作品ID:388
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「ココに空白はアラズ」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(50)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(139)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
ココに空白はアラズ
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
プロローグ
目次 |
『鬼なんて嘘っぱちだ。ファンタジーだ。』
そう馬鹿にした時期もあっただろう。鬼は頭に二本の角を持ち、口に牙と指に鋭い爪、乱れた頭髪、腰に動物の毛皮をまとっている。伝説上の生き物だ。
だが、現代――二〇七八年には鬼が回帰している。なぜか。一説にはとある国の生物兵器で感染した。一説には地球温暖化で人間が進化したなど。研究家達によって今もなお議論されている。
鬼を馬鹿にしていた時代は去る。自分の変化に怯えながら生活する者、気にしない者、討伐する者、鬼になり家族から離れる者。色々だ。そして、討伐者でありながら鬼に感染した者達がいた。彼らは【クウハク】と呼ばれ下級都市に異動になった。大人も子供も等しく、犯罪をおこした鬼を討伐する。同胞殺しと呼ばれるようになる。
「このテレビ番組おかしいよ。同胞殺しって、人も人を殺してるじゃん。私らだけが特別じゃないってーの」
不満を口にするのは茶色のカーディガンとジーンズを着ている卜部晶子(うらべあきこ)。茶髪に一本の角、指の爪にはマニュキュアが描かれている。
隣にいた立花香(たちばなこう)は卜部をたしなめる。
「卜部ちゃん、悪く言わないの」
「香さんの優しさには頭上がらないけどさ?。そう言えば、香さんさ」
「なに?」
卜部は香を上から下まで見降ろす。
香は上に古着、下にカーゴパンツを着ていた。角はねずみ色の頭髪に隠れて見えない。
「花も恥じらう乙女が地味な恰好でさ! 私心配なのよ」
「……。卜部ちゃんも若いよ?」
「私は二十二歳だし女捨ててるからいいの。でも、香さんは十五歳なのに……勿体ない。こう、学生なんだからスカートでも履けばいいのに」
「卜部ちゃん、なんだかオヤジくさいよ」
「ガーン。ううっ……オヤジってのはさすがに。……ひどい」
涙ぐむ卜部。香は慌てて謝った。
「ごめんなさい。そんなつもりはなくって。あ、1階の冷蔵庫に抹茶こんにゃくあるよ。千津(ちづ)が買ったやつ」
「えっ!? マジ感謝――お子さんにはホント助かるよ!」
「行ってらっしゃい」
音速を駆け抜けて卜部は走り去った。
エサでごまかす。香は一人ほくそ笑んだ。
「卜部ちゃんは抹茶こんにゃくを好きなんだよね」
『私達は――、鬼を許してはならない!!』
テレビから大罵声を浴び、香は再びテレビに視線を戻す。
『鬼の影響で不況は直りません。排除すべきです』
『なぜ鬼は私達から生活を奪うんだ!』
口々にアナウンサーやリポーターから不満が飛び交った。
香は黙って聴いていた。諦念なのか、罪悪感なのかは分からない。
『だが――、子どもは無実だ。鬼よ、子どもだけは救え』
それを聞いて、香はピクリと肩を震わせた。
親が鬼なら子も鬼か――。それは違う。もともと正真正銘の鬼はいないのだ。元の身体は人間。人間から生まれるのは人間。鬼に感染しても人の子どもが生まれる。
子どもに貴賎なしと保護欲を持つ人間達、【人間愛護の絆】は勝手に鬼から奪う。
言葉でおどし、強引に奪い、金で交渉する者達。
また、子どもは人間のコミュニティーで生活した方がいいと選択した鬼もいる。我が子を想うなら幸せな所で、差別されない所でと。
香は一人の子どもを持つ親として、この問題は心配だ。イジメを考える親なら自分の元に置かない。香もそう思う。だが、娘の千津からは一緒にいたいと言われている。
「ううん、これから千津と卜部ちゃんのご飯作らなきゃ」
香はごまかしてテレビ番組をオフにした。一階から談笑が聞こえた。恐らく千津も帰ってきているのだろう。香は足早に部屋を後にした。
そう馬鹿にした時期もあっただろう。鬼は頭に二本の角を持ち、口に牙と指に鋭い爪、乱れた頭髪、腰に動物の毛皮をまとっている。伝説上の生き物だ。
だが、現代――二〇七八年には鬼が回帰している。なぜか。一説にはとある国の生物兵器で感染した。一説には地球温暖化で人間が進化したなど。研究家達によって今もなお議論されている。
鬼を馬鹿にしていた時代は去る。自分の変化に怯えながら生活する者、気にしない者、討伐する者、鬼になり家族から離れる者。色々だ。そして、討伐者でありながら鬼に感染した者達がいた。彼らは【クウハク】と呼ばれ下級都市に異動になった。大人も子供も等しく、犯罪をおこした鬼を討伐する。同胞殺しと呼ばれるようになる。
「このテレビ番組おかしいよ。同胞殺しって、人も人を殺してるじゃん。私らだけが特別じゃないってーの」
不満を口にするのは茶色のカーディガンとジーンズを着ている卜部晶子(うらべあきこ)。茶髪に一本の角、指の爪にはマニュキュアが描かれている。
隣にいた立花香(たちばなこう)は卜部をたしなめる。
「卜部ちゃん、悪く言わないの」
「香さんの優しさには頭上がらないけどさ?。そう言えば、香さんさ」
「なに?」
卜部は香を上から下まで見降ろす。
香は上に古着、下にカーゴパンツを着ていた。角はねずみ色の頭髪に隠れて見えない。
「花も恥じらう乙女が地味な恰好でさ! 私心配なのよ」
「……。卜部ちゃんも若いよ?」
「私は二十二歳だし女捨ててるからいいの。でも、香さんは十五歳なのに……勿体ない。こう、学生なんだからスカートでも履けばいいのに」
「卜部ちゃん、なんだかオヤジくさいよ」
「ガーン。ううっ……オヤジってのはさすがに。……ひどい」
涙ぐむ卜部。香は慌てて謝った。
「ごめんなさい。そんなつもりはなくって。あ、1階の冷蔵庫に抹茶こんにゃくあるよ。千津(ちづ)が買ったやつ」
「えっ!? マジ感謝――お子さんにはホント助かるよ!」
「行ってらっしゃい」
音速を駆け抜けて卜部は走り去った。
エサでごまかす。香は一人ほくそ笑んだ。
「卜部ちゃんは抹茶こんにゃくを好きなんだよね」
『私達は――、鬼を許してはならない!!』
テレビから大罵声を浴び、香は再びテレビに視線を戻す。
『鬼の影響で不況は直りません。排除すべきです』
『なぜ鬼は私達から生活を奪うんだ!』
口々にアナウンサーやリポーターから不満が飛び交った。
香は黙って聴いていた。諦念なのか、罪悪感なのかは分からない。
『だが――、子どもは無実だ。鬼よ、子どもだけは救え』
それを聞いて、香はピクリと肩を震わせた。
親が鬼なら子も鬼か――。それは違う。もともと正真正銘の鬼はいないのだ。元の身体は人間。人間から生まれるのは人間。鬼に感染しても人の子どもが生まれる。
子どもに貴賎なしと保護欲を持つ人間達、【人間愛護の絆】は勝手に鬼から奪う。
言葉でおどし、強引に奪い、金で交渉する者達。
また、子どもは人間のコミュニティーで生活した方がいいと選択した鬼もいる。我が子を想うなら幸せな所で、差別されない所でと。
香は一人の子どもを持つ親として、この問題は心配だ。イジメを考える親なら自分の元に置かない。香もそう思う。だが、娘の千津からは一緒にいたいと言われている。
「ううん、これから千津と卜部ちゃんのご飯作らなきゃ」
香はごまかしてテレビ番組をオフにした。一階から談笑が聞こえた。恐らく千津も帰ってきているのだろう。香は足早に部屋を後にした。
後書き
作者:櫻井樹翠 |
投稿日:2010/10/08 11:08 更新日:2010/10/08 15:56 『ココに空白はアラズ』の著作権は、すべて作者 櫻井樹翠様に属します。 |
目次 |
読了ボタン