作品ID:493
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White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?2色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
両耳に伝わる爆音。それよりも衝撃を受けた名前。
桃風 羽夜華から伝えられた名前は、確かに鋼夜 春袈の知っている名前で。
「どうして、桐生刹那だと?」
羽夜華には刹那の姿を教えていない。
「……アタシが電子機器に関して言えば、このチームでも1番の能力をお持ちなのをお忘れですか?」
忘れてない。忘れるわけない。
NEVのデータベースも既に覗きみるぐらいに成長した羽夜華にとって、やろうと思えば世界のデータを全て見ることすらできる。
「NEVにも負けません」
まっすぐに春袈を見る両目はある種の決意を含んだ目で。
しかし、そんな目を逸らしたのは急に開けられたドアのせいだった。
「鋼夜春袈、桃風羽夜華、発見」
NEVだと確信するまでには数秒もかからなかった。
だが、春袈が言葉を発するまでに時間がかかったのは……。
「やっぱり、鋭意部長だったんですね」
春袈が唯一、きっとこの世界単位でみても敬語を使うのは、この人しか居ないと思う。
鋭意 早紀(えいい さき)という女性は、春袈よりも2つほど年上になる。
そして、春袈がNEVに入っていたとき、早紀は春袈の上司でもあった。
尊敬、すべき人でもあった。
「いやぁ、春袈がここまでのチームを創り上げるなんてねー」
爆音が鳴り響く風景が360度にわたって繰り広げられる中で、間延びしているその言葉は異常なほど浮いていた。
寒さ対策のためか、口元まで覆うベージュ色のマフラーを顎まで下げた早紀は4年前に見たときよりも大人びていた。
「捕獲するならば捕獲してください。しかし、羽夜華だけは逃すという条件で」
「うーん、それはちょっと無理っぽいなぁ」
やっぱりか、と再度納得する。
NEVのデータベースに侵入した羽夜華はNEVのデータを見たことになる。
NEVの、重要な機密を見たことになる。
そんな危険人物をNEVが放っておくわけがない。
それでも、それを1番理解している春袈でも、願った。
「私は、チームのリーダーとしてメンバーの安全を最優先する立場にあります」
「リーダーを捉えて、空中分解させるもよしってわけ?」
呆れ気味に早紀は春袈に問いかける。
「そう解釈していただいても構いません。
ただ正確に言うならば、私を捕獲する事を条件に羽夜華を逃がす、それだけです」
「……チームの存続なんて関係ないんだ」
「それはいえません。ただ、あなた方NEVは私たちが消えるまで、チームとしての機能を失うまで、しつこく攻撃してくる。
その手間を省くために私を捕獲し、羽夜華を逃がす事が1番いいと言っているだけです」
「桃風羽夜華はNEVのデータベースにも侵入した。
それを鋼夜春袈というリーダーを捕獲する事で目をつぶれってこと?」
「……そう、なります」
NEVを怖がっているのは、もしかしたら春袈なのかもしれない。
だから、ここでなるべくNEVとの衝突をなくすことが春袈にできること。
「……」
早紀が考え始め、春袈も早紀がどういった判断をするのか……。
それだけを考える。
「決めた」
早紀の判断は。
「桃風羽夜華は逃がす。しかし鋼夜春袈は捕獲する」
春袈が望んだ結末そのものだった。
「あのさ、春袈。今更だけど、本当によかったわけ?」
ベージュ色のマフラーを巻いた早紀が、本当に今更な問いかけをする。
「……羽夜華だけを逃がした事は後悔してません。
ただ、キーワードを知りたかっただけ」
「まーだ、ウォークマンのこと探ってるんだ」
「……それが、刹那との約束なんで」
両手首をロープで縛られ、春袈は自由が利かなくなっていた。
「……変わったよね、あんた」
早紀の言葉に俯いていた顔を上げる。
「4年前と比べると変わっちゃった感じ?」
「自分じゃ、変わったなんてわかりません」
「んじゃ、変わった。
なんだろう、以前は場の雰囲気に流されて自分の意見も流しちゃう感じだったんだけど、今は、場の雰囲気とか関係なく自分の意見を通しつつ、一番いい判断を最優先するというか最重要視するというか」
考えながら早紀が言った言葉に春袈は4年前の自分と今の自分を比べてみる。
「…………そう、いわれてみると……」
「でしょ? んじゃあ、そんな春袈ちゃんにチャンスっ!」
揺れるジープのハンドルから手を放し、早紀は助手席に座る春袈に向き直る。
「……安全運転はそっちのけですか、っていうか運転できたんですね、免許取ったんですか」
砂利道を走行するジープのハンドルなど関係ないといわんばかりに春袈は早紀に問いかける。
「いや、無免許」
「……」
「んなことどーでもいいからっ!
はい、じゃあチャンスタイム!
1! このまま、NEVと一緒に居るか。
2! またチームに戻って、ウォークマンの秘密を探るか!
……どっち?」
笑う早紀の表情は、22という年齢に合わず楽しげであり、春袈は。
「……3。単独でウォークマンの秘密を探る……!」
ジープの扉を体全体を使って押し開け、春袈は風が入るジープの運転席に座る早紀に宣言し――。
「すいません、せっかくのチャンスを無駄にしちゃった感じで」
苦笑いを残し、シートベルトを外して砂利道に身を投げ出した。
「あー、どうしよう。ロープぐらい、外してもらうんだった」
両手首にがっちりと縛られているロープを恨めしげに見て、春袈は呟いた。
そんな春袈を見ている姉妹が1組。
その1組に気づいた春袈が声をかける。
「あ、ちょっと! このロープを外してもらいたいんだけど、そんな逃げないでよ!!」
しかし、声をかける前に姉妹は逃げてしまった。
「いや、本当にどうしよう。ちょっと手が痛くなってきちゃったよ、どうすんの」
こんなことになるんだったら、ナイフぐらい持ってこればよかったと後悔する春袈は、背後から投げられた何かにロープを切られたと認識するまでに数秒かかった。
「鋭意部長、か」
ようやく解放された両手の痺れを取りながら、春袈はカーゴパンツのポケットから1枚の写真を取り出した。
「早く、神のウォークマンの秘密を探り出さないとね」
写真には赤髪の少女と少女の首にぶら下げられた青いメタル加工されたウォークマンが写っていた。
桃風 羽夜華から伝えられた名前は、確かに鋼夜 春袈の知っている名前で。
「どうして、桐生刹那だと?」
羽夜華には刹那の姿を教えていない。
「……アタシが電子機器に関して言えば、このチームでも1番の能力をお持ちなのをお忘れですか?」
忘れてない。忘れるわけない。
NEVのデータベースも既に覗きみるぐらいに成長した羽夜華にとって、やろうと思えば世界のデータを全て見ることすらできる。
「NEVにも負けません」
まっすぐに春袈を見る両目はある種の決意を含んだ目で。
しかし、そんな目を逸らしたのは急に開けられたドアのせいだった。
「鋼夜春袈、桃風羽夜華、発見」
NEVだと確信するまでには数秒もかからなかった。
だが、春袈が言葉を発するまでに時間がかかったのは……。
「やっぱり、鋭意部長だったんですね」
春袈が唯一、きっとこの世界単位でみても敬語を使うのは、この人しか居ないと思う。
鋭意 早紀(えいい さき)という女性は、春袈よりも2つほど年上になる。
そして、春袈がNEVに入っていたとき、早紀は春袈の上司でもあった。
尊敬、すべき人でもあった。
「いやぁ、春袈がここまでのチームを創り上げるなんてねー」
爆音が鳴り響く風景が360度にわたって繰り広げられる中で、間延びしているその言葉は異常なほど浮いていた。
寒さ対策のためか、口元まで覆うベージュ色のマフラーを顎まで下げた早紀は4年前に見たときよりも大人びていた。
「捕獲するならば捕獲してください。しかし、羽夜華だけは逃すという条件で」
「うーん、それはちょっと無理っぽいなぁ」
やっぱりか、と再度納得する。
NEVのデータベースに侵入した羽夜華はNEVのデータを見たことになる。
NEVの、重要な機密を見たことになる。
そんな危険人物をNEVが放っておくわけがない。
それでも、それを1番理解している春袈でも、願った。
「私は、チームのリーダーとしてメンバーの安全を最優先する立場にあります」
「リーダーを捉えて、空中分解させるもよしってわけ?」
呆れ気味に早紀は春袈に問いかける。
「そう解釈していただいても構いません。
ただ正確に言うならば、私を捕獲する事を条件に羽夜華を逃がす、それだけです」
「……チームの存続なんて関係ないんだ」
「それはいえません。ただ、あなた方NEVは私たちが消えるまで、チームとしての機能を失うまで、しつこく攻撃してくる。
その手間を省くために私を捕獲し、羽夜華を逃がす事が1番いいと言っているだけです」
「桃風羽夜華はNEVのデータベースにも侵入した。
それを鋼夜春袈というリーダーを捕獲する事で目をつぶれってこと?」
「……そう、なります」
NEVを怖がっているのは、もしかしたら春袈なのかもしれない。
だから、ここでなるべくNEVとの衝突をなくすことが春袈にできること。
「……」
早紀が考え始め、春袈も早紀がどういった判断をするのか……。
それだけを考える。
「決めた」
早紀の判断は。
「桃風羽夜華は逃がす。しかし鋼夜春袈は捕獲する」
春袈が望んだ結末そのものだった。
「あのさ、春袈。今更だけど、本当によかったわけ?」
ベージュ色のマフラーを巻いた早紀が、本当に今更な問いかけをする。
「……羽夜華だけを逃がした事は後悔してません。
ただ、キーワードを知りたかっただけ」
「まーだ、ウォークマンのこと探ってるんだ」
「……それが、刹那との約束なんで」
両手首をロープで縛られ、春袈は自由が利かなくなっていた。
「……変わったよね、あんた」
早紀の言葉に俯いていた顔を上げる。
「4年前と比べると変わっちゃった感じ?」
「自分じゃ、変わったなんてわかりません」
「んじゃ、変わった。
なんだろう、以前は場の雰囲気に流されて自分の意見も流しちゃう感じだったんだけど、今は、場の雰囲気とか関係なく自分の意見を通しつつ、一番いい判断を最優先するというか最重要視するというか」
考えながら早紀が言った言葉に春袈は4年前の自分と今の自分を比べてみる。
「…………そう、いわれてみると……」
「でしょ? んじゃあ、そんな春袈ちゃんにチャンスっ!」
揺れるジープのハンドルから手を放し、早紀は助手席に座る春袈に向き直る。
「……安全運転はそっちのけですか、っていうか運転できたんですね、免許取ったんですか」
砂利道を走行するジープのハンドルなど関係ないといわんばかりに春袈は早紀に問いかける。
「いや、無免許」
「……」
「んなことどーでもいいからっ!
はい、じゃあチャンスタイム!
1! このまま、NEVと一緒に居るか。
2! またチームに戻って、ウォークマンの秘密を探るか!
……どっち?」
笑う早紀の表情は、22という年齢に合わず楽しげであり、春袈は。
「……3。単独でウォークマンの秘密を探る……!」
ジープの扉を体全体を使って押し開け、春袈は風が入るジープの運転席に座る早紀に宣言し――。
「すいません、せっかくのチャンスを無駄にしちゃった感じで」
苦笑いを残し、シートベルトを外して砂利道に身を投げ出した。
「あー、どうしよう。ロープぐらい、外してもらうんだった」
両手首にがっちりと縛られているロープを恨めしげに見て、春袈は呟いた。
そんな春袈を見ている姉妹が1組。
その1組に気づいた春袈が声をかける。
「あ、ちょっと! このロープを外してもらいたいんだけど、そんな逃げないでよ!!」
しかし、声をかける前に姉妹は逃げてしまった。
「いや、本当にどうしよう。ちょっと手が痛くなってきちゃったよ、どうすんの」
こんなことになるんだったら、ナイフぐらい持ってこればよかったと後悔する春袈は、背後から投げられた何かにロープを切られたと認識するまでに数秒かかった。
「鋭意部長、か」
ようやく解放された両手の痺れを取りながら、春袈はカーゴパンツのポケットから1枚の写真を取り出した。
「早く、神のウォークマンの秘密を探り出さないとね」
写真には赤髪の少女と少女の首にぶら下げられた青いメタル加工されたウォークマンが写っていた。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/10/31 14:41 更新日:2010/10/31 14:41 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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