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作品ID:485
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White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?1色目?

目次 次の話

 4年前、だったっけ……。

 レオ争奪戦とよばれるトーナメント戦に出て、そこで初めて唯一神という名を持って産まれた少女の力を見た。

 けど、私はあの時確かに見たんだ。

 少女が持つウォークマンの液晶画面が表示した文字を。



「Now Loading……何を、読み込もうとしてたんだ?」

 私、鋼夜 春袈〈こうや はるか〉は4年前、レオ争奪戦に出場していた。

 それがきっかけともいうべきで、唯一神の名を持って産まれた少女、桐生 刹那〈きりゅう せつな〉とも出逢った。

 ……思えば。それが今の私の在り方でもあったのかもしれない。

 彼女と出逢ったからこそ、私が今、NEVという機関を脱退してまでも創ったチームを率いている理由が在る気がした。

 最初はほんの、興味からだった。

 刹那の幼馴染である紅來 璃維〈くらい りい〉から刹那の持っているウォークマンが普通のそれとは違うという情報を手に入れた。

 そうして私は実際に刹那に会いに行った。

 きっとそこから私は、新たなチームを率いる事が決定していたのだろう。



「春袈ー。どうしても繋がらないんだけどー。どうしよう……」

「あぁ、じゃあ……うー、どうしよっかなぁ……電話回線が使えないとネットも使えないんだけど……」

 このとき、春袈は困っていた。

 昨日の雷で電話回線が切られてしまったのだ。

 それにより、春袈が創ったチームメンバーとの連絡が取れなくなってしまった。

 基本、電話やメール、または不定期で行われる召集して連絡を取りあうのだが、電話、メールが使えないとなると召集するにも一苦労。

 春袈は携帯電話を持ってないし、携帯電話を持ってたとしてもNEVに気づかれちゃうし。

 今ここにいる、メンバーは非戦闘員だから携帯電話は非戦闘員たちを纏める長にしか渡してないし、長は現在此処に居ない。

 どうしよう。本当にどうしよう。参ったよ、これ。

「……。アタシ、連絡取りに行こうか?」

 頭を悩ます春袈に声をかけたのはチームのメンバーである、桃風 羽夜華〈ももかぜ はやか〉。

「リーダーだって、あまり此処、抜けれないでしょ、こんな状態じゃ」

 腕を組んでタートルネックのセーターを着こなす羽夜華は確かに、春袈に向かって言った。

 ……春袈は、鋼夜 春袈はこのチームを率いるリーダーになっていた。

 このことは既にNEVのメンバーには知れ渡っているだろう。





 春袈がNEVを脱退したのは4年前。

 紅來 璃維が悪魔として暴走したのをきっかけに、全世界で悪魔を恐れる事態が起こってしまった。

 それにより、人種格差等の現象も起こってしまい、NEVは悪魔も天使も束ねる機関として事態の収拾にあたった。

 しかし人間の情報伝達力はNEVが考えるほど低いものではなかった。

 NEVが対処する前に人間たちが悪魔を殲滅するという理由で争いを引き起こした。

 そうして、結局NEVが争いを止める形で終わった。

 NEVを脱退したのは、これからはNEV以外の悪魔と天使を束ねる機関が必要だと思ったから。

 だから、春袈が新たなチームを作る必要があった。

 だけど悪魔や天使をチームに入れるわけにはいかない。

 NEVは両方を混ぜている。人間は数少ない。

 だから、春袈は人間のみにした。

 人間の視点で悪魔、天使を見る。

 自らも天使だが、それは変える事ができない。

 ならば、他の人間たちの視点で見るしかない。

 だから代わりに春袈は天使としての視点で見る。

 そうすればきっと、まだ続く悪魔と天使、そして人間の差別なんて区別なんてなくなると確信している春袈は、チームのリーダーとなってはじめての危機に焦っていた。

「うーん、羽夜華には任せられないかな……一応、非戦闘員で登録してるけど実際は私と同じくらい実践経験あるんだし……もしもの事態に備えて羽夜華はここに居てほしい」

「でも、もしもの事態って、そうなってもリーダー居ますよね?」

「だから、私が動けなくなったとき」

「……アタシ、やっぱり行きますね」

「羽夜華。ダメ」

「何でですか? アタシ、今なら絶対リーダーにも負けない。

 アタシ、確かにリーダーと同じぐらい戦闘経験あります。

 でもそれを発揮する機会ないんです。……だから今、アタシが行きます」

「羽夜華。私はね、チームリーダーとしてメンバーの安全を最重要視しないといけないの」

「それがリーダーの使命だと?」

「もちろん」

「なら、アタシ、チーム抜けますね」

「はい!?」

 羽夜華の平然とした態度に春袈は思わず羽夜華の両肩を掴んでしまう。

「は、羽夜華。どういうこと? 何? 私が頼りないと」

「違います。アタシが今分断されている他のメンバーと連絡を取り合うために、この場を離れることがリーダーの責任というならば、アタシそんなの納得できません。

 でもどうしてもそうなってしまうというならば、アタシはチームを抜けます」

「……羽夜華。あなたがチームを思う気持ちは分かる」

「分かるなら、分かってくださるならどうしてアタシをこの場から離れさせないんですか?」

「……NEVに見つかれば、羽夜華でも無事ではすまない」

「NEVなんて怖くないです。今は連絡を取り合うことが重要じゃないんですか?」

 最もすぎる羽夜華の意見に春袈は言葉がつまる。

「……羽夜華。どうしても行きたいの?」

 最後の問いかけ。

「はい。アタシしか行けないでしょう?」

 満面の笑みで言われてしまった。

「……10」

 春袈の口から零れた数字。

「メンバーは全部で10の国と都市に散らばってる。

 羽夜華1人だと絶対、10も回れないよ」

「どこですか?」

「まずこの国、ヴィルヴェスタ。ここには推定100人のメンバーが居る。

 フェルフォートにも居る。ここは多くても7人。

 他にも戦場都市なんてとこにも居るんだ。それも20人も居る。

 魔法都市だってあるし……情報都市は安全だけど、他にも5つもあるんだ。

 こんなに回りきれる?」

「……」

「ほら。無言になった」

 とてもじゃないが、資金のことも考えると羽夜華1人では10も回れない。

 悔しそうに顔を歪ませる羽夜華は、思いついたように真っ黒な長い髪を耳にかけ、手を打つ。

「でもフェリアンヴェスピュリア大公国ってありましたよね?」

 羽夜華の口から飛び出た国名。

 それは春袈にとって、忘れる事のできない名前。

 大切な人たちが今も住んでいる国――。

「そ、そこがどうした?」

「リーダー、以前はフェリアンヴェスピュリア大公国に住んでいたと聞きました」

「……それがこの1件と何の関係が?」

「アタシ、フェリアンヴェスピュリア大公国の国王に協力を仰ごうと思います」

 もちろん、リーダーの判断に任せますけど、と付け加えた羽夜華の表情は、笑みは消え無表情に近いものになっていた。

「フェリアン、ヴェスピュリア大公国に協力を仰ぐ事はできない」

「NEVの本拠地でもあるからですか?」

 羽夜華の言葉に春袈の両肩が震える。

「NEVは、関係ない」

「なら協力してもらいましょう。アタシ達は別に犯罪組織じゃない。

 むしろ、人種差別や区別をなくそうと動いているし、他の社会福祉にも貢献してる。

 別に隠すことないと思いますけど」

 そうじゃない、と春袈は心中でうめいた。

「違う。NEVがどうとか、私たちがどうとか、そういうんじゃない」

 フェリアンヴェスピュリアにはもう、戻れない。

 4年前、約束してみた。

 春袈と桐生 刹那、他にもNEVのメンバーと。

 その約束、忘れるわけにはいかない。

「私情じゃないというのですか?」

「少しだけ私情は含んでるけど……でも大部分は違う」

 春袈の意思を含んだ、その言葉が終わった直後、タイミングを計ったように春袈たちが居るコテージが揺れた。



〈NEV……?〉

 元NEV隊員である春袈は、少しだけ感じられる殺気に少しだけ覚えがあった。

〈もしかして、鋭意部長!?〉

 驚きつつも、春袈はチームメンバーを必死で逃がそうとする。

 きっと、NEVの狙いはチーム全体。もしかしたらNEVをやめた春袈かもしれない。それとも。

〈人種差別をなくそうとしているチームのリーダーである鋼夜 春袈を狙っているのかも〉

 苦笑いの形に顔を歪ませ、春袈はメンバーを逃がしながらも自分も逃げる。

「羽夜華?」

 タートルネックのセーターを着こんだ少女が春袈の自室で佇んでいた。

「リーダー。ごめんなさい。勝手に写真を見ました」

 ほぼ直角で体を折り曲げた羽夜華が、謝る。

「この写真だけ日付が書かれてなくって、不思議に思って勝手に見てしまいました」

 春袈は思い出の写真を日付もつけてアルバムにしている。

 だが羽夜華が持っている写真は確かに日付をつけていない。

「この写真に写っている人、桐生刹那ですよね?」

 羽夜華の言葉に含まれた名前は、春袈に両耳に伝わる爆音すらも超える衝撃を受けた。







後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2010/10/28 17:40
更新日:2010/10/28 17:40
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

目次 次の話

作品ID:485
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