作品ID:316
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泣き虫姫と、その友達
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
第一話幼馴染は泣き虫お姫様
目次 |
私には、幼い頃から腐れ縁で面倒を見ている幼馴染の泣き虫お姫様がいる。
出会いは幼稚園の年少組、ひよこ組でのこと。
それが私の苦労の始まりだった。
私は昔からどこか冷めている生意気なガキだった。
幼稚園の中でもなんだか浮いていて、なぜか男の子にはアネキ!とか呼ばれていたりもした。
そんな私には、なんだか好きになれない……ていうか、嫌いな子がいた。
それが私の幼馴染の泣き虫姫こと、鈴皆杏。
それはもう当時からことあるごとに泣き喚く私と正反対の厄介なガキだった。
でも杏には武器があった。
それは見た目の可愛さ。
これが泣き虫姫と呼ばれるもうひとつの理由である。
それはもう今も昔も目を見張るほどの美少女であった彼女は周りの大人からちやほやされた。
しかも、性格もいい子ちゃんときたもんだ。
だけど、そのせいで男の子たちからはいじめられやすい子でもあった。
なかでも、白石純汰というやつはしつこかった。
遊びに杏だけ仲間はずれにしたり、おもらししてしまった杏を大声で笑ったり。
ほら、あの<好きな子ほどイジメちゃう>というやつだ。
そこで私は、あまりにガキなその男の子に蹴りをいれてしまったのだ。
それが間違いだった。
「わぁあ!凛(りん)ちゃんって強いんだね!ありがとう!!」
「は……?」
別に杏を助けたわけじゃなかったのに、なぜかその日から杏に懐かれてしまったのだったとさ。
ま、そんなわけで14年後の2010年秋。清台大学門前、午前10時。
つまり、今。
「りぃぃんちゃぁあん!!」
「杏……」
顔中涙でびしょびしょになった大学一年19歳になった鈴皆杏は幼稚園のときから何の進歩もなく、私に抱きついてきた。
今度はなんだ。
「どーしたの、杏」
「凛ちゃん!!どーしよう!!変な男の人がついて来るのぉお!しかも話しかけられた!」
「変な男の人ぉお!?」
昔から杏にはその類の変人男やストーカーが多かったが、話しかけてくるのは珍しい。
たいてい、「遠くから見つめていたい!!」てな感じなのに。
辺りを見回してみるが、とくにそういうやつは見当たらない。
ただ……
やたら見目麗しい、美形が杏の真後ろに立ってはいるが。
「杏、それってもしかして……」
そっと杏の後ろの男に目を向ける。
杏も私の視線の先に気がついたのか恐る恐る後ろを振り向く。
「き……きゃぁぁぁあああ!!!!」
目いっぱいに涙をためて悲鳴をあげると杏は素早く私の後ろに隠れた。
こんなときだけ鈍い杏の動きが早くなる。
「鈴皆杏。なぜ逃げる」
いや、なぜって。
突っ込もうかと思ったが向こうは本気っぽいのでやめておいた。
「凛ちゃん……」
弱々しく私の服の裾をつかむ杏の姿にこれは本気でおびえてるな、と判断して私はとりあえず目の前の男を睨みつけてみたりした。
う、まぶしい。
少しばかり美形すぎやしないか、この人。
「お前は誰だ」
なんかとてつもなく上からものを言われてるいるような気がするんですけど。
なんか昔のガキ大将魂がうずく。
「え―――……まぁ、杏の幼馴染権保護者みたいなもんですかね。斉藤凛子です」
とりあえず、笑顔。
20パーセントの笑顔でいいかな。
口だけ笑ってるやつ。
「そうか。まぁ、興味ないんだが。とりあえず後ろの女をよこせ」
興味ナインデスカ。
なんか、わがままの塊みたいなヤツだな。
「はぁ。その前にあなたどなた様ですか」
「……イルディア王国第一王子、アルフォンス・ソルト・エルマ・イルディアだ」
嫌そうな顔しながらしぶしぶと言うかんじに答えてくれた。
答えてくれたわけだが。
さぁ、どこから突っ込もうか。
「うん。まぁ、そうか。すごいね」
つっこむのやめ。
スルーしようスルー。
なんかめんどいしね。
こういうのには関わらないほうがいい。
「あ、講義の時間だ!!いそがなきゃ!いこっ、杏」
「え、あ、うん」
戸惑いながら私に手を引かれて歩き出そうとする杏の左腕をヤツがつかんだ。
「どこへいく」
「は、離してください……」
じっと杏の目を見つめるアルフォンスに杏たじたじになっているようだ。
しかしこの二人並ぶと絵になるな。
「離してあげてよ。ホントに講義の時間なんだって」
「お前には用はない。わたしが用があるのは鈴皆杏だけだ」
言うなぁ、こいつ。
このガキ大将、あ、元ガキ大将斉藤凛子様にむかってお前とか、用がないとか。
それに、一応私の幼馴染の杏をつれて行こうなんてさ。
「悪いけど。これ以上しつこいなら警察呼ぶよ?」
「ケイサツ?」
まさか、警察知らんのかこいつ。
なんか生粋の変人みたいだ。
美形なのに、もったいない。
「おい、アル」
そうこうしてる間になんかもう一人増えた。
美形が。
こっちは同い年ぐらいの変人美形とは違い年上みたいだ。
20代半ばくらいだろうか。
なんか、ワイルドな感じ。
でも、みたところ変人の知り合いみたいだからこっちも変人だろう。
「ギル。お前、来てたのか」
「まぁあな。世間知らずな王子が一人で行ったとあれば俺も行かなきゃならないだろう」
「わたしは一人で平気だ」
「そー思ってんのはお前だけだよ」
よほど親しいらしく、ぽんぽん言い合っている二人を前にしばらく沈黙してしまった。
美形が、杏をいれて三人。
美男美女だわ、こりゃ。
しばらくボーとしていると、後からきたワイルド系がこっちを見た。
「わるかったな。こいつは俺がつれて帰るから、勘弁してやってくれ」
大して悪かったとも思ってなさそうな顔で言われたが、このさい面倒がなくなるなら気にしないとしよう。
「いいですよ別に」
「わたしも……」
おずおずと言う杏にだけ、ワイルド系は微笑んで軽く頭を下げた。
私には微笑まんのかい。
「そんじゃ」
軽く手を上げて、ワイルド系は変人をひっぱって去っていった。
去り際に、私を鋭く睨みつけて……
「面倒だな」
ギルベルド・スクライトは後ろを軽く振り返ってため息をついた。
面倒なことになった。
まさか、鈴皆杏にあんな厄介な友人がいたとは。
見るからに気が強そうで少し睨んでもひるむ様子はなかった。
これでは簡単には鈴皆杏を連れ去ることは出来なさそうだ。
「面倒……とは、なにがだ?」
「あの女だよ。鈴皆杏の友人の」
「あぁ」
納得したのか軽く相槌をうつアルフォンスにギルベルトは苦笑した。
「大丈夫だ。必ず鈴皆杏はイルディアへ連れて行く」
「分かっている」
硬く決意したように、アルフォンスは頷いた。
出会いは幼稚園の年少組、ひよこ組でのこと。
それが私の苦労の始まりだった。
私は昔からどこか冷めている生意気なガキだった。
幼稚園の中でもなんだか浮いていて、なぜか男の子にはアネキ!とか呼ばれていたりもした。
そんな私には、なんだか好きになれない……ていうか、嫌いな子がいた。
それが私の幼馴染の泣き虫姫こと、鈴皆杏。
それはもう当時からことあるごとに泣き喚く私と正反対の厄介なガキだった。
でも杏には武器があった。
それは見た目の可愛さ。
これが泣き虫姫と呼ばれるもうひとつの理由である。
それはもう今も昔も目を見張るほどの美少女であった彼女は周りの大人からちやほやされた。
しかも、性格もいい子ちゃんときたもんだ。
だけど、そのせいで男の子たちからはいじめられやすい子でもあった。
なかでも、白石純汰というやつはしつこかった。
遊びに杏だけ仲間はずれにしたり、おもらししてしまった杏を大声で笑ったり。
ほら、あの<好きな子ほどイジメちゃう>というやつだ。
そこで私は、あまりにガキなその男の子に蹴りをいれてしまったのだ。
それが間違いだった。
「わぁあ!凛(りん)ちゃんって強いんだね!ありがとう!!」
「は……?」
別に杏を助けたわけじゃなかったのに、なぜかその日から杏に懐かれてしまったのだったとさ。
ま、そんなわけで14年後の2010年秋。清台大学門前、午前10時。
つまり、今。
「りぃぃんちゃぁあん!!」
「杏……」
顔中涙でびしょびしょになった大学一年19歳になった鈴皆杏は幼稚園のときから何の進歩もなく、私に抱きついてきた。
今度はなんだ。
「どーしたの、杏」
「凛ちゃん!!どーしよう!!変な男の人がついて来るのぉお!しかも話しかけられた!」
「変な男の人ぉお!?」
昔から杏にはその類の変人男やストーカーが多かったが、話しかけてくるのは珍しい。
たいてい、「遠くから見つめていたい!!」てな感じなのに。
辺りを見回してみるが、とくにそういうやつは見当たらない。
ただ……
やたら見目麗しい、美形が杏の真後ろに立ってはいるが。
「杏、それってもしかして……」
そっと杏の後ろの男に目を向ける。
杏も私の視線の先に気がついたのか恐る恐る後ろを振り向く。
「き……きゃぁぁぁあああ!!!!」
目いっぱいに涙をためて悲鳴をあげると杏は素早く私の後ろに隠れた。
こんなときだけ鈍い杏の動きが早くなる。
「鈴皆杏。なぜ逃げる」
いや、なぜって。
突っ込もうかと思ったが向こうは本気っぽいのでやめておいた。
「凛ちゃん……」
弱々しく私の服の裾をつかむ杏の姿にこれは本気でおびえてるな、と判断して私はとりあえず目の前の男を睨みつけてみたりした。
う、まぶしい。
少しばかり美形すぎやしないか、この人。
「お前は誰だ」
なんかとてつもなく上からものを言われてるいるような気がするんですけど。
なんか昔のガキ大将魂がうずく。
「え―――……まぁ、杏の幼馴染権保護者みたいなもんですかね。斉藤凛子です」
とりあえず、笑顔。
20パーセントの笑顔でいいかな。
口だけ笑ってるやつ。
「そうか。まぁ、興味ないんだが。とりあえず後ろの女をよこせ」
興味ナインデスカ。
なんか、わがままの塊みたいなヤツだな。
「はぁ。その前にあなたどなた様ですか」
「……イルディア王国第一王子、アルフォンス・ソルト・エルマ・イルディアだ」
嫌そうな顔しながらしぶしぶと言うかんじに答えてくれた。
答えてくれたわけだが。
さぁ、どこから突っ込もうか。
「うん。まぁ、そうか。すごいね」
つっこむのやめ。
スルーしようスルー。
なんかめんどいしね。
こういうのには関わらないほうがいい。
「あ、講義の時間だ!!いそがなきゃ!いこっ、杏」
「え、あ、うん」
戸惑いながら私に手を引かれて歩き出そうとする杏の左腕をヤツがつかんだ。
「どこへいく」
「は、離してください……」
じっと杏の目を見つめるアルフォンスに杏たじたじになっているようだ。
しかしこの二人並ぶと絵になるな。
「離してあげてよ。ホントに講義の時間なんだって」
「お前には用はない。わたしが用があるのは鈴皆杏だけだ」
言うなぁ、こいつ。
このガキ大将、あ、元ガキ大将斉藤凛子様にむかってお前とか、用がないとか。
それに、一応私の幼馴染の杏をつれて行こうなんてさ。
「悪いけど。これ以上しつこいなら警察呼ぶよ?」
「ケイサツ?」
まさか、警察知らんのかこいつ。
なんか生粋の変人みたいだ。
美形なのに、もったいない。
「おい、アル」
そうこうしてる間になんかもう一人増えた。
美形が。
こっちは同い年ぐらいの変人美形とは違い年上みたいだ。
20代半ばくらいだろうか。
なんか、ワイルドな感じ。
でも、みたところ変人の知り合いみたいだからこっちも変人だろう。
「ギル。お前、来てたのか」
「まぁあな。世間知らずな王子が一人で行ったとあれば俺も行かなきゃならないだろう」
「わたしは一人で平気だ」
「そー思ってんのはお前だけだよ」
よほど親しいらしく、ぽんぽん言い合っている二人を前にしばらく沈黙してしまった。
美形が、杏をいれて三人。
美男美女だわ、こりゃ。
しばらくボーとしていると、後からきたワイルド系がこっちを見た。
「わるかったな。こいつは俺がつれて帰るから、勘弁してやってくれ」
大して悪かったとも思ってなさそうな顔で言われたが、このさい面倒がなくなるなら気にしないとしよう。
「いいですよ別に」
「わたしも……」
おずおずと言う杏にだけ、ワイルド系は微笑んで軽く頭を下げた。
私には微笑まんのかい。
「そんじゃ」
軽く手を上げて、ワイルド系は変人をひっぱって去っていった。
去り際に、私を鋭く睨みつけて……
「面倒だな」
ギルベルド・スクライトは後ろを軽く振り返ってため息をついた。
面倒なことになった。
まさか、鈴皆杏にあんな厄介な友人がいたとは。
見るからに気が強そうで少し睨んでもひるむ様子はなかった。
これでは簡単には鈴皆杏を連れ去ることは出来なさそうだ。
「面倒……とは、なにがだ?」
「あの女だよ。鈴皆杏の友人の」
「あぁ」
納得したのか軽く相槌をうつアルフォンスにギルベルトは苦笑した。
「大丈夫だ。必ず鈴皆杏はイルディアへ連れて行く」
「分かっている」
硬く決意したように、アルフォンスは頷いた。
後書き
作者:壁井有香理 |
投稿日:2010/09/13 23:59 更新日:2010/09/14 00:15 『泣き虫姫と、その友達』の著作権は、すべて作者 壁井有香理様に属します。 |
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