作品ID:440
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武器の名前で呼び合おう!
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
急行!? 高等部的見学旅行!!〈7泊8日〉
前の話 | 目次 | 次の話 |
そのとき、私立ヒイラギ学園高等部1年A組、麻生 弓〈あそう ゆみ〉はキレていた。
キレている弓を微笑んだまま、見ているのは明るいブラウンの長髪が特徴的な弓のクラスメイトでもある村森〈むらもり〉ユキ。
対照的に、溜息をついて立っているのは弓の天敵であり、幼馴染である月波 槍〈つきなみ そう〉。
そして槍のクラスメイト、堀咲 椎奈〈ほりさき しいな〉は弓を宥めている。普段ならば、この役割はユキの役割なのだが、ユキは座ったまま。
実は、この4人の他にも弓の敵である、二卵性双生児が居たりするのだが……なぜかその姿は見えない。
まあ、見えないほうが弓にとっては気が楽らしかった。
弓がキレている原因、それは約1時間前に遡る――。
現在から1時間前。
弓は私立ヒイラギ学園に登校後、自身のクラスである1年A組に入るとユキから1枚のプリントを手渡された。
ショルダーバッグ〈青〉を下げたまま、弓は自身の席まで歩く。
歩きながらプリントに目を通し、通し終えた後……弓のキレてはいけない部分がキレた。
「…………ちょっと、職員室行ってくる」
笑っているが目は笑っていない弓に慌ててクラスの女子が動く。
職員室に行かすまいと止めに入る女子の顔も必死だ。
「何? 邪魔すんの?」
キレている弓を止める事ができるのは、このクラスで否。
この私立ヒイラギ学園においてただ一人のみ。
「弓、いい加減にしないとどこかの幼馴染とどこかの二卵性双生児を呼ぶからね」
アルトの声がA組に響いた。
声の主は〈弓を除く〉クラス全員で確認したが……そこに居たのは弓の親友である、
村森 ユキであった。
さすがに、幼馴染と二卵性双生児を呼ばれるのは精神的に困るのか弓はぶるぶると震えながら後方に居るユキを振り返る。
「え、えーと……」
真っ青になりながら弓はユキの怒りを静めようと考える。
「弓。分かったから。幼馴染と二卵性双生児は呼ばないけど、何で急に職員室行こうって決めたの?」
その考えを止めたのは、ユキ。
だがその声にはユキのソプラノが戻っていた。
「……ユキ、このプリント見なかったの?」
「さっき、先生が来てプリントを渡して戻ってったから……」
「あ」
弓の表情がまた般若に近いものとなる。
眉間にシワを寄せて、ショルダーバッグを乱暴に机に置き、A組から走り去る。
行き先はもちろん、1階にある職員室。
所変わって、職員室。
朝の職員会議真っ只中だったのか、突然入ってきた弓に顔を向ける教員。
そして担任である婚期を逃した女性体育教師が小走りで弓に寄ってくる。
しかしそれに「おはようございます」とだけ返し、担任も押し返して職員室から続く校長室へと向かう。その顔は……般若そのものだったらしい。
「校長先生っ!!」
校長室の扉を勢いよく開けて、乗り込んだ弓はプリントをデスクに叩きつける。
「これ、何ですか!!」
大きな声で怒る弓はプリントを指差して、校長に訴えていた。
プリントに明朝体で書かれていた文字は。
「校長! 何で今日は、見学旅行って連絡受けてないです!!」
あの後、放送委員に頼んで全校生徒に早急に見学旅行の準備をするようにと放送を流してもらった。
もちろん、弓も急いで家に帰りスーツケースにプリントに書かれている持ち物〈必須〉を適当に入れる。衣類等を綺麗にたたんで入れるなんてそんな時間はないっ!!
他にももってっちゃいけないウォークマンの類とか、もしも幼馴染や二卵性双生児と出遭った時のために武器〈弓矢等〉を持っていく。
えーと、急ぎだからって何泊するか見てなかったな。
カーペットの上に置いたままのプリントを拾い上げる。
そして一言。
「な、7泊8日ぁ!?」
また高等部の授業時間が減るな、と思った。
私立ヒイラギ学園高等部生徒玄関前。
そこには薄いピンクに白い半袖シャツ、タータンチェックのスカートという姿の女子生徒に青に白のこちらも半袖シャツにジーンズやデニム姿の男子生徒。
この私立ヒイラギ学園では、校則が緩いため制服も一般的な制服とは異なる。
ゆえに私服校とも言われるのだ。
だが、女子生徒の中に一人だけ、タータンチェックのスカートではなくショートパンツを履いている姿があった。
名を麻生 弓。
弓の隣には親友であり貴重なストッパーである村森 ユキが座ったまま微笑んでいる。
その微笑みを視界の端っこに捉えても弓の怒りは収まらない。
〈勝手かもしれないけど、こういう旅行系は事前に報告しておきなさいよ……!〉
そうして冒頭に戻るわけだが。
「あ、せんせー。バス来たよー?」
私立ヒイラギ学園が学校行事で使うためのバス。いわゆるスクールバスというやつだ。
それを生徒の一人が見つけ、担任に告げる。
「はぁ……」
活気溢れるクラスメイト達の輪には入らず、小数メンバーで囲まれた輪に居る弓はユキに溜息をひとつついて問いかける。
「ねえ、この見学旅行。7泊8日って無茶苦茶じゃない?」
1週間の見学旅行。修学旅行でもそうそうないこのスケジュールは行き先を海外のフェルフォートで順番に進んでいくのだが、弓は急なこの旅行に違和感を感じずにはいられなかった。
〈おかしいよね……いくら勉強そっちのけで学校行事を進める学校だからって、こんなに急な行事進行だなんて考えられなかった。それに準備が全然できてない〉
そこまで思考をめぐらせて辿りついた答えはユキに確認をとらなければ安心できない答えだった。
「ゆ、ユキ、まさかさ、あいつが絡んでるなんて……」
「ありえるかも。行き先はフェルフォートでしょ? スケジュールにも姉妹校見学ってあるから、可能性としてはありえるかもね」
「……あたし、不安、だなぁ」
いつも強気な弓が呟いた弱音。
それにユキは微笑みを崩さず、答える。
「大丈夫。何かあったら私が居る。私も頑張る。だから弓は弓のペースで頑張る」
ユキのソプラノが響いた直後、バスが弓たちの前に停まった。
「う、うるさい……」
スクールバスの中で騒ぐ高等部1年A組生徒たちの声に耳を塞ぎながら、隣に座る幼馴染の少年に声をかける。
「槍、姉妹校って」
「私立ヒイラギ学園フェルフォート校……」
「……知ってたんだ」
「勿論。ただ、フェルフォート校に行ったからって何があるわけじゃないしな」
「冷静だよね、槍はいつも」
「理由」
首をかしげて、弓は窓に向けていた顔を幼馴染の月波 槍に向ける。
「理由?」
「俺が弓やユキ、柊の双子をこの学園に連れてきた、引き抜いた理由」
そこで弓は先日の中間テストin鬼ごっこを思い出した。
その終盤で弓は槍に求めたんだっけ。
「理由、教えろって」
「そう。その理由。やっと、まとまったよ」
「そっか」
「聞かないんだ?」
「聞く必要性がないからね」
「ならいいけど」
「ねえ槍」
「何」
「あたし、ヒイラギ学園に来てよかった、って本当に思ったことってないかもしれないんだ」
「ふーん」
「だから、きっとこんなに騒がしい賑やかなヒイラギ学園でも来てよかったって思えないのに、あいつが居るフェルフォート校に居たら……あたし、今ごろこんなに元気出せなかったんじゃないかな?」
「……」
「あたし、今までずっとどうしてって槍に対して思ってた。
今までうまくいっていたのに。けど、それはあたしだけの考えで、槍や他の人からしてみれば多分うまくなんていってないんじゃないかなっていう結論に辿りついたんだ」
確かに弓も自覚しているように、私立ヒイラギ学園フェルフォート校での麻生 弓という少女はどこか暗い部分を背負っていた。
その部分を他人に知られないように必死で回りとの親交を深めようとしていた。
だが必死さが逆に槍やユキ、二卵性双生児たちに知られてしまった。
〈そして、あたし達は強制的に日本校へと移った……〉
弓が日本校へと移ったきっかけがフェルフォート校に居る「あいつ」なのだ。
もしかしたら今回、姉妹校見学で出会うかもしれない。
それでも、弓は決めた。
「槍。あたしね。決めたんだ
……今度こそ、あいつに言ってやるんだ。
でもそれは槍にも内緒。ユキにも、二卵性双生児にもね?」
苦笑いを残して、弓は窓へと顔を向ける。
騒がしさというBGMを耳にしながら、弓はゆるゆると両目を閉じた。
キレている弓を微笑んだまま、見ているのは明るいブラウンの長髪が特徴的な弓のクラスメイトでもある村森〈むらもり〉ユキ。
対照的に、溜息をついて立っているのは弓の天敵であり、幼馴染である月波 槍〈つきなみ そう〉。
そして槍のクラスメイト、堀咲 椎奈〈ほりさき しいな〉は弓を宥めている。普段ならば、この役割はユキの役割なのだが、ユキは座ったまま。
実は、この4人の他にも弓の敵である、二卵性双生児が居たりするのだが……なぜかその姿は見えない。
まあ、見えないほうが弓にとっては気が楽らしかった。
弓がキレている原因、それは約1時間前に遡る――。
現在から1時間前。
弓は私立ヒイラギ学園に登校後、自身のクラスである1年A組に入るとユキから1枚のプリントを手渡された。
ショルダーバッグ〈青〉を下げたまま、弓は自身の席まで歩く。
歩きながらプリントに目を通し、通し終えた後……弓のキレてはいけない部分がキレた。
「…………ちょっと、職員室行ってくる」
笑っているが目は笑っていない弓に慌ててクラスの女子が動く。
職員室に行かすまいと止めに入る女子の顔も必死だ。
「何? 邪魔すんの?」
キレている弓を止める事ができるのは、このクラスで否。
この私立ヒイラギ学園においてただ一人のみ。
「弓、いい加減にしないとどこかの幼馴染とどこかの二卵性双生児を呼ぶからね」
アルトの声がA組に響いた。
声の主は〈弓を除く〉クラス全員で確認したが……そこに居たのは弓の親友である、
村森 ユキであった。
さすがに、幼馴染と二卵性双生児を呼ばれるのは精神的に困るのか弓はぶるぶると震えながら後方に居るユキを振り返る。
「え、えーと……」
真っ青になりながら弓はユキの怒りを静めようと考える。
「弓。分かったから。幼馴染と二卵性双生児は呼ばないけど、何で急に職員室行こうって決めたの?」
その考えを止めたのは、ユキ。
だがその声にはユキのソプラノが戻っていた。
「……ユキ、このプリント見なかったの?」
「さっき、先生が来てプリントを渡して戻ってったから……」
「あ」
弓の表情がまた般若に近いものとなる。
眉間にシワを寄せて、ショルダーバッグを乱暴に机に置き、A組から走り去る。
行き先はもちろん、1階にある職員室。
所変わって、職員室。
朝の職員会議真っ只中だったのか、突然入ってきた弓に顔を向ける教員。
そして担任である婚期を逃した女性体育教師が小走りで弓に寄ってくる。
しかしそれに「おはようございます」とだけ返し、担任も押し返して職員室から続く校長室へと向かう。その顔は……般若そのものだったらしい。
「校長先生っ!!」
校長室の扉を勢いよく開けて、乗り込んだ弓はプリントをデスクに叩きつける。
「これ、何ですか!!」
大きな声で怒る弓はプリントを指差して、校長に訴えていた。
プリントに明朝体で書かれていた文字は。
「校長! 何で今日は、見学旅行って連絡受けてないです!!」
あの後、放送委員に頼んで全校生徒に早急に見学旅行の準備をするようにと放送を流してもらった。
もちろん、弓も急いで家に帰りスーツケースにプリントに書かれている持ち物〈必須〉を適当に入れる。衣類等を綺麗にたたんで入れるなんてそんな時間はないっ!!
他にももってっちゃいけないウォークマンの類とか、もしも幼馴染や二卵性双生児と出遭った時のために武器〈弓矢等〉を持っていく。
えーと、急ぎだからって何泊するか見てなかったな。
カーペットの上に置いたままのプリントを拾い上げる。
そして一言。
「な、7泊8日ぁ!?」
また高等部の授業時間が減るな、と思った。
私立ヒイラギ学園高等部生徒玄関前。
そこには薄いピンクに白い半袖シャツ、タータンチェックのスカートという姿の女子生徒に青に白のこちらも半袖シャツにジーンズやデニム姿の男子生徒。
この私立ヒイラギ学園では、校則が緩いため制服も一般的な制服とは異なる。
ゆえに私服校とも言われるのだ。
だが、女子生徒の中に一人だけ、タータンチェックのスカートではなくショートパンツを履いている姿があった。
名を麻生 弓。
弓の隣には親友であり貴重なストッパーである村森 ユキが座ったまま微笑んでいる。
その微笑みを視界の端っこに捉えても弓の怒りは収まらない。
〈勝手かもしれないけど、こういう旅行系は事前に報告しておきなさいよ……!〉
そうして冒頭に戻るわけだが。
「あ、せんせー。バス来たよー?」
私立ヒイラギ学園が学校行事で使うためのバス。いわゆるスクールバスというやつだ。
それを生徒の一人が見つけ、担任に告げる。
「はぁ……」
活気溢れるクラスメイト達の輪には入らず、小数メンバーで囲まれた輪に居る弓はユキに溜息をひとつついて問いかける。
「ねえ、この見学旅行。7泊8日って無茶苦茶じゃない?」
1週間の見学旅行。修学旅行でもそうそうないこのスケジュールは行き先を海外のフェルフォートで順番に進んでいくのだが、弓は急なこの旅行に違和感を感じずにはいられなかった。
〈おかしいよね……いくら勉強そっちのけで学校行事を進める学校だからって、こんなに急な行事進行だなんて考えられなかった。それに準備が全然できてない〉
そこまで思考をめぐらせて辿りついた答えはユキに確認をとらなければ安心できない答えだった。
「ゆ、ユキ、まさかさ、あいつが絡んでるなんて……」
「ありえるかも。行き先はフェルフォートでしょ? スケジュールにも姉妹校見学ってあるから、可能性としてはありえるかもね」
「……あたし、不安、だなぁ」
いつも強気な弓が呟いた弱音。
それにユキは微笑みを崩さず、答える。
「大丈夫。何かあったら私が居る。私も頑張る。だから弓は弓のペースで頑張る」
ユキのソプラノが響いた直後、バスが弓たちの前に停まった。
「う、うるさい……」
スクールバスの中で騒ぐ高等部1年A組生徒たちの声に耳を塞ぎながら、隣に座る幼馴染の少年に声をかける。
「槍、姉妹校って」
「私立ヒイラギ学園フェルフォート校……」
「……知ってたんだ」
「勿論。ただ、フェルフォート校に行ったからって何があるわけじゃないしな」
「冷静だよね、槍はいつも」
「理由」
首をかしげて、弓は窓に向けていた顔を幼馴染の月波 槍に向ける。
「理由?」
「俺が弓やユキ、柊の双子をこの学園に連れてきた、引き抜いた理由」
そこで弓は先日の中間テストin鬼ごっこを思い出した。
その終盤で弓は槍に求めたんだっけ。
「理由、教えろって」
「そう。その理由。やっと、まとまったよ」
「そっか」
「聞かないんだ?」
「聞く必要性がないからね」
「ならいいけど」
「ねえ槍」
「何」
「あたし、ヒイラギ学園に来てよかった、って本当に思ったことってないかもしれないんだ」
「ふーん」
「だから、きっとこんなに騒がしい賑やかなヒイラギ学園でも来てよかったって思えないのに、あいつが居るフェルフォート校に居たら……あたし、今ごろこんなに元気出せなかったんじゃないかな?」
「……」
「あたし、今までずっとどうしてって槍に対して思ってた。
今までうまくいっていたのに。けど、それはあたしだけの考えで、槍や他の人からしてみれば多分うまくなんていってないんじゃないかなっていう結論に辿りついたんだ」
確かに弓も自覚しているように、私立ヒイラギ学園フェルフォート校での麻生 弓という少女はどこか暗い部分を背負っていた。
その部分を他人に知られないように必死で回りとの親交を深めようとしていた。
だが必死さが逆に槍やユキ、二卵性双生児たちに知られてしまった。
〈そして、あたし達は強制的に日本校へと移った……〉
弓が日本校へと移ったきっかけがフェルフォート校に居る「あいつ」なのだ。
もしかしたら今回、姉妹校見学で出会うかもしれない。
それでも、弓は決めた。
「槍。あたしね。決めたんだ
……今度こそ、あいつに言ってやるんだ。
でもそれは槍にも内緒。ユキにも、二卵性双生児にもね?」
苦笑いを残して、弓は窓へと顔を向ける。
騒がしさというBGMを耳にしながら、弓はゆるゆると両目を閉じた。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/10/19 17:24 更新日:2010/10/19 17:24 『武器の名前で呼び合おう!』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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