作品ID:1971
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ドライフラワー
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
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第3話 傷だらけの兵士
前の話 | 目次 |
夢を見た。一人の青年が亡骸を抱えて泣き叫ぶ夢を。自分はその青年を知らない。ただ、初めて見たその光景に奇妙な感覚はあった。大勢の亡骸の上に一つの亡骸だけを抱えている青年。彼の返り血を洗い流すかのように雨は勢いを増していった。
体調も戻ってきたので、姫はベットから降り、家の中を見渡した。先程の猟師を名乗るジグという男は、どうやら出掛けたみたいだ。それにしても広い。城の自室に比べれば劣りはするものの、一家族が生活できるほどの広さがある。何故このような大きなログハウスが、このような不気味な森にあるのか不思議である。生活に必要な品も一通り揃っている。そんなことを眺めていると玄関の扉が開いた。入ってきたのは先程のジグだ。
「もう動いても大丈夫なのですか?いやー、心配しましたよ。それにここの小屋に運ぶのも大変でしたからね。」
だいぶ失礼なことを言われた気がしたが、そこは触れないでいた。
「あっ、そのままの格好では動き難いですよね?俺、服持ってきたのでよかったら着てください。サイズは多分合いますから。」
そう言って、ジグは左脇に抱えていた衣類を自分に渡した。それは、ジグが着ている質素な服と素材が同じだ。形状が少し異なるが、ほぼ同じにしか見えない。
姫はその服を受けとると、お礼を言った。
「いいんですよ。困ったときはお互い様ですからね。あっ、着替えるなら俺、外出てますね。」
またしても子供の様な笑みを浮かべて外に出ていった。彼は本当は子供なのではないかと少し疑ってしまった。けれども、大人の雰囲気もある為、そうとは決め難いものがあった。
初めて城の外で夜を明かした。いつもなら無駄に広い自室に一人で寝ているが、昨日は違った。二人だった。嬉しかった。城に籠ったままでは、愛される事なんて一生無かったろう。けれども、今の自分にはそのようにしてくれる人がいる。噂に聞く声ではない。直に聞ける声が。
姫にはそれが堪らなく嬉しかった。
食事や衣服は全てジグが用意してくれた。猟師と言うだけあって、食材の調達はお手の物だ。これならば、生活には困らないだろう。そんな風に考えていたら数日が経っていた。
「アーネさんは、あんな綺麗なドレスを着ていましたけど、何処かのお姫様だったのですか?」
ある日の昼下がり、家の外で薪割りをしていたジグに聞かれた。この男、本当に何も知らないのだろうか。
「そういう事にはなっていましたよ。」
「そうだったんですか!ですよね!ドレスを着ている人なんか、お姫様位ですものね!」
とても嬉しそうだ。
「あっ、だったらアーネさんの事は、今日から姫って呼びますね。」
無邪気な顔でそれを言うのだ。自分には嬉しさを通り越して、快感でしかなかった。
「そろそろ、お昼にしましょうか。多分雨は降ってないと思うので何か獲ってきますよ。」
空を見ても天気なんて分からない。時間さえも分からない。空腹を頼りに時間を判断するしか術は無いのだ。
ジグはそれまで持っていた斧を家にしまい。何も持たずに森の奥に姿を消した。
「それでは行ってきますね。」
その言葉はしっかりと伝えて行った。
一人になった姫は家の中に戻り、ジグの帰りを待つ間お茶しようと考えた。ジグは何かと家を空ける事が多い。その度に姫は一人で留守番をしている。その為か、少し前にジグがハーブを採ってきてくれた。
「ハーブティーにすると美味しいハーブなんですよ。」
話すごとに笑う彼に様々な感情が過っていた。棚からティーセットを出して一人でお茶を始めた。
二口目を飲もうとしたときであった。玄関が荒々しく開かれた。そこから入ってきた人物を見るや否や、姫は手にしていたティーカップを落としてしまった。
「クランツ!!」
入ってきたのは、ずたぼろの鎧を身に纏った一人の兵士であった。右の肩には、姫の国の紋章が微かに見えた。
体調も戻ってきたので、姫はベットから降り、家の中を見渡した。先程の猟師を名乗るジグという男は、どうやら出掛けたみたいだ。それにしても広い。城の自室に比べれば劣りはするものの、一家族が生活できるほどの広さがある。何故このような大きなログハウスが、このような不気味な森にあるのか不思議である。生活に必要な品も一通り揃っている。そんなことを眺めていると玄関の扉が開いた。入ってきたのは先程のジグだ。
「もう動いても大丈夫なのですか?いやー、心配しましたよ。それにここの小屋に運ぶのも大変でしたからね。」
だいぶ失礼なことを言われた気がしたが、そこは触れないでいた。
「あっ、そのままの格好では動き難いですよね?俺、服持ってきたのでよかったら着てください。サイズは多分合いますから。」
そう言って、ジグは左脇に抱えていた衣類を自分に渡した。それは、ジグが着ている質素な服と素材が同じだ。形状が少し異なるが、ほぼ同じにしか見えない。
姫はその服を受けとると、お礼を言った。
「いいんですよ。困ったときはお互い様ですからね。あっ、着替えるなら俺、外出てますね。」
またしても子供の様な笑みを浮かべて外に出ていった。彼は本当は子供なのではないかと少し疑ってしまった。けれども、大人の雰囲気もある為、そうとは決め難いものがあった。
初めて城の外で夜を明かした。いつもなら無駄に広い自室に一人で寝ているが、昨日は違った。二人だった。嬉しかった。城に籠ったままでは、愛される事なんて一生無かったろう。けれども、今の自分にはそのようにしてくれる人がいる。噂に聞く声ではない。直に聞ける声が。
姫にはそれが堪らなく嬉しかった。
食事や衣服は全てジグが用意してくれた。猟師と言うだけあって、食材の調達はお手の物だ。これならば、生活には困らないだろう。そんな風に考えていたら数日が経っていた。
「アーネさんは、あんな綺麗なドレスを着ていましたけど、何処かのお姫様だったのですか?」
ある日の昼下がり、家の外で薪割りをしていたジグに聞かれた。この男、本当に何も知らないのだろうか。
「そういう事にはなっていましたよ。」
「そうだったんですか!ですよね!ドレスを着ている人なんか、お姫様位ですものね!」
とても嬉しそうだ。
「あっ、だったらアーネさんの事は、今日から姫って呼びますね。」
無邪気な顔でそれを言うのだ。自分には嬉しさを通り越して、快感でしかなかった。
「そろそろ、お昼にしましょうか。多分雨は降ってないと思うので何か獲ってきますよ。」
空を見ても天気なんて分からない。時間さえも分からない。空腹を頼りに時間を判断するしか術は無いのだ。
ジグはそれまで持っていた斧を家にしまい。何も持たずに森の奥に姿を消した。
「それでは行ってきますね。」
その言葉はしっかりと伝えて行った。
一人になった姫は家の中に戻り、ジグの帰りを待つ間お茶しようと考えた。ジグは何かと家を空ける事が多い。その度に姫は一人で留守番をしている。その為か、少し前にジグがハーブを採ってきてくれた。
「ハーブティーにすると美味しいハーブなんですよ。」
話すごとに笑う彼に様々な感情が過っていた。棚からティーセットを出して一人でお茶を始めた。
二口目を飲もうとしたときであった。玄関が荒々しく開かれた。そこから入ってきた人物を見るや否や、姫は手にしていたティーカップを落としてしまった。
「クランツ!!」
入ってきたのは、ずたぼろの鎧を身に纏った一人の兵士であった。右の肩には、姫の国の紋章が微かに見えた。
後書き
未設定
作者:さち |
投稿日:2017/12/18 23:41 更新日:2017/12/18 23:41 『ドライフラワー』の著作権は、すべて作者 さち様に属します。 |
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