作品ID:489
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武器の名前で呼び合おう!
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
急行!? 高等部的見学旅行!!(7泊8日)part3
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私立ヒイラギ学園フェルフォート校には行きたくなかった。
麻生 弓がそう思うのは、弓が中学1年生のときに遡る。
「……彼方。ユキを護ってくれる?」
唐突に投げかけられた問いに自分、日向 彼方〈ひゅうが かなた〉は首を傾げる。
「ユキを護る?」
「うん。あたしは自分で自分を護れるけど、ユキはそうじゃないから」
いつも村森 ユキという少女と一緒に居るクラスメイト、麻生 弓が言葉を紡ぐ。
その言葉にも首をかしげた。
「……でもユキだって強い」
自分の知る、という限定条件で言えば……村森 ユキは長槍の扱いに長け、学力も国語、英語を除けば並
にはできる。その代わり、国語と英語は5段階評価で5か4をとるぐらいにはできる。
対して麻生 弓は運動神経こそいいものの、学力はあまりいいものではない。
体育は点数とれるんだけどな、と自分が思ったとき弓が自分に問いかける。
「ユキは、本当に強いと思う?」
「それを言うなら弓も」
「違う。あたしは自分で自分を護れる。けどユキにはできない」
「弓にはできて、ユキにできないっておかしくない?」
こういっては酷いかもしれないが、正直、総合バランスでは弓よりユキのほうがいい。
それなのに、弓にはできてユキにはできない。
「あたし、多分、学校に来る事が楽しくないんだと思う」
いつも笑っている弓から言われた言葉は、自分に衝撃をあたえるには十分。
「じゃ、なんで弓は笑ってる?」
「……笑ってないと、あたしが笑ってないと、クラスも暗くなっちゃうでしょ?」
満面の笑みで自分に言った、少女は、やっぱり。
〈自分を護る存在は居ないと〉
きっと、そう確信していたんだと思う。
あのとき日向 彼方と一緒に居たあたしは、彼方がどう考えているかすら、ちょっとだけ分かった。
あたしを護ってくれる人は居ない。
そう思い始めたのは、フェルフォート校に通い始めてからだった。
フェルフォート校は悪くない。
けれど、やっぱりどこか居心地悪かった。
クラスの皆がっていうより、学校全体が。
皆、誰かに頼りすぎている。
誰かに、自分に、麻生 弓に頼りすぎていた。
それから、月波 槍という幼馴染の少年に連れられ、村森 ユキ、柊 詩穏、柊 琥音と一緒に日本校へと移った。
フェルフォート校とは違う、日本校での学校生活は今の麻生 弓の人格形成に対して大きな役割を担った。
皆、自分で何かをやろうとしている。毎日、1つ何かをやり遂げようとしている。
それがフェルフォート校の生徒とは違う点だった。
1人でできないのなら、2人でやる。
そういった考えもきっと、フェルフォート校では学べなかったと思う。
だから、やっと1人でできないことは2人でやると学んだ自分が今、フェルフォート校に戻ってしまっていいのだろうか、と疑問に思ってしまう。
そんな疑問すら、吹っ飛ばしたのは。
「槍?」
月波 槍。
フェルフォート校において、学力、運動に関しては誰も及ばなかった、フェルフォート校学園長に言わせれば、最高の人材。
頭を叩かれたことを怒るよりも、何よりも弓は槍に伝えなければいけない。
「ごめんなさい」
小さく、伝えた謝罪は彼に届いた。
「……」
それでも彼は黙ったまま。
「あたし、勘違いしてたかも」
フェルフォート校を去る、A組を見ながら弓はゆっくりとその後ろをついて歩く。
「あたし、ずっと何でわざわざ日本校に転入しなきゃいけないんだって、そんなの槍の勝手じゃんって思ってた。あたし達、フェルフォート校で頑張ってこうって言ってたのに。どうして? って」
ずっと勘違いしていた。
だから、槍に謝らなくてはいけない。
「槍、アリガト」
「謝る必要なんてない。
ただ、今までよりもこれから、皆と頑張っていけばいいだけ」
相変らずの低い声で言われ、弓は頷く。
「うん」
満面の笑みを浮かべ、弓はフェルフォート校を後にした。
麻生 弓がそう思うのは、弓が中学1年生のときに遡る。
「……彼方。ユキを護ってくれる?」
唐突に投げかけられた問いに自分、日向 彼方〈ひゅうが かなた〉は首を傾げる。
「ユキを護る?」
「うん。あたしは自分で自分を護れるけど、ユキはそうじゃないから」
いつも村森 ユキという少女と一緒に居るクラスメイト、麻生 弓が言葉を紡ぐ。
その言葉にも首をかしげた。
「……でもユキだって強い」
自分の知る、という限定条件で言えば……村森 ユキは長槍の扱いに長け、学力も国語、英語を除けば並
にはできる。その代わり、国語と英語は5段階評価で5か4をとるぐらいにはできる。
対して麻生 弓は運動神経こそいいものの、学力はあまりいいものではない。
体育は点数とれるんだけどな、と自分が思ったとき弓が自分に問いかける。
「ユキは、本当に強いと思う?」
「それを言うなら弓も」
「違う。あたしは自分で自分を護れる。けどユキにはできない」
「弓にはできて、ユキにできないっておかしくない?」
こういっては酷いかもしれないが、正直、総合バランスでは弓よりユキのほうがいい。
それなのに、弓にはできてユキにはできない。
「あたし、多分、学校に来る事が楽しくないんだと思う」
いつも笑っている弓から言われた言葉は、自分に衝撃をあたえるには十分。
「じゃ、なんで弓は笑ってる?」
「……笑ってないと、あたしが笑ってないと、クラスも暗くなっちゃうでしょ?」
満面の笑みで自分に言った、少女は、やっぱり。
〈自分を護る存在は居ないと〉
きっと、そう確信していたんだと思う。
あのとき日向 彼方と一緒に居たあたしは、彼方がどう考えているかすら、ちょっとだけ分かった。
あたしを護ってくれる人は居ない。
そう思い始めたのは、フェルフォート校に通い始めてからだった。
フェルフォート校は悪くない。
けれど、やっぱりどこか居心地悪かった。
クラスの皆がっていうより、学校全体が。
皆、誰かに頼りすぎている。
誰かに、自分に、麻生 弓に頼りすぎていた。
それから、月波 槍という幼馴染の少年に連れられ、村森 ユキ、柊 詩穏、柊 琥音と一緒に日本校へと移った。
フェルフォート校とは違う、日本校での学校生活は今の麻生 弓の人格形成に対して大きな役割を担った。
皆、自分で何かをやろうとしている。毎日、1つ何かをやり遂げようとしている。
それがフェルフォート校の生徒とは違う点だった。
1人でできないのなら、2人でやる。
そういった考えもきっと、フェルフォート校では学べなかったと思う。
だから、やっと1人でできないことは2人でやると学んだ自分が今、フェルフォート校に戻ってしまっていいのだろうか、と疑問に思ってしまう。
そんな疑問すら、吹っ飛ばしたのは。
「槍?」
月波 槍。
フェルフォート校において、学力、運動に関しては誰も及ばなかった、フェルフォート校学園長に言わせれば、最高の人材。
頭を叩かれたことを怒るよりも、何よりも弓は槍に伝えなければいけない。
「ごめんなさい」
小さく、伝えた謝罪は彼に届いた。
「……」
それでも彼は黙ったまま。
「あたし、勘違いしてたかも」
フェルフォート校を去る、A組を見ながら弓はゆっくりとその後ろをついて歩く。
「あたし、ずっと何でわざわざ日本校に転入しなきゃいけないんだって、そんなの槍の勝手じゃんって思ってた。あたし達、フェルフォート校で頑張ってこうって言ってたのに。どうして? って」
ずっと勘違いしていた。
だから、槍に謝らなくてはいけない。
「槍、アリガト」
「謝る必要なんてない。
ただ、今までよりもこれから、皆と頑張っていけばいいだけ」
相変らずの低い声で言われ、弓は頷く。
「うん」
満面の笑みを浮かべ、弓はフェルフォート校を後にした。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/10/29 17:25 更新日:2010/10/29 17:25 『武器の名前で呼び合おう!』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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