な情報
その他生き抜く為に、とどっしり小さな文字で書かれたページが続く
そしてーー、書物は、少しずつ丁寧な文字から、殴り書きへと変わった
読み辛いが、読めないわけではない、少しずつ解読する
『絶対に誰にも屈することのないように
貴方は神族、ヴァルキリーなのだから、戦えば誰にも負けることはない、でも戦うことだけが、決して正しい道ではない
躊躇はしないように、躊躇をするだけ、失うものは増える、貴方なら、きっと、躊躇なく踏み出せるはずたから
そして最後にーーー』
真っ赤な文字でこう、書いてある
『探しなさいあなたの「望み」を、見つけなさいあなたの「理想」を』
『それとーーー』
ここからが何やら赤黒く染まっており、内容は確認できなかった
・・・もしかしたら、これを書いたのは
本を閉じる
少年は蒼い瞳を一度つむり、静かに瞑想する
そしてーーー
カッと目を開き
煌めく2つの刀身の柄を握りしめ、右手と左手に二つ構える
「探しなさい、・・・か」
少年は真剣な顔であったが
とても、悲しげな顔をしていた
見つけ出すよ、俺の望みを
神族だからなのではない
俺はーーー、俺の為に戦うんだ
アーサーと呼ばれし英雄は、一つの書物から、戦う決心した
ただ、あくまで本人から聞いたもので、更にその肝心の書物は見つかっていない、・・・その真実は闇に包まれたままである
私はこの後に彼と出会うこととなる
「白き天使」と呼ばれた英雄は、少年であった
だが、その決意は誰にも負けぬ、美しい宝石のようなものである
誰が為に、血を流すなど、綺麗事なのだろう
自分の為にはやがてーーー
誰かの為になるのだから
後書き
作者:テノール |
投稿日:2016/12/10 01:57 更新日:2016/12/10 01:57 『千年戦争物語』の著作権は、すべて作者 テノール様に属します。 |
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