作品ID:633
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■灰縞 凪
White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?10.1色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
美術都市に居るチームメンバーと再会し、このまま魔法都市と呼ばれる、戦場都市の次に危険とされる都市に向かった。
だが、現在動けるメンバー、鋼夜 春袈、草花 舞葉、黒刃、桃風 羽夜華の中で戦闘経験があるのは、春袈と羽夜華のみ。
舞葉、黒刃の姉妹に至っては、基礎訓練しか行った事のない、という状況だ。
そのため、美術都市に居るメンバーに草花姉妹を任せ、春袈は草花姉妹を通じて、チームの状況を耳に入れ、羽夜華と共に魔法都市に赴いた。
「さすがに荒れてますねー」
うんざりとした声は羽夜華だ。
ロングの黒髪をポニーテールに結った彼女は、ダラダラとやる気のない歩き方をしている。
「羽夜華。あんまり目立っちゃダメだからね」
「分かってますよ。っていうか魔法都市は、本当に管理が厳しいですね」
瓦礫が積もる街中を、スニーカーで蹴飛ばしながら、羽夜華は呟く。
春袈は、ネックウォーマーで口元を覆い、くぐもった声で応じる。
「戦場都市を除けば、1番危険なところだから」
「そういうもんなんですかね……。あ。そういえば、ここら辺って、確か有名な魔法使いが生まれた場所でもあるんですよね?」
羽夜華が、キョロキョロと首を回し、あたりを見やる。
「そんな伝説も流れてるけど……。実際は噂や伝説の範囲内だから」
「でも……そんな噂、伝説が流れてしまっているから、皆、びくびくしちゃってるんですよねー」
春袈とは違い、マフラーを巻いた羽夜華は、春袈とは違うくぐもった声で笑う。
「……旧市街に入るよ。こっからは絶対話しちゃいけないからね」
「……了解」
魔法都市、旧市街。
そこで、春袈は、1つの真実に当たる。
(……魔法都市の街の中も、荒れてるって思ったけど……。旧市街は、酷いな)
魔法都市は、かつて2度、栄えている。
1度目は、その魔法のレベルの高さで。
2度目は、その隠蔽度の高さで。
(1度目の繁栄は、魔法都市にとって予想されるものであったとしても、2度目は予想していなかっただろう……。誰が、自分たちの住む都市が、隠されると分かる?)
少なくとも、そんなことを予想、知っていたのは、都市を開発した人間だけ。
……待て。
(都市開発の人間……? まさか、2度目の繁栄まで見越して、魔法都市を造りあげたのか!?)
春袈の思考は、永遠にも似た長さをもっていると思われたが。
「り、リーダー!!」
小声で羽夜華が春袈を呼ぶ。
「どうした?」
「あ、あれ、メルティ・ブロレイセスとサイテック・ウーロマンスの銅像じゃないですか!?」
確かに、羽夜華の視線の先には、この魔法都市で生まれた、戦神、サイテック・ウーロマンスと、その師、メルティ・ブロレイセスの銅像が在った。
「……それだけ?」
「……ダメですか?」
あんなに、話すな、と言っていたのに、そんな小さなことで話すのか……。
まぁ、情報好きで歴史好きな羽夜華らしいが。特に、メルティなんかは、羽夜華の目標だったらしいし。
銅像に反応しても別におかしくないだろう。
銅像に食いつく、羽夜華を溜息と共に見て、あたりを見回す。
(それにしても、人が少ないな……。いや、魔法都市だからか?)
銅像の傍に立ち、都市を見回す。
警備員と自分たち以外には、人が居ない。
いくら、危険な魔法都市といえど、民間人の1人ぐらい歩いていていいようなものだが。
……その理由が、わかった。
(……なんだ?)
元NEV隊員である春袈は、自分を包む雰囲気が変わったことに、気づく。
(警備員まで、撤収してるのか?)
これまで、自分たち以外の人であった警備員の姿すら見られない。
そんなにヤバいものがこの都市には潜んでいるのか。
「雰囲気悪いですね。それに、何か殺気だってます」
銅像にハートを飛ばしていたはずの羽夜華が春袈の傍に寄ってくる。
「確かに。でも、それだけじゃない……」
春袈がその異変に気づいたのと、羽夜華の回避は、ほぼ同時だった。
「リーダー」
後方に回避した春袈と羽夜華は、その異変の対策を実行。
「……誰でしょう?」
「さぁ? でも……」
羽夜華の問いには、春袈が思い当たる答えが合っている。
「この魔法都市を造った、都市開発の人間だろうな」
回避する前の2人が居た場所には、大きなクレーターができあがっていた。
黒々と煙が立ち昇る、その場所を見て、春袈の頬を汗が流れた。
「都市開発の人間が、せっかく造った都市にこんなクレーター作ります?」
「通常の考えでいけば、ありえない。だから、クレーターを作ったのは、通常の考えをもたないもの。つまり、どこか欠けていたり、狂っていたりする人間という事」
「……面倒ですね」
「あぁ。狂っている相手だと、その行動に秩序がない。先読みしにくいからな。……でも、こんなでかいクーデターを作るぐらいなんだから、相手はかなりの大雑把かも」
「大雑把?」
「普通なら、個々を狙って攻撃するはず。それが、こんな都市殲滅用のクレーターを作る。それは、決して繊細なタイプじゃない。だから、大雑把かと思ったんだけどね……」
黒煙が晴れたとき、クレーターの向こうに居たのは、あらゆる武器を備えた異形の怪物。
「……リーダー」
「何?」
2人は、怪物から目を逸らさずに会話する。
「私、帰ります」
グルンと後ろを向いて、ダッシュしようとした羽夜華を慌てて止める。
「ちょ、アンタ、あいつを私1人で相手しろって!? 考えてみなさい! あんな怪物、私には手におえないっつーの!! アンタ、情報収集専門でしょ!? 情報大好きっ子でしょ、考えろよ!!」
「私、帰りたいです。あんな怪物、興味ないです」
「興味ないじゃないよ!? 相手しないと、またクーデターが……!」
カチャリ、と金属音が鳴る。
怪物を見ると、大砲を構えていた。
「……おいおいおいおい。拳銃ならまだしも、大砲構えんなよ」
春袈は諦めた様子で、怪物と向かい合う。
「羽夜華。逃げてもいいけど、後悔とかしても知らないからね。あと、逃亡した後の自分の身は、自分で護りなさい」
これは、桃風 羽夜華という少女が所属するチームのリーダーとしての言葉。
「……そんなこと」
怪物が大砲からおそらく、あのクレーターの弾を発射するだろう、と考え、春袈が怪物に向かって走った時、風にまぎれて、小さく、羽夜華が呟いた。……それが春袈の耳に届くことはなかったが。
駆け寄り、怪物との距離が0になる。
大砲のすぐ横を通り抜け、怪物の顔を確認しようとし、春袈は止まった。
「リーダー!?」
口を開く事ができない、両手両足を動かすこともできない……全ての動きを封じられたに等しい春袈は、横殴りで襲いかかる大砲の銃身をまともに受け、吹っ飛ぶ。
その光景を見て、羽夜華が叫ぶが、その時、春袈の意識は吹っ飛んでいた。
――ここはどこなの?
真っ白い世界の中で、色がくるくると変わる。
真っ白く、真っ黒く、真っ赤に……永遠に色がくるくると変わる、その中で、どこか見た事がある少女が春袈を見上げていた。
「リーダー?」
ぼんやりとした視界の中で、真っ先に見えたのは、羽夜華の顔。
ついで見えたのが、羽夜華のバック。
真っ白い。まるで夢の中に居るみたいにふわふわしている。
本当に浮きそうな中で、羽夜華の顔が心配そうに歪んでいる。
「あの、大丈夫ですか?」
「……大丈夫」
「吹っ飛ばされた後、リーダーの意識がないことに気づいて、慌ててこの都市にある病院に連れてきたんです」
「……意識がなかった?」
「はい。リーダーが戦闘中に意識を失うなんて、ありえないことでしたから、驚きました」
「……そっか。ここは、まだ魔法都市?」
「はい」
羽夜華の顔がまた、ぼんやりする。
「リーダー、どうしました?」
「……まだ、意識混濁が抜けない」
「そうですか。大丈夫です。私、ここに居ますから」
「……ありがと」
ベッドの上に横たわり、白い天井を見上げている春袈は、思考する。
(あの大砲の一撃。いくら、超至近距離からの攻撃だからといって、元NEVの私が意識を失うほどの威力はなかったはずだ。……そういえば、あの時、フラッシュが……)
春袈にのしかかる気だるさ。瞼が閉じられていく。
眠りにつく前に見たのは、羽夜華の心配そうな表情だった。
――ねぇ、目を覚ましてよっ!!
あぁ、また声が聞こえる。くるくると視界が回るよ。視界の色が変わるよ。
真っ白くて、真っ黒くて真っ赤で、色んな色に変わるんだ。
ねぇ、キミは誰?
――私、貴女を起こしにきたんだよ。
……キミ、何処かで会ったかな。
――私、貴女に伝えないと。
変わる変わる変わる。見知らぬ、でもどこかで会ったことある少女と変わる変わる変わる。
どこかでまた、爆音が上がった。
春袈の目覚めは、その爆音だった。
「リーダー、大丈夫ですか?」
「……羽夜華、何かあった?」
「地震が起きました」
「……行こうか」
頭に包帯を巻いたままの春袈が立ち上がる。ベッドが軋み、音を立てる。
「でもリーダー! まだ怪我が……!」
「大丈夫。これぐらい、大丈夫だから」
あの夢の通りだとすると、もしかしたら……。
「あの怪物の好きなようにはさせるか」
低い声で病室を出て行く春袈。
置いていかれた羽夜華は、慌てて春袈を追うが、立ち止まってしまう。
(リーダー、どうしてあんな怪物に執着するの……?)
疑問は、忠誠心を揺るがす障害となる。
その疑問を取り除かなければ、疑問者はついてこない。
疑問を抱いた羽夜華は疑問を抱かせた春袈に対する忠誠心を揺るがした。
それでも、決めた。
(……アタシ、リーダーについていきます)
なんとなく、それのどこが悪い?
人間なんて、そんなものでしょう?
「凄いな……腐臭が漂っている……」
「天使と悪魔の気配もします」
「あぁ。どうやら……」
魔法都市、立ち入り禁止区域。
そこで、春袈と羽夜華は、再び、あの怪物と顔をあわせた。
だが、前回と違うのは。
「あの怪物、天使でも悪魔でもない存在らしいな」
「そんな、存在、この世にはありませんよ……!?」
春袈の言葉に羽夜華が動揺する。
……あ、そうか。
「羽夜華。言っておくよ。NEVは獅子召喚術という危険な実験を行っている。そのために犠牲になった者も少なくない」
「まさか、その実験の産物だと!?」
「かもしれないな」
「そうなれば、あいつは……」
久々に聞いた羽夜華の真剣な声。それに頷いて、春袈は冷静に告げる。
「あいつは、唯一無二の存在、天使と悪魔の中立的存在……レオだ」
だが、現在動けるメンバー、鋼夜 春袈、草花 舞葉、黒刃、桃風 羽夜華の中で戦闘経験があるのは、春袈と羽夜華のみ。
舞葉、黒刃の姉妹に至っては、基礎訓練しか行った事のない、という状況だ。
そのため、美術都市に居るメンバーに草花姉妹を任せ、春袈は草花姉妹を通じて、チームの状況を耳に入れ、羽夜華と共に魔法都市に赴いた。
「さすがに荒れてますねー」
うんざりとした声は羽夜華だ。
ロングの黒髪をポニーテールに結った彼女は、ダラダラとやる気のない歩き方をしている。
「羽夜華。あんまり目立っちゃダメだからね」
「分かってますよ。っていうか魔法都市は、本当に管理が厳しいですね」
瓦礫が積もる街中を、スニーカーで蹴飛ばしながら、羽夜華は呟く。
春袈は、ネックウォーマーで口元を覆い、くぐもった声で応じる。
「戦場都市を除けば、1番危険なところだから」
「そういうもんなんですかね……。あ。そういえば、ここら辺って、確か有名な魔法使いが生まれた場所でもあるんですよね?」
羽夜華が、キョロキョロと首を回し、あたりを見やる。
「そんな伝説も流れてるけど……。実際は噂や伝説の範囲内だから」
「でも……そんな噂、伝説が流れてしまっているから、皆、びくびくしちゃってるんですよねー」
春袈とは違い、マフラーを巻いた羽夜華は、春袈とは違うくぐもった声で笑う。
「……旧市街に入るよ。こっからは絶対話しちゃいけないからね」
「……了解」
魔法都市、旧市街。
そこで、春袈は、1つの真実に当たる。
(……魔法都市の街の中も、荒れてるって思ったけど……。旧市街は、酷いな)
魔法都市は、かつて2度、栄えている。
1度目は、その魔法のレベルの高さで。
2度目は、その隠蔽度の高さで。
(1度目の繁栄は、魔法都市にとって予想されるものであったとしても、2度目は予想していなかっただろう……。誰が、自分たちの住む都市が、隠されると分かる?)
少なくとも、そんなことを予想、知っていたのは、都市を開発した人間だけ。
……待て。
(都市開発の人間……? まさか、2度目の繁栄まで見越して、魔法都市を造りあげたのか!?)
春袈の思考は、永遠にも似た長さをもっていると思われたが。
「り、リーダー!!」
小声で羽夜華が春袈を呼ぶ。
「どうした?」
「あ、あれ、メルティ・ブロレイセスとサイテック・ウーロマンスの銅像じゃないですか!?」
確かに、羽夜華の視線の先には、この魔法都市で生まれた、戦神、サイテック・ウーロマンスと、その師、メルティ・ブロレイセスの銅像が在った。
「……それだけ?」
「……ダメですか?」
あんなに、話すな、と言っていたのに、そんな小さなことで話すのか……。
まぁ、情報好きで歴史好きな羽夜華らしいが。特に、メルティなんかは、羽夜華の目標だったらしいし。
銅像に反応しても別におかしくないだろう。
銅像に食いつく、羽夜華を溜息と共に見て、あたりを見回す。
(それにしても、人が少ないな……。いや、魔法都市だからか?)
銅像の傍に立ち、都市を見回す。
警備員と自分たち以外には、人が居ない。
いくら、危険な魔法都市といえど、民間人の1人ぐらい歩いていていいようなものだが。
……その理由が、わかった。
(……なんだ?)
元NEV隊員である春袈は、自分を包む雰囲気が変わったことに、気づく。
(警備員まで、撤収してるのか?)
これまで、自分たち以外の人であった警備員の姿すら見られない。
そんなにヤバいものがこの都市には潜んでいるのか。
「雰囲気悪いですね。それに、何か殺気だってます」
銅像にハートを飛ばしていたはずの羽夜華が春袈の傍に寄ってくる。
「確かに。でも、それだけじゃない……」
春袈がその異変に気づいたのと、羽夜華の回避は、ほぼ同時だった。
「リーダー」
後方に回避した春袈と羽夜華は、その異変の対策を実行。
「……誰でしょう?」
「さぁ? でも……」
羽夜華の問いには、春袈が思い当たる答えが合っている。
「この魔法都市を造った、都市開発の人間だろうな」
回避する前の2人が居た場所には、大きなクレーターができあがっていた。
黒々と煙が立ち昇る、その場所を見て、春袈の頬を汗が流れた。
「都市開発の人間が、せっかく造った都市にこんなクレーター作ります?」
「通常の考えでいけば、ありえない。だから、クレーターを作ったのは、通常の考えをもたないもの。つまり、どこか欠けていたり、狂っていたりする人間という事」
「……面倒ですね」
「あぁ。狂っている相手だと、その行動に秩序がない。先読みしにくいからな。……でも、こんなでかいクーデターを作るぐらいなんだから、相手はかなりの大雑把かも」
「大雑把?」
「普通なら、個々を狙って攻撃するはず。それが、こんな都市殲滅用のクレーターを作る。それは、決して繊細なタイプじゃない。だから、大雑把かと思ったんだけどね……」
黒煙が晴れたとき、クレーターの向こうに居たのは、あらゆる武器を備えた異形の怪物。
「……リーダー」
「何?」
2人は、怪物から目を逸らさずに会話する。
「私、帰ります」
グルンと後ろを向いて、ダッシュしようとした羽夜華を慌てて止める。
「ちょ、アンタ、あいつを私1人で相手しろって!? 考えてみなさい! あんな怪物、私には手におえないっつーの!! アンタ、情報収集専門でしょ!? 情報大好きっ子でしょ、考えろよ!!」
「私、帰りたいです。あんな怪物、興味ないです」
「興味ないじゃないよ!? 相手しないと、またクーデターが……!」
カチャリ、と金属音が鳴る。
怪物を見ると、大砲を構えていた。
「……おいおいおいおい。拳銃ならまだしも、大砲構えんなよ」
春袈は諦めた様子で、怪物と向かい合う。
「羽夜華。逃げてもいいけど、後悔とかしても知らないからね。あと、逃亡した後の自分の身は、自分で護りなさい」
これは、桃風 羽夜華という少女が所属するチームのリーダーとしての言葉。
「……そんなこと」
怪物が大砲からおそらく、あのクレーターの弾を発射するだろう、と考え、春袈が怪物に向かって走った時、風にまぎれて、小さく、羽夜華が呟いた。……それが春袈の耳に届くことはなかったが。
駆け寄り、怪物との距離が0になる。
大砲のすぐ横を通り抜け、怪物の顔を確認しようとし、春袈は止まった。
「リーダー!?」
口を開く事ができない、両手両足を動かすこともできない……全ての動きを封じられたに等しい春袈は、横殴りで襲いかかる大砲の銃身をまともに受け、吹っ飛ぶ。
その光景を見て、羽夜華が叫ぶが、その時、春袈の意識は吹っ飛んでいた。
――ここはどこなの?
真っ白い世界の中で、色がくるくると変わる。
真っ白く、真っ黒く、真っ赤に……永遠に色がくるくると変わる、その中で、どこか見た事がある少女が春袈を見上げていた。
「リーダー?」
ぼんやりとした視界の中で、真っ先に見えたのは、羽夜華の顔。
ついで見えたのが、羽夜華のバック。
真っ白い。まるで夢の中に居るみたいにふわふわしている。
本当に浮きそうな中で、羽夜華の顔が心配そうに歪んでいる。
「あの、大丈夫ですか?」
「……大丈夫」
「吹っ飛ばされた後、リーダーの意識がないことに気づいて、慌ててこの都市にある病院に連れてきたんです」
「……意識がなかった?」
「はい。リーダーが戦闘中に意識を失うなんて、ありえないことでしたから、驚きました」
「……そっか。ここは、まだ魔法都市?」
「はい」
羽夜華の顔がまた、ぼんやりする。
「リーダー、どうしました?」
「……まだ、意識混濁が抜けない」
「そうですか。大丈夫です。私、ここに居ますから」
「……ありがと」
ベッドの上に横たわり、白い天井を見上げている春袈は、思考する。
(あの大砲の一撃。いくら、超至近距離からの攻撃だからといって、元NEVの私が意識を失うほどの威力はなかったはずだ。……そういえば、あの時、フラッシュが……)
春袈にのしかかる気だるさ。瞼が閉じられていく。
眠りにつく前に見たのは、羽夜華の心配そうな表情だった。
――ねぇ、目を覚ましてよっ!!
あぁ、また声が聞こえる。くるくると視界が回るよ。視界の色が変わるよ。
真っ白くて、真っ黒くて真っ赤で、色んな色に変わるんだ。
ねぇ、キミは誰?
――私、貴女を起こしにきたんだよ。
……キミ、何処かで会ったかな。
――私、貴女に伝えないと。
変わる変わる変わる。見知らぬ、でもどこかで会ったことある少女と変わる変わる変わる。
どこかでまた、爆音が上がった。
春袈の目覚めは、その爆音だった。
「リーダー、大丈夫ですか?」
「……羽夜華、何かあった?」
「地震が起きました」
「……行こうか」
頭に包帯を巻いたままの春袈が立ち上がる。ベッドが軋み、音を立てる。
「でもリーダー! まだ怪我が……!」
「大丈夫。これぐらい、大丈夫だから」
あの夢の通りだとすると、もしかしたら……。
「あの怪物の好きなようにはさせるか」
低い声で病室を出て行く春袈。
置いていかれた羽夜華は、慌てて春袈を追うが、立ち止まってしまう。
(リーダー、どうしてあんな怪物に執着するの……?)
疑問は、忠誠心を揺るがす障害となる。
その疑問を取り除かなければ、疑問者はついてこない。
疑問を抱いた羽夜華は疑問を抱かせた春袈に対する忠誠心を揺るがした。
それでも、決めた。
(……アタシ、リーダーについていきます)
なんとなく、それのどこが悪い?
人間なんて、そんなものでしょう?
「凄いな……腐臭が漂っている……」
「天使と悪魔の気配もします」
「あぁ。どうやら……」
魔法都市、立ち入り禁止区域。
そこで、春袈と羽夜華は、再び、あの怪物と顔をあわせた。
だが、前回と違うのは。
「あの怪物、天使でも悪魔でもない存在らしいな」
「そんな、存在、この世にはありませんよ……!?」
春袈の言葉に羽夜華が動揺する。
……あ、そうか。
「羽夜華。言っておくよ。NEVは獅子召喚術という危険な実験を行っている。そのために犠牲になった者も少なくない」
「まさか、その実験の産物だと!?」
「かもしれないな」
「そうなれば、あいつは……」
久々に聞いた羽夜華の真剣な声。それに頷いて、春袈は冷静に告げる。
「あいつは、唯一無二の存在、天使と悪魔の中立的存在……レオだ」
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2011/03/26 12:00 更新日:2011/03/27 09:06 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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