作品ID:481
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武器の名前で呼び合おう!
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
急行!? 高等部的見学旅行!!〈7泊8日〉part2
前の話 | 目次 | 次の話 |
コンクリートで覆われた地面を革靴で鳴らして歩く少女がフェルフォートという国に居た。
レザージャケットから折りたたみ式ではない携帯電話を取り出し、耳にあてる。
数回のコール音の後に相手は応じた。
ブラウンと黒のツートンカラーを持った少女はどこかあの二卵性双生児と顔立ちが似ていた。
フェルフォート。この国の中心部に私立ヒイラギ学園のフェルフォート校はある。
その校門前で私立ヒイラギ学園日本校高等部1年A組、麻生 弓は溜息をこっそりとついた。
だが溜息がばれていた。
ばれたのは二卵性双生児と幼馴染。
柊 詩穏〈ひいらぎ しおん〉と柊 琥音〈くおん〉、そして月波 槍。
その3人にばれ、弓の顔は先程よりも暗いものになる。
……この3人に構ってる暇なんてないし……。
「私立ヒイラギ学園日本校、高等部1年A組の皆さん、はじめまして。
私がこの私立ヒイラギ学園フェルフォート校の学園長、哉草七希と申します」
意外にも、フェルフォート校の学園長は日本人だった。
それは弓の親友でもありクラスメイトである村森 ユキも同じだったらしい。ブラウンの長い前髪から覗く両目が見開かれている。
しかし幼馴染である槍は知っていたらしく、平然と立っている。
〈いくら、ヒイラギ学園が日本校を先に建てられてそれからフェルフォートにも建てられたにしても……。普通、フェルフォートならフェルフォートの人がやりゃぁいいんじゃないの?〉
いい加減、フェルフォート校の学園長、哉草 七希〈かなくさ ななき〉の説明にも飽きてきて弓は隣に立つユキに声をかける。
「久しぶりじゃない? 哉草学園長に会うの」
「え、そうなの? 私は会ったことないけど……?
それに、フェルフォート校の学園長が日本人だなんて知らなかったし……」
この哉草 七希という女性はポニーテールに縛った金髪と意思の強そうな青い両目が特徴的だ。
そして特徴的なこの外見を持っているにもかかわらず、異常に存在感が薄い女性でもある。
そのため、あまり学園長室からも出ず生徒たちに会うのもなかなかないらしい。もしかしたら教師とも会う機会すらないのかもしれない。
よってだ。
この哉草 七希がフェルフォート校の学園長である事を教師以外ではほとんど知らない者が大部分を占める。皆、フェルフォート校の学園長はフェルフォート人がやるものと思っているため、先ほどのユキのように目を見開くということになるわけだ。
しかし、弓はこの哉草 七希に会っている。
それは約2年前。弓がまだ中学3年のときだ。
そう。ユキや柊双子と共に日本校へと移るとき、学園長に挨拶と説明を受けたとき。
そのときに弓は哉草学園長に会っている。
そのことを知っているのは弓本人と幼馴染の槍、学園長しかいない。
「お久しぶりです、麻生さん」
「こちらこそ。お久しぶりです。2年前、ですよね? 最後に会ったのは」
「そう、なりますね。どうです? 日本校は」
「どうもなにも、騒がしくって静かなフェルフォート校が羨ましいぐらいですよ」
学園長である哉草 七希と話す弓の最後の言葉は嘘である。
それを見抜かれたのか間をおいて七希が訂正する。
「残念ですが、それはちょっと違うんじゃないですか?」
七希の言葉に僅かながらも目を見開く弓に七希は苦笑する。
「本当に残念です。麻生弓という運動に関しては何も文句をいえない少女、村森ユキという長槍、国語、英語に関しては飛びぬけている少女、そして」
そこで七希は言葉を切った。まるで、弓に言葉の続きを求めるように。
「……月波槍。ユキよりも長槍の扱いに長け、実際の学力は此処、フェルフォート校では誰も及ばなかった……」
「まさに、最高の人材です。しかし彼はフェルフォート校に居る事を拒んだ」
弓の回答に七希は弓だけ別行動という名目で学園長室へと招待した。
「彼ほどの人材が、なぜ貴女や村森ユキ、そして柊の双子を連れて日本校へと移ったのかお分かりですか?」
残念ながら、弓は槍よりも頭の面では劣るため、彼の考える事などわかるはずもない。
「分かるわけない。そんな表情ですね」
「槍は、月波槍は、私が知っている範囲内でも頭に関しては結構いいほうだと思うので」
「それでも貴女には分かっているはず。彼が日本校へと移ったのを。その理由を」
実を言うと、此処で先ほど、槍に理由を聞かなかったのが失敗だと思っていた。
彼の考える事は弓にはわからない。けれど欠片ぐらいなら分かる。
「……学園長。あたし、やっぱり日本校に移ってよかったです」
槍は。月波 槍はきっと麻生 弓を救ってくれた。
なぜか、そう思える。
「やっぱり来たくなかったな」
「弓はそればっかり。2年前のクラスメイトにも会えるかもなんだよ?」
「ごめん。永遠に会いたくないクラスメイトも居る」
「そんなこと言ったらダメだよ」
ロングブラウンを揺らし、微笑むユキは最近、弓の心の癒しになっている。
「あたしは、別に……ただ本当に会いたくないだけ」
「誰に?」
「……ユキの意地悪」
撤回。やっぱり癒しなんかじゃなかった。
ちょっとだけユキから離れるとユキが声をかけてきた。
「弓。私ね、フェルフォートでずっと弓が避けられてるの、見てきたんだよ」
「……」
「でもね、私、何でだろう。助けようなんて思わなかったんだ」
「……」
「だって、私の、私たちが知ってる麻生弓って、すっごく強かったから」
冗談なんかじゃないって付け加えるユキを視界の端に捉えて、未だに廊下を行進し続けるA組の後ろでダラダラと歩く。
「でも、違った」
ロングブラウンが止まった。
不思議に思い、後ろを振り返る。
そこには。
「麻生弓は精神的にも強くって、でも弱かった、普通の人間だってこと」
そこには満面の笑みを浮かべる弓が信頼する友人、村森 ユキが居た。
「うんうん。大丈夫。
こっちは準備できてるからさ」
レザージャケットを羽織った少女が革靴をコンクリートに鳴らして歩く。
ブラウンと黒が混ざった髪を持つ少女。
名を柊 羽奈〈はな〉という。
苗字から分かるように、柊 詩穏、柊 琥音の二卵性双生児の姉である。
羽奈は、携帯電話を握りしめて、笑みを浮かべていた。
羽奈の目の前には、私立ヒイラギ学園フェルフォート校があった。
「来てるかなー?
麻生弓ちゃんと愉快な仲間達ぃ」
愉しげに笑う羽奈の両目は18という年齢に合わず、キラキラと輝いていた。
レザージャケットから折りたたみ式ではない携帯電話を取り出し、耳にあてる。
数回のコール音の後に相手は応じた。
ブラウンと黒のツートンカラーを持った少女はどこかあの二卵性双生児と顔立ちが似ていた。
フェルフォート。この国の中心部に私立ヒイラギ学園のフェルフォート校はある。
その校門前で私立ヒイラギ学園日本校高等部1年A組、麻生 弓は溜息をこっそりとついた。
だが溜息がばれていた。
ばれたのは二卵性双生児と幼馴染。
柊 詩穏〈ひいらぎ しおん〉と柊 琥音〈くおん〉、そして月波 槍。
その3人にばれ、弓の顔は先程よりも暗いものになる。
……この3人に構ってる暇なんてないし……。
「私立ヒイラギ学園日本校、高等部1年A組の皆さん、はじめまして。
私がこの私立ヒイラギ学園フェルフォート校の学園長、哉草七希と申します」
意外にも、フェルフォート校の学園長は日本人だった。
それは弓の親友でもありクラスメイトである村森 ユキも同じだったらしい。ブラウンの長い前髪から覗く両目が見開かれている。
しかし幼馴染である槍は知っていたらしく、平然と立っている。
〈いくら、ヒイラギ学園が日本校を先に建てられてそれからフェルフォートにも建てられたにしても……。普通、フェルフォートならフェルフォートの人がやりゃぁいいんじゃないの?〉
いい加減、フェルフォート校の学園長、哉草 七希〈かなくさ ななき〉の説明にも飽きてきて弓は隣に立つユキに声をかける。
「久しぶりじゃない? 哉草学園長に会うの」
「え、そうなの? 私は会ったことないけど……?
それに、フェルフォート校の学園長が日本人だなんて知らなかったし……」
この哉草 七希という女性はポニーテールに縛った金髪と意思の強そうな青い両目が特徴的だ。
そして特徴的なこの外見を持っているにもかかわらず、異常に存在感が薄い女性でもある。
そのため、あまり学園長室からも出ず生徒たちに会うのもなかなかないらしい。もしかしたら教師とも会う機会すらないのかもしれない。
よってだ。
この哉草 七希がフェルフォート校の学園長である事を教師以外ではほとんど知らない者が大部分を占める。皆、フェルフォート校の学園長はフェルフォート人がやるものと思っているため、先ほどのユキのように目を見開くということになるわけだ。
しかし、弓はこの哉草 七希に会っている。
それは約2年前。弓がまだ中学3年のときだ。
そう。ユキや柊双子と共に日本校へと移るとき、学園長に挨拶と説明を受けたとき。
そのときに弓は哉草学園長に会っている。
そのことを知っているのは弓本人と幼馴染の槍、学園長しかいない。
「お久しぶりです、麻生さん」
「こちらこそ。お久しぶりです。2年前、ですよね? 最後に会ったのは」
「そう、なりますね。どうです? 日本校は」
「どうもなにも、騒がしくって静かなフェルフォート校が羨ましいぐらいですよ」
学園長である哉草 七希と話す弓の最後の言葉は嘘である。
それを見抜かれたのか間をおいて七希が訂正する。
「残念ですが、それはちょっと違うんじゃないですか?」
七希の言葉に僅かながらも目を見開く弓に七希は苦笑する。
「本当に残念です。麻生弓という運動に関しては何も文句をいえない少女、村森ユキという長槍、国語、英語に関しては飛びぬけている少女、そして」
そこで七希は言葉を切った。まるで、弓に言葉の続きを求めるように。
「……月波槍。ユキよりも長槍の扱いに長け、実際の学力は此処、フェルフォート校では誰も及ばなかった……」
「まさに、最高の人材です。しかし彼はフェルフォート校に居る事を拒んだ」
弓の回答に七希は弓だけ別行動という名目で学園長室へと招待した。
「彼ほどの人材が、なぜ貴女や村森ユキ、そして柊の双子を連れて日本校へと移ったのかお分かりですか?」
残念ながら、弓は槍よりも頭の面では劣るため、彼の考える事などわかるはずもない。
「分かるわけない。そんな表情ですね」
「槍は、月波槍は、私が知っている範囲内でも頭に関しては結構いいほうだと思うので」
「それでも貴女には分かっているはず。彼が日本校へと移ったのを。その理由を」
実を言うと、此処で先ほど、槍に理由を聞かなかったのが失敗だと思っていた。
彼の考える事は弓にはわからない。けれど欠片ぐらいなら分かる。
「……学園長。あたし、やっぱり日本校に移ってよかったです」
槍は。月波 槍はきっと麻生 弓を救ってくれた。
なぜか、そう思える。
「やっぱり来たくなかったな」
「弓はそればっかり。2年前のクラスメイトにも会えるかもなんだよ?」
「ごめん。永遠に会いたくないクラスメイトも居る」
「そんなこと言ったらダメだよ」
ロングブラウンを揺らし、微笑むユキは最近、弓の心の癒しになっている。
「あたしは、別に……ただ本当に会いたくないだけ」
「誰に?」
「……ユキの意地悪」
撤回。やっぱり癒しなんかじゃなかった。
ちょっとだけユキから離れるとユキが声をかけてきた。
「弓。私ね、フェルフォートでずっと弓が避けられてるの、見てきたんだよ」
「……」
「でもね、私、何でだろう。助けようなんて思わなかったんだ」
「……」
「だって、私の、私たちが知ってる麻生弓って、すっごく強かったから」
冗談なんかじゃないって付け加えるユキを視界の端に捉えて、未だに廊下を行進し続けるA組の後ろでダラダラと歩く。
「でも、違った」
ロングブラウンが止まった。
不思議に思い、後ろを振り返る。
そこには。
「麻生弓は精神的にも強くって、でも弱かった、普通の人間だってこと」
そこには満面の笑みを浮かべる弓が信頼する友人、村森 ユキが居た。
「うんうん。大丈夫。
こっちは準備できてるからさ」
レザージャケットを羽織った少女が革靴をコンクリートに鳴らして歩く。
ブラウンと黒が混ざった髪を持つ少女。
名を柊 羽奈〈はな〉という。
苗字から分かるように、柊 詩穏、柊 琥音の二卵性双生児の姉である。
羽奈は、携帯電話を握りしめて、笑みを浮かべていた。
羽奈の目の前には、私立ヒイラギ学園フェルフォート校があった。
「来てるかなー?
麻生弓ちゃんと愉快な仲間達ぃ」
愉しげに笑う羽奈の両目は18という年齢に合わず、キラキラと輝いていた。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/10/27 17:37 更新日:2010/10/27 17:37 『武器の名前で呼び合おう!』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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