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作品ID:683
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壊滅都市物語-Devastated City Story-

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


episode:10 『Smooth Criminal part1』

前の話 目次 次の話



「勝幸っ!」



泉美の声が聞こえ、振り返る。

そこには、階段を昇って来たのか息を切らしている泉美の姿があった。



「泉美か――どうした?」



「下に降りてきた女の子が――大矢君が怪我をしたって聴いて!大矢君は!?何処に居るの!?」



「落ち着け、泉。大矢はゾンビに腕を食われた。既にゾンビ化が進行してて――」



「どれくらい!?」



「どれくらいって、既に左腕が腐ってた」



「なら、まだ腕を切り落とせば間に合うかもしれない!早く大矢君を呼んできて!」



う、腕を切り落とすって何を言ってんだ!?



「落ち着け、泉美!腕を切り落としても意味が無い」



「どういう事よ、勝幸!?」



「落ち着いて聴いてくれ。俺も大矢も――既に感染している」









壊滅都市物語-Devastated City Story-

episode:10 『Smooth Criminal part1』











――5月2日 午後10時18分



「それで、勝幸君。君と光司君は間違いなく感染しているのかい?」



多数の防犯モニターに囲まれた警備室で、俺と親父さんはキンキンに冷えたビールを片手に煙草を吹かしていた。

ちなみに、泉美はあの後「嘘だっ!」と叫んで気絶した為に、他の女性に看病を任せておいた。



「はい、確実に。本来なら考えられないような事が簡単に出来るようになってます。例えば、1km以上を全力で走っても軽く息切れする程度、とか」



「なんて事だ……脳のリミッターが切れていては長くは持たないのかい?」



「えぇ、火事場の馬鹿力が常時続いてるんです。脳も、体もそれに耐えられる筈がありません」



「勝幸君、君の見立てでは後どれ位の――」



「分かりません。運がよければ、2日。早ければ今直ぐにでも――時間が、無いんですよ親父さん。大矢は、守山駐屯地に向かいました」



缶ビールを一気に喉に押し流し、カラカラに乾いていた喉を潤す。

畜生、普段ならこんな事をすれば酒に弱い俺は一発で酔うんだが……



「救援を呼ぶ為、か……教えてくれないか、勝幸君。どうして、こんな状況下で君達はそこまで人の為に動けるんだい?」



「ははっ……それを言うなら、親父さんだってそうじゃないですか。俺達が来るまで、たった一人で30名近い彼女達を護ってた」



「違うんだ、私は娘達を護ろうとしただけだ!彼女達は偶々、娘達の近くに居たからに過ぎない!」



「それこそ、凄いですよ親父さん。結果的に彼女達を護り通しているんですから」



「話を逸らさないでくれ!君達の目的は何なんだ?泉美じゃないんだろ?泉美とは、中学以来会っていなかったと聞いた、ここで偶然に会っただけだ」



「えぇ、そうです――親父さん、"武士道とは死ぬ事と見つけたり"って言葉、知ってます?」



「まさか――」



「俺達は、落ちこぼれでした。俺も大矢も、警官になれませんでした。世の為、人の為に――何処かの誰かの未来の為に、そんなガキ臭い理想を求めて生きてたんですよ。映画、好きでしたから」



ガキの頃から映画を見て育ったんだ。

周りがアンパンマンやレンジャー、ライダーに熱中しているときに、俺はターミネーターやロボコップに熱中していた。

大矢と出会ったのは、高校入学して直ぐだった。

特撮と映画が好きだった大矢と俺は、直ぐに意気投合して。

卒業して、別々の大学に進学しても毎日の様に共に遊んでいた。

一緒にバイトして、帰りに牛丼食って、共に警官を目指してた。



「でも、現実って厳しいっすよね?親父さん。俺も大矢も、何度も試験を受けました。愛知県警、警視庁、自衛隊――結局、全部弾かれちまいましたけど」



結局、夢は夢で終わり。

俺も大矢も、生きる為にやりたくもねぇ仕事をせざるを得なかった。

だが、俺はまだマシだった。予備補とはいえ、自衛隊に居た経験を買われて特殊警備に携われたんだからな。

でも、大矢は違った。自分の理想とはかけ離れたスーパーの社員。

何度も自殺しようとしていたのを俺が食い止めてきた。



「でも、ここでまさかの超展開ですよ。カラオケから出てくりゃ、ゾンビだらけ。最初は、ゾンビぶっ殺して終わる心算でした」



別に、生き延びようとしてた訳じゃない。

唯の自己満足。俺達は、映画の様に死にたかっただけだ。

最後の最期までゾンビと戦って死ぬ、どうよ?まさに映画だろ?



「ですが、何故か生き残った。拳銃を手に入れた。そこで、"ゾンビ"って映画をなぞる為にここに来たんです。そしたら、またも超展開ですよ」



理想郷なんて、叫ぶ怪しいおっさんと対峙し。

酒池肉林を覚悟して、中に入ってみれば超ほのぼの空間。



「中に入ってみれば、女子供ばかり。しかも、残された時間はあと僅か。そこで、俺達は思ったんですよ。"こいつは、絶好のチャンスだ"ってね?」



そう、俺達は見つけた。何処かの誰かの未来を……



「親父さん、俺達は脱出させます。それが、俺達に与えられた天命であり、責務です。これは、誰にも絶対に否定させねぇぞ!」



そこまで言うと、俺は立ち上がり扉へと向かう。



「勝幸君っ!」



「すいません、親父さん。ちと、頭冷やしてきます」



血が昇った頭を冷やす為、俺は扉を開いて外へと出た。







「……何やってんだかな、俺は」



カフェテリアでブラック・コーヒー片手に煙草を吹かす。

……いかん、煙草の本数が増えてきた。



「あ、あの……これ、着替えです」



灰皿代わりの受け皿に煙草を押し付けていたら、後ろから声がかけられた。

振り向いてみれば、そこには大矢が救出した長身の女の子がスーツを手に立っていた。



「あぁ、君は――」



「"山田 綾香"です。あの、泉美さんがこれを届けてって、言ってました」



そう言いながら差し出されたスーツを受け取る。

……紅のドレスシャツにブラックのスーツかよ。何処のテロリストだっつーの。



「泉美さん、具合が悪いみたいでまた戻ってしまいましたけど……きっと、勝幸にはこれが似合うって、言ってました」



「そっか、有難うな?あぁ、コーヒー飲むか?」



俺は彼女に席を勧め、コーヒーを入れるためにカウンターの中に向かった。



「砂糖とミルクは?」



「あ、えっと、ひとつずつでお願いします」



「OK、ちょっち待ってくれよ?めがっさ旨いコーヒーを入れてやんよ」



と、言っても俺はコーヒーメーカーのスイッチを押すだけなんだけどな?

受け皿に砂糖とミルクをひとつずつ乗せると、席に戻る。



「へい、お待ち!滝本特製コスタリカ・コーヒーだ。旨いぞ?」



本当は、何処のコーヒーだが知らんけどな。



「ふふっ……有難うございます」



彼女は笑顔でそれを受け取ると、カップに口を付けた。



「あ……おいしい」



「そりゃぁ、良かった――大矢は、救援部隊を呼びに一旦駐屯地へと戻った。何、心配する事は無いさ。奴はレンジャー出身でな?公にされちゃぁ、居ないが、俺と大矢は北朝鮮の部隊と交戦して退けたこともあるんだぜ?」



大嘘、ここに極めり。



「え?そうなんですか?」



「マジよ、マジ!それにな、自衛隊が一旦撤収したのだって、戦力を整える為で見捨てた訳じゃない。現に、俺達も残ってたろ?他の場所でも、まだ多くの自衛官達が残って篭城してるんだ。本隊の部隊編成が終わるまでな?」



「それじゃぁ……私達は助かるんですか?」



「あぁ、助かる。絶対に、な。定時連絡によれば、既に各地で編成を終えた部隊が出撃し、奪還作戦を始めているらしい。だから、怖いのはあと少しだけだ」



「よかった……」



俯き、涙を流す彼女をそっとしておき、俺は無言で煙草に火をつける。

俺が話したのは嘘ばかりだが――何も、本当の事を話して怖がらせる事は無いだろ?

静まり返るカフェテリア。だけど、それは不快なものではなく――

大矢が護った、何かを感じさせるものだった。

後書き


作者:δ-3
投稿日:2011/05/11 16:24
更新日:2011/05/11 16:24
『壊滅都市物語-Devastated City Story-』の著作権は、すべて作者 δ-3様に属します。

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