作品ID:32
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火竜~導かれし者たち~
小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 感想希望 / 初投稿・初心者 / 年齢制限なし / 休載中
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第一話
目次 |
ロンバルディア王国暦128年。
メテオと呼ばれる巨大隕石がこの星に衝突した。
隕石に付着した「種子」と呼ばれる物質がこの星の水に触れると、そこから様々な異形の怪物が生まれた。生まれ出でた怪物を人々は恐怖の念を込めて、モンスターと呼んだ。
巨大な口を大きく開けて、目の前の人間を一のみにしようとそれは迫った。鋭利な牙などはもたない。必要ないのだ。そいつは、敵をその体内に取り込んで、生きたまま消化液によって溶かし吸収する。
――ヴェリル。そのモンスターの名だ。大蛇のごときその姿だが、多くは深い洞窟など暗闇にしか生息しないため、目を一つしかもたない。それにその目も、実際に使っているのかは定かではない。そのかわりとなっているのが聴覚である。小動物の僅かな足音でも正確に聞き分けるその二つの耳は、まるで大きな角のようにその頭から伸びている。
短い黒髪をした青年は、左に飛び込むようにして、間一髪でその攻撃を避ける。
ヴェリルの勢いは止まらず、その頭を地面に激しく打ちつけた。ドーンという音とともに、洞窟内が激しく揺れる。
青年はその一瞬の隙を逃さなかった。
「とりゃあ!」
割れんばかりの気合とともに、抜刀した剣をヴェリルの頭部めがけて振り下ろした。
「ギャワワワァ!」
どす黒い体液を撒き散らしながらも、堅い皮に包まれたヴェリルを切断するには至らない。
しかし青年は、最初からそれを分かっていたかのようにバックステップで距離をとり、狙いを定め、その手に持った剣でヴェリルのたった一つの眼球に突き刺した。
手に柔らかいものを突き刺すような感覚が伝わり、剣の切っ先はヴェリルの脳を完全に破壊した。
「よし! 一丁あがり!」
彼の名前はカイル。重要な商業路になっているこの洞窟の周辺で人を襲うモンスターの退治を村長から依頼されていたのだ。
カイルは、倒した証拠としてヴェリルの皮の一部分を剥ぎ取り、剣についた体液を持ってきた布でぬぐった。そして報奨金を貰おうと村に帰ろうとすると、突然洞窟の入り口の方から声がした。
「あっ、君。もう倒しちゃったのかい?」
逆光でよく見えなかったが、長髪の若い男のようだ。
「誰だお前!」
「ボクはウィッチっていうんだ。君と同じモンスターハンターだよ」
ウィッチと名乗る男は、そう言った。モンスターハンターとは、町や村を荒らすモンスターの退治を請け負ったり、モンスターの素材を売ったりして生活する者たちのことを指す。カイルもその一人だった。
「そうか。悪いな。先に倒しちゃって」
同業者ということでひとまず安心をしたカイルは、剣をしまいゆっくりと近づいた。ウィッチは、紺色のひざ下まで届く長い外套をまとい、首には深い緑のマフラーをしていた。洞窟の中がいくら寒いとはいえ、もうすぐ夏になろうとする季節には厚着過ぎる。おそらく、寒暖対策ではなく、身を守る防具なのだろう。
「いやぁ、そんなことないよ! 正直、一人で倒せるか不安だったしね。狭い洞窟内だと、僕の武器だとちょっと不利だからね。どうやって外に引きずり出そうか思案してたら遅くなっちゃったよ」
ウィッチは、先を越されたことに気を揉むでもなく、屈託無く笑った。ウィッチのいう武器とは、背中に背負った長弓のことだろう。確かに、遠距離用の武器では、洞窟のような狭い空間内では十分にその利面を活かせない。
「それより、君、腕がいいんだね。これも何かの縁だ。良かったら一緒に組まないかい?」
カイルは、これまでずっと一人で旅を続け、モンスターを狩ってきた。それを別に苦に感じたことはなかったし、仲間を欲しいとも思ったことはなかった。ただ、自分の腕を褒められ、一緒に組もうと誘われたことは素直に嬉しかった。
「そうだな。たまには、こういうのもいいか」
「おお! やったぁ! そうと決まれば、早速帰って賞金で二人の門出を祝って乾杯しよう!!」
大げさにはしゃぐウィッチを見てカイルは、
「単にそれが目当てじゃないのか……」
と肩をすくめた。
「まぁまぁ、そんな気にしないでよ! それより、君の名は?」
カイルは、そういえばまだ自分の名を言っていないことに気付いた。
「ああ、俺はカイル。よろしくな、ウィッチ」
ウィッチはにっこり微笑むと、右手を差し出した。
カイルも少しぎこちなく笑い握手した。
メテオと呼ばれる巨大隕石がこの星に衝突した。
隕石に付着した「種子」と呼ばれる物質がこの星の水に触れると、そこから様々な異形の怪物が生まれた。生まれ出でた怪物を人々は恐怖の念を込めて、モンスターと呼んだ。
巨大な口を大きく開けて、目の前の人間を一のみにしようとそれは迫った。鋭利な牙などはもたない。必要ないのだ。そいつは、敵をその体内に取り込んで、生きたまま消化液によって溶かし吸収する。
――ヴェリル。そのモンスターの名だ。大蛇のごときその姿だが、多くは深い洞窟など暗闇にしか生息しないため、目を一つしかもたない。それにその目も、実際に使っているのかは定かではない。そのかわりとなっているのが聴覚である。小動物の僅かな足音でも正確に聞き分けるその二つの耳は、まるで大きな角のようにその頭から伸びている。
短い黒髪をした青年は、左に飛び込むようにして、間一髪でその攻撃を避ける。
ヴェリルの勢いは止まらず、その頭を地面に激しく打ちつけた。ドーンという音とともに、洞窟内が激しく揺れる。
青年はその一瞬の隙を逃さなかった。
「とりゃあ!」
割れんばかりの気合とともに、抜刀した剣をヴェリルの頭部めがけて振り下ろした。
「ギャワワワァ!」
どす黒い体液を撒き散らしながらも、堅い皮に包まれたヴェリルを切断するには至らない。
しかし青年は、最初からそれを分かっていたかのようにバックステップで距離をとり、狙いを定め、その手に持った剣でヴェリルのたった一つの眼球に突き刺した。
手に柔らかいものを突き刺すような感覚が伝わり、剣の切っ先はヴェリルの脳を完全に破壊した。
「よし! 一丁あがり!」
彼の名前はカイル。重要な商業路になっているこの洞窟の周辺で人を襲うモンスターの退治を村長から依頼されていたのだ。
カイルは、倒した証拠としてヴェリルの皮の一部分を剥ぎ取り、剣についた体液を持ってきた布でぬぐった。そして報奨金を貰おうと村に帰ろうとすると、突然洞窟の入り口の方から声がした。
「あっ、君。もう倒しちゃったのかい?」
逆光でよく見えなかったが、長髪の若い男のようだ。
「誰だお前!」
「ボクはウィッチっていうんだ。君と同じモンスターハンターだよ」
ウィッチと名乗る男は、そう言った。モンスターハンターとは、町や村を荒らすモンスターの退治を請け負ったり、モンスターの素材を売ったりして生活する者たちのことを指す。カイルもその一人だった。
「そうか。悪いな。先に倒しちゃって」
同業者ということでひとまず安心をしたカイルは、剣をしまいゆっくりと近づいた。ウィッチは、紺色のひざ下まで届く長い外套をまとい、首には深い緑のマフラーをしていた。洞窟の中がいくら寒いとはいえ、もうすぐ夏になろうとする季節には厚着過ぎる。おそらく、寒暖対策ではなく、身を守る防具なのだろう。
「いやぁ、そんなことないよ! 正直、一人で倒せるか不安だったしね。狭い洞窟内だと、僕の武器だとちょっと不利だからね。どうやって外に引きずり出そうか思案してたら遅くなっちゃったよ」
ウィッチは、先を越されたことに気を揉むでもなく、屈託無く笑った。ウィッチのいう武器とは、背中に背負った長弓のことだろう。確かに、遠距離用の武器では、洞窟のような狭い空間内では十分にその利面を活かせない。
「それより、君、腕がいいんだね。これも何かの縁だ。良かったら一緒に組まないかい?」
カイルは、これまでずっと一人で旅を続け、モンスターを狩ってきた。それを別に苦に感じたことはなかったし、仲間を欲しいとも思ったことはなかった。ただ、自分の腕を褒められ、一緒に組もうと誘われたことは素直に嬉しかった。
「そうだな。たまには、こういうのもいいか」
「おお! やったぁ! そうと決まれば、早速帰って賞金で二人の門出を祝って乾杯しよう!!」
大げさにはしゃぐウィッチを見てカイルは、
「単にそれが目当てじゃないのか……」
と肩をすくめた。
「まぁまぁ、そんな気にしないでよ! それより、君の名は?」
カイルは、そういえばまだ自分の名を言っていないことに気付いた。
「ああ、俺はカイル。よろしくな、ウィッチ」
ウィッチはにっこり微笑むと、右手を差し出した。
カイルも少しぎこちなく笑い握手した。
後書き
未設定
作者:フリード |
投稿日:2009/12/06 23:52 更新日:2017/06/25 20:04 『火竜~導かれし者たち~』の著作権は、すべて作者 フリード様に属します。 |
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